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【社員紹介】1人で始めたマルシェが100店舗に。まちづくり企業のホテル運営とは

UDSでは、個性を活かし“自由に”働いているメンバーが多い。何がきっかけで自由を求め、どう自由を表現しているのか。

今回紹介するのは、ホテルマネジメント事業部の近藤直希(こんどう なおき)。ホテル カンラ 京都レストランのアルバイト入社から、店長を経てホテルの総支配人へ。マネジメントでは対話から始め、まちづくりではマルシェから始める。一歩ずつ歩みを進めながらこれまでにないホテルを創る彼に、まちづくり企業のホテル運営について聞きました。


辞めることを考えることを止めた


──近藤さんはいつ頃UDSに入社されたんですか。


2010年ホテル カンラ 京都開業のタイミングで、アルバイト入社しています。そこから5年ほどアルバイトとして当時のレストランで働いていました。その後、2016年の増床リニューアルのタイミングで「鉄板料理 花六」の店長になり、2020年の7月からホテル カンラ 京都の総支配人を務めています。



──そもそもUDSに入社したきっかけはなんですか。


2009年にニュージーランドから帰ってきて、英語が使える仕事を探していました。当時はまちにインバウンドの方は全然いなくて、嵐山や金閣寺エリアでさえ夕方にはみんなシャッターをおろすような時代でした。

ただ、海外にいる時にバックパッカーをしていて、今でも鮮明に覚えているくらい人との出会いが楽しかった。宿泊業が人に与える感動はすごいものがあると感じて、ホテル カンラ 京都でアルバイトをはじめました。


──ここまで長く続けてこられた理由は何かありますか。


当時は時代的にもがむしゃらに働こうという空気感があり、2012年ごろにはバタバタと人が辞めていきました。

周りが辞めていく雰囲気があるなかで、当時支配人で現ホテルマネジメント事業部執行役員の山福さんが「今は色々大変だと思うけど、僕たちが目指すビジョンはこうで、こういうことやっていきたい。しっかり地に足をつけて前を見つめていこう」と直接言ってくれた。苦しいこともあったけれど、その時に辞めることを考えることをやめよう!と決心しました。目指す姿を提示してくれて、そこで留まる人も多かったです。



マネジメントのスタートは対話


──花六の店長になってどんなことから始めましたか。


私は2016年の開業から店長を勤めることになりましたが、鉄板料理もやったことなかったですし、初期メンバーには鉄板料理の経験者の方もいました。

経験が無いのに立場が上だと、僕が「Aでいこう」と決めたことに対して、だいたい「Bだ!」って言われる。そこでなぜAなのかの理屈を説明したり、心から理解してもらうために対話をして、意義を伝えていく。そこからのスタートでした。



──それまでの時代背景も含めたマネジメントだと、背中を見せてギリギリまで働こうみたいな感じになってくるのかなと思ったんですけど、実際にマネジメントをしていく中でロジックや対話の必要性に気づいていった感じですか。


そうですね。一言で「これはAにしてください」と言って、全員がAを向くのはあまりにも機械的だし、トップダウンがやりたいわけでもない相手の意見に耳を傾けて、なぜBの方がいいのか聞く。そのうえで、Bの方が面白かったらBになるし、Aで進めて成果が出ればメンバーがついてきてくれる。

もちろんみんなから勉強させてもらうことも多かったし、それを越すようなビジョンの見せ方はやりながら身についていきました。ただ、2018年に数字や利益も出てきて結果的にそうなった部分もあります。うまく回るのに2年ぐらいかかりましたね。


──ホテル カンラ 京都の総支配人になってからはどうですか。


総支配人着任時は、コロナ禍ということもあって自分ができる使命はなんだろうと悩みました。これまでの支配人は錚々たる顔ぶれで、料飲畑の僕からすると隙がないと思えたし、改めて自分の強みを見つけていくしかないと思った。

UDSのビジョンである「世界がワクワクするまちづくり」と自分のバックグラウンドを大切にしたくて、“飲食”と“まちづくり”の視点でホテルを盛り上げていくことを自分のミッションにしました。



