「前の会社では、リリースするのに、3つの承認が必要でした」
株式会社ストラテジーアンドパートナー(S&P)に、中途で入社したシニアエンジニア(A.T)は、苦笑混じりに振り返る。大手SIerで大規模システムの設計を担い、安定したキャリアを築いていた彼が、なぜあえて、まだ全貌も見えぬS&Pのプロダクト開発へと身を投じたのか。
そこにあったのは、きらびやかな挑戦ではなく、「自分の無力さ」と向き合う、泥臭い日々の始まりだった。
── 最初の「不都合な真実」:環境のせいにする、卑怯な自分
── 転職のきっかけと、入社直後の印象を教えてください。
前の職場では、レガシーな技術、硬直化した組織、承認のためのドキュメント作成……。「もっとモダンな技術を使えれば」「もっと意思決定が早ければ」、自分はもっといいアウトプットが出せるのに。そう、ずっと思っていました。環境さえ整えば、自分はデキるエンジニアなんだと。
S&Pに入社して、その言い訳は一切通用しなくなりました。 技術スタックの選定から、アーキテクチャ設計、実装、デプロイフローの構築まで、すべてを任されたんです。まさに「お前の好きにしろ」状態。
でも、いざ真っ白なキャンバスを渡されると、手が止まりました。 自分がこれまで「実力」だと思っていたものは、会社の強固なフレームワークと、先人が作ったドキュメントの上で踊っていただけに過ぎなかった。環境のせいにしていたのは、自分で責任を負うのが怖かったから。その卑怯な自分を突きつけられたのが、最初の「不都合な真実」でした。
── 期待と現実のギャップ:渡されたのは「自由」ではなく「責任」
── 「裁量が大きい」という環境は、想像と違いましたか?
想像以上に重かったですね。 「自由」というのは、好きな技術を使えることではありません。「自分が選んだ技術が、顧客のビジネスにどう貢献するか」を、論理的に説明し、結果で証明する責任を負うことです。
たとえば、あるクライアントのデータ分析基盤を構築する際、私は自分が使い慣れた、あるAWSサービスの採用を提案しました。しかし、経営陣からは、「なぜそのサービスなのか?」「コスト対効果は?」「5年後のデータ量増大に耐えられるか?」「競合サービスと比較した優位性は?」と、ビジネス視点での矢継ぎ早な質問が飛びました。
「使い慣れているから」「モダンだから」という理由は、ここでは通用しません。技術的な正解ではなく、その時、その顧客にとっての「ビジネス的な正解」を出さなければならない。その重圧は、以前の比ではありませんでした。
── 概念の再定義:「動くコード」ではなく「機能する価値」
── そのような環境で、エンジニアとしての価値観はどう変わりましたか?
「いいコード」の定義が変わりました。 以前は、可読性が高く、テストカバー率が高く、美しい設計のコードが良いと思っていました。もちろん、それは今でも重要です。しかし、ここでは、それが「顧客のビジネスをどれだけ前に進めたか」が、唯一の評価基準です。
たとえ設計が美しくても、リリースが1週間遅れれば、顧客はその間の機会損失を被ります。逆に、多少泥臭い実装でも、今日リリースすることで、顧客が競合に勝てるかもしれない。
「エンジニアリングは、あくまで手段。目的は、顧客のビジネスの成功である」。 この当たり前のことに、ようやく腹落ちしました。スピードと品質のトレードオフを、顧客視点でどう判断するか。単にコードを書くのではなく、技術を使ってビジネスを「ハック」する。それがプロのエンジニアだと、今は思っています。
── ごまかしの効かない環境:ここは、自分の限界を突破する場所
── S&Pでの開発は、どんな人に向いていると思いますか?
「誰かが決めた仕様通りに実装したい」人には、苦痛でしかないでしょう。ここには、仕様書はありません。顧客の課題があるだけです。その課題を、技術でどう解決するかを、自分で考え、自分で実装し、自分で運用しなければならない。
でも、「自分の力で、ビジネスを動かしたい」と本気で思っているなら、これほど面白い環境はありません。 自分の書いたコードが、翌日にはクライアントの経営判断に使われる。そのヒリヒリするような感覚は、他では味わえません。自分の無知さに絶望し、それを乗り越えるために必死で勉強し、また絶望する。その繰り返しが、自分を本当の意味での「自律したエンジニア」に育ててくれると確信しています。
── 結びに:問いたいのは「スキル」ではなく「スタンス」
── 最後に、応募を検討しているエンジニアへメッセージをお願いします。
私たちが求めているのは、特定の言語やフレームワークのスキルではありません。それらは、必要であれば後からでも習得できます。
本当に必要なのは、「技術を使って、何を成し遂げたいか」というスタンスです。 技術を愛するのは素晴らしいことですが、技術に溺れてはいけない。技術を、顧客の痛みを和らげ、未来を切り開くための道具として使えるか。
自分の殻を破り、ビジネスという荒波の中で、エンジニアとしての真の実力を試したい。そんな飢えたエンジニアの挑戦を、私たちは待っています。