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『SOKI KANAZAWA』ができるまで

まちのストーリーを感じる体験。季節と風土に身を委ね、心と体が整う滞在。金沢の中心部にありながら、そのどちらも叶う宿があります。SOKIブランドの2店舗目としてスタートした、SOKI KANAZAWAのこれまでを追いました。


《SOKIの想いを受け継ぐ》

2020年11月にSOKIブランド初のSOKI ATAMIが開業。その2年後の2022年11月に、SOKI KANAZAWAも開業しました。そもそもSOKIは、どういったブランドなのか。

コンセプトは、あるがままであることを大切にし、華美な豪華さではなく素材本来の豊かさを無為自然に楽しむ。SOKIの名称の由来である、「素の器」をテーマにした空間やコンテンツの体験を通して、ありのままの自分を見つめ直す時間を提供しています。



ブランドコンセプトに掲げたのは、『季節を感じ、土地を味わい、素材を嗜む。あるがままの自分を取り戻す、無為自然に過ごす旅』。SOKI KANAZAWAでは、SOKIの想いを継承しながら、金沢らしい体験を新たな形にしました。



《金沢の原点に出会う》

まずコンセプトを考える上で、歴史や文化を学ぶところから始めました。SOKIでは、作り手の意図を押し出す形ではなく、地域性や文化、風土から得られるインスピレーションに委ねることを大切にしています。

SOKI KANAZAWAがある袋町エリアは、江戸時代から商業の中心地で、いまも近江町市場として内外から多くの方が訪れています。当時は北前船で様々な物品が運ばれ、多様なお店が発展。いまも全国から食材が集まり、北陸の中心のまちとしても発達しました。



江戸時代の全国的な「湯屋(現代の銭湯)」の広がりから、袋町でも湯屋が営まれました。ほっと一息つく癒しの場であり、市⺠の情報交換の場でもありました。

これらを踏まえ、金沢の土着性の原点にあるストーリー体験を重ねることで、これまでの金沢の滞在とは一味違う、あたらしい発見のある体験を提供しようと考えました。



コンセプトは、『魅力の原点に出会う 土着の金沢を楽しむ交易宿』。

画一的なデザインではなく、金沢に根付く素材の成り立ちを感じるデザイン。インスタントで表面的になりがちな金沢体験ではなく、由来やストーリーを楽しむ押し付けがましくない体験。それらを通して、本質的な旅のよろこびと豊かさをかなえる、金沢の魅力の「原点」「土着性」に出会う滞在を企画しました。



《まちとゆるやかに繋がる器》

空間デザインでは、アプローチからロビー、レストラン、大浴場そして客室に共通して「素」の素材を使い、曲線を用いたデザインにしています。余白のある空間を柔らかく魅せるだけではなく、個々の空間が分断されない、緩やかな曲線で繋がった一つの「器」を目指しました。



土地に根付いた場を構築するために、地元の素材や地域の職人がつくるアイテムを多く採用。木や石、土や鉄など、自然由来の素材をふんだんに使用し、ゆるやかに交わる空間を構成しています。

建物の外側は、石川県能登に自生する赤松をはじめとした、山々にある自然風景の木々のありのままをイメージした植栽が囲みます。



エントランスのアプローチから建物内部の廊下、レセプションには、石の洗い出し仕上げの床を採用。昔から金沢のまちなかでも多く見られる仕上げで、周りの風景をそのまま引き込むようなまちとのつながりを表現しました。



ホテルの立地は、市の賑わいの中心部および近江町市場にも近い袋町。「まちとのつながりを感じるホテル」として、空間やコンテンツを“つくり込みすぎないこと“に重きをおきました。



《文化を体験に落とし込む》

空間の一つ一つにも、ふとした瞬間に金沢を感じられるよう設計しました。

自然顔料の藍で染めた左官壁で迎えるレセプションには、円形のコミュニケーションテーブルを設置。お客様と肩を並べて旅の予定やおすすめを語り合う、交流のためのテーブルです。チェックインやお支払いの手続きは、自動チェックイン機の導入によりスムーズに進みます。



