こんにちは。サイエンスアーツです。
今回は、インカムアプリBuddycomの介護における翻訳言語数拡大(85言語)の背景について、ご紹介します。
外国人介護人材受入れの拡大と背景
日本の高齢化に伴う介護人材不足への対応策として、外国人介護人材の受入れが近年大きく拡大しています。高齢化は世界共通の課題ですが、とりわけ日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えており、将来にわたって必要な介護サービスを提供するために担い手の確保が重要な課題となっています[1]。政府はこれまで経済連携協定(EPA)に基づく受入れや在留資格「介護」、技能実習制度などで外国人を受け入れてきましたが、2019年には新たに在留資格「特定技能」を創設し、一定の技能を持つ外国人介護人材の受入れを本格的に開始しました。
背景には、2040年頃までに約57万人もの追加の介護人材が必要になるとの推計[2]や、国内の生産年齢人口の減少による慢性的な人手不足があります。外国人材の受入れ拡大は、こうした逼迫する人材需要に対応し介護現場を支える即戦力を確保するための政策的な選択と言えます。
外国人介護人材の在留者数推移と国籍別の変化(2019年〜2024年)
2019年に介護分野で特定技能制度による外国人材の受入れが始まって以降、該当する在留外国人は継続して増加してきました[3]。最新の2024年12月末時点では約4万4千人に達し、過去最多を記録しています[3]。受入れ当初こそ数十人規模でしたが、その後は半年ごとに倍増ペースで拡大し、コロナ禍を挟みつつも右肩上がりで推移しました。
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2019年末から2024年末にかけての特定技能介護分野における外国人材数の推移[4]。制度開始当初はごく少数だった在留者数が、5年間で急増し現在は約44,000人規模に達している。
出身国別に見ると、受入れ国籍は特定の国に偏っています。インドネシア出身者が最も多く、次いでミャンマー、ベトナム、フィリピン、ネパールの順となっており、上位5か国で全体の9割以上を占めます[5]。これら上位国の中にはEPAにより介護福祉士候補者を受け入れてきた国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)も含まれ、日本の介護に対する関心や人材送り出しの実績がある国が中心です。また、直近ではミャンマーからの人材が増加しており、2024年後半にはベトナムを抜いて在留者数2位となるなど国別シェアに変化も見られます[5]。
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介護の特定技能外国人の国籍
定着と育成における課題
外国人介護人材の数は増加していますが、受入れ後の定着や人材育成にはいくつかの課題が指摘されています。以下に主要な課題を整理します。
- 言語・文化の障壁: 現場では日本語によるコミュニケーションの難しさや文化・習慣の違いから生じる戸惑いが大きな障壁となっています。外国人介護職員からは「異国で働く不安」や「孤立感」、そして「言語・文化の違いによる問題」を感じても十分に相談できない状況にあるとの声が上がっており[6]、職場でのメンタルサポートや対話の場づくりが不十分である実態が浮かび上がっています。
- 教育・研修・キャリア形成の限界: 特定技能として入国した介護人材が長く日本で活躍するためには、介護福祉士など上位資格の取得や継続的なスキル向上が重要です。しかし、日本語で専門知識を学び国家試験に合格するハードルは高く、就労と学習の両立が大きな課題となっています[7]。実際、介護福祉士国家試験に向けて勤務しながら勉強する受験者の負担は大きく、十分な支援がなければ資格取得を断念したり、キャリア形成が途中で停滞したりする恐れがあります。外国人にとっては専門的な学習に加え日本語習得も同時に必要であり、こうした状況が長期定着の障壁となっています。
- 職場環境・受入体制のばらつき: 外国人材の受入れ経験や体制整備の状況は事業所によって様々で、そのばらつきも課題です。受入れに積極的な施設では研修担当者の配置やマニュアル整備、多文化共生の意識醸成が進んでいますが、一方で「コミュニケーションへの不安」や「異文化への配慮に自信がない」といった声も多く、実際に外国人職員への学習支援や生活支援の体制が不十分な事業所も見られます[8]。受入れ側の準備不足により現場でミスマッチや孤立が生じれば、外国人材の定着率低下にもつながりかねません。
国の支援策と限界
これら定着・育成上の課題に対応するため、国や自治体も様々な支援策を講じています。しかし、その取り組みには地域差や規模の限界もあります。主な施策と現状を整理すると以下のとおりです。
- 地域協議会や巡回相談・研修による支援: 厚生労働省は介護分野の関係者による協議会等を組織し、情報提供や課題共有の場を設けています。また、現場で働く外国人介護職員の悩みに対応する相談支援や、外国人材を受け入れている施設への巡回訪問による指導・助言、さらには外国人職員同士の交流機会の創出など、就労・生活面でのフォローアップ事業も実施されています[9]。例えば静岡県では、県のサポートセンター事業として受入事業所への定期的な巡回相談や研修交流会を開催し、職場定着を後押しする取り組みを行いました。このような地域主導の支援策は一定の効果があるものの、実施の有無や内容は自治体によって差があり、全国一律の体制とはなっていません。
