「Career Interview」とは、The Chain Museum(以下 TCM)がこれまで手掛けた各プロジェクトの推進メンバーにフォーカスを当て、それがカタチになるまでにどの様に進められてきたのかを、特定の職種/ポジションの視点から発信していく企画です。
今回取り上げるのは、奥能登国際芸術祭実行委員会 様が主催する「奥能登国際芸術祭2023」(以下 「奥能登国際芸術祭」)で楽しめる「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」の開発・デザインプロジェクト。
前編では、「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」の着想の背景や、その提案を推し進めるにあたりクライアントとどの様なコミュニケーションの工夫を行ってきたかについて、案件をリードしたプロジェクトマネージャーの平富、開発チームプロジェクトマネージャーの阿久津、デザイナーの佐藤の3者のクロストーク形式でお届けします。
※「奥能登国際芸術祭2023」は、2023年9月23日(土)‐ 11月12日(日)の間で開催!ArtStickerの特設ページにて、詳しくご案内しておりますので詳細はこちらをご覧ください。
※後編の記事はこちらからご覧いただけます。
──まずはじめに、自己紹介をお願いできますか?
(※上記写真の左から順に平富、阿久津、佐藤)
平富:Business Relationというチームで、アートコラボレーター(ギャラリーや美術館、芸術祭・アートフェアを運営するアート関係者など)向けの営業やプロジェクトマネジメントを担当しています。
具体的には、ArtSticker上で展覧会やアーティストの作品をPRしたいといった問合せを受ける窓口となり、クライアントと関係構築を行いながら、ArtStickerの認知・売上拡大に貢献するための最適な提案を行うことが主な役割です。受注に至った際は、ArtSticker上での特設ページの公開・管理など、コンテンツマネジメントのリーダーとしての役割も担っています。
阿久津:開発チームの中で、プロジェクトマネージャーを務めています。
2週間単位で回しているスプリント計画がスケジュール通りに進むように、テックリードと開発チームをマネジメントしています。
ArtStickerの機能開発における上流工程のプロセスも幅広く担当しています。
佐藤:ArtStickerのUIデザインや、付随する様々なプロジェクトのコミュニケーションデザイン、ブランディング、コーポレートの領域を、事業横断する形で担当しています。
ArtStickerは主にデジタル上のデザインですが、リアルのデザインとして「アートかビーフンか白厨」(六本木)や、「上野下スタジオ」(上野)、「Gallery ROOM・A」(浅草)など、実際の作品を鑑賞できる場所作りにもデザイナーとして参加し、リアルとデジタルの相互関係により、単に作品鑑賞するだけにとどまらない体験や価値を創出することを目指しています。
▼「奥能登国際芸術祭2023」イメージ画像
奥能登国際芸術祭出展作品
塩田千春〈日本/ドイツ〉
時を運ぶ船
©JASPAR, Tokyo, 2023 and Chiharu Shiota
Photo:Kichiro Okamura
訪日外国人向け音声ガイド機能をきっかけに、1つのプラットフォーム上で様々なコンテンツが楽しめるArtStickerの強みに興味を持っていただいた
──今回のプロジェクトが始まったきっかけは?
平富:直接のきっかけは株主である凸版印刷様のご紹介が始まりでした。
「奥能登国際芸術祭」の様なトリエンナーレ(3年に1回開かれる展覧会)だと、旅行も兼ねて外国人の方が多くいらっしゃるんです。担当の方は、外国人対応向けも考慮して、多言語で作品解説が聴ける音声ガイドデータを今年は用意したいと考えていたそうで。
ArtStickerの存在を知った時に、音声ガイドをPRできるだけでなく、デジタルスタンプラリーやオンラインチケットの販売など、様々なコンテンツを一つのプラットフォーム上でアートラバーに訴求できる点に興味を持ってくださったことをきっかけにコラボレーションが決まりました。
新たな機能開発のきっかけは「スタンプラリーで入場管理したい」というクライアントの声からの学び
──どの様な経緯で「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」の提案に至ったのですか?
