CLUEはドローンを活用した法人向けソフトウェアを提供している会社です。「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する」をミッションに掲げ、顧客が抱えるイシューを出発点とし、徹底した分析と議論で顧客の課題解決というゴールを目指します。
本日は代表の阿部に、CLUEを設立した経緯や今日までのCLUEの成長について、社員を代表して人事部の斧田から質問します。
1.CLUE設立に至るまで
宇宙に憧れていた少年が起業家を目指した理由とは
人事部 斧田(以降、斧田):本日はよろしくお願いします。ではまず、阿部さんは学生時代、航空宇宙工学が専門とお聞きしましたが、その頃からドローンの会社を起こそうと思っていたのですか?
CEO阿部(以降、阿部):ドローンで起業しようと明確に描いていたわけではありませんが、日本発で航空産業を盛り上げたいという思いはありました。
幼少期からずっと飛行機やロケットなどに興味を持ち続け、当時は航空系の研究者を目指していたので大学の学部時代は工学部の中の航空宇宙工学科に所属し、JAXAと共同研究する研究室に所属していました。憧れていたJAXAの研究者の方々といろいろな話をする中で、「国の予算ではできることに限界がある」という話を聞くことがあり、国家予算で航空産業を盛り上げるのはなかなか難しいのではと感じました。そこで、民間の立場でサステイナブルなビジネスモデルを構築して将来的に航空産業を盛り上げることができればと考え、大学院の進学先としては工学部の中で経営学を学べる専攻と、工学全体を学べるシステム工学の2つの専攻をダブルメジャーしました。
阿部:大学院時代は経営のフレームワークや様々な企業のケーススタディなどを学んでいく中で、机上の理論だけではなく、将来起業をするなら事業のゼロイチや急激な成長フェーズを経験しておいた方がよいと考え、そのようなPDCAをどこよりも早く回しているのはIT系企業だろうと考え、新卒でディー・エヌ・エーに入社して、エンジニアとしてWebアプリケーションの開発運用を経験しました。
その後、若いうちに海外での事業経験を積みたいと思っていたので、シンガポールで現地スタートアップに入社して、プロダクトマネージャー兼アプリ開発エンジニアとして働いていました。当時、ベトナムのハノイに駐在する機会もいただき、オフショア開発のエンジニア部隊のマネジメントをしていたのですが、自分と同じ年齢くらいの現地のエンジニアたちが毎日とても幸せそうに働いていました。話を聞いてみると、「自分たちは家族や友達を含めていまは貧乏だけど、将来は経済的に豊かになれるから家族や友達も豊かになれる。だから今も楽しく働けるんだ」と口々に話していることに衝撃を受けました。東南アジアの若者と日本の若者の状況を比較したときに、自国のマクロ経済の成長率と国民の幸福度は正の相関関係があることを感じ、あらためて自分は日本のために貢献していきたいと考えるようになりました。CLUEの設立理念の一つに「恒久的に日本の経済発展に貢献し、文化向上に寄与する」という理念を掲げているのですが、将来的に日本経済にしっかり貢献できるような偉大な会社にしていきたいという思いはこういった原体験からきています。
ドローン事業を立ち上げるまで
斧田:最初に起業したのはドローンではなく、EC系の事業だったんですよね?後に売却されましたが、最初からドローン事業に挑戦されなかったのはなぜですか?