客室デザインは白木や鉄などを中心とした自然の素材感のある風合いで、丸みを帯びた天井は旅の疲れを癒やす柔らかいイメージを演出しています。



レストランも館内と同様に、土や木などの自然素材を多く使用。なぐり加工で仕上げた栗の木の柱や、約8mの天然木タモ材の一枚板カウンターがゲストを迎えます。



大浴場は加賀温泉の昔ながらの総湯(公共浴場)にみられるロの字型の湯船や、かけ湯用の湯おけのデザインを、石川県で採れる滝ヶ原石を用いて表現しました。客室と同様にゆるやかな曲線の天井に包み込まれるような空間で、旅の疲れを癒してくれます。



地元の間伐材や柑橘類などを再活用した期間限定の香り湯や季節湯も提供。湯上がりには昔から身体に優しい発酵飲料として親しまれてきた金沢の甘酒のほか、定番のコーヒー牛乳をご用意し、身体を内側からもリラックスできる工夫をしています。



《触れるもの全てにまちとのつながりを》

滞在のコンセプトは、旅の疲れを癒す”Refresh”と石川の地域を知る”Inspire”。体験の中にも金沢の要素を散りばめました。


”Refresh”コンテンツは、香りのコンテンツを中心に構成。客室には地元で焙煎されるオーガニックの棒ほうじ茶「SHUN」を採用、リラックス効果の高い香りが日々の緊張を解きほぐします。

2室のみ用意されたハーバルルームは、石川県白山市のアロマ蒸留所EarthRingとコラボレーションした、心身ともにリフレッシュできる香りをしつらえた特別な客室です。客室にはディフューザーやバスソルトのほか、ルームスプレーを手作りできるキットを用意。使用するアロマ精油は白山麓の天然水と森林保全のために生まれる間伐材を原料に精製されています。



”Inspire”の取り組みとして、ロビーに白地図を用意し、スタッフがお客さまとコミュニケーションをしながら、まちを案内します。金沢は有名な観光名所がまちの中心地に集まっており、便利に回遊できる一方、見過ごされてしまう小さな裏道やお店がたくさんあります。たくさんの旅のインスピレーションがまちの端々に隠されています。



もう一つの”Inspire”コンテンツとして、地元のもの作りに触れる機会を設け、土地の伝統・文化を伝える取り組みをしています。ものづくりが盛んな北陸・石川県で出会った数々の生活用品・工芸をホテルの中にも取り入れ、旅の思い出に、そしてこれからの生活のヒントとなるような「良いもの」を集めています。


【MOHEIM / 我戶幹男商店(福井/加賀)】

YUKI wood。山中漆器の木地師によって作られる器。デザイナーとのコラボレーションで実現した、滑らかな曲線と薄さは山中漆器の高い技術でしか作れない湯呑み。


【Soil・イスルギ(金沢)】

COASTER large circle。地元で左官業を営むイスルギのブランドで、一つ一つ丁寧に手作りされ、水分を吸収する珪藻土で作られた、自然素材のコースター。



【HANASAKA/谷口製土所(小松)】

Une(ユンヌ)。製土の際に廃棄されている不純物をリユースした釉薬で作った九谷焼です。陶石そのものの色をした、土を知り尽くした製土所ならではの器。


【堀川材木店 (小松)】

我谷(わがた)盆。ダムの底に沈んでしまった村、石川県我谷村で作られていた、⺠具の技法を継承している。栗の木にノミ跡をのこした素朴な風合いの盆。




《あとがき》

SOKI KANAZAWAは、まちの風土に触れられる場所。木々の質感や石などの素材の温もりを感じる空間デザイン、金沢の自然や伝統が息づくコンテンツ、地元の職人が作り上げたモノを通して、金沢の奥深い魅力に出会えます。

金沢らしい体験で心が弾み、金沢の魅力に触れることで心が満たされる。どの地域にもSOKIが生まれるわけではない。金沢だからSOKIが生まれたのだろう。


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