君のサービスは君自身なのに、自信を持ってないものを売るってどういうこと?
働きはじめてもっとも印象的だったことのひとつは、ある会社の社長に言われた一言です。
私はキャリアをフリーランスからスタートしているんですが、自分を商品にITサービスを提供しているなかで「君のサービスって君自身なのに、自信を持ってないものを売るってどういうこと?」と言われたんです。
当時を振り返れば、「自分よりできる人はたくさんいるな」というように自分のことを謙遜してばかりだったんですよね。
仕事を始めたのは高校生のときで、身についていたのはPCの自作スキルくらいでした。
そこで、友人のお父さんが経営している建築関係の会社で、定価よりも安くPCを組立てることで報酬をいただく、というPC自作経験を活かした仕事をはじめたんです。
そこから口コミが広がっていき、税理士事務所や中小企業など50社程度のお客さんを抱え、PCの導入やリプレイス、ヘルプデスクなどを行っていました。
アルバイトもしたことのない状態から仕事を始めたこともあり、「お客様と話すこと、サービスを提供することってこんな感じかな」と勝手な想像で動いていたのですが、あるときからそれだけではうまくいかないことに気づき始めました。たとえば「なんでも言ってください」と伝えはするものの、会計や労務のような専門的な知識をもっている方や、社会経験豊富な方の話には全然ついていけなくて、自分の実力のなさに自己嫌悪することがありました。
そんななかで、とある社長に仕事の悩みを話していたときのことです。
「自分がやれることをちゃんとできてるか?」という質問に対して、
「ぼくよりまだまだできる人いますよ」と謙遜して言ったら、「君のサービスは君自身なのに、自信を持てないモノを売るってどういうこと?」と言われてしまって・・・。心が痛むと同時に、自分の中で殻が破れた瞬間でした。
モノの見方や自分の見せ方が重要なんだと気づいたんです。
まずはこれまでの知識や経験を信じて、自分が自信を持てることに真剣に取り組む。その上で間違えたら丁寧に謝ろう、と思えるようになりました。強みを活かして、さらにそこを伸ばして自信をつける、自信がないところは正直に聞く、というスタンスでいることでとても気持ちが楽になったんです。
わからないことを聞くのって失礼かな、とか斜に構えてたんですけど、そうではないんだと気づきました。
相手に合わせすぎない
その後、フリーランスをやめてIT系の専門学校に通いながらパティスリーでバイトを始めました。ここでは「自分自身でいいんだよ」というんですかね、相手に合わせすぎないということをあらためて学びました。
専門学校では携帯アプリの開発に取り組んでいました。当時は収入も必要だったので、たまたま見つけたパティスリーの販売のアルバイトをはじめたのですが、すぐに「誰か仕込みに入ってくれないか」と販売メンバーに声がかかったんです。知識欲旺盛な私は即座に手を挙げ、専門学校をやめてパティシエのキャリアをスタートさせました。
入社直後は計量や生地上げ、焼き場を経験した後に生場でデコレーションを担当しました。
そんなある日、社内コンテストで抹茶をテーマに各々がケーキを作ることになったときのことです。
私が作ったケーキが一番最低の点数をとってしまいました。
抹茶のロールケーキの上に抹茶の粉を大量にふりかけたケーキを作ったところ、試食した人全員が粉でむせていました(笑)
周りのスタッフからさまざまなアドバイスをもらうなか、オーナーシェフからのアドバイスが忘れられなくて。
オーナーシェフは、「これでよかった」と言ってくれたんです。
「人の意見を聞きすぎていろんな人の考えに寄せていくと、結局中途半端になって君のケーキをだれも買わない。ただ、『これでだれかが吐くかもしれない』とおもしろがられたら、もしかしたら買う人がいるかもしれないね。」と。
「お店をやっていると『前のほうがよかった』などとお客さんから意見をもらうことがたくさんある。ただ、その意見だけにしたがっていくお店はつぶれるところが多い。
なぜなら、そのお店に行く価値がなくなるから。
逆に、その人の個性でその人の考えたお菓子を出しつづけると美味しくないって人もいるけど、その味がいいって来てくれる人もいる。その人がリピーターになり、リピーターが増えるほどお店が繁盛するんだよ。」
私はそれまで相手に合わせようとして、いつも様子見になってしまっていました。
しかし、その話を聞いてからは、「自分らしく動けばいい。それがだめなら、諦めて次に進めばいい」と思えるようになったんです。
いい格好しようとしてるだろ、君がやりたいようにやりなさい
パティシエのあとはITの世界に戻りました。転職先は総合ITベンダーです。そこではプリセールスやカスタマーエンジニア、カスタマーサクセス、製品サポート、ヘルプデスク、セミナー講師などをしていたんですが、とにかく仕事が多くて・・・。2社同時並行でプロジェクトを進めることは普通で、多いときは10社同時並行で進めるということもありました。
月の残業時間は200時間程度で、仕事に忙殺される毎日を送っていましたね。
あまりの忙しさに、それまで学んできた大事なことを忘れてしまっていたのだな、と思います。
ある日、特許事務所の先生の元にネットワーク機器の提案をしに行ったときの話です。
松竹梅3つの製品があって、私は竹に誘導するつもりでプレゼンを仕上げていました。
プレゼン開始後すぐに、お客様にどれがいいと思うか聞かれて・・・。
