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<有希子のPO日記②>事業伴走の現場から ー HONESTIES株式会社の「前後裏表のないシャツを作る」取り組み

TBbaseより転載

トラストバンクが2023年から本格開始した新規事業「休眠預金活用事業」。本事業部のメンバーは、休眠預金を主な財源として、事業者さんが考える「地域の課題解決」と「持続可能な収益性」を同時に叶えられるソーシャルビジネスを、実行に至るまで併走しています。

★休眠預金活用事業に関する最新のプレスリリースはこちら
https://www.trustbank.co.jp/newsroom/newsrelease/press623/

この、TBbaseの期間限定特別連載「有希子のPO(ピーオー)日記」では、そんな「休眠預金活用事業」に携わる「プログラムオフィサー(PO)」の普段のお仕事内容や、採択された事業者さんのプロジェクト進捗などを現場からお届けします!

第2回活動紹介 | 前後裏表のないシャツをつくる、HONESTIESさんの事業設計

こんにちは!休眠預金活用事業/ソーシャルイノベーションデザイン室の有希子です。
11月に入り、すっかり冷え込みが厳しい季節になりましたね。

今回は、そんな最近の冷え込みを吹き飛ばせるようなアツいレポートを書きたいなと思い、まだ暑さが絶頂期の夏に遡り、採択事業者さんの一つである「HONESTIES株式会社」さんを訪問し、現地で行ったアツい打ち合わせ内容をお届けしたいと思います!


<HONESTIES株式会社さんについて>

大阪府泉佐野市に本社を構え、衣料用繊維製品の企画・開発・製造・販売まで行っている事業者さんです。大阪の南部に位置する泉州地域は、かつて東洋のマンチェスターと称されたほど繊維産業の盛んな地域でしたが、海外での大量生産の波に抗えず、今では生産量も職人の数も減少しています。HONESTIESさんは、今なお残る泉州繊維の匠の技や心意気を守り、泉州繊維産業活性化をしていきたいという代表の西出さんの強い想いとともに誕生しました。
「HONESTIES」は「honesty」を由来とし、「誠実な・実直な・裏表のない」という意味があります。その社名の通り、HONESTIESさんは誠実に実直にモノづくりを行い、そして「いつか、肌着に裏表があったことを誰もが忘れている世界」を目指し、「前後裏表のない」下着やシャツを製造されています。

HONESTIESさんの兄弟会社が運営する「SON cafe」の前で。向かって左から2番目がHONESTIES株式会社代表の西出さん、その右隣が事業担当の岩崎さん。西出さんはもちろん、HONESTIESの前後裏表のないシャツを着用されています!

<前後裏表のないシャツとは?>

「着替えをするとき必ずする行動」と言えば、皆さんはどんな行動を思い浮かべますか?
自分のことを思い返すと、私は必ず着る服の「前後裏表」を確認して着替えをしています(ほぼ無意識に近いです)。そして衣類の洗濯をした際も、必ず裏表を確認し、ひっくり返っていたら元に戻して畳んでいます。
しかし、「前後裏表」の確認をすることができず、「服を着る・脱ぐ・しまう」行為自体に困難を抱える方もいらっしゃいます。例えば、視覚障害をお持ちの方は、肌着の裏表や前後を確認するために、肌着のネームタグを触って、それが左側の内側にあるから正しく着ている、という確認をいつも着替えの際にしているそうです。
HONESTIESさんが企画・製造・販売を行う「前後裏表のない」シャツや肌着は、特に介護・医療現場、そしてハンディキャップを持つ方やその方々をサポートをされている方にとって、「服を着る・脱ぐ・しまう」行為の課題解決に繋がる製品です。

HONESTIESの前後裏表のないシャツ。隙間なく縫うための技術や生地の厚み・形など試行錯誤を繰り返して完成した、HONESTIESの技術が詰まった逸品です。

<事業を「誰に届けるか」>

今回HONESTIESさんにお伺いした最大の目的は、「HONESTIESさんの事業を届ける方=この事業を通して課題解決をする対象(受益者)は誰なのか」ということを直接議論させていただくためでした。
HONESTIESさんの製品は、上述の通り、介護や医療現場、そしてハンディキャップを持つ方にとって大きな課題解決に繋がる製品です。
しかし、HONESTIESさんの製品はそれだけに留まらず、忙しいビジネスマンや子育て・スポーツをされている方にとっても、時短に繋がり、「日常生活が楽になる」魅力的な製品でもあるので、そういった方々も「課題解決をする対象(受益者)」として考えられます。
また、HONESTIES代表の西出さんは「泉州地域の繊維産業の活性化」にも強い想いを抱かれていて、泉州地域の繊維事業者、というところも事業を届けるスコープに入っていたため、「この事業を通して課題解決をする対象は誰なのか」ということが明確に見えずにいました。

