今回は「JOB Talk!」の第22回目として、認定NPO法人フローレンスにご協力いただき「病児保育士・ファンドレイザー」のシゴトについてご紹介します。
【ご協力いただいた企業】
■認定NPO法人フローレンス
「こどもたちのために、日本を変える」。日本のこども・子育て領域に関わる課題解決と価値創造に取り組む、国内最大規模の認定NPO法人。日本初の共済型・訪問型病児保育事業で2004年に設立し、こどもの虐待、こどもの貧困、障害児家庭の支援不足、親子の孤立の課題を解決するため、多様な保育事業を運営するほか、全国で「こども宅食」「おやこよりそいチャット」「にんしん相談」「赤ちゃん縁組」などの福祉事業と支援活動、政策提言を行う。
【ご協力いただいたスタッフさま】
■田﨑さん
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4年制大学で保育士資格や幼稚園一種免許、准学校心理士やあそびうたリトミック認定講師の資格を取得。新卒でフローレンスに入職し、現在は訪問型の病児保育士として勤務している。
■西岡さん
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大学時代は、ユースセンターや幼稚園でアルバイトをする他、こどもに関わる様々なボランティア活動、有志団体でのイベント企画等を行う。大学を卒業後、フローレンスに新卒で入職。現在はファンドレイザーとして勤務している。
※ファンドレイザー…… 資金調達を担当する人や資金調達活動そのものを指す言葉。特にNPOやNGO、教育機関、福祉団体など、営利を目的としない組織が活動資金を集めるために行う仕事や職種としてよく使われる。
ーー「病児保育士・ファンドレイザー」としてどんなお仕事をされていますか。
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田﨑さん:お子さんが発熱や退院後など通園が叶わない日に、マンツーマンかつお宅に伺う訪問型でお預かりしています。例えば、お昼頃にお子さんが保育園で発熱し、早退となるケース。翌日もお子さんの体調に不安がある場合に、前日から私たちのサービスを『保険』としてご予約をいただくことが多いです。
西岡さん:法人担当のファンドレイザーとして、ご支援を検討くださる企業の方と連絡を取りながら、私たちの活動を伝え、共感・協力してくれる仲間を増やす仕事です。具体的には、面談や活動報告、メールでのやり取りを通じて企業と関係を築きます。企業側の期待や立場を理解し、私たちの取り組みと企業の目的をつなげることを意識しています。田﨑さんが携わる病児保育サービスを過去に利用されていた方が企業側としてご支援を検討くださるケースもありました。
ーー「病児保育士・ファンドレイザー」のお仕事を選ばれた理由について教えてください。
田﨑さん:中学生の頃に見たドラマ『37.5°Cの涙』がきっかけで、現在のお仕事に興味を持ちました。保育士資格の取得にあたり、弊会の小規模園で学生実習を行いました。そこで行われていたこどもの主体性を重んじる『こどもシチズンシップ保育』に感銘を受けて、入社を志しました。
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西岡さん:小学生の頃からこどもの置かれている環境に疑問を抱くことが多く、未来のこどもたちにより良い社会を残せるような仕事をしたいと考えていました。大学時代の活動で、現場の声が制度に届きにくいという声を聞き、現場と制度をつなぐ役割を志すようになりました。弊会では、病児保育や障害児家庭支援、虐待防止など多角的な事業を展開し、さまざまな家庭の状況に向き合っています。現場の声をもとにモデルとなる事業を立ち上げ、他地域へ広げたり、政策提言を通じて制度の改善につなげたりもしています。このように、現場から制度への橋渡しができる点に魅力を感じました。
ーー「病児保育士・ファンドレイザー」のお仕事でどんな時にやりがいや楽しさを感じますか?
田﨑さん:体調のすぐれない日だけでも、身近な大人の『優先順位1位』の日を提供することができる点です。このお仕事では、マンツーマンでお子さんと向き合えるので、1日中お預かりするお子さんの今日の最善だけを考えられます。お子さんがのんびり過ごせたり、自分のペースで遊んだりする姿にやりがいを感じます。楽しいと感じるのは、こどもたちとたわいもないことで笑っている時です。保育のお仕事でありながらも教育者としてではなく、歳の離れたお友達のように過ごすことができる点が、自分にとってはたまらなく嬉しく感じます。
西岡さん:この仕事のやりがいは、「社会を良くしたい」という思いを持つ企業の方々と出会えることです。心からこどもや親子のためを思って話してくださる姿に勇気づけられますし、社会課題を知らなかった方に伝え、興味を持ってもらえた時はとても嬉しく感じます。日々の仕事の中で新しい発見やチャレンジがあることも楽しさの一つです。企業の素敵な社会貢献活動を知ること、新しい仕事を任された時、先輩の姿勢に触れる時、新しい企画を考える時など、ワクワクしながら働いています。 最近では、これまで仕事で関わることの少なかった層の方々向けのイベントの企画を進めており、相手のニーズをどう捉えるか、異なる視点を持つ仲間と意見を交わす中で多くの学びと発見があります。そうした経験を通じて、自分のキャリアの方向性や理想の働き方を考えるきっかけにもなっています。
ーー「病児保育士・ファンドレイザー」のお仕事でどんな時に難しさを感じますか?
