飲食店で地方を盛り上げる。羊SUNRISEが監修する火鍋店が茨城県つくば市にオープンしました。今回はコンサルとしての立場ですが、どのようなビジョンを持って経営に参加しているのか。関澤社長へのインタビューです。
茨城県つくば市にHOTPOT羊SUNRISEをオープン
-今回コンサルとして入ったお店についてご紹介ください
茨城県つくば市にオープンした「HOTPOT羊SUNRISE」です。10/8にオープンしまして、メニューの中心である羊火鍋をはじめ全て羊SUNRISEが監修しています。
-なぜコンサルという形で関わることになったのでしょうか
東京バルというお店がもともとつくばにありまして、そこのオーナー家族とは身内同然の付き合いをさせていただいてました。東京バルがある飲食店を買い取った時に、プロデュースをしないかと私に声がかかったのがきっかけです。
-これまで麻布十番、神楽坂と首都圏での展開でした。コンサルとはいえ茨城のお店に関わることにした決め手は?
羊SUNRISEが茨城に出店することで、地方を盛り上げる助けができると確信したことです。
これにはいくつかの要素があります。地方を盛り上げるといっても、ただ東京の人気店が出店すればいいというわけではありません。どこに出店するかを間違えるとうまくいかない。これまで地元の土浦をはじめ地方出店を考えたことはありましたが、取りやめたのは結局うまくいく確信が得られなかったからです。
つくば市を足掛かりに茨城県を盛り上げたい
-今回はつくば市に出店ですね。出店するにあたっての重要視したポイントをお願いします。
まずはストーリー性です。大正時代に政府が「緬羊百万頭計画」を国策として打ち出しましたが、全国に5箇所設けられた種畜場のうちの一つが茨城にありました。当時は軍服用の羊毛を生産するのが目的でしたので、すでに種畜場は途絶えてしまっています。しかし、茨城県は日本の羊文化発祥の地の一つとも言えるはずなので、ここに羊SUNRISEがプロデュースした店を出店することに意味を感じたんです。日本の羊文化復活を目指すなら象徴的な場所だなと。
次に交通の便です。茨城県はこれまで通過する県でした。つくばエクスプレスがあるので都内からつくばまでは40分あれば来れてしまう。そのため逆に滞在する県というイメージが薄く、旅行客を呼び込みづらいという弱点がありました。
しかし、逆に言えば都内から40分でとてつもない田舎に来れるとも捉えられます。コロナで広範囲の移動が制限される中、近場で非日常を体験できる茨城はすごく可能性があると思ったんです。
あとはつくば市が都内への通勤客が非常に多いエリアであること。羊SUNRISEのコンセプトを持ち込むのに無理のない環境がありました。さらに県外から移住してきた人が非常に多いため、県内でも先進的な気風があるのも良かったです。
-集客は都内と地元両方をターゲットにしているということ?
はい。都内からは羊SUNRISEの常連さんだけでなく初めてのお客様も来店されています。「麻布十番や神楽坂より敷居が低そう」と来店しやすく感じる方もいるようです。あとは常連さんが団体で来るときは僕がアテンドしたりとか。「つくば遠足」をコンセプトにして茨城を楽しんでもらいたいなと考えています。
つくばにお住まいの方については、地元の美味しい飲食店としての立場で貢献したいです。これまで茨城は外食文化が貧弱で安価なチェーン店ばかりでした。何かおいしい物を食べたいと思った時に、都内に出て行かなければいけない。でも、つくばエキスプレスに40分乗れば秋葉原なので、都内に出るのもあまり負担なくできてしまうんです。これだと地元は経済的に潤いませんし、外食文化は根付きません。
-つくばに羊SUNRISEのコンセプトを持ち込むことでどのような貢献をしたいですか
まずはやはり地元を盛り上げることです。つくばエクスプレスができて15年ほど経ちますが、沿線はそこまで大きくは変わっていません。ポテンシャルはあるのにもったいないと感じています。
茨城は非常に保守的な県民性があって、これは新しい取り組みをする際には大きな障壁になります。茨城の人だけでも、外部の人だけでも、新しい取り組みをして茨城を盛り上げるのは難しい。僕たちのような「茨城出身で都内でビジネスを展開し、全国規模でネットワークを持っている人」が地元のために動くのが一番うまくいくのではないかと考えていて。いわば地元と外部の橋渡し役になれるんです。
さらにつくば市には僕たちが入っていけるオープンな空気があります。県外出身で都内で働いている人も多く住んでいるので、茨城県内の他のエリアよりも羊SUNRISEのコンセプトを理解してもらいやすいかなと。茨城県を盛り上げるきっかけとしてのつくば市に可能性を感じています。
茨城は魅力の原石
-羊SUNRISEが橋渡し役になって、首都圏・全国に茨城の魅力を伝えたいということ?
はい。茨城は今年ようやく最下位を脱出しましたが、長らく都道府県魅力度ランキングで最下位の常連でした。しかし、私個人としては茨城県は磨けば光る魅力の原石だと考えています。茨城は「知られていない」のが魅力とも言えるんです。僕らの発信力でそこを打破していけると考えています。
まず、茨城県はキャンプ場の数が日本で一番多い。これは羊SUNRISEと非常に相性が良いです。羊SUNRISEキャンプというパッケージも提供しているので。その逆でサウナは一軒もない。僕らとしてはキャンプ×サウナという組み合わせに可能性を感じているので、茨城にサウナをなんとかできないかと思っています。キャンプ場とサウナ。これは大きな魅力の再発見になると考えています。
次に食材の宝庫であること。茨城は日本のちょうど中心に位置し、農作物や畜産物、水産物全て豊富です。温暖な気候と寒冷な気候が交わる場所で、古代には日本のまほろば、まさに理想郷として描かれることもありました。食材が美味しいのはもちろん、外部に知られていない伝統的なグルメもかなり多いです。
先ほど茨城県民は保守的だと言いましたが、古代から食材の一大生産地を保ってこれたのはその保守性がいい方向に働いたのだと思います。この県民性が育ててきた原石を磨き発信する役目が、羊SUNRISEのような茨城と東京のハイブリッドにあるのではないかと。
地元を盛り上げると同時に羊の普及も叶えたい
-直営ではなくコンサルとして入ることでどんな価値を提供できますか?
直営でやろうとすると、お店の経営的な体力とか精神力を非常に消耗するので、ビジョンを実現するのに労力がかかり過ぎるデメリットがありました。今回は店舗も従業員もすでに確保できており、メニューやコンセプトを決めれば羊SUNRISEとして動かすことができた。これはスピード感ある成長とビジョンの実現が可能な手法です。
ビジョンとしては地元の食文化に貢献すること、茨城と首都圏の橋渡し役として地元を盛り上げること。そしてもう一つ大切なのは「羊文化の普及」です。
今回のコロナで感じたのが麻布十番・神楽坂のお店だけでは、羊文化の普及には不十分だったということです。やはり全国のお店で国産羊を扱ってもらって良さを知ってもらうことは必要。そのためには仕入れやすい形に羊肉の流通を変えていかなければならない。現在、茨城に羊肉の加工工場を作る計画を進めています。この工場が稼働することで全国の飲食店が羊肉を仕入れやすくなって欲しい。そして、まずはモデル店として茨城のHOTPOT羊SUNRISEに卸すことで、流通のテストにもなればと考えています。
コンサルという形で入ることで、直営よりもむしろ取り組める幅が広がります。羊SUNRISEが持っている資源を横展開しつなげることで、スピード感とビジョンの実現が可能になるのではないかと。