休眠預金活用事業では、その事業を行う「事業者」が主語になる事業設計ではなく、「事業を通して課題解決をする対象(受益者)」を主語にして事業設計を行います。休眠預金という助成金を活用して、「どれだけ事業が成長したか」ではなく、「事業を通して、社会・地域課題に対してどれだけインパクトを与えられたか」ということを測るためです。
そのため、より明確に社会的インパクト※を示すためにも、「事業を通して課題解決をする対象=受益者」はできるだけ解像度を高く、明確にする必要があります。

※休眠預金活用事業の事業者さんとトラストバンクが一緒に行っている「事業設計」「社会的インパクト評価」について詳細が気になる方は、JANPIA(一般財団法人日本民間公益活動連携機構)で公開しているこちらのハンドブックをご覧ください!
https://www.janpia.or.jp/hyouka/download/hyouka_2022.pdf
https://www.janpia.or.jp/hyouka/download/hyouka_handbook_plan.pdf

この「受益者」に関する議論は、どのように事業を進めていくかを左右する事業の根幹となる最も大事な部分になりますが、ソーシャルビジネスでは、事業者さんが課題を解決したい対象である「受益者」と、事業者さんに売上をもたらす「顧客」は異なる場合があります。
例えば、ハンディキャップのある就労が困難な方たちの就労支援を目的に、そういった方々の雇用の場を作るために商品企画・販売事業を立ち上げる、とした場合、事業で課題を解決したい対象者(受益者)は「ハンディキャップのある就労が困難な方」になりますが、事業において売上をもたらす方(顧客)は、「商品を購入するお客様」になります。

正直、この考え方は私も最初わからず「???」となっていたところです。。
HONESTIESさんも、この点に少し混乱していたようで、まずは、もともとHONESTIESさんが考えられていた受益者「ハンディキャップがある方」と「泉州地域の繊維事業者」についてその「顧客」は誰なのかを一緒に整理していきました。

▼HONESTIESさんと整理して出てきた2つの方向性

①受益者は、「ハンディキャップがある方」
顧客は、受益者である「ハンディキャップのある方」と「忙しいビジネスマンや子どもを
持つ方など、時短を必要とされている方」の両方
②受益者は、「泉州地域の繊維事業者」
顧客は「ハンディキャップのある方」と「忙しいビジネスマンや子どもを持つ方など、
時短を必要とされている方」

①は、事業を進めていく中で結果的に②の繊維事業者にも良い影響を与えることができそうですが、②の場合は、まず課題解決の対象として泉州地域の繊維事業者を置いています。
①と②では、「事業をどのようにして組み立てるか」が全然変わってきますよね。

そのような話をしたところ、HONESTIESさんは「前後裏表のないシャツ」を開発した原点に立ち戻ってお考えになりました。結果、「泉州地域への強い想いはもちろんあるが、自分たちは、まずは製品を通じて、服を着る・脱ぐ・しまう行為に困難を抱える方々の課題を解決したい・喜んでほしい」という強い想いをお伺いし、①の方向で受益者を明確に言語化することとなりました。

▼トラストバンクと一緒に整理後、設定した受益者と顧客(2023年11月時点)

受益者と顧客は、
・ハンディキャップがあり、自身での「服を着る・脱ぐ・しまう」行為に困難を抱えている方
・上記のハンディキャップのある方をサポートされている方

今回数時間みっちり議論させていただき、「受益者」が明確になり言語化をすることができました。この「受益者」に課題解決に繋がるより良い事業を届けるため、HONESTIESさんとは引き続き議論を重ねながら事業設計を行っており、現在大詰めの段階です。

HONESTIESさんの事業によって、どのような製品が生まれ、そして「受益者」の課題解決にどれだけ繋がっていくのか、引き続きご注目いただければ嬉しいです。

そしてHONESTIESの皆さま、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

(次回はこちらにお伺いしたレポートをお届けいたします!さて、どこでしょう…)

次回も、ある地域の事業者さんを訪問し、一緒に行ったヒアリング調査などについてアツくお伝えできたらと思っています!
ではでは、来月もどうぞよろしくお願いいたします!

<プログラムオフィサー連載記事>・有希子のPO日記①

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