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こんにちは。プロダクト本部・開発部所属の辻です。
先日、CHUO tech主催の『Vibe Codingについて語ろう』というイベントに登壇する機会をいただきました。今回はその内容を記事として共有し、生成AIが急速に進化するこの時代において、私たちエンジニアに求められるスキルについて考察したいと思います。
Vibe Codingとは、自然言語による指示をもとにAIがコードを生成・修正する、革新的なプログラミング手法です。
私は2025年に新卒でTOKIUMに入社し、現在はAIエージェントチームでTOKIUM AI請求照合の開発を担当しています。プログラミング未経験だった私が、生成AIとどのように向き合い、何を感じるのか。その経験から得た視点をお伝えできればと思います。
目次
アメリカの大学検索サイトを作りたい
インターンという転機
伝統的な開発の苦闘
「魔法のような体験」——初めてのコード実行
AIとの協働が変えた開発プロセス
vibeコーディングという新しい世界
伝統的な開発経験が、AI時代のサービス創出の原動力に
これからのエンジニアの価値とは
最後に
アメリカの大学検索サイトを作りたい
プログラミングに興味を持ったきっかけは明確でした。アメリカの大学検索サイトを作りたかったのです。
私自身の留学経験から、日本の学生が海外大学を探す際の困難さを実感していました。アメリカの大学には偏差値という概念がなく、各大学独自のテストも存在しません。大学選定という意味では非常に基準が曖昧になりがちです。そこで「学費、立地、専攻、環境...様々な条件で絞り込めるプラットフォームがあれば、後輩たちの選択を支援できる」そう考えていました。
しかし、開発のための情報収集を進めるほど「動的サイトの開発はある程度高度な技術が必要」という現実に直面しました。さらに、映画で見るプログラマーの姿 - 黒い画面に流れる緑の文字、華麗なタイピング - そんなイメージが「これは自分には無理だ」という思い込みを強化していました。
結果として、具体的な行動を起こせないまま時間だけが経過していきました。
インターンという転機
2024年、TOKIUMの開発部でインターンシップの機会を得ました。「作りたいものがあるなら挑戦してみよう」という環境に背中を押され、ずっと踏み出せずにいた大学検索サイトの開発に着手することを決意しました。
伝統的な開発の苦闘
当時の私は、生成AIを使ったことがほぼありませんでした。ChatGPTの存在は認識していましたが、AIがコードを書くという発想自体がありませんでした。
最初の大きな壁は環境構築でした。 「コードはどこに書くのか」「VS Codeとは何か」「ターミナルの操作方法は」「開発したものをどう確認するのか」
疑問が生じるたびに技術書を読み、Progateを何周もし、インターネットで情報を収集する。今振り返ると、非常に時間がかかる方法でした。
「魔法のような体験」——初めてのコード実行
二週間の格闘の末、ようやく環境構築を完了させました。VS Codeのセットアップ、必要な拡張機能の導入、ターミナルの基本操作の習得。そして初めてHTMLを記述しました。
保存してブラウザで開いた瞬間
-画面に「Hello World」が表示されました。
「redと指定すると本当に赤くなる!」
たったこれだけのことに、心から感動しました。自分が書いたコードが、目に見える形で画面に現れる。思い描いたものを即座に形にできる創造性。プログラミングの本質的な魅力を初めて理解した瞬間でした。
AIとの協働が変えた開発プロセス
その後、自力で開発を進めていくうちに、ChatGPTがコード生成に活用できることを知りました。ただ、当初は倫理的な葛藤がありました。「これはカンニングと一緒なのでは」「これでエンジニアと自称して良いのか」
しかし実際に使用してみて、その効率性に衝撃を受けました。苦労した環境構築の手順を瞬時に提示し、エラーメッセージから的確な解決策を導き出す。
ただ、当時はClaude Codeのようなものは存在していませんでした。ブラウザ版のChatGPTで生成されたコードを手動でVS Codeにコピペする必要があり、ファイル構造やコンテキストの共有にも工夫が必要でした。
それでも、独学で数日要していたタスクが、数時間で完了するようになりました。
vibeコーディングという新しい世界
2025年、アンドレイ・カーパシー氏が「Vibe Coding」という概念を提唱しました。「こんな感じで」という意図(vibe)をAIに伝えるだけで、実装が実現する時代の到来です。
さらに、Claude Codeの登場により、開発ワークフローは革命的に進化しました。コードのコピペすら不要となり、AIとの対話を通じて思考速度での開発が可能になりました。ファイル構造の管理、エラーの即時修正、すべてがシームレスに統合されています。
そして、ついにあの大学検索サイトが完成しました。動的な検索機能、データベース連携、レスポンシブデザイン。「技術的に困難」と諦めていたプロジェクトが、現実のものとなったのです。
伝統的な開発経験が、AI時代のサービス創出の原動力に
TOKIUMでの開発業務において、インターンシップで培った経験が大きな強みとなっています。特に、Claude Codeがリリースされる前の段階で「伝統的な開発」を経験できたことは、私のエンジニアとしてのキャリアにとって重要な転機となりました。
もし最初からAIを使っていたら、あの「redが赤くなった瞬間」の感動は味わえなかったでしょう。コードがどこでどのように実行されているのか、エラーが発生する理由、そういった基本的なメカニズムを理解する機会を失っていたかもしれません。
あの頃の苦労があったからこそ、AIの凄さを心から実感できます。そして同時に、AIにはない「これを作りたい」という情熱や、「ユーザーにとって本当に使いやすいか」を追求する人間の感覚の重要性を、改めて認識しています。これらの経験が、AIを最大限に活用し、より良いサービスを創出するための原動力となっています。
これからのエンジニアの価値とは
純粋なコーディング能力は、もはや決定的な差別化要因ではなくなりました。AIがその領域を効率的にカバーしてくれるからです。
では、人間のエンジニアの価値はどこに見出されるのでしょうか。それは、人間と機械の決定的な差である、感情です。—つまり、センス、情熱、倫理観、そして「何を作るべきか」を判断する能力にあります。ユーザーの潜在的なニーズを理解し、社会に必要なソリューションを見極め、AIに対して適切な指示を出す。これが新時代のエンジニアに求められる本質的な役割です。
プログラミング未経験者でも価値あるプロダクトを生み出せる時代が到来しました。しかし同時に、「なぜこれを作るのか」「誰のために作るのか」という根本的な問いがより重要性を増しています。
最後に
「本当に自分が作ったと言えるのか?」
この問いに対する私の答えは「Yes」です。
AIは膨大なパターンの学習と高速な処理、正確なコード生成において圧倒的な強みを持ちます。一方、人間はユーザーの感情を理解し、社会的文脈を読み取り、「これは本当に必要か」という価値判断ができます。
重要なのは、それぞれの強みを理解し、適切に役割分担すること。AIに任せるべき技術的な実装は任せ、人間が担うべき創造性や共感性の部分に集中する。競争ではなく協働。この最適な関係性が、新しい時代の開発スタイルを形成していくのです。つまり、AIに感情という概念が生まれない限り、AIがエンジニアの職を奪うことはなく、むしろまだまだ人間にしかできないことがあるということです。
人間にしかできないこと + AIが優位性を持つ領域。この組み合わせによって、どちらか一方では実現できない価値を創造できる。それが、Vibe Coding時代のエンジニアリングの本質だと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございます!
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