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牛山史朗は兵庫県の出身。京都大学で情報工学(人工知能分野の研究室に所属)、同大学院で金融工学を専攻したのち、三菱UFJ信託銀行、野村證券を経て、WealthNavi(ウェルスナビ)にジョインしました。現在はリサーチ&クオンツ・マネージャーとして、資産運用アルゴリズムの開発などを担当しています。趣味は声楽、水泳、育児。
手堅く、無理のないペースで資産を増やしていく
──現在の仕事内容を教えてください。
WealthNaviは、金融工学の理論に基づく客観的なアルゴリズムによって、時間も手間もかけずに、資産運用を自動で行うことができるサービスです。そのアルゴリズムの開発や改良、資産運用に関する理論等のリサーチ、経済情勢やマーケット動向等のリサーチなどを行うとともに、そのアルゴリズムや理論などについての知識を社内外に提供するのがメインの業務です。金融業界では、私のように金融工学を専門的に扱う人間は「クオンツ」と呼ばれます。
──ウェルスナビの中核を担っているんですね。当然、難しさもあるでしょうね。
我々は、お客様の資産をお預かりして、それをしっかり守り育てていかないといけない。しかし、資産運用というのは、正しいことをすれば必ず利益が出る、というものでもないのが難しいところです。いくら最善を尽くしても、例えば、「どこどこの国の大統領が誰になりそうだ」というニュースが流れるだけで突然値下がりすることもあります。
──経済情勢やマーケット動向等のリサーチも必要不可欠、ということですね。
そうですね。ただ、我々は将来のマーケット動向を独自に予測し、それに頼った資産運用をしているわけではありません。将来の予測を当て続けることはプロでも難しいからです。我々は、「どれがいい、どのタイミングがいい」と当てにいくのではなく、世界全体に投資をして、適切なメンテナンスをしながら、10年単位といった長期的な視点で、最も効率的にリターンを獲得することを考えています。広く、さまざまな銘柄を買うことでリスクを低減しながら、世界経済の長期的な成長からリターンを得ようとしています。
──でも、「ウェルスナビはうまく値上がりする銘柄を当ててくれる」とお客様は思っているかもしれないですね。
そのようなお客様もいらっしゃるかもしれません。でも、そのような相場の予想は短期的に当てられたとしても、20年、30年にわたって安定的に当て続けられるとは限らず、逆に予想が外れて損をする可能性も大いにあります。自分だけ他の人よりも高いリターンを狙おうとするよりも、投資家全体の平均くらい、という無理のないペースで安定的に資産を育てていこうというスタンスで取り組む方が、結果的に高いリターンを得られたりもします。これは「インデックス運用」という考え方ですが、世界的に見ても、このインデックス運用が主流になりつつあります。
金融工学で人を幸せにしたい
──経歴を教えてください。
エンジニアになりたくて京都大学では工学部の情報学科でコンピュータサイエンスを学んでいました。研究室は人工知能がテーマだったので、そのまま大学院でも人工知能をやろうと思っていました。でも、ある日、金融工学の私的な勉強会をやる、という告知をたまたま大学の掲示板で見たんです。それに興味を惹かれて参加しました。そこで金融はすごく面白い世界だと知りました。
勘や経験が重要であった金融の世界に科学的なアプローチが持ち込まれ、金融工学という分野ができました。NASAでロケットの開発などに関わっていた物理や数学のスペシャリストが金融の世界になだれ込み、欧米を中心に大きく発展しました。物理や数学、経済、コンピュータなど様々な分野の専門家が一緒にやっている、とても刺激的な学問だと思いました。そして、日本では金融工学の専門家が足りておらず、欧米の金融機関に後れを取っている、という話も聞きました。それで、自分が金融工学の専門家になることで少しでも日本のためになるのならと思い、大学院では金融工学を専攻することにしたんです。その流れで卒業後は三菱UFJ信託銀行(当時は三菱信託銀行)に就職しました。もともと金融業界で働くことは全く考えていなかったので、両親もびっくりしていました(笑)。
──研究室に残るとか、研究機関に行く、という選択肢もあったのでは?
