「ベンチャーキャピタル(以下、VC)」という言葉を耳にしたことはあっても、実際にどんな仕事をしているのか、イメージできない人は多いかもしれません。
そんな中、「知らないなら飛び込んでみよう」とVC業界に身を置いた学生がいます。Skyland Ventures(以下、SV)で約1年半にわたってインターンを経験した愛川さんは、数多くの起業家や投資家と出会い、考え方や価値観が大きく広がりました。
今回は、VCインターンで得たリアルな気づきや1年半の振り返りについて、愛川さんに伺いました。
目次
愛川さんについて
大学では教えてくれない“VC”という選択肢。
1,000人との出会いを経験。SVでの業務
外からは見えなかった「スタートアップのリアル」
“VCインターン”の肩書きが世界を広げてくれた
大事なのは他者へのリスペクト。VCインターン経験で大切なこと
愛川さんについて
<経歴>
神奈川県出身。一橋大学商学部在学、データ・デザイン・プログラムにてデータサイエンス等を学んでいる。SV元インターン。愛川X→https://x.com/ikawa_u 愛川note→https://note.com/skyland_aikawa
大学では教えてくれない“VC”という選択肢。
—— SVでのインターンを始めたきっかけを教えてください。
きっかけは2023年7月のハッカソンですね。あるハッカソンに出ていたときにSVのメンバー会って、そのときに「起業に興味ありませんか?」と聞かれて、最初は「無理です」と答えましたが、「では、SVでインターンしませんか?」と誘っていただいて。声をかけられた1ヶ月後くらいから、本格的に働き始めました。
—— もともとVCやスタートアップに興味があったのでしょうか。
私は商学部に所属しているんですが、授業の中で“VC”って言葉が出てくるのは、3年生か4年生くらいになってからなんです。正直、それっておかしいなと思っていて。
実は、SVのインターンに入る前にも、金融系スタートアップで1年弱インターンをしていました。でもそのときは、「VCというかたちで金融に関わる」発想が自分のなかになかったんです。そもそも、そんな職種があることすら知りませんでした。
—— 知っていればキャリアの選択肢って広がりますよね。
そうなんです。VCやスタートアップは、もっと自然にキャリアの選択肢に入っていていいはずですよね。知っていれば、「そういう道もあるんだな」って気づけるので、知られていないのがそもそもの問題です。
小学生の職業体験レベルにまで浸透すべきとは思いませんが、せめて大学でキャリアを考えるときには当たり前のように出てきてほしいと感じています。
1,000人との出会いを経験。SVでの業務
—— SVで具体的にどんなプロジェクトに行きましたか?
最初は生成AI領域の起業準備中の人向けのインキュベーションプロジェクトに関わっていて、その後は起業志望の学生向けのピザパーティーの企画運営、ソーシングや投資検討会の準備などを行いました。
その後Web3チームに異動し、海外の起業家とのミーティングへの同席や投資先企業へのマーケティング支援、SV主催イベントSkyland Ventures Connect の運営を担当しました。
—— 幅広い業務を経験されていますね。どんなことが印象に残っていますか?
とにかく多くの人と出会いましたね。1年半のインターン期間中、実際に対面で会った人だけで1,000人近くいたと思います。Facebookの友達も、インターン開始前は50人程度でしたが、最終的には700〜800人ほどにまで増えました。
多くの人と出会って、「私はこう考える」「この人の意見とは違うな」といった感覚が積み重なり、自分自身の価値観が整理されたと思います。
外からは見えなかった「スタートアップのリアル」
—— インターン全体を通して感じたことや、今振り返って思うことはありますか?
もともと、「スタートアップ=リスキーで怪しい」というネガティブなイメージを持っていた印象が大きく変わりました。実際、中に入ってみると、健全で面白くて、人の熱量にあふれている世界だったんです。
もちろん、業界にはいろんなケースがあるので、そうでない一面もあるとは思います。でも、現場で活動する中で見えてきたのは、リスク以上に「挑戦している人の姿」でした。
—— VCや起業家の方々との関わりの中で、気づいたことはありましたか?
VCやスタートアップ界隈の方々は、大きく2つのタイプに分かれるなと感じました。
ひとつは独立系VCや創業者タイプ。明るく前向きで、熱量がすごく高い方たちでした。もうひとつは、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や社内で異動してきたタイプ。良い意味で“普通の大人”という印象で、一緒に働きやすかったです。
どちらのタイプにも良さがあり、両方のスタイルを間近で見られたのはとても貴重な経験でした。
“VCインターン”の肩書きが世界を広げてくれた
—— VCインターンの肩書きがあったからこそ得られたものはありますか?
たくさんあります。とくに、普段なら会えないような人と自然に会話ができるようになったことですね。
たとえば起業家の方は、学生との面談は「採用目的」でなければ時間を取りづらい。でも、VCインターンという立場があると、それが会話のきっかけになることがあるんです。
特別な知識や実績があったわけじゃない。でも、肩書きがあることで一歩内側に入ることができて、その中でさまざまな方とのご縁に恵まれたことが嬉しかったです。
—— インターンを終えた今、肩書きがなくなったことへの変化は感じますか?
すごく感じますが、「最初の数人のネットワーク」を持っているかどうかで、その後の広がり方が全然違うんですよね。今でも、出会った方々がつないでくれるご縁やチャンスがあります。VCインターンを通じて出会った人たちは、今の自分をつくる土台になっていると思います。
—— 多くの起業家やVCと交流したかと思います。とくに印象的だった出会いがあれば教えてください。
一番印象に残っているのは、株式会社リブセンスの創業メンバーの桂大介さんですね。私は行動力があって細かいことはあまり気にせず「ガッ」と突き進むタイプだと思っていたんですけど、実際には、わりと細かいことを気にするタイプだと気づいてきて。
そのときに出会ったのが桂さんでした。桂さんは思考型で、しっかり考えてから動くタイプなんですよね。しかも、起業家として結果を出している。
その姿を見て、「思考型でもいいんだ」「自分のペースでやってもいいんだ」と励まされました。
大事なのは他者へのリスペクト。VCインターン経験で大切なこと
—— SVのインターン経験を経て、「これからやってみたい」と思っていることはありますか?
将来的には、アメリカの大学院への進学や海外VCでの挑戦、起業にも興味があります。直近で挑戦しようとしているのは、ゲームを作ることとエンタメ業界に関わることです。SVでの出会いや学びは、これからの人生のどこかで必ず生きてくると思っています。
—— 最後に、VCインターンに興味のある学生へのアドバイスをお願いします。
VCインターンは本当におすすめです。ただし、良い経験ができてしまうからこそ、気をつけたほうがいいこともあります。
たとえば、周囲の人との会話の中で、自分が投資する立場にいるため「すごい」と錯覚してしまうことがあるかもしれません。無意識に上から目線になってしまう場合もあるかもしれません。どんな場面でも、相手へのリスペクトを忘れないことが大切だと強く感じます。
また、スタートアップへの理解を深めたい人には、シード期のVCでのインターンが特におすすめです。裁量が大きく、自分で考えて動く機会も多いので、学びの密度が段違いです。
時間が許すなら、思い切って休学して集中するのもひとつの手です。起業したい方にとって、スタートアップ業界へのリテラシーをつける場としても意味があると思います。