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これからのノートPCについてワクワクした話

Photo by Onur Binay on Unsplash

こんにちは!
エス・エー・エス株式会社の海田です。

先日、小学校の運動会がありました。
昔は運動会と言えば、お母さんが朝からお弁当を準備して、丸一日かかって実施していた記憶がありますが、(地区によるのかもしれませんが)今は午前中で終わります。

5月といえど日によってはとても日差しが強いので、結果的にはその方がいいのかなという気もします。
当日も暑く、午前中だけなのですが家に帰ってきたときは結構ヘトヘトでした(見てるだけなのに・・)
今年もこれからどんどん暑くなっていきそうですので、お体お大事に!

1.ワクワクしたニュース


さて、本日のTechBlogです。本日は皆様が毎日仕事や生活で必ず利用されるであろう「ノートPC」に関するお話です。私はPC関連のニュースが好きでよくチェックをしています。つい先日、来月以降に発売される予定の新作ノートPC関連のニュースが出てきました。

基本的にノートPCは、ノートPCを構成するパーツの一つである「SoC」の新作が発表されると、それに合わせて発表されることが多いです。

一般的には「CPU」と呼ばれることが多いのかと思いますが、現在のCPUは内部的に描画処理エンジン(GPU)を持っているものも多いので、ここでは統一して「SoC」と呼ぶことにします。


ノートPCに搭載されるSoCは、現在はほぼ3つのメーカに絞られています。

①Intel製品・・・いわゆるCoreシリーズ。Windowsノート用。
②AMD製品・・・いわゆるRyzenシリーズ。こちらもWindowsノート用。
③Apple製品・・・いわゆるMシリーズ(M1,M2,M3など)。こちらはMacBook用。

自分の所有しているノートPCを見てみてください。必ず上記のどれかのシールが(剥がしてなければ貼ってあることでしょう!以下は私のPCで、Intel製ですね。)

そして、この①②③を搭載したノートPCが、各社(DELL、HP、富士通、東芝、NEC、SONY、Appleなど・・)から発売されることになります。(正確には③はAppleからのみ)

「各社一斉に新作ノートPCを発表!」・・という見出しを見て、私は「ああ、今回もまた①~③のどれかのSoCの新作が出たんだな・・Coreかな~?Ryzenかな~?」と思っていました。しかし、いろいろ調べていくと以下の記事を見つけました。

M3超えの処理性能!? 「Snapdragon X」搭載ノートPCが一挙登場 - 価格.comマガジン
AI対応PCの製品カテゴリー「Copilot+ PC」の発表にあわせて「Snapdragon X」搭載マシンがリリースされました。特徴をレポートします。
https://kakakumag.com/pc-smartphone/?id=20882

今回、各メーカが一斉発表したノートPCに搭載されるのはなんと①~③のどれでもなく、クアルコム社の「SnapDragon X」というSoCだったのです。一瞬「えっ?」ってなって、そのあとに非常にワクワクしました。(おそらく私だけではないはず!)

2.振り返るノートPC搭載SoCの歴史(あくまで個人的見解)

ノートPCに搭載されたSoCの歴史を軽く振り返ってみます。


2000年代前半から2017年くらいまでは、ほぼ①Intel製のSoCがほとんどでした。
MacBookにも一時期Intel製のSoCが使われていたほどです。

2017年②AMDRyzenシリーズを発表し、そこから少しずつノートPCの搭載SoCとしても②のシェアが増えてきました。

そして2020年③Appleが「M1(Mシリーズの最初のSoC)」という当時では驚異的な性能とコスパのSoCを世に出したことで、MacBookのSoCは順次Mシリーズに置き換えられることになりました。

このように見ても、ここ20年程度の歴史の中で①②③以外のSoCがノートPC業界に参入してくることはほとんどなかったのです。それがまさかこの時期に、しかも発表した全PCメーカが①②③のどれでもない「第4のSoC」を搭載して出してくるなんて、「いったいこのSoCは何者・・?」という興味がとても湧いてきました。

3.「SnapDragon X」とは何者か?