──これまでにない数字を残せていると聞いています。


2023年は、2010年の開業からさかのぼっても最大利益を残せました。コロナ化を経て筋肉質な組織になったのも大きいですね。人に頼ることも多く、みんなが踏ん張ってくれたおかげで、過去にない利益率を残せたのかなと思います。料飲部分の利益が大きくて、それまでの10倍の数字を残すことが出来ました。宿泊では、ADRや稼働も堅調に上がっています。



小さなマルシェから始まるまちづくり


──“飲食”と“まちづくり”の総支配人について、具体的な取り組みを聞きたいです。


まちづくりについて、デベロッパーが行うようなまちづくりではなくて、もっとミクロで見て地域性を反映させていく方向性で発展させられないか考えていました。

さらに着任後すぐコロナ禍になってしまったので、何かしないといけないと思って近くのホームセンターで二枚の板と塗料を買って、地下で一人で色を塗って、それを組み立ててホテルのエントランスでマルシェを始めました。

今までお世話になっていた生産者さんの苦しい声も聞こえてきていたし、接点もなくなっていた。少しでも力になりたいと思って、野菜やプロダクトを仕入れて売る形で、合計60回ぐらいやりましたね。そうするとお客さんが増えてきて、接点のなかった地域の方も話に来てくれるようになりました。



──すごい……


そのうち一般社団法人公共事業研究開発というところから、京都市初の市民緑地化(二つある道路の一つを封鎖して、緑の空間として活用する計画)を、東本願寺の前で一緒にやろうとお声がけを頂きました。2023年に緑地化が完了し一年ほど経ちましたが、週末には約100店舗が集まるイベントが開催されています。

そのほかにも地域の調整事業やコミュニティに参加させてもらったり、下京区長さんともまちづくりのお話をさせてもらっています。困っている生産者さんに声をかけて、板2枚を並べただけのマルシェからはじまって、いろんな人の力を借りながらここまで広がっていった。まちづくりに関われていると感じられて、とても嬉しいです。


──1人で始めたマルシェからは考えられない規模になっていますね。


コロナ禍は宿泊のお客さんが減り、スタッフのモチベーションが下がっていたのも課題でした。宿泊業はどうなるんだろうという不安が聞こえてきたので、いろんなホテルを体験してきてもらいました。

まずは自分でたくさん泊まりにいって、支配人さんに挨拶しながら、「交換試泊をやってくれませんか?宿泊のいいとこを体験してもらいたくて……」と話すとありがたいことに賛同してくださるところが多かった。まちづくりまでいかなくとも、地域のつながりや頑張るきっかけを作れたのはよかったかなって思っています。



──課題はありますか。


料飲で経験を積んできた手前、宿泊部分の理解が足りてないと感じることが多いです。数字の結果は今まで築き上げてくれた先輩方や、日々頑張ってくれているみんなの力の結果でしかない。

そこで最近は、改めて宿泊について勉強をしています。料飲を絡めた企画の可能性が色々と見えてきています。



洛を感じるホテル 


──コンセプトに沿った企画や取り組みはどんなことをしていますか。


ホテル名のカンラを漢字で表すと「感洛」。つまり、洛(京都)を感じてもらうホテルです。

少し前まではカフェでボサノバの音楽をかけていましたが、あまり京都らしさを感じなかった。そこでアンビエント・ミュージックをつくる作家さんに出会うことがあって、BGMの作成を依頼しました。

まず、和楽器は430ヘルツっていう周波数に合わせて調律することが多いとわかりました。それをコアに、カンラの前にある東本願寺の中で、境内を歩く音や砂利の上を歩く音、木々が揺れる音を拾ってきて頂いた。また、京都の宇治で作られているさはりおりんというおりんがあり、その音も重ねて作っていただきました。

