南 慶隆 / デザイナー
武蔵野美術大学卒業後、フリーランスや制作会社でWebデザインとフロントエンドを10年ほど経験したのち、株式会社Speee にて不動産 / リフォーム系ライフスタイルメディアのデザイナー兼ディレクターとして、立ち上げ間もないサービスのグロース・プロダクト開発に従事。2018年にSun*へ入社。ベトナムのハノイブランチのデザイン組織にてUI/UXデザインを担当しつつ、Framgia からSun*へのリブランドプロジェクトを担当。大手企業のDXプロジェクトや新規事業プロジェクトにてPMを担当後、現在はCreative Strategic Team。
目次:
- 圧倒的なベトナムのパワーを前にして、自分の悩みが小さいことに思えた
- 自分たちの目指す世界が言語化されたリブランディング
- 向かう先に確信が持てた、契機となったプロジェクト
- Sun*にいる以上は簡単なチャレンジはしたくない
- 本当の意味で ”デザインの価値向上” を図るために
圧倒的なベトナムのパワーを前にして、自分の悩みが小さいことに思えた
武蔵野美術大学でデザインの基礎を学びました。インターネット勃興時期での入学ということもあって、ちょうど僕らの代からMac が必須となったタイミングでした。当時、周りの友達と「Yahoo!じゃなくてGoogleってやつがあるらしいぞ」と話していたのを覚えています。それもあって、自然とITやWebデザインに興味を持ちました。卒業後、フリーランスのWebデザイナーとしてキャリアをスタートし、それから制作会社や事業会社のインハウスデザイナーなどを経て、2018年にSun*に入社しました。
Sun*に入社したのは、友人に誘われたのがきっかけで、インハウスデザイナーとしての経験もある程度積み、これからどうしようかなと悩んでいるタイミングだったのと、ベトナムで働ける機会ってなかなかなくて面白そうだな、と思って。入社前にハノイオフィスの見学をした時のことも強く印象に残ってます。ちょうど納会のタイミングだったんですけど、オフィスに着いたら目の前で紅白歌合戦のような大規模なイベントが始まって(笑)。その若さというか熱気というか、圧倒的なパワーがあって、自分の悩みがすごく小さいことに思えましたね。
入社当時は日本側にデザイン組織と呼べるようなものがまだなく、デザイナーは基本的にベトナム側のオフィスにいました。開発とセットで発生するデザイン業務や、デザインディレクション、クライアントと伴走して要件定義など全般を担当していました。
自分たちの目指す世界が言語化されたリブランディング
入社して半年ほどたち、会社のリブランディングのプロジェクトが走り出し、全体を見ることになりました。僕はデザイナー視点での意見を出したり、 IDEOのデザイナーさん達にフィードバックをしたり、あとはIDEOがリサーチのためにハノイへきた時のコーディネートなども含め担当させていただきました。
半年以上かけて、社名変更、CIアップデートをしたのですが、今のSun*のデザインの指針と言えるものを経験したなと。この経験が今、本当に生きているし、会社としてもいい決断だったなと思います。
リブランディングのきっかけは、会社が大きくなり始めていて全体的に機運が高まっていたことでした。Sun*の前身であるFramgiaは、良くも悪くもベトナムに大勢人がいて、開発に強い会社というイメージが強くありました。このプロジェクトを通じて、本当はこの会社はこういうことをしたかったんだ、という像を具現化できたなと。リブランディングがなかったら今のSun*の姿もなく、僕もベトナムで働く1デザイナーだっただろうし、丁寧なリサーチと言語化を通じて、自分たちの働く会社のビジョン・ミッションを策定し、ロゴやCIという実際目に見える形として定着できたことは自分にとっても大きな財産だと思っています。
その関係もあって、当時はほぼ1ヶ月ごとに日本とベトナムを行き来するような生活でした。ちょうど日本側でUI/UXの知見を持っているデザイナーが何人か必要になるような、ソフトバンクさんとのプロジェクトも動き始めたタイミングだったので、2019年末にハノイオフィスから日本オフィスへ移ってきました。
向かう先に確信が持てた、契機となったプロジェクト