指導教官からは「博士課程に進んだら?」という話もありましたが、金融工学を世の中に役立てたい、ということが私のもともとの出発点。早く現場に飛び込みたかったというのが理由です。
──三菱UFJ信託銀行から野村證券を経て、ウェルスナビにジョインしたのは?
三菱UFJ信託銀行でも野村證券でも、とても優秀な人々と一緒に、海外拠点とも連携して案件を進めるなど、知的好奇心が刺激される環境で、とても面白い仕事ができていました。でも、4歳の息子と『大きくなったら何になりたい?』という話をしている時に、息子に『何でもいいから人の役に立つ仕事をしようね』と言いながら、今の自分は何のために仕事をしているのだろうか、と改めて考えてみたんです。もっと、自分にしかできない、多くの人の幸せのためにできることはないんだろうか、と。そんなときにフィンテックが話題なり、ウェルスナビを知りました。『金融工学を使って、これまでにないサービスを創り上げ、たくさんの人の役に立てるかもしれない。チャンスだ』と思ったんです。
エンジニアがリードしていく未来
──ウェルスナビで面白いと思うところは?
ベンチャーは若い人が集まって勢いでやっている、というイメージがあったのですが、ウェルスナビはもう少し落ち着いた雰囲気。それぞれの分野で専門的な経験を積んだ人が多く、信頼して仕事ができますね。
もちろん、信託銀行や証券会社でもエキスパートが揃っていましたが、ウェルスナビには今まで一緒に仕事をしたことのない分野のエキスパートがいる。例えば、デザイナーと一緒に働くなんて、初めての経験です(笑)。エンジニアにしてもゲーム業界から来た人がいたりして、とても面白いですね。
──金融なのにスーツを着た人が少ないですよね(笑)。
入社した当時は服に困りましたね。カジュアルな服はあまり持っていなかったので。入社して最初にしたことは洋服を買いに行くことでした。今はもうネクタイの結び方も忘れてしまうほどです(笑)。
──今後のキャリアアップは何か考えていますか?
特に考えていないです。というのは、ウェルスナビは今までいた金融業界とも異色。それに金融業界自体もフィンテックによって生まれ変わりつつある。今できる事を一生懸命やっていくしかないし、それが自然と望ましい未来につながると思っています。それに、ウェルスナビにいることは、新しく何かが生まれつつある環境にいるということ。たぶん、金融業界でステップアップするのとはぜんぜん違った何かを得られると思っています。
──今までの金融業界ならキャリアアップは描けるけれど、ウェルスナビだと未知な世界が広がっている、ということですね。
そうですね。今までは金融のプロを相手に専門的なことだけをやっていればよかったけれど、ウェルスナビは総合格闘技。自分が出せるものはどんどん出していくし、吸収できるものは吸収していくという感じですね。
──これからのフィンテックはどうなっていくと考えていますか?
あまりフィンテックは意識していないですね。私のようなクオンツにとっては、金融でITを使わないなんて、むしろ考えられない。だから、金融でITを使うということだけなら、エンジニアの保科と同じく、「今さら何を言っているんだ」という感じはします。でも、私がウェルスナビに来た理由でもあるのですが、これまでの金融業界でのITの活用は主に金融業界の目線で行われてきたのに対し、フィンテックではお客様の利益や利便性のためにITをフル活用する。フィンテックによって、ユーザの一人ひとりが、ごく当たり前に自分にとって最適な金融サービスが受けられるようになる、と思っています。
──そのなかで、ウェルスナビはチャレンジングな環境?
それは間違いないと思います。今まで金融機関は、お金を持っている高齢者を主なターゲットとしていました。これからは自分たちと同じ、現役世代のためにサービスを作っていく。それはあったようでなかった世界。今まで存在しなかったものを未来の「当たり前」にしていく、という非常にやりがいのある仕事だと思っています。
金融業界のなかでのエンジニアというと、「制約が多く堅苦しい世界なんじゃないか」と思うかもしれませんが、ウェルスナビはエンジニアがリードする会社です。エンジニアが自分たちが使いたいと思うようなサービスを創る。金融機関のなかでは珍しい存在。金融の知識を持っていなくとも、というか、これまでの金融の常識にとらわれずに、ゼロベースで「お客様に便利なサービスはどうあるべきか?」という視点で考えられる方に来てほしいですね。
──ありがとうございました。
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