阿部:CLUEを設立した2014年当時は、資金調達がいまよりもずっと難しい状況で、最初から航空産業の軸で事業を作るのは資金面で難しいと判断したからです。当時、女性向けキュレーションメディアが30億円で売却されたというニュースが話題になりましたが、私たちもまずは事業成長率が高いコンシューマー向けのサービスを立ち上げ、それを3〜4年で大きくして数十億円規模の事業売却をし、その資金をもとにして航空系の事業を作ろうと考えました。
斧田:それで女性向けのEC系の事業を立ち上げたんですね。
阿部:急成長が期待できるコンシューマー向けサービスということで、日本にはなく、アメリカで成長している事業の国内版のタイムマシン経営で一気にグロースさせる計画をしていました。
先行している事業なのでアメリカのテック系メディアなどでKPIの一部も開示されているケースもあり、ベンチマークとして経営しやすいと考えました。いろいろな軸でアメリカで急成長している産業やプロダクトを検証しましたが、最終的には諦めずにしっかりと続けられる領域が良いと考え、私と共同創業者の共通の趣味がファッション領域だったので、アメリカのファッションレンタルサービス「Rent the Runway」や「Le Tote(ル・トート)」などを参考に事業プランを検討し、2014年12月に「Lovin'Box」というアクセサリー使い放題のサービスをリリースしました。女性向けに月額数千円でアクセサリーが使い放題、かつ、気に入ったら買えるというサービスで、初動がとても良く、リリース直後にテレビ東京のWBSから取材を受けました。
事業としては順調でしたが、自己資金では在庫が補えないくらいユーザーが増えたため、このタイミングでシードラウンドの資金調達を開始しました。
斧田:サービスのリリースから3ヶ月で資金調達を考えるほど、急激に大きくなったのですね。メディアにも取り上げられるほど急激に拡大していたEC事業をすぐに手放したのはなぜですか?ずいぶん悩まれたのではないでしょうか?
阿部:EC事業を手放す意思決定はほとんど迷いませんでした。資金調達のためにお会いしたベンチャーキャピタルの中からLovin’Boxに対する投資として既に数社が出資を決定してくださっていました。ところが、最後にお会いしたアンリさん*から、「M&Aや事業売却で小さいヒットを狙うんじゃなくて、これから成長する市場で大きいホームランを狙うほうが阿部さんには絶対向いている。君が世界規模のゲームに全力で挑戦するのであれば、ぜひ出資したい」と言われました。
アンリさんのその言葉で、自分の視座がすごく開けたように思えました。最初から大きなホームランを狙う打席に立って良いんだと。当時自分は27歳。20代半ばの猛烈に働ける時期にはヒットじゃなくて、ホームランを狙いにいくべきだと気付かされました。その後、事業転換を決めて「Lovin'Box」はairCloset様に事業譲渡しました。
*佐俣 アンリ(ANRI株式会社代表取締役)
2012年ベンチャーキャピタルANRIを設立。主にインターネット及びディープテック領域をメインに投資支援している。シードファンドとして日本最大となる350億円規模のファンドを運営中。(2022年1月時点)
著書「僕は君の「熱」に投資しよう」(ダイヤモンド社)には、阿部との出会いから阿部に事業転換を促した経緯について書かれている。
斧田:アンリさんに出会ったことで阿部さんが描いていた航空産業の事業の立ち上げが、こんなにも早く実現することになったのですね。
阿部:「今後、非常に大きくなる市場で事業をゼロから創ろう」ということを心に決めて、新しく挑戦するフィールドを探し始めました。もともとやりたかった航空産業の軸で、いろいろな航空関連のテクノロジーや市場、事業を検証した結果、2015年当時に北米やヨーロッパを中心に徐々に産業利用がスタートしていたドローン市場に行き着きました。ドローンのハードウェアが成熟しはじめ、安価なドローンも安定して飛行できるようになったのがその時期でした。ドローンはスマートフォンに使われる部品が多いことから「空飛ぶスマホ」と呼ばれることもありますが、3次元空間のデータを短時間で大量に取得できるテクノロジーです。
当時の私が「ドローンは将来様々な産業で社会実装されるのは間違いない」と感じたのは、2007年にiPhoneが世に出て様々な用途のアプリケーションの普及とともに世の中に浸透したように、2015年当時のドローンにも同じ可能性を感じたからでした。
当時の日本国内は、ドローン関連のスタートアップやドローンを取り扱う事業者はほとんどいない状況でしたが、今後確実に社会実装が進むテクノロジーであり、間違いなく世界規模の挑戦になると確信できたため、ドローン市場で事業を再スタートすることにしました。
CLUEが目指すもの
斧田:CLUEという社名にはどのような意味が込められているのですか?
