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カンボジアで遠隔リハに向き合って

はじめまして!2023年の2月下旬から3月下旬にかけての約1ヶ月、Sunrise Japan Hospital Phnom Penhでインターンをさせていただいた、平山優花と申します。

インターンに応募した理由

現在、関東圏の大学に通い心理学を学んでいます。

これまでの学業や課外活動を通じて、将来、日本だけでなく様々な社会状況にある国や地域における医療・保健分野の課題解決に貢献できる仕事ができる人になりたいと思うようになりました。これまで学んできた心理学の視点に加えて、公衆衛生学や疫学などの知見を活用し、精神保健分野の課題に向き合いたいと考えています。

以前取り組んでいたプロジェクトを通じて、1つのプロダクトやサービス単体で事業を展開していくことで、医療が届いていなかった人に適切な医療を届けるアプローチに加えて、その国や地域に腰を据えて留まり、地域づくりの視点を持って継続的に医療を提供していく病院の仕組みや在り方に興味を持つようになりました。現地の医療機関から見える視点を学んでみたいと思い、学びの機会を探すなかでサンライズ病院のDX部門がインターンを募集していることを知り、インターンへの参加を決めました。


今回のインターンで取り組んだプロジェクト

渡航前にオンラインで面談をしていただき、病院が今抱えている課題と自分の関心領域の重なる部分が何かをDX部門長の吉見さんと一緒に考えていきました。

そして、遠隔リハビリテーションの利用者数を増やしたいという病院のニーズと病院以外の場での治療やセルフケアを継続の支援という自分の関心が重なり、このインターンでの自分の1つのミッションとして、退院後の患者さんの遠隔リハビリテーションの普及・定着に取り組むことを決めました。


現状

サンライズ病院では、2年程前に遠隔リハビリテーションの導入の検証を行ったものの、現在は遠隔リハビリテーションの利用率は0の状況でした。


渡航前に取り組んだこと

現地の理学療法士の方にヒアリングをさせていただいたり、以前遠隔リハビリテーションを利用されていた患者さんの人口データを見させていただいたりしながら、当時遠隔リハビリテーションが患者さんに受け入れられなかった要因や、患者さんが遠隔リハを継続することに対してどのような点を懸念しているか、インターン期間のなかで、遠隔リハビリテーションの導入・普及を前に進めるために何ができるかを考えていきました。

そのような過程を経て、渡航前にはカンボジアの在宅リハビリテーションの継続を阻害している要因として、「在宅で周囲に自分と同じようにリハビリをしている人がいないことによるモチベーションの低下」、「オンラインツールに慣れていない状態で退院してしまうことによる、オンラインツールは使いづらいというイメージの定着」、「退院後の回復期リハビリにおける、患者さんにとってのリハビリの効果の実感のしにくさ」の3つが最も大きく、かつより少ないコストで介入可能な要因なのではないかと考え、「入院中に遠隔リハビリテーションを実際にやってみるワークショップの実施」と「地域コミュニティにおける、同じ症状を持ちながらリハビリに取り組んでいる患者さん同士が支え合えるコミュニティの創出を目的とした定期的なラジオ体操の場づくり」、「アプリケーションを通じた患者さんの身体機能・認知機能の改善の可視化」の3点の施策を提案し、渡航に移りました。


渡航後に取り組んだこと

渡航後最初の1週間は、リハビリテーション科で働く理学療法士の方の業務に同行させていただき日常の業務で課題に感じていることをヒアリングさせていただいたいり、患者さんのご家族にヒアリングをさせていただきながら現状の把握を行い、渡航前に考えていた仮説の妥当性を検討したり、施策の実現可能性の検討を行いました。


その結果、遠隔リハを利用している患者さんがいない状況で施策を行うにはまず、退院後に遠隔リハを使い始めた患者さんのリハビリの継続やモチベーションの維持に焦点を当てるのではなく、遠隔リハを利用していない患者さんのニーズをより解像度高く知る必要があること、また、2年前の実証事業の結果や現地の理学療法士の方のヒアリングから、サンライズ病院の患者層にとって退院後のサポートの有無やその種類を検討するうえでは経済的要因が最も大きい要因になっているのではないかという結論に辿りつき、渡航前に考えていた施策は一旦保留とし、現在遠隔リハを利用していない患者さんのニーズ、そのニーズに対し遠隔リハが提供できる価値の把握、価格パッケージの検証に取り組むことにしました。