- 多言語コミュニケーション支援への補助: 言語の壁を和らげるため、国は介護現場への多言語翻訳機器やソフト導入に対する補助制度を設けています。具体的には「外国人介護人材受入れ環境整備事業」において、外国人を受け入れる介護施設が携帯型翻訳機などを導入したり、外国人職員の学習支援・メンタルヘルスケア等を実施したりする際の経費を助成しています[10]。この事業は令和5年度には38の自治体で実施され、一定の広がりを見せています[10]。しかし裏を返せば、全ての自治体で行われているわけではなく、未実施の地域や補助を十分に活用できていない事業者も存在します。現場からは「翻訳機を導入しただけでは専門用語のニュアンス伝達に限界がある」「人手不足でサポートに人員を割けない」といった声もあり、制度のさらなる周知と効果的な運用が求められます。
このように、公的支援策は一定の成果を上げつつもカバーしきれていない部分が残されています。言語・生活面の支援や研修体制の整備は、国の補助だけでなく各事業者の主体的な取組みにも委ねられており、支援策の「空白地帯」を埋める工夫が必要です。
課題解決の糸口としての多言語ICT活用
上記の課題、とりわけコミュニケーション面の障壁に対しては、多言語対応のICTツール活用が有望な解決策の一つとして注目されています。例えば、スマートフォンを活用したクラウド型コミュニケーションプラットフォーム「Buddycom(バディコム)」は、介護現場のチームコミュニケーションにリアルタイム翻訳機能を組み込んだ革新的なツールです。Buddycomは音声やテキストを即時に多言語翻訳でき、2025年のアップデート時点で計85言語に対応しています[11]。現場の日本人職員と外国人職員がそれぞれ自分の得意な言語で話しても内容が共有できるため、言葉の壁を越えたスムーズな情報伝達・指示出しが可能になります。また同ツールは介護業界向けのICT補助金対象にも指定されており、介護事業者での導入が進みユーザー数が前年比+68%と急増しています[12]。多言語ICTの活用によって、外国人職員にとって分かりやすい業務指示や緊急連絡が実現すれば、ミスの防止やストレスの軽減につながり定着率向上も期待できます。さらに、業務内容の可視化や記録の共有が進むことで、日本人職員との協働体制強化にも寄与すると考えています。
また、ICT導入はあくまで課題解決の「糸口」に過ぎません。真に重要なのは、こうしたツールを現場で使いこなすための研修や運用ルールの整備、人と人との信頼関係づくりです。しかしながら、多言語ICTを賢く取り入れることで言語・文化ギャップを技術的に補完し、外国人介護人材が能力を十分発揮できる職場環境に近づけることが重要です。
受入れから「共に働く」への視座転換と環境整備の必要性
外国人介護人材の受入れは数の上では着実に拡大し、日本の介護現場における存在感が増しています。今後は単に人手不足を埋める戦力として受け入れる段階から一歩進み、「共に働くパートナー」として外国人職員を迎え入れる視座への転換が求められます。具体的には、言語や習慣の違いを相互に理解し尊重し合う職場文化の醸成、一人ひとりの外国人職員に合わせたキャリアパス支援、日本人職員も含めた多文化共生マインドの育成といった環境整備が重要です。
受入れ側の経営層・人事担当者にとっては、定着してはじめて戦力となるという視点で戦略を立てることが肝要です。採用後のフォローアップ体制や研修計画に十分な投資を行い、外国人職員が「この職場で成長し続けたい」と感じられるような職場作りを進めることが、結果的にサービス品質の向上や離職率低下につながります。国の制度支援も活用しつつ、自社の創意工夫で現場レベルの課題を一つひとつ潰していくことが求められています。
人手不足解消の切り札として期待される外国人介護人材ですが、その力を最大限に引き出すには受入れ側の姿勢転換ときめ細かな環境整備が欠かせません。単に人を「入れる」だけでなく、共に働き共に成長できる関係を築くことこそが、これからの介護現場に求められる持続可能な人材戦略と言えます。日本人も外国人もお互いに安心して働ける職場を実現することで、はじめて真の戦力化と介護サービス向上が叶います。今後の戦略立案においては、この「共に働く」という視点を軸に据え、組織全体で外国人介護人材の定着・育成に取り組んでいくことが重要となります。[6][8]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] mhlw.go.jp
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001478533.pdf
[11] [12] 国際特許取得のBuddycom翻訳機能、85言語対応へ拡大~過去最多230万人超の外国人労働者を支え、人手不足解消に貢献~
国際特許取得のBuddycom翻訳機能、85言語対応へ拡大~過去最多230万人超の外国人労働者を支え、人手不足解消に貢献~ | ニュース | Buddycom -バディコム- 株式会社サイエンスアーツ(所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長:平岡 秀一)は、フロントラインワーカーをつなげるライブコbuddycom.net
Buddycom、医療・介護用ベッドメーカーのパラマウントベッド社が提供する「眠りCONNECT」と連携開始~介護業界への提案を行い、現場の負荷軽減を目指したDX化を支援~ | ニュース | Buddycom -バディコム- 株式会社サイエンスアーツ(所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長:平岡 秀一、以下「サイエンスアーツ」)が提供するフロントbuddycom.net
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