阿部:CLUEという単語には「課題解決のきっかけ」という意味があります。現在はドローンを中心としたプロダクトを展開していますが、将来的にはドローン以外のテクノロジーも活用しながら「課題解決のきっかけを生み出し続ける会社でありたい」という意味が込められた社名となっています。
またCLUEのロゴは、丸い点一つ一つがテクノロジーを表し、それが線で結ばれて球の形を成しています。これは「世の中にある様々なテクノロジーを有機結合させて、社会の不を解決するソリューションを生み出し続ける会社でいたい」という想いを表現しています。
2.CLUEのドローン事業
斧田:CLUEが展開しているドローン事業について聞かせてください。
阿部:私たちは、日本国内のドローン企業で唯一SaaSモデルで事業展開をしています。カスタマーサクセスを重視しており、お客様が抱えるイシューを正しく捉え、顧客ごとに異なる経営課題の解決に向けて、パートナー企業として併走する姿勢を大切にしています。
このような姿勢が国内外から評価され、アジア太平洋地域向けIT情報誌『APAC CIOoutlook』(2020年8月10日号)にて、「ドローンサービス企業グローバルランキングTOP10」の1社に選出いただきました。ドローン事業を展開する企業が殆どいなかった2015年からドローン事業を開始した業界の先駆者であり、将来的に飛躍的に大きくなるドローン産業の中で、ドローンソフトウェア企業としての世界的な地位を確立しています。
3回の事業転換。これまでの会社の歩み
斧田:現在の主力製品であるDroneRooferにたどり着くまで、ドローン事業の中でもいくつか事業転換していると聞きました。これまでの会社の歴史を教えてください。
阿部:ドローン事業に切り替えて一番最初に始めたのはDRONE BORGというドローン専用のメディアです。2015年当時は北米やヨーロッパではドローンのスタートアップが既に存在し、ドローンを使った測量や点検といったサービスや、ドローンで得たデータを解析するソフトウェア製品が登場していたため、先行しているそれらのビジネスモデルやプロダクトの研究をする目的でメディアを始めました。
この時期は半年ほどはオフィスに籠もり、メディアを通じて海外のドローンスタートアップの情報収集と発信を繰り返していました。
ドローン専用メディア「DRONE BORG」
その結果、大企業内で新規事業としてドローン事業を立ち上げたいという担当者の方からの会社へのお問い合わせが増えたため、定期的にドローンビジネスの勉強会を開催していました。毎回2時間ほど、私から最新のドローンビジネスについて発表をさせていただいていたため、大企業の方とのネットワークが数多く作られた時期になります。このときの御縁が弊社のその後の研究開発などにも繋がるものになりました。
ドローンビジネス勉強会に登壇する代表の阿部
DroneRoofer事業に至るまでには2015年から3回のピボットをしています。最初の事業はDroneCloudというドローンの業務利用のためのデータを一元管理できるクラウドサービスです。2015年11月にリリースしましたが、当時はターゲットであるドローン事業者が日本に数が少ないことから最初から英語版も実装してリリースしました。1年ほどで20ヶ国以上で使われるプロダクトになりましたが、世界的に見てもドローン事業者の数はまだまだ少なかったことから期待される成長率を担保できずに残念ながらクローズする判断をしました。
2015年に初めてのオフィスのシャレー渋谷に移転しDroneCloudの開発を行う( 参考:シャレー渋谷というスタートアップの聖地みたいなマンションについて )
ドローン用データ管理クラウドサービス「DroneCloud」
次の事業はNTTドコモ様、NTTデータ様と共同で、携帯電話に使われる4G/LTE回線でドローンを遠隔操作するためのAeroBaseというドローンに外部接続するハードウェア開発と機体の遠隔操作やデータ処理を行うクラウドサービスを開発していました。
日本では当時は電波法という法律の中で、空中の物体(ドローンなど)が携帯回線を使ってはいけないという法律がありましたが、将来的にドローンが普及した際に遠隔地からドローンを操作する際は通信インフラとなっている4G/LTE、5Gなどの携帯回線を使うことが見込まれていたため、NTTドコモ様にご協力をいただきながら実証実験やプロダクトの開発を進めていました。
