こんにちは。建設×IT(Con-Tech)のスタートアップ「シェルフィー」でブランドマネジメントをしている末次です。
私は今年シェルフィーに入社したのですが、それまで建設業界に触れる機会はゼロ。それなのに社内では建設の複雑な構造の話や専門用語が飛び交っており、「このままじゃ私はこの会社の役に立てない!」と危機感を覚えました。そこで自分なりに建設業界を研究し、まとめてみることに。
突然ですが建設業界の市場規模は約52兆円で、なんと国内2位。そりゃこれだけ周りは建物だらけだから納得…。
しかし、こんなに大きな業界にもかかわらず、建設と建築って何が違うの?実際どのよう流れで建物ができているの?というように建設業界のことをよく知らない方は多いのではないでしょうか。(私も違いがよくわからなかった…)
そこで今回は建設業界まとめの前編として、建設業界の基礎知識についてお話します。
①建設業界の基礎知識
⑴建設業界の内訳
・内訳
ではまず、建設業界はどのような分野に分けられるのか、上図を用いて説明します。
❶建設:建物や道路を含め、様々な分野の構造物を作ることを意味します。
そして建設は❷建築と❸土木に分けられます。
❷建築:建物を建てたり、リフォームしたりすることを指し、人が生活・活動する空間を作る。
┗❹商業:店舗やオフィス、駅ビルを建てる。
┗❺住宅:一戸建てやマンションなど人々が生活する場を作る。
❸土木:橋や鉄道、堤防といった、人々が快適に安全に暮らせる環境を作る。
今までは「建設」「建築」の違いがよくわからずなんとなくの感覚で使っていましたが、これからはしっかりと意味を理解した上で使い分けることができますね。土木工事と言われても具体的なイメージがつかなかったので、今回のリサーチでしっかりと認識することができました。
・建設業界大手5社の市場シェア
(社名) (売上高)
No.1 大和ハウス工業 3兆5129億900万円
No.2 積水ハウス 2兆296億3100万円
No.3 大林組 1兆8727億2100万円
No.4 鹿島建設 1兆8218億500万円
No.5 清水建設 1兆5674億2700万円
建設業界の業界シェアでは、よく耳にするハウスメーカーがTOP2を占め、3位〜5位はスーパーゼネコンと呼ばれる企業が入ります。(ゼネコンについての詳細は後ほど)上位5社の売上を足し合わせると約11兆円と全体の2割程度になります。さらに上位50社まで広げて見てみると約35兆円となります。これは市場全体の約7割を占めており、少数の大企業による寡占状態にあると言えます。
建設業者は全部で46万社を超えるので、上位50社で7割を超えるって超寡占状態ですよね…。
⑵建築物/建造物ができるまで、携わる人々
次に建築物/建造物が完成するまでの流れについて。
1.設計する
建てる場所を決めたら設計段階に入ります。建築士やデザイナーなどの設計者の出番ですね。依頼主の要望を聞き、実際に形にするために設計図を作成してくれます。空間図形が大の苦手である文系の私からすると未知の世界の人々…。
ここで、設計者について簡単に説明します。設計者は設計図面ができるまでを担い、レイアウトや使う証明、素材などを決めます。設計は❶意匠設計❷構造設計❸設備設計に分けられます。
❶意匠設計:建物のコンセプトに基づいた外観、内部空間のデザインや、用途やコストを考慮した機能デザインを設計する。
❷構造設計:地震、風雨、荷重に耐えられる安全な建物をつくための骨組みを設計する。
❸設備設計:電気整備、配管整備といった建物の設備の設計を行う
2.施工する
いよいよ施工…!設計図を元に建物がどんどん完成に近づいていきます。設計図を読み解いてミスなく建物を建てていると想像すると尊敬の念しか出てきません。施工に関わる人々は❶各専門工事業者と❷施工管理者です。
❶各専門工事業者(電気・水道・左官etc)
※左官…建物の壁や床などを、こてをつかって塗り上げる仕事
・実際に現場で手を動かす職人たち
・1人でやっている or 少人数の会社が多い
・2つ以上にまたがる業者を多能工という
❷施工管理者
・図面通りに施工を行うために現場を管理する
・専門業者を取りまとめ、管理する
3.完成/オープン
そしてついに建築物/建造物が完成します。
設計や施工に関わる人々は明確に区切られる訳ではなく、設計・施工の両方を行う会社もあれば、設計と専門工事を担う会社や現場もあります。どこまで手掛けるかの境界線はあやふやで、会社によって得意・不得意が大きく異なります。