具体的に支援させてもらったのはソフトバンクさんの中にあるデジタルトランスフォーメーション本部という新設の部署だったのですが、最初のオーダーはUI/UXの専門家としてプロジェクトの支援をしてほしい、というものでした。
ただ、プロジェクトに飛び込んでみると、担当の方々の「真に現場が抱えている課題を解決できるものを作りたい」という熱意が強く、領域を飛び越え、一緒に戦える仲間を求めていました。そのマインドがSun*の考え方と近いと感じたので、われわれも単なるUI/UXのコンサルタントではなく、チームに対してデザイン思考やユーザーのニーズを捉えてソリューションに落とし込む考え方をインストールしたり、サービスのブランドをともに考えてロゴデザインに落とし込むなど、チームの一員として横断的に価値を出す関わり方を心がけてきました。結果としてコンセプトワークやUI/UXの領域のみならず、その後の開発フェーズもSun*がご支援することができ、大きなプロジェクトとして伴走することができました。元々自分たちがやろうとしていることが、いわゆるエンタープライズ企業のニーズにも応えられるものであるという一定の確信を持つことができました。
Sun*にいる以上は簡単なチャレンジはしたくない
Sun*はビジョン・ミッションに忠実な会社なので、会社の規模が大きくなっても、簡単なチャレンジはしたくないと思っています。単純に1500人規模の会社として見るのであれば、厳格なルールを決めて縦割りの組織にしてしまえば ”管理” はしやすくなると思うのですが、それは全くSun*らしくないし面白くない。
じゃあどういう組織が良いかと考えたときに、やっぱりビジョン・ミッションに立ち返る必要があると思っています。特にリブランディングの際に決めた”Make Awesome Things That Matter.”というスローガンが、Sun*のすべてを表している言葉だなと。”That Matter” って要するに ”自分ごと化” だと解釈していて、一人一人が自分にとっての ”That Matter” を見つけて真剣に取り組めるような組織にしていきたいと思っています。だからなるべく「ここはルールで決まっているから」と、組織側から強制するような枠組みを取っ払っていきたい。難しいチャレンジであることは間違いないんですが、Sun*にいる限りは自分の大きなミッションとしてやらなければならないチャレンジだと捉えています。
本当の意味で ”デザインの価値向上” を図るために
Sun*は、ビジネス・テック・クリエイティブの三位一体で様々な事業創造を支援することを強みにしています。一方で、まだまだ大きな課題があると感じていて、それは単純に個々の能力が足りていないということではなくて、その一つ一つをつなぎ合わせる周辺の筋肉が足りていないというか。
例えば、新規事業創造におけるデザインの価値を伝えたい、デザインで貢献したいと考えた時に、デザイナーであってもビジネス領域の知識・スキルや経営者目線を持たないと、相対的な「デザインの価値向上」ってできないんじゃないかということです。デザインを通して世の中にどんな価値を与えられるのか、それをビジネスの世界に変換するとどうしてお金が生まれるのかを考えなければいけない。あくまで僕の感覚ですが、デザイナーって今まではその辺りに関してある種 ”特別ルール” の中で生かされてきたのではないかと感じています。「デザイナーさんだから数字の細かい話はしないでおこう」とか。
これからはその特別ルールをデザイナー側から打ち破り、他の領域の人たちと同じフィールドで共に戦うための力を身につける必要があると思います。デザイン・クリエイティブには他に代え難い価値があるという前提ですが、「デザインの価値を向上したいです」と言った時にデザインの筋肉はもちろん、ビジネスサイドと同じフィールドで、その価値を証明するための筋肉もつけていかなければいけない。
Sun*は、デザイナーがそういった挑戦ができる場所であるし、飛び込んだ先で苦しい道のりが待っていたとしても、「じゃあそれをどう攻略していこうか」という会話ができる組織です。経済合理性や効率だけを考えたらこんな意思決定はしないと思うんですが、目指しているビジョン・ミッションにみんなが納得感を持っているからこそがんばれるし、Sun*でなら必ず成し遂げられると思っています。