当時は総務省の担当者とも協議をしながら電波法の法改正に向けた取り組みもしていたのですが、想定していたよりも法改正に時間がかかってしまい、事業の収益化までかなりの時間がかかってしまう可能性が高まったため、撤退する判断をしました。現在はNTTドコモ様がドローン用のLTEプラン(参考:LTE上空利用プラン)を提供開始するなど、この事業領域も進展しています。
茨城県で飛行実験を行うことが多かったことから2016年に浅草に移転。AeroBaseやクラウドサービスの開発を行う
ドローンを4G/LTE回線で遠隔操作するための制御外付けハードウェア「AeroBase」
複数台のドローンの遠隔操作やデータ処理・加工を行うクラウドサービス
複数台のドローンをクラウドサービス上の機能で同時に遠隔操作している様子
2つ目の事業と同時並行で進めていた3つ目の事業が、アフリカのガーナでのドローン遠隔操作システムを利用した広範囲な道路点検事業です。アフリカ各国の道路は陥没が多く発生しているため、定期的に道路の舗装状況の確認や補修が必要となります。
ガーナの政府機関GHA(Ghana Highways Authority)と共にガーナ国内の14,000kmの道路点検をドローンで自動化するという取り組みで、ドローンを用いて上空から道路を数キロメートル単位で撮影し、欠損箇所の位置情報を正確に把握するものです。当時ガーナ国内も携帯電話の3G回線はどこでも使える環境だったため、先程お話したAeroBaseとドローンの遠隔操作クラウドサービスを実用化して事業化を目指していました。
日本と違い、アフリカ各国はドローンに関する規制がない国が多く、電波法のようなドローンで携帯回線を使ってはいけない法律もなかったため、アフリカで実用化してプロダクトを磨き、日本の電波法が改正されたタイミングで事業を逆輸入する計画でした。
特に今回のガーナの道路点検は非常に広範囲の飛行を必要とするものでプロダクトとの相性が良く、事業化できればアフリカの他の国でも同じような道路の陥没が多発していたため、他国に横展開できる可能性を秘めていた事業でした。GHAとMOUを結んで事業化を進めていましたが、GHAが政府からの予算確保が難航し、アフリカ事業は2年以上の期間活動していましたが最終的には撤退する判断となりました。
アフリカでは道路上に大きな陥没が無数に存在しているため、渋滞や交通事故の原因に
ガーナ政府機関GHAと実施したドローンによる道路点検の結果
2017年に人員拡大に伴い南青山にオフィス移転
2020年に人員拡大に伴い現在の御殿山オフィスに移転
ドローンによる屋根外装点検をワンタップで実現する「DroneRoofer」
斧田:弊社のDroneRooferは、ドローンによる屋根外装点検をワンタップで実現したソフトウェアです。分かりやすいUIで女性や高齢の作業者にも操作しやすいと高評価をいただいています。このDroneRoofer事業を始めたきっかけはなんですか?
DroneRooferの開発は2017年2月に、ある屋根材卸の経営者の方からメールをいただいたことがきっかけでした。「屋根事業者は高齢化が進み、職人が急速に減っている。屋根点検は滑落なども多く、死亡や骨折につながる危険がある。リフォーム需要は伸びているのに供給できる労働力が減っていて、このままでは業界が崩壊してしまう。ドローンを活用してこれらの課題を解決できないか」という問い合わせをいただきました。
ドローンを用いた屋根点検は北米で利用が進んできました。ハリケーンのあとに保険会社が住宅の損害状況を確認するために利用しており、日本での展開を考えた場合にリフォーム事業者数も十分にあり、屋根からの転落事故などの課題も多く、住宅の屋根をドローンで点検する付加価値は日本でも十分に受け入れられると考えました。
その後、リフォーム事業者や屋根工事業者の方たちにヒアリングを重ね、初心者でも簡単に操縦できるドローンアプリを2017年10月にリリースしました。
リリース当時は日本国内で住宅の屋根や外壁をドローンで点検する事業者はおらず、ゼロから市場を啓蒙していく必要があり、業界新聞に出稿したり各地方ごとのリフォーム会社の代表様が集まる勉強会に登壇させていただくなど地道に市場を開拓してきました。
斧田:このシンプルな操作性は、ユーザーの使いやすさを具体的に想定したUIUXから生まれたものなんですね。私にも簡単に操作できました。リリース後、実際にお使いのユーザーさんからどのような反響がありましたか?