UDSのミッションである「かっこよくて、儲かって、社会的意義があること」をベースに、「洛を感じるホテル」の企画を考えようとスタッフにも言っています。



──面白いですね。


他にも、カンラは工芸をコンセプトにしているホテルなので、コーヒーカップも作成しました。

一部客室の湯呑みを担当していただいた作家さんとコーヒー屋さんと私の3人で、アイデア出しからスタート。ワインを飲む時にグラスを回すスワリングって、美しく見えますよね。逆に日本人の食を介したかっこいい所作はないか考えた時に、抹茶を飲む時のような両手で器を持つ仕草って美しいんじゃないかという話になったんです。

そこから両手で持ってもらえるカップを作ろうとなり、じゃあ取っ手はいらないよねとか、両手で持つ意味を込めようといった話が進んでいきました。最終的に、陶磁器のカップを作成。少し分厚いところや薄いところを意図的に作り、釉薬のかけ方によって色や質感を変えることで全体を見たくなるような設計にして、両手で触ってもらえるようにしました。

また、分厚いところで飲むと温かみがあって柔らかく飲んでもらえるし、温度が少し下がってきたら薄い部分で飲んでもらうとシャープに味わってもらえます。インバウンドの方も自然と回してくれたり、味の変化を楽しんでもらっています。


──コロナ禍同様、スタッフに対する取り組みもありますか。


課外活動のような形で、毎年ワイン用の葡萄の収穫に行っています。ワイン好きでも、ワイン用の葡萄を食べたことってあまりないですよね。勉強がてらスタッフと収穫の手伝いに行って、おすそ分けいただき、行けなかったスタッフにも食べてもらいます。

基本的に毎日同じ場所で同じことを繰り返すルーティン作業って大変な面もあると思うんです。逆に業務の中から飛び出した時の開放感って大きくて、例えば「大根が足りないからスーパーで買ってきて」と言われた時の自転車10分の往復が好きだったりする笑。なので時々半日ぐらい外でマルシェをやってもらったりして、日常とは違う環境を作っています。それが発見のチャンスや働くスタッフの満足度にも繋がると思っているんです。



ひらめきをカタチにできる環境 


──組織についても聞かせてください。企画・設計・運営が同じ会社にいると、運営側ではどんなメリットがありますか。


企画や設計をしてくれた人の人柄が見えるのは強いです。当時のこだわりをしっかり説明できるし、その人がどういう人か言えるのは面白い。野菜であれば、生産者の顔が見えるのって大切ですよね。あれに近い感覚があるかなと思っています。



──この会社で働くことの魅力はなんですか。


やりたいことに関して最後までやらせてくれること。ホテルマネジメント事業部では、「ひらめきをカタチに」をテーマにしています。

成果とは何か。1つ目が利益や数字。2つ目がお客様の満足度。3つ目が働く人の満足度。この3つはどの企業も必ず大事にしている項目なんじゃないかなと思います。


ホテル カンラ 京都では、さらに2つ大切にしていることがあります。4つ目はまちにどう関わっていくのか。「世界がワクワクするまちづくり」の定義は店舗ごとにあっていいと思うのですが、まちにどう良い影響を与えるかが成果の指標になります。

5つ目は業務以外の自分が好きなことや得意なことを、1〜4の項目にどう紐づけるか。これは何でもよくて、漫画好きであればそれを絡めた企画をやってみるとか。言語化しやすくて、みんなが違うものを持っているのがこの項目なんです。

例えば入社すぐのメンバーに、1つ目の項目の「宿泊単価を数%上げましょう」と言っても難しいと思うけど、4つ目と5つ目の項目に関してはすぐに最前線に立てる。その個性を尊重してあげたいと考えています。



──最後に、採用ではどんな方に応募して欲しいですか。


ホテル カンラ 京都やUDSという場所を使って、楽しむことに貪欲な人に来てもらいたいです。ルーティン業務だと、今やっていることがベストになっていく。そこに疑問を持って、「このやり方が最大限楽しいのか?」と常に考えてもらいたい。

それがルーティンをうまく続ける方法でもあるような気がします。長く一緒に働いて、より面白いことにチャレンジして、実績を残してもらいたい。そのために楽しんで仕事をしてもらえたら嬉しいです。



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