「20人規模の会社に行く」と妻に伝えたとき、返ってきたのは「1/10じゃないか」でした。
前職は上場前フェーズで入社した会社。インサイドセールスの組織を3年以上まわし、アポイントの目標は毎年達成していた。不満はなかった。それでもモヤモヤが消えなかった。
2025年11月に匠技研工業へ入社した國馬秀治(こくま・しゅうじ)は、製造業もカスタマーサクセスも未経験でした。その5ヶ月後、CSリーダーを任されています。何をしていたのかを聞きました。
「1/10じゃないか」から始まった転職
――転職のきっかけは何でしたか。
転職は、元々全然考えていなかったんですよ。前職には上場前のフェーズで入社して、ISの組織を3年以上やっていました。アポイントの目標は毎年達成できていて、自分なりに手応えもありました。
ただ、アポイントの成果が出せるようになったからこそ、「次は受注率のところまで自分の手で改善していきたい」という気持ちが強くなっていったんです。そこに向き合おうとしたときに、今の環境では難しいなと感じて、新しい場所で挑戦したいと思うようになりました。
そんなとき、数年前に登録していた転職サイト経由で、以前一度お話ししたことのあるエージェントから改めて連絡をもらいました。前回はお断りしたんですが、「何かの縁かな」と思ってもう一度話を聞いてみたら、自分の中の「次に行きたい」という気持ちがはっきり言語化できて。そこから本格的に動き始め、匠技研工業を紹介していただきました。
――匠技研を知ったときの印象はいかがでしたか。
転職活動の軸として、Vertical SaaSに行きたいという思いが元々ありました。Horizontal SaaSだとどの業界でも使えるけれど、業界の根深い課題まで入り込めない気がしていて。特定の業界に深く刺さるプロダクトの方が、経営の課題を解決できるだろうと。
匠技研の「製造業の見積業務」というテーマを調べていくと、値決めそのものが利益の源泉で、原価をちゃんと把握することで初めて収益改善が図れる、という部分がすごく腑に落ちました。事業の根幹に関わるプロダクトだと感じて、応募しました。
――他社の内定もある中で、最終的に決めた理由は。
正直、フィーリングが大きかったです。他にも内定をもらっていた会社があって、より条件が良い選択肢もありました。でも、ある程度できあがった組織に入ると、自分がその会社の型にはめられる可能性が高いかなと思っていて。それよりも、これから組織を一緒につくっていけるフェーズの方が、ISとフィールドセールス(FS)の連携や、PDCAを回す文化といった土壌を自分で作れるんじゃないかと思いました。
あとは、お会いした皆さんの人柄ですね。特に、CBOの原さんと会食でお会いしたときに、誠実さ、高い目標に対しての前向きさがあって、0→1を作るワクワクを感じられたことが後押しになりました。
――ご家族がいる中でのスタートアップ転職、不安はありませんでしたか。
妻に「20人規模の会社に行く」と話したときは、「1/10じゃないか」という反応はありましたよ(笑)。ただ、前回の転職でも成果を出せていたので、「選んだならいいんじゃない」と最終的には背中を押してくれました。信じてもらえているんだなと感じましたね。「もうこれ以上転職しないでね」とは言われていますが(笑)。
気づいたら自称SEになっていた、最初の数ヶ月
――入社後、まず何から始めましたか。
最初の2ヶ月はとにかく全体像をつかむことを意識しました。Notionに蓄積されているドキュメントを読みあさって、ツリーを描くような感じで大きな構造から細部へ理解を深めていくという順番でキャッチアップしました。あとは、先輩の現地訪問にも同行しながら、コミュニケーションの進め方や現場の空気感を肌で吸収していきました。
――想定外だったことは。
覚悟はしていたのですが、それでも覚える知識の量が想像以上でした。製造業のドメイン知識から始まり、CSとしてのコミュニケーション、要件定義のロジック、カスタマイズに使う管理画面の操作、さらにはAWSにログインしてのデータ移行まで……気づいたら自称SEみたいになっていました(笑)。これは本当に予想以上でしたね。
それでも、土日は家族と過ごしたいので平日の隙間をどう使うかを意識して、通勤時間や出張の移動中に本を読んだり社内ナレッジを眺めたりしていました。そして知識を定着させるために、アウトプットを意図的に増やすようにしていました。
――CSの仕事の流れを教えてください。
導入前の要件定義から始まって、現地訪問でお客様の業務フローや課題を深く理解して、匠フォースを使った業務改善の提案をして、導入後の運用支援まで伴走する、というのが基本の流れです。
お客様によってやりたいことが全然違うんですよ。属人化の解消が目的の会社もあれば、見積の精度を上げたい会社もある。同じ製造業でも、工程も原価の構造も事業の在り方も、会社ごとに全然違う。だから1社1社をちゃんと理解するところから始めないといけない。
技術的に難しいご要望が出てくることもあります。そのときは「できない」とはっきり伝えることも仕事のうちですが、そこで終わるんじゃなく「こういうアプローチなら実現できます」と代替案を提示するところまでが役割だと思っています。
――CSならではの難しさは。
タスク管理ですね。お客様を同時に20件以上担当していると、常に複数のプロジェクトが並行して動いている。タスク漏れがないかの管理は常に神経を使いますし、夜中にふと「あれ、対応できてたっけ」と気づいて仕事する、ということもありました。