阿部:営業スタイルが大きく変わったとおっしゃるお客様が多いですね。これまでは、作業服にヘルメットをかぶって、狭いところや高いところといった危険なところで人の手で点検していたのが、DroneRooferを導入してからは、現地調査にスーツで伺い、ミニクーパーのトランクにDroneRooferの一式だけを積んでスーツで現地調査に行く、そんなお客様もいらっしゃるほどです。
その場で施主様と一緒に家の屋根の映像を見ながら臨場感をもって営業ができるため、工事の必要性をご納得いただき、施主様との信頼関係の構築に繋がります。その結果、リフォーム工事の受注率がアップし、売上が伸びたというお客様が多いです。
また、屋根に登るような危険な高所作業がなくなるため女性や高齢者、さらに経験が豊富ではない方でも点検可能になったと、喜んでくださるユーザーさんがとても多いです。
所用時間は5分!ドローンで「足場不要の屋根調査」が実現し、ミニクーパーで訪問する営業スタイルに
使いやすいUIを追求するDroneRoofer
ドローンによる工事現場の施工管理を実現「ドローン施工管理くん」
斧田:CLUEが提供するもう1つの事業であるドローン施工管理くんについても聞かせてください。こちらの開発のきっかけは海外事業だったと聞きましたが、詳しく教えていただけますか?
阿部:ドローン施工管理くんの開発のきっかけは、弊社がガーナで事業を進めていた際に清水建設様のガーナ支社の担当者様から、ガーナにおける立体交差点を作る案件を受注された際に、その工事現場を上空から工事の進捗管理をすることにドローンが使えないだろうか?という相談を受けたことにはじまります。
日本の本社からガーナの現地工事の進捗管理を行う際にドローンによる俯瞰図を利用すると、図面通りに工事が進んでいるか、また工期の遅れなどもすぐに本社側でも判断できます。現地のガーナ人の作業員の方が簡単な操作で使えるよう、英語版のアプリにし、シンプルなUIに実装して提供しました。
ガーナの立体校交差点をドローンで撮影し、施工管理をしている様子
実際にガーナの作業員の方に使っていただいたのですが、かなりの頻度でお使いいただけました。
ドローンを工事現場の進捗管理に利用する需要について、その後、日本国内のスーパーゼネコンの現場監督の方やICT推進部門の方たちと議論を重ね、現場の課題を深堀りさせていただきながら施工管理向けの機能開発を行い、「ドローン施工管理くん」を2019年にリリースしました。
斧田:お客様のイシューを出発点として、そこから事業展開されたのですね。国内展開するにあたり、海外のドローン活用事例は参考にされたのですか?
阿部:弊社で新規事業を立ち上げる観点で最も大切にしているのは「お客様のイシューを解決できるかどうか」です。そのため、プロダクト開発の際はお客様の声を丁寧にヒアリングを重ねて開発を進めていきます。
同時にTAM(市場規模)の大きさや海外での先行事例も検証します。2015年ころから北米を中心に建設現場でのドローン活用が進んでおり、建築領域におけるドローンの活用は非常にTAMも大きい領域の事業になります。また、先行している海外のプロダクトも順調に成長しており、国内外で十分に成長が見込めると判断しました。
「ドローン施工管理くん」は、いまではスーパーゼネコンさんをはじめ、多くの事業者さまにお使いいただき、国内で順調に成長しています。
DroneRooferとドローン施工管理くんを使ったドローン総飛行回数
DroneRooferとドローン施工管理くんを使ったドローンで撮影された写真枚数
3.CLUEのビジネスモデル
顧客の課題解決に向けて並走するDXパートナー
斧田:CLUEは日本国内のドローン業界において唯一のSaaSモデルで事業展開しています。SaaSモデルを選んだのはどうしてでしょうか?
