羊肉の流通に関わることで、仕組みの部分から日本の羊産業を良くしたい。これまでジンギスカン屋、アパレル、Youtube、通販事業と展開をしてきた羊SUNRISEは、今度は羊肉の加工工場を設立することを計画しています。どのような思いで流通に関わっていくのか、関澤社長にお話を伺いました。
羊肉の加工工場を茨城にオープン予定
-今後は羊肉の流通に関わるということで、規模感が大きくなってきましたね
そうですね。茨城に羊肉の加工工場をオープンする予定です。早ければ今年、来年には稼働させたいと考えています。
-こちらはどの様な経緯でやろうと思ったのでしょうか
やはり、全国の飲食店や羊飼いさんの声が集まるハブのような立場に立つことが多いのがきっかけですね。それこそ前回のインタビューでお話しした6店舗共同の通販事業に関してもそうですし、ラムバサダーの活動によって羊業界でのネットワークを作ることもできています。こういった積み重ねを羊の流通に活かすことができるのではないかと考えました。
※こちらもどうぞ
【自分のお店のことだけでなく羊業界全体のために今すべきこと。6店舗合同通販事業開始します。】
https://www.wantedly.com/companies/sheepsunrise/post_articles/240856
羊肉の流通課題を解決したい
-具体的に今羊肉の流通が抱えている課題はありますか
一つ挙げるとすると飲食店にとっての仕入れロットです。現状、アメリカ、フランス、ウェールズ産の羊に関して、お店が仕入れる際は1種類の肉をケース買いとなっています。お店に届いた後は冷蔵での保存になるわけですが、大体2週間くらいが消費期限です。お店の規模感やメニューの提供方法によっては、消費しきれないお店も多いんですよ。
「本当は羊を仕入れたいんだけど、余らせてしまうからなかなか手が出ない」と悩む声も聞こえてきます。羊肉が普及しづらいのはこういう流通の問題も影響しているんですよ。
今考えているのは一種類だけでなくバラエティパックみたいな感じで、店舗向けの羊肉パッケージを提供しようかと。これならジンギスカン屋でお客様に提供するメニューに幅が出せるし、活用方法も店舗でいろいろ考えられます。例えば一つのセットにオージーとウェールズとアメリカ産、そして国産が入っている様なイメージですね。「それならお店も仕入れやすいので是非お願いしたい」という声もすでにいただいてます。
生産者がハッピーになる適正価格を守ることが大切
-消費者にとっての手の出しやすさという側面も重要ですよね。この間Facebookで「国産羊肉が高すぎるとの声」に関するシェアをされていましたが…
これですね。https://www.facebook.com/haruto.ando/posts/3955201371163393
この問合せみたいにニュージーランド産と比べられちゃうと厳しいですよ。やっぱり生産頭数が全く違うので。ニュージーランドやオージーは羊の頭数が人口よりも多いですから、当然価格は安めになります。
ニュージーランドは人口500万人に対して2000万頭の羊ですからね。これに対して日本は人口1.3億に対して1万8千頭しかいない。同じ土俵で比べるのはナンセンスです。
僕は羊肉は高級食材という位置づけでいいと考えています。日本は食べ物が安い国なんですけれど、それって生産者に負担を強いて成り立っている構造なので。これから普及をさせていく羊肉に関しては、生産者がハッピーになれる意味での適正価格を守っていきたいです。
あそれと、羊肉独特の価格の上下動の激しさというのも普及のハードルを上げている面があります。
羊肉をもっと仕入れやすくなるようにしたい
-羊肉の価格が他の家畜よりも値動きしやすいという意味ですか
そうです。牛の場合は30ヶ月くらいで出荷するのが一般的です。いわゆる成牛ですね。大人になってから出荷するわけです。
これに対して羊はラム勝負だと言われていて。ラムの価格が市場を動かしています。成牛に比べると生産は安定しません。その時々のいろいろな状況で全然出荷されなかったり、市場にあふれたりする。
例えばオーストラリアではラムの出荷が減る現象が起こることがあります。雨がたくさん降れば草が育つ。子羊がたくさん草を食べて太る。羊飼いさんは「もっと太らせてから出荷した方が高く売れる」と考えるので、市場にラムが出回らない。このタイミングではラムの価格はグンと上がるわけです。
しかし、ある程度太ったら今度は出荷をしたいわけですから、どこかのタイミングでは太ったラムが市場に放出されるわけです。つまりキロ単価としては価格がグンと下がる。
この様にラム肉の価格の上下は起こりやすいのです。他の食肉と大きく異なる特徴ですね。
-仕入れ値が安定しないというのは、飲食店にとっては正直扱いづらい食材ですね
それが現状です。特に日本の様な羊の消費が少ない市場は、こういった価格の変動の影響をもろに受けやすい。パワーバランス的に弱いんですね。流通量が少なく安定しないので、海外の出荷元との交渉においても不利なんです。
ですので、羊SUNRISEが目指している「日本人の羊肉の消費量を増やす」「羊肉を日本のテーブルミートに」という目標の意義は大きいと考えています。消費が増えれば世界の羊市場における発言権も増しますし。仕入れのボリュームがあれば価格もある程度抑えることができるでしょう。
仲介業者にももっと羊肉について深く知って欲しい
-羊肉の消費量を増やすために必要なことを教えてください
やはり、日本人に羊肉の美味しい食べ方を知ってもらうことですね。そのためにはお店はもちろん、通販やYoutubeの役割は大きいと考えています。
あとは羊肉の流通に関わる業者の皆さんに対する教育も重要です。例えば海外産の羊肉で考えると、輸入元の社員さんは肉の特性とか調理法についてよく理解されている方が多い。
ところが、これが国内の問屋とか営業マンクラスに落とし込んだときに、実はよく理解できていないということがある。飲食店に対して扱っている羊肉のことをよく説明できていないんです。そうなるとやはり比べるのは価格だけになってしまったり、扱い慣れている肉しか選択肢に入らなかったりということが起こります。
飲食店で扱ってもらうことは羊肉を普及させる上で重要なこと。ですので、こういった仲介業者の皆さんにもよく羊肉について理解してもらうように、教育をしないといけない段階に来たのかもしれませんね。