そのなかでも特に、価格パッケージの検証に当初とても行き詰まりました。どのような価格であれば、またどのようなパッケージであれば「お金を払ってリハビリを受ける」という行為が受け入れられるのか。

考えるだけでは分からず、また価格の変更を現地のスタッフと議論するためにも客観的な一次データが必要というアドバイスをいただき、いくつかの質問項目を決め、外来リハビリに通院していただいている患者さんやその家族に待合室でインタビューを行いました。


実際に複数のインタビューを重ねていくなかで、「病院に来るのに3時間以上かかるから、本当はもっと来たいけどたまにしか来れない」という声や、「理学療法士の方に実際に身体に触れて力の入り具合や可動域を確認してもらうことに意味があると思っているから、遠隔リハには興味がない」、「直接会って話したい」「オンラインツールを使うのは慣れないし、心地よくない」など様々な声を聞くことができました。

価格についての質問に答えていただくことは難しく、当初の目的に沿った回答は得られなかったのですが、退院後の生活への不安や、生活している中で困っていることなど、家族・患者双方の視点からの様々なニーズを知ることができました。


インタビュー結果の集計を見ながらリハビリテーション部門のスタッフの方々と話し合うなかで、遠隔リハの対象を「自宅がサンライズ病院から離れた地域にあり、退院後に地理的な要因によって外来でのリハビリに通えない方」に設定することに決め、再度施策を考え直しました。

対象を明確に再定義したことにより、アプローチする課題の焦点が定まりました。

DX部門・リハビリテーション部門それぞれの責任者の方からアドバイスいただきながら、遠隔リハの事業を一歩前に進めるために何ができるかを考えるなかで、

遠方に住む患者さんが退院する際にリハビリ科から地域の病院宛に書いた紹介状を書いてお渡しすることで、退院後のリハビリを患者さんが通える範囲に位置する地域の病院とサンライズ病院のリハビリ科が連携して、遠隔リハを提供するというアイデアが生まれました。

その後日本で使用されている紹介状を英訳し、実際の現場で記入の負担が増えすぎないよう内容の調整を行い、カンボジア版紹介状の作成を行いました。


まだ、実際に紹介状を通じて現地の病院と信頼関係を築けるかを少ない事例数で検証しようとしている段階ですが、もしこの紹介状の仕組みを実現することができたら、カンボジアの都心部と地方の医療格差の是正にも貢献できる1つのアプローチになるのではないかと考えています。


また、自分が関心のある分野の1つとして若年層への健康教育があり、遠隔リハの課題解決と並行して、

現地の高校にアポイントをとり、リハビリテーション科のスタッフの方にサポートしていただきながら、メンタルヘルスとフィジカルヘルスのレクチャーをワークショップを企画し、実践させていただくこともできました。


英語で大人数の高校生の前で話すことが初めてだったため、とても緊張しましたが、

なるべく生徒が自分の生活と結びつけて考えられるような授業の構成を考えたり、内容についてスタッフの方にアドバイスをいただくなど準備を重ね、

授業後には多くの生徒から、「日常で活かすことのできる学びがあった」「すごく楽しかった」などポジティブな声をたくさんかけていただくことができ、嬉しい気持ちと多くの学びを得ることができました。


また、インターンの勤務時間以外には、お昼を一緒に食べたり、マラソン大会に出場したり、

大会のFirst Aidチームや現地のマーケティング部門の小学校への営業に同行させていただくことができ、

自分がインターンのプロジェクトとして関わっていた部門以外の病院を支える様々な部門の現地スタッフと、普段考えていることや将来やりたいことなど色々なお話を聞くことができました。

「また会いたい」そんな気持ちにさせてくれるスタッフとたくさん会うことができました。




以上、まとまりがない文章になってしまったのですが、このインターンで、私が考えたこと、行ったことなどを簡単に紹介しました。

サンライズ病院のインターンは、自分がやりたいことを提案することができ、それに耳を傾けてくれるスタッフの方々がいるインターンだと思います。

もちろん、実際の実務やプロジェクトにおいては、やりたいことがそのままできるとは限りません。しかし、それは、頭ごなしにNO!と言われるのではなく、なぜできないのかを聞くことができ、ではどうすればできるようになるのかを一緒に考えていくことができます。

多様性のある環境を楽しみながら、医療に貢献したい、自身にとっての挑戦の機会をつくりたい、そんな気持ちを持った方はぜひ、サンライズ病院のインターンに応募してみてはいかがでしょうか。

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