阿部:SaaS(Software as a Service)はソフトウェアそのものを売るのではなく、お客様が抱えている業務課題の解決に踏み込んで支援する「サービス」を提供するものです。
私たちのビジョンである「ドローンが当たり前に飛び交う社会」を実現するためには、日々お使いいただく現場の職人さんや作業員の方が安心して日常業務にドローンを使えるように日頃の細かいサポートが不可欠です。そのため、弊社ではカスタマーサクセスチームがお客様ごとの業務課題を定義し、成果が出るまで併走し、日々のサポートをさせていただいています。日々のサービスの対価として月額料金をいただくSaaSモデルが弊社のビジョンの実現に合ったビジネスモデルです。
テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する
斧田:ドローン事業を含めた今後の事業展開について、阿部さんの考えを聞かせてください。
阿部:DroneRooferは全国47都道府県全てに導入実績があり、SMBからエンタープライズまで幅広いお客様にご利用いただいています。
DroneRoofer単独事業としてはリフォーム業界向けのVertical SaaSのため、業界の課題を整理しながら関連事業の構築を進めています。
2021年10月にはDroneRooferと連携する、リフォーム業界向けのSFA、CRMの役割を果たすクラウドサービス「RooferCloud」をリリースしました。DroneRoofer事業については今後も関連事業を立ち上げていく予定で、現在のVertical SaaSから、リフォーム業界におけるスティッキーなプラットフォームへと成長させていきたいと考えています。
ドローン施工管理くんはスーパーゼネコンさんを中心に全国の建設現場でご利用いただいており、こちらも順調に事業成長しています。ドローン事業については既存事業以外の領域に対しても新規事業を立ち上げていく方針です。
一方で、中長期的な事業展開としてはドローン以外の先端テクノロジーの社会実装にもチャレンジしていきたいと考えています。私たちのミッションは「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する」というもので、あえてドローンという言葉を使っていません。これは将来的にドローン以外のテクノロジーも私たちの製品群に取り込んで行きたいと考えているからです。具体的には上空からはドローンで、地上からはロボティクスやIoTデバイスから大量の物理世界の情報を取り込み、AIによって業務効率化をはかる製品を展開していきたいと考えています。こういったテクノロジーは私たちのお客様である建設業界のようなレガシーな巨大産業においてDXを大幅に促進する可能性を秘めています。
物理的に動くハードウェアが絡むプロダクトは開発難易度が非常に高いことから参入障壁も高い事業となります。ロボティクスやIoTデバイスとの連携は、ドローンのようなハードウェアと連携するソフトウェア開発力に強みを持つ私たちだからこそ取り組める大きな挑戦になると考えています。
斧田:「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決していく」というCLUEのミッションに込められた想いを教えてください。
阿部:このミッションは弊社の設立理念でもあり、中長期的な事業展開の指針として大切にしていきたいと考えています。CLUEという会社は新しいテクノロジーが世の中に普及するためのプロダクトを作り、新しい市場のパイを生み出し成長させる触媒のような存在でありたいと考えています。
そういったミッションを実現するためにも、お客様のイシューに寄り添い、お客様の「不」を本当に解決できる会社であり続けたいと思っています。
斧田:お話を伺って、CLUEが設立された経緯や阿部さんがCLUEを今後どのような会社にしていきたいのか、とてもよくわかりました。ドローンが当たり前に飛び交う社会を目指して今の事業を進めていくとともに、世の中の不を解決する存在であり続けられるよう、私たちもがんばります。本日はありがとうございました。