創業から2020年5月1日付けで株式会社タクティブの代表取締役社長に就任した駒井亮さん。タクティブを創業し以来トップとして事業を率いてきた佐藤司さんと共に二人三脚で事業推進を担い、そしてそのタスキを引き継ぐまでのお話をお伺いしました。
原点へ立ち戻る、卓球との出会いとは
ー まず、卓球を始めたきっかけを教えてください
卓球を本格的に始めたのは中学生の時です。小学校の頃は友人と休み時間に楽しむ程度だったのですが、中学に上がって部活動を見学していく中で「手応え」を感じ入部を決めました。
当時は卓球のボールサイズも38mmから40mmへ移行した時期でもありました。しかし最後の県大会もベスト16で終わってしまい、近畿大会に出れず悲しい気持ちになったのを今でも覚えています。
中学を卒業すると、地元の公立高校へ進学しました。高校でも卓球を続け、部員も中学時代の顔見知りが多く居心地が良かったです。
そこから練習に打ち込みましたが1年目は県大会3回戦で敗退、悔しくて泣いたのを今でも覚えています。その悔しさをバネにして2年目の県大会では個人シングルベスト4、ダブルス優勝、団体も2位と手応えを掴む結果なり、3年生のときも県大会で勝ち続けることができました。
そして高校生活も後半へ差し掛かり、進学するかどうか悩んだ末「もっと強い環境で卓球を続けたい」と思うように。そこでお世話になっていた指導者の方に大学へ繋いでもらい、その中の一つが後に進学することとなる近畿大学でした。地元を出て東大阪まで電車に乗り、先輩方に混ざって練習に参加させてもらいました。当時は有名高校以外からの練習参加は珍しく、ちょっとだけ肩身の狭い思いもしましたが無事にスポーツ推薦をもらいました。うれしかったですね。
ー 近畿大学へ進学して、その後は?
近畿大学は環境もよく、周りもみんな強いのでこれまでにないほど必死に練習しました。先輩だけでなく、むしろ新入生も強いので下からの突き上げもすごかったです。補欠からベンチメンバーへ入ることを目標に奮闘しましたが、結果的にリーグ戦には出れずに卒業を迎えました。
悔しい結果ではありましたが、あまり物事が続くタイプではなかったので「10年卓球を続けた」という事実は自分の中で大きな自信となりました。
新卒時代とキャリア遍歴
ー その後、どのようなキャリアを歩んだのでしょうか?
大学の卒業間際はリーマンショックの最中、先輩が内定取り消しになっているのも目の当たりにしていたので早め早めに準備を進め、人材系にフォーカスした就職活動を行い無事にパソナへの入社が決まりました。
新卒時代は朝から晩まで夢中になって働きました。国や自治体の支援事業を受託する官公庁事業部を始め新卒採用、新規事業の立ち上げなど正解がわからない中で必死に走り回っていました。
新規事業の立ち上げに苦戦したのが一つの転機となり、当時勢いを増していたWEBのスキルをつけようと転職を決意。当時スタートアップイベントで出会った起業家との出会いをきっかけに「修行させてください」と無理を言って、コーチ・ユナイテッドという会社でまた0からのスタートを切りました。
ー その後、IT業界ではどんなことに挑戦したのでしょうか?
まず主にWEBマーケティングを中心として仕事をはじめました。WEBも数字も全くわからない状態だったので毎日疑問と課題の連続でしたが、社内にプロがいたので必死にかじりついて学ばせてもらいました。この時についたWEBの基礎知識や数字感がベースとなり、今でも自分の強みにつながったと思います。
またオフィスでスタートアップ界隈の人たちとも会うようになったので、こんな世界があるんだと衝撃を受けたのを今でも覚えているし強烈な刺激をもらいました。
コーチ・ユナイテッドでの1年間の修行を経て、次にChatwork社へ入社しました。当時はまだ上場前で規模も小さく、私はマーケティングの人員として入社したのですが人不足でいきなり経営企画へ(笑)当時の上司と一緒に次の資金調達プロジェクトに関わらせていただくことになりました。これまたプロの横で事業戦略や計画のイロハをガッツリ体験できたのは大きな経験になりました。
資金調達が無事に終わると改めてマーケティングの部署へ移り、実務をこなしながら新規事業の立案や開発を行っていました。こうしてマーケティング、事業戦略、経営など今の自分のベースとなるスキル経験を積ませてもらったのは本当に運が良かったなと感謝しています。
タクティブ創業者、佐藤司さんとの出会い
ー 佐藤さんとの出会いについて教えてください
実はコーチ・ユナイテッド時代にタクティブ創業時代に佐藤さんの存在を知り、大学で一度離れた卓球という業界で本気でビジネスに挑戦している姿に驚きと興味が湧いて思わず自分から連絡を取りました。
当時、喫茶店で佐藤さんのお話を聞いたときには「こんな人がいるんだ!」という驚きばかりで、後にご本人からも「同じような感想を持った」という話を聞きました(笑)その時はコーヒーを一杯飲んだだけでしたが、今思うとこれが最初に起きた小さな化学反応でした。
それから数年経った2016年。会社員をしつつ自分自身の会社も作って動き始めていた最中、改めて佐藤さんにご挨拶にお伺いしたときに「せっかくなら一緒にやろうよ」と声をかけていただきました。これをきっかけに、まずスクールのマーケティングを主軸に業務委託としてTACTIVEに週1で関わらせていただくことになりました。
TACTIVEは2017年から店舗出店も加速し、勢いを増している最中でした。その中で改めて自分自身も卓球業界の面白さややりがいを日に日に感じていました。同時期に卓球にまつわるメディア事業の原型もできており、エンジニアの採用も進めつつWEB業界で培ったノウハウを活かしてプロダクトマネジメントとスクールのマーケティングを並走するような形になりました。
しかし徐々に業務委託である自分自身の関わる総量がボトルネックになっている課題を感じるようになり、もっと責任を果たして佐藤さんと共に経営を前へ進めていきたい、卓球業界に恩返しがしたいという気持ちが強くなり2018年夏に正式に入社を決めました。
タクティブへ入社と、そして代表を引き継ぐまで
ー 業務委託からの入社、どのような変化がありましたか?