⑶建設業者の内訳
ここから少し話が難しくなりますが、建設業者の内訳について。
このグラフを見ると、資本金が5000万以上のいわゆる大企業は全体の3.7%に過ぎず、建設業者の大半は中小・零細業者であることがわかります。これは日本特有の「ゼネコン」という存在や「多重下請け構造」によって引き起こされます。
・ゼネコンとは
「ゼネコン」は、各種専門工事業者の複合体のことです。設計・施工・研究開発を自社内で全て行っている会社が「ゼネコン」と呼ばれ、主に元請け業者として施工全体を管理する役割を担っています。施工管理は現場の安全管理や全体の原価管理、建築工程の進捗状況の把握・管理を行い、研究は低いコストで品質の高いものを作るために行われます。
売上高1兆円を超える規模であるゼネコンはスーパーゼネコン(通称:スーゼネ)と呼ばれ、大林組、鹿島建設、清水建設、竹中工務店、大成建設の5社が該当します。
日本でゼネコンという形態が生まれた背景には、日本の自然環境の過酷さがあると言われています。複雑な地形で台風や地震の多い国であるため、技術力向上のための研究開発が欠かせません。
しかしこういった研究開発費用を中小企業はなかなか割くことができないので、大きな建設会社が設計・施工・研究の全てを一括で担うようになり、どんどん肥大化していって現在のゼネコンの形になっていきました。
・多重下請け構造
まずは元請け・下請け・孫請けについて簡単にご説明。
元請け…仕事を発注する大元の発注者から仕事を請け負う
下請け…元請けから仕事を引き受けたり、代わりに仕事を行ったりする
孫請け…下請けのさらに下請け。元請けから見れば二次下請けの関係
この構造は建設業界だけではなく、自動車産業やIT業界など様々な業界に存在しています。では、建設業界での下請け構造の仕組みとは…。
<建設業界での下請け構造>
建築工事では、大工工事、左官工事、電気工事など様々な専門工事が発生します。そのため発注者から依頼を受けた建設会社が元請けとなり、複数の専門工事業者が下請けに入って工事を行うのが一般的です。元請けは建築工事をまとめる役割が、下請けは元請けから請け負った工事を完成させる役割があります。
しかし工事の規模が大きくなるにつれて、元請けが下請け全てを管理することは物理的に難しくなります。そこで元請けは受注した案件をそのまま下請けへ流し、下請けが案件の工事内容をさらに細かく分け、さらに下の孫請けに専門工事を依頼するという2次下請け構造が生まれます。
そうすることで細かな管理を下請けに任せることができるので、元請けの負担が減ります。現場の管理や工事は下請けがやる代わりに、元請けは工事の質と納期に最終責任を負います。
この構造はさらに細かくすることが可能なので、建設業界では5次下請け構造なども存在します。このような構造を総じて「多重下請け構造」と言います。
しかしこの「多重下請け構造」にはデメリットがいくつかあります。
一つは依頼主と実際の施工者との距離が遠くなる点。下請けは元請けと契約関係にあるので、依頼主が雇い主にはなり得ません。つまり依頼主からプラン変更などを頼まれても、元請けを介さなければ応じることができないのです。これによりタイムラグが発生したり、伝達ミスが生じたりする危険性があります。
もう一つは所得格差の問題です。依頼主から一括で得た利益を、元請け・下請け・孫請け・さらに下の専門業者というように、工事に関わった業者全てで分けなければいけません。そうすると1次、2次請けとなるにつれて、下様の会社の得る利益はどんどん少なくなります。これが寡占市場を生む原因にもなります。
と、このように建設業界の基礎知識を網羅して解説していきました。市場規模の大きさに驚いて、建設と建築の違いを知って、建物が建つまでの流れを理解してマイホームに夢を膨らませているところに、ゼネコンと多重下請け構造の話を持ってくるというなかなかに慌ただしい流れだったかとは思いますが、なんとなくでも建設業界の概要を理解していただけたでしょうか。
さて、後編では建設業界のもっと突っ込んだ部分に触れていきます…!後編も読めば周囲の人に建設業界をドヤ顔で語れるくらいに詳しくなれるはずです(笑)建設業界だけでなく、他業界、日本社会全体にも通ずる話題があると思うので、是非是非読んでいただきたいです!