平富:オンラインチケット機能の仕様についてヒアリングするMTGの中で担当者様から投げかけられた課題感が、大きな発見の始まりでした。
それは、「オンラインチケットを導入するとして、スタンプラリーでどうやって入場管理ができるんですか?」という質問。
経緯を詳しくお伺いすると、「奥能登国際芸術祭」の常設展示作品の鑑賞は、鑑賞パスポート(チケット)で1作品1回のみと決まっているため、スタンプラリーが入場管理の役割を果たしているということが明らかになりました。
阿久津:これを実現するには、必然的に「チケットを購入している人のみがスタンプラリーが行える」仕様にする必要があり。それであれば「デジタルスタンプラリー付きチケット機能として販売しませんか」という話になったんです。
▼デジタルスタンプラリー付きチケット機能のイメージ
リアルなアートの体験価値をデジタル上でどうつくるか?に対するソリューションとしての「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」
──全く新しい角度からの相談でしたよね。この要望を聞きながら、プロジェクトチーム内としてはどんな気づきがあったんですか?
佐藤:新しさを感じました。
社内では「チケット機能」と「スタンプラリー機能」は”全く別の機能”として提供していたんです。その2つが実はつながりをもった機能であるということに、ハッとしました。
阿久津:後でリサーチしたところ、スタンプラリーを企画しているイベント主催者の間では、紙チケットの販売時に入場管理として活用するケースってそれなりに浸透してるみたいなんですよね。
私たちは、リアルなアートの体験価値をデジタル上でどうつくるか?という点も意識しながらソリューションの提案を行っているので、こういったクライアントの新鮮な声は本当に貴重ですし、なによりの学びだと感じます。
クライアントが一歩・二歩先で抱えるであろう課題を想像しながら、先回りした提案を
──全体を通して、クライアントとのコミュニケーションで大事にしたことは?
平富:アートイベント主催者の方と日頃やりとりをしていて感じるのは、私たちの想像を遥かに超えるレベルで、会期準備に向けて多忙であるということ。
そんな状況の中で、私たちがクライアントに対して果たすべき役割は、会期に向けて効果的な企画・集客を行うことと、来場者にイベントを最大限楽しんでいただける新しい体験価値を提案すること。
「後でこういったご相談も受けるかもしれない...」など、クライアントが一歩・二歩先で抱えるであろう課題を想像しながら、先回りした提案をすることがなにより大事だと考えています。
阿久津:TCMが手掛けるプロジェクトの特徴はクライアントワークであっても自分達の意思が必要な点なんです。
クライアント向けに"テイラーメイド"で作るプロジェクトという色を守りつつも。私たちはArtStickerというプラットフォームを運営している立場でもある。そのため、難易度の高い要望に対して「できる/できない」「やるべき/やるべきでない」という判断が求められます。
そういった舵取りを行う上でクライアントとの最初の関係構築は鍵となります。
平富さん筆頭にビジネスサイドのチームが課題確認や合意形成をしっかりリードしてくださっているので、開発チームの中での話し合いが非常にしやすく。スムーズで生産的なコミュニケーションができているなと日々感じています。
佐藤:まさに、Valueの一つである「Be proactive」を感じています。ビジネスサイドのメンバーがその姿勢でいてくれるからこそ、両サイドのチームが一丸となってクライアント起点の理想のソリューションの提供と、ArtStickerらしさの両立を追い求めることができているのだなと。
※「Value」とは、The Chain Museumのミッションである「気付きのトリガーを、芸術にも生活にも。」を実現するために掲げている行動指針です。3つのValueのうちの1つが「Be proactive」です
平富:....と沢山褒めていただいてますが、私も開発チームに日頃から助けていただいてます。
実は現職が私にとって、プロダクトデザイナーやエンジニアの方々などアプリ開発に携わる方と働く初めての経験なんです。当初は右も左も分からない用語ばかりだったのですが、何を聞いても私が分かる言葉でサポートしていただけるので、デジタル領域の知識がここに来て格段に上がりました。
私は「クライアントに分かりやすく情報を伝達することが求められる立場」なので、社内で分からないことはすぐに聞くべきという気持ちで仕事をしています。そんな中で、聞きやすい空気・分かりやすい言葉でコミュニケーションを取ってくださる開発チームの温かさには本当に感謝しています。
エンジニアが正社員として在籍するアートの事業会社というのはなかなか無いと思うので、これはTCMという組織の大きな強みでもあると思います。
アートに携わる方にとって、開発チームとコラボレーションしながら仕事ができるのは、なかなか貴重な経験ではないでしょうか。そういった面でも、日々新鮮な気持ちでプロジェクトに向き合うことができています。
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