"見える化"から"聞ける化"へ 〜 MES × ChatGPT で生産現場のデータ活用をアップデート 〜
Photo by Steve Johnson on Unsplash
製造現場の「見える化」が叫ばれて久しいですが、その先の“使われる化”まで進んでいるか?というと、正直まだまだ課題が多いと感じています。
今回は、当社の製造実行システム IB-Mes にChatGPTベースのAIサポート機能を追加した取り組みについて紹介します。
コンセプトは、「見える化」から「聞ける化」へ。
目次
❓なぜ「聞ける化」が必要なのか
💡解決アプローチ:IB-Mes × ChatGPT
🙎♂️実際にやってみたこと
▍生産現場での活用例
▍購買部門での活用例
▍その他:現場向け日報・朝礼資料の自動作成
😊得られた効果
🔭 今後の展望
最後に:データ活用の民主化へ
❓なぜ「聞ける化」が必要なのか
当社のIB-Mesは、計画・実績・在庫・品質・設備・労務など、工場内のあらゆる情報を活用しやすい形で一元管理しています。
ただ、
- 用途に応じたデータの取捨選択、集計・集約が大変
- 見える化しようにも BIツール の学習・設計・画面製作コストが高い
- 部署や人ごとに見たい観点がバラバラ
といった壁に直面してきました。
その結果、せっかく収集したデータが “活用できていない” 現場も少なくありませんでした。
💡解決アプローチ:IB-Mes × ChatGPT
そこで今回、IB-MesとChatGPTを連携し、
「自然言語でIB-Mesの情報にアクセスできる」
という仕組みを実装しました。
イメージとしては、
「IB-Mesに向かって話しかければ、データを引っ張ってきてくれるAI秘書」
のような存在です。
ユーザーが行うのは、画面上でのチャット入力。
裏側では、ChatGPTが指示の意図を解釈し、必要なデータをIB-Mesから取得し、自然言語で返答します。
🙎♂️実際にやってみたこと
機能リリースに向けて、IB-Mes を導入済みのお客様と実証(PoC)を進めました。以下はその一例です。
▍生産現場での活用例
- 指示例:
「発生頻度の高い不良現象と、それに対して一般的な対処方法を教えて」
→ 該当する製品不良の現象を抽出し、対処方法の内容と合わせて返答
▍購買部門での活用例
- 指示例:
「仕入先Aの未納品リストを教えて」
→ 該当する注文情報を抽出し一覧で返答 - 指示例:
「注文番号1234の催促メールを作って」
→ 注文情報を基にメール本文を生成(品目名、数量、納期など自動反映)
▍その他:現場向け日報・朝礼資料の自動作成
- 在庫不足の品目リスト
- 設備停止の要因と時間
- 作業者の非稼働時間の抽出と原因分類 など
😊得られた効果
- ITに詳しくないユーザーでも触ってみたくなる → ユーザー体験(UX)の向上
- 現場の「こういう情報が欲しい」にダイレクトに応えられる
- 手作業での集計・資料作成の時間が大幅に削減
🔭 今後の展望
現時点では、画面上でユーザーからの指示(プロンプト)を受け取り、その都度、関連するトランザクションデータ(生産実績や在庫情報など)をプロンプトに直接含めて生成AIに渡しています。しかしこの方法では、毎回のプロンプトに大量の情報を詰め込む必要があり、精度やコストの両面で限界が生じています。
今後は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)の仕組みを活用することで、ユーザーの質問に対して事前に関連性の高いデータを検索し、重み付けされた情報のみをプロンプトに反映する設計を考えています。
これにより、トランザクションデータ全体を都度送信するのではなく、質問に対して意味的に関連性の高い情報だけを抽出・構造化し、プロンプトと業務データの結びつきを強化することで、生成される回答の精度や業務的な妥当性の向上を目指します。
最後に:データ活用の民主化へ
今回の取り組みで実感したのは、
「データ活用を一部の人の特権にしないこと」の価値です。
見える化の仕組みを整えても、それを使いこなすには一定のITリテラシーが必要でした。
でも「聞ける化」なら、誰でも、自分の業務に必要な情報を、自分の言葉で引き出せる。
これは、現場主導の改善活動にとっても大きなインパクトがあります。
今後も現場と連携しながら、使いやすく・広がりやすい形を模索していきます。
同じような課題を感じている方がいれば、ぜひ一緒に議論しましょう!