対処として「その場でできるものはすぐ処理、できないものはカレンダーで枠を押さえるかSlackのブックマークに残す」という運用に変えて、だいぶ改善しましたね。あとお客様にボールを渡しても返ってこない案件の管理が難しくて。気づいたら1週間過ぎていた、なんてこともありました。
――ISの時と比べて、仕事の手応えは違いますか。
前職のISのときは毎月数字を追って、達成したぞ、また来月頑張ろう、というサイクルに達成感がありましたが、CSにはそれとは違う手応えがあります。
それは、匠フォースがお客様の業務に入り込んでいくことで売上にも繋がっていく、お客様の見積にかかる時間が短くなると経営者が本当にやりたいことに使える時間が増えていく。そういう変化に自分が関われていると実感できるところです。
あとは、感謝の言葉を直接もらえることもあって、人とのコミュニケーションの中で手応えを感じることのできる仕事だとも思います。
前職で退職者を出した。その失敗が、いまの土台になっている
――前職でのマネジメント経験は、今に活きていますか。
前職での失敗がすごく活きているなと感じます。
前職でも新卒を5人ほど担当したことがあって、自分なりにマネジメントしていたんですが、退職者を出してしまったんですよね。そこから学んだことが2つあります。
1つは、ただ目標を追うだけでは人は続かないということ。特に高い目標に関しては、本人の将来ビジョンと照らし合わせながらモチベートしていくことが大事だと気づきました。
もう1つは、全部自分一人でやろうとしないこと。営業戦略から数値分析、施策化、チームの雰囲気作りまで一人で抱えて、失敗しました。雰囲気作りはムードメーカーに任せたり、数値分析や施策アイデアの考案はそれが得意な人に任せたりすることで、チームが上手く回り始めました。
――入社5ヶ月でリーダーになるまでに、どんな動きをしていましたか。
業務に慣れてきてからは、当時リーダーだった先輩の動きを意識して観察するようにしました。「リーダーが担っている仕事をどれだけ巻き取れるか」に注力したんです。CSの組織課題を考えて提案したり、リソース配分を検討したり。そういう動きをしていれば、次のステップが見えてくるだろうと思っていたので。
そうして、当時のリーダーがマネージャーになったのと同時期にリーダーを任せてもらえることになりました。
――リーダーとして意識していることは。
今は3つのことを意識しています。
まず、小さな成功体験を積ませること。成功体験がないまま苦しい仕事を続けると人は折れてしまうので。
次に、答えを与えないこと。魚を与えるのではなく釣り方を教えるイメージで、自分で言語化できる思考プロセスを身につけてもらう。
最後はメンタルケアです。正論だけでなく共感すること、自分の失敗談を話すことで少し楽になってもらえれば、と思っています。
また、子どもができてから教育本を読むようになったんですが、マネジメントの本と書いてあることが一緒なんですよね(笑)。子育てを通して得た実感も今のリーダーとしてのあり方に影響しているなと思います。
「製造業の経営って面白い」と初めて思えた日
――入社前、製造業への印象はどうでしたか。
実は、あまりピンときていなかったんです(笑)。前職では飲食店やホテルを担当していたので、製造業は自分には縁遠い世界だと思っていたんですよね。
それが変わったのはお客様の工場を訪問し、経営者から苦労話を聞いたときです。
たとえば、現場では不良を出さないために、作業者が加工を間違えにくいような設備配置を試行錯誤する一方、現実的に不良をゼロにはできないため、歩留まり率を原価に乗せて値決めしているという話を聞きました。
他にも、溶接が得意な会社ではその強みを活かせる仕事を高価格で受注しにいき、強みを伸ばす設備や加工に再投資するという話も聞きました。
どこで利益を上げるのか経営者ごとに全く違うということを実感できたとき、「製造業の経営って面白い」と初めて思えたんです。今は顧客訪問を月4〜5回していますが、訪問するたびに新しい発見があります。
――家庭との両立はどうですか。
土日は基本的に家族優先で過ごしています。1日家にいられないタイプなので、車で1時間ほどのところに出かけることが多いですね。子どもたちがチャイルドシートで大人しくしている車の中が、実は妻とゆっくり話せる貴重な時間だったりします(笑)。
リモートワークも活用して、平日でも夕飯を一緒に食べたり、お風呂に入れたりできています。スタートアップだからといって家族の時間が取れないわけでは全然ないということは実体験として言えます。
――スタートアップへのキャリアパスに不安を持っている人には。
キャリアパスの可能性は色々あると思っています。CSからFSへ、CSから開発へ、と人の流動性は比較的高いですし、やりたいと言ったことは基本やらせてくれる文化がある。経営層との距離が近いので物事も進みやすい。実際に自分も半年でリーダーを任せてもらえていますし。
家族がいる状況でも、自分で時間配分を工夫したりすることでやりようは色々あると思います。
――どんな人と一緒に働きたいですか。
CSに向いているのは、お客様に寄り添える人だと思います。具体的にはお客様が喜んでくれたことに自分も喜びを感じられる、そういうサービス精神がある人ですね。
一緒に働く人という意味では、前向きな人、そして素直な人ですね。素直な人は成長が早いし、建設的に前進していけるので、一緒に仕事をしていて楽しいなと思います。
おわりに
國馬は、転職しようと思って動いたわけではありませんでした。エージェントからの連絡に、もう一度話を聞いてみたところから始まっています。
「今の環境に大きな不満はないけれど、何かモヤモヤしている」。その状態の方と話すのが、私たちは一番多いです。まずは話を聞くだけでも構いません。この記事の下にある募集からご連絡ください。