プレゼンをする上では「一番高いのがいい」と伝えると、その後の流れをつくりやすいので、そのとおりに伝えたんです。
そうしたら「じゃあ、それを買う」と即答されました。
私はびっくりして、理由を尋ねたところ、「君のことを信頼している。なので、君がいいと思ったものを私は買いたいし、そういうふうに提案してくれる君を選んでいるのも僕だから。なんで君からいいって言われたものを買わないの?僕にはわからないんだけど。」
と、言われました。
せっかく竹プランを準備しましたし、後ろめたい気持ちもあったので、「比較検討しなくていいんですか?」と聞くと、
「時間もお金だし、そんなことするなら僕は信頼できる人を他に見つけるよ」と言われました。
さらにその流れで、
「いい格好しようとしてるだろ。いい格好しなくていいから、君がやりたいようにやりなさい。僕はクレームもなにもつけないから。」と。
ハッとしました。そこでフリーランス時代やパティシエ時代の教訓を思い出したんです。
当時は業務に忙殺されていたせいか、「企業人」になろうとしていたんですよね。「自分は会社を背負っているんだ」なんて考えて。
自分が勝手につくり上げた「周りからいいと思われること」をしようとしていたことに気づきました。
社会人としての品格を身につけようと頑張っていたのに、それを身につけようとするあまり、大事なことを忘れていたのに気づけたんです。
私のやりたいようにやってしまおう
その後、キャリアアップや生活の安定を考えて転職活動をするなかでUGに出会いました。
当時、内定は4社。
ほかの会社は働き方をある程度想像できたのですが、UGだけはウェブページを見てもよくわからなかったんです。(笑)
「何だこの会社は?」と不信感を覚えつつ、フリーランスに近い働き方という点で一番興味が湧いていたのもUGでした。
悩んでいる中、妻の「自分らしく働ける会社にすれば?」の一言でUGに決めました。
思い返せば、フリーランスをやっているときの働き方が好きだったんです。前職が「一生懸命会社に合わせる」という働き方をしていたこともあり、フリーランス時代の「自分でやりたいことをやる」というスタンスを強く求めていたんですよね。採用面談のときも「こんなことをやりたい」と伝えると、「やっちゃえばいいじゃん」と返ってくるUGに、フリーランス時代に感じていた心地よさや、やりたいと思う働き方に近いものを感じました。
約4年経った今、自分らしく働けているので、UGに入社した選択は間違っていなかったと思っています。
しかし、始めの1,2ヶ月は自分らしく動けず、UGの働き方に染まろうとして会社に属する姿勢に戻りそうになっていました。
初めて担当したお客様では、これまでUGからご支援していたメンバーとの入れ替わりで私が参画したこともあり、お客様は「前任者と同じように働いてほしい」と考えているだろうと思い、前任者のマネをしようとしたんです。
「自分がこうしたい」とは違うことなので、やりにくさを感じていました。
そんな中、家でのふとした会話のなかで「働きづらさを感じているんだよね」と妻に相談したところ、
「やりたいようにやって、ダメならダメで次に行けばいいんじゃない」と言われたんです。前職の経験から自分らしくやらないと失敗すると思いなおし、もう怒られてもいいから「自分らしさを出してやっちゃえ」と振り切ったんです。
それからは「これはよくない。もっとこうすべきだと思う。」と、お客様と対等な立場で自分の考えを伝えるようにしました。そうしてみると、お客様も結果的には喜んでくれることに気づきました。
「自分らしくできた」という意味で一番印象に残ってるのは3社目に担当したお客様です。
コンサル系の会社で、コーポレートIT(情シス)の立ち上げをしながらIPOの準備をするというプロジェクトを担当しました。
今まで関わったがことない業種だったので、会社の仕組みも事業内容もまったくわかりませんでした。まずは会社のビジネスを理解するためにお客様企業の営業活動に同行し、営業の方の話を聞きながら「この会社はこんなことをやっているんだ」と勉強したり、代表の方から会社のビジョンを聞いて経営方針や組織に対する考え方を学びました。
そうしていくうちにお客様先で多くの人から信頼されるようになっていったんです。
そんな中で嬉しいエピソードが2つありました。
ある日お客様先に行くと、従業員の90%の方が書いてくれた誕生日のメッセージカードが、私のデスクの上にきれいに並べられていました。100名ほどの会社なので、約90枚もの数です。すごく嬉しくて、今でもそのメッセージカードを大事にとってあります。私にとって、このカードは「社員よりも社員らしく」接することができたという自信になりました。
また、お客様先の代表の方からの依頼で、ある社員の方の仕事に対する取り組み方を改善してほしいと言われ、それに取り組んだこともありました。
3ヶ月でそれを達成したのですが、その代表の方から涙ながらに感謝されたことはUGの仕事の中で一番忘れられない出来事です。
ITとはまったく関係ないんですけどね(笑)
それからもたくさん苦労をしましたが、今ではすっかり自分らしく働けています。
あらためて「自分らしさとは」と考えると、「着飾らず、ありのままでいることかな」と思います。ですが、それには勇気が伴います。
「全力で相手のためになると思うこと、信じられることをする。それでだめなら次に進む」
という自分らしさを発揮できる場所が私にとってのUGです。