入社当時から佐藤さんと二人三脚で「卓球市場の勝ち筋」を探った2年間でした。
卓球は国民的スポーツではあるものの、まだまだ市場は未成熟で野球やサッカーに比べると成長余地が残されています。当時は東京オリンピックも控えていたので「卓球ができる場所を増やすこと」「卓球の魅力を伝えられるコーチを増やすこと」への価値を強く感じるようになっていきました。
スクールとメディアの二足のわらじを履きつつサービス改善を続け、数字やマーケティングを中心にみていたところから徐々に「組織開発」「店舗運営」などにも力を入れていくようになりました。2019年にCOOに就任してからはより一層タクティブ全体のことを考え、佐藤さんと一緒に経営を推進していくようになりました。
ー その後、2020年に代表を引き継ぐことになると思うのですが当時の心境は?
正直、不安はありました。
佐藤さんが卓球業界へ注いでいる情熱は並々ならぬものがあり、同時に社内外の人の信頼も厚かった。何より佐藤司という「人柄」に惹かれているのは現場メンバーだけでなく、私自身もその一人だったからです。実際にマネージャー陣を含め、店舗のコーチ陣も初めての大きな変化に不安は大きかったと思います。
引継ぎの話を聞いた際には二人でたくさん話を重ね、佐藤さんの積みあげてきたものを受け継げるようにといろんなことを考えました。佐藤さんの新しい挑戦を後押ししつつ、最終的には「どうにかするしかない」と自然と腹を括りました(笑)
再始動と新しい事業推進
ー その後、どんな変化がありましたか?
創業来初めての大きな変化だったのでまずはこれまでTACTIVEを支えてくれたメンバーのケアをしつつ、早く組織として再始動するために全力を尽くしました。佐藤さんとの引継ぎ期間もあったため、想定よりは早く切り替えることができたと思います。
引継ぎが落ち着いた頃から徐々に経営を含めた企画会議や意思決定の場にも現場メンバーを抜擢し、積極的に巻き込んでいきました。
自分は店舗に立った経験がないので、店舗で直にお客様に向き合ってきたからこそ見える現場メンバーの視点は自分にはない大きな強みであり、TACTIVEを前進させる大きな推進力になると思ったからです。
あっという間の半年でしたが、今では各事業を引っ張っていくマネージャーや責任者がすごいスピードで育ってきたという実感が強くあるので「思い切って任せてよかった」と実感しています。
コロナウィルスの騒動では日々不確実で難しい判断に迫られ、各所の対応に追われた時期もありましたが本当に一丸となって「みんなで乗り越えた」という新しい自信も生まれました。今はコロナを前提とした事業作りの意識も根づいたので、ようやく攻めの姿勢に入れると思っています。
また新しい試みとしては最近、私自身も店舗にも定期的に足を運ぶようにしています。現場をみたりスタッフと直に話すことによって新しいヒントや、これまで見えていなかった課題が見つかることも多々あって現場から情報を得る重要性をひしひしと感じています。
今後もこれまで以上にメンバーに裁量を渡して事業を一緒に引っ張っていく経験を積んで欲しいと思いますし、改めてこれからは佐藤さんの「想い」を引継ぎつつも、自分を含めた今のメンバーだからこそ作れる新しいTACTIVEの魅力と卓球業界の価値を高めていきたいと思います。
最後にタクティブの目標と魅力を教えてさい
どこでもTACTIVEがあり、卓球ができる。
まずは日本全国で卓球を始めていなかった人も卓球を好きになれる場所をもっと増やしたいです。他スポーツに比べると市場もまだまだ規模が小さいので、業界全体を大きくするような形で卓球への恩返しができるようまずは場所を増やしていきたいなと。
また卓球の雇用の場も増やしていきたいです。卓球をやっていた人はすごい、という証明がしたい。これは佐藤さんと二人三脚で駆け抜けていた頃から話していたことで、いまだにブレない軸です。
コーチとしてはもちろん、ビジネスパーソンとしてお客様に価値提供できる人材になれるような機会を提供し、選手を引退しても肩身の狭い思いをせず社会の中でもっともっと活躍して欲しい。
もちろんまだまだ課題は山積みですが、まずはTACTIVEで働いているメンバーが胸を張れ自分のキャリアの中でも印象に残るような経験が積める、そんな場所にしたいです。
今はTACTIVEの第二創業期、新しいメンバーと共に新しい挑戦を続けていきたいです。