田﨑さん:毎日異なるお子さんとの1日となるため、柔軟性を求められる点です。保育園よりもいろんなものがある『おうち』という環境構成の中で、お子さんにのびのび過ごしてもらいつつも、症状悪化やお怪我の危険がないかアンテナを立てることに難しさを感じます。
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▲訪問先に向かう途中の田﨑さん
西岡さん:社会課題の複雑化に伴い、弊会内でも変化のスピードが速く、その中で常に情報をアップデートしながら業務を行うことが求められます。制度の変更に伴ってサービス内容が変わったり、企業の方にお伝えする内容も変わったりと、日々変化に対応しています。大変な面もありますが、団体として成長している実感もあり、楽しさややりがいを感じています。
ーー今後のキャリアビジョンについてもお聞かせください。
田﨑さん:まずは現在の事業部で一人前の保育者となれるよう、日々精進していく所存です。そして30歳までには、以前から興味のあった調理師免許にチャレンジしたいと考えています。最終的には、社会で日々奮闘するみなさまの、家庭でも職場でも学校でもない第三の居場所が作れたら良いなと考えています。乳幼児や小中学生の遊び場、子育て支援はもちろん、かつてこどもだった高校生や大学生、放課後デイサービスや児童養護施設を卒業した後のフォローアップを行える場などを作っていけたらと考えています。
西岡さん:まずは、企業に信頼されるファンドレイザーとして、ニーズを正確に把握し、丁寧な対応ができる法人担当を目指したいです。そして、ビジネスとソーシャルの垣根を越えて、こどもたちのために協力し合える文化づくりに貢献したいと考えています。最終的には、立場やセクターを問わず「社会を良くしたい」という想いで人々がつながり、苦しんでいるこどもに気づける社会をつくることに貢献したいと思っています。法人担当はNPOと企業をつなぐ最前線にいるからこそ、その境界を溶かしていく役割を担えると思うので、さまざまな事業に関わりながら自分のアプローチの幅も広げていきたいと考えています。
ーーキャリアビジョンの発見に役立ったことを教えてください。
田﨑さん:学生時代に、公立の学校に通った経験が役立っていると感じます。家庭環境の差や、こどもたちの興味の幅を知ることが出来たからです。自分や自分のすごく近しい人が経験している困難さにしか、共感したり、必要性を感じたりしにくい部分があると考え、保育者の立場になってからはご利用会員さんからのお声を頼りに、より良いサービスの追求と、より多くの家庭にどうしたら必要な制度情報や福祉サービスを届けられるのかを今も日々模索しています。
西岡さん:「自分が人生で実現したいこと」の言語化を続けていることです。自分が取り組みたい課題の理想の姿と現状のギャップに対して何ができるのかを常に考え、アップデートするようにしています。その姿勢が日々の経験から学びや気づきを得る力につながっていると感じています。学生時代は授業やメモ、アルバイトやボランティア経験で思考を深めていましたが、今は仕事の中での発見や、講演会・イベントへの参加を通して学びを得ています。新しい知識に触れることで、自分の考えを見直したり、別の視点やアプローチを取り入れることを意識しており、アンテナを高く保つことがキャリアビジョンの発見につながっていると感じています。
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ーー最後に、キャリアビジョンの発見に向けて奮闘されている学生さんに向けて、メッセージをお願いします!
田﨑さん:よく後輩や転職活動をしている知人から「やりたいことが見つからない」という相談を受けます。しかし私は、必ずしもやりたいことを仕事にすることが、いわゆる天職に出会うことになるとは限らないと考えます。時に『絶対にやりたくないこと』から見つけて、このお仕事なら頑張れるかなという視点で考えてみるのも良いのではないでしょうか。学生時代に過ごした日々は、全て貴重な経験です。自己分析などであまり悲観的にならず、わくわくを探してみてください。素敵な環境に出会えるよう応援しています。
西岡さん:キャリアについて悩む時間はとても苦しいとは思いますが、立ち止まって悩むと同時に、何でも良いからやってみるというのも大切なのではないかなと思っています。例えばたまたま大学の掲示板で見つけた活動に参加してみたり、イベントに参加してみたり、全く興味のない授業を取ってみたり。そうすると新しい感情や人に出会うことができます。その時感じたものや人の言葉が、キャリアへの考えを変えるほどの大きな刺激になることは多々あるので、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。
いかがでしたか?次回の更新もどうぞお楽しみに!