前述したとおり、「SnapDragon X」とはクアルコム(Qualcomm)社のSoCです。もともとスマートフォン業界では有名で、「スナドラ」の愛称で知られています。XperiaAQUOSなど、国内メーカを代表するスマートフォンにも多くのスナドラが搭載されてきました。今回の「SnapDragon X」というのはノートPC用(つまりスマホよりは電力供給を多くでき、デスクトップPCやサーバマシンほどではない用途)として開発されたようです。以下は「SnapDragon X」シリーズのスペックです。(https://www.qualcomm.com/products/mobile/snapdragon/pcs-and-tablets/snapdragon-x-elite)

「SnapDragon X」の能力は非常に高いようです。現在①②③の最新のCPUと比べても、性能がよくかつ省電力です。そして特筆すべきは「生成AI専用のめちゃくちゃ早い処理エンジンを積んでいる」ことです。これを「NPU(Neural Processing Unit)」と言います。

生成AIの処理計算は、CPUでもGPUでもできます。しかし一般的にはCPUは「基本的な計算処理」、GPUは「描画に特化した計算処理」を行っています。つまり基本的には何かしら作業(というか本業)をしているわけで、そんな最中に生成AIの処理計算を彼らに任せてしまうと、いわば「片手間」でお願いすることになります。この状態はあまり効率的ではないですね。そこで「NPU」という生成AI専用の処理エンジンに集中して任せることで、より生成AIの処理能力が向上し、かつCPUやGPUの負荷を下げることができます。

生成AIの処理能力は、1秒間当たりの演算性能の高さを指標としていて「TOPS」という単位を使います。「1TOPS」は1秒間に1兆回の演算ができることを意味します。(すごすぎてわけが分からない速さですね・・)

現時点での①②③のTOPSを確認してみます。「NPU単体」とは文字通りNPU単独での性能、「SoC全体」とは、CPU+GPU+NPUの合計能力を示しています。

①Intel Core Ultra    NPU単体で10TOPS SoC全体で34TOPS
②AMD Ryzen 8040 NPU単体で16TOPS SoC全体で36TOPS
③Apple M3       NPU単体で18TOPS SoC全体では非公開

 ここで、④「SnapDragon X」はどうなるかというと・・

④SnapDragon X NPU単体で45TOPS!!! SoC全体は不明(一部記事では75TOPSとも!)

NPU単体で見ても①②の全体を超えるくらいの驚異的な性能であることがわかります。こんなのが突如登場してしまったら、そりゃワクワクしますね。

4.「Copilot+ PC」とは?

各社が「SnapDragon X」搭載ノートを発表した背景はもう一つあります。
それはMicrosoftが、今後のノートPCに求める性能として「ある一定の基準」を作ったからです。MicrosoftはOpenAI社のGPTベースの「Copilot」という生成AIサービスを展開しています。私もこのTechBlogで過去何度か試行しています。

このMicrosoftが、Copilotを利用していく上での生成AIの処理能力として、「40TOPS以上」という「基準(システム性能要件)」を掲げ、それを満たすノートPCを「Copilot+ PC」準拠PCとして発表するプロモーションを行いました。そしてそれを皮切りに、各メーカが「Copilot+ PC」準拠PCを発表しました。(5/20 米国ワシントン州レッドモンドにて)

そして前述の比較を見てわかる通り、現時点ではMicrosoftが掲げる「Copilot+ PC」の条件を唯一クリアしているのは④の「SnapDragon X」シリーズだけなのです。①②③では「40TOPS」以上の条件を満たせていないので、それらを搭載したノートPCでは「Copilot+ PC」を名乗れないんですね・・。だから、今回発表された新作ノートPCはすべて「SnapDragon X」搭載なんです。

現時点での販売状況を考えたら、かなり厳しい基準であることはわかりますが、それでもMicrosoftがこの基準を掲げた意図としては、「これから生成AIをより実用的に、効率的に利用していくにあたり、モバイル環境としては最低限これくらいのスペックのPCは用意してくださいね。」というMicrosoftからのメッセージなのではないかなと思っています。

5.もちろんいろんな課題もある、でもこのようなニュースはワクワクする

今回は、非常に多くの記事を参考にさせていただきました。その中にはいくつかの課題もありました。

単純にNPUの数値競争になってしまい、それだけが販促目的として先行して実質的なAI処理には体感できるほどの差は出てこないのではないか?
SnapDragonはARMベースであり、①②とは根本的なアーキテクチャーが違うので、既存のアプリケーションのARM対応状況やエミュレーション上での動作によっては、思ったより浸透しないのではないか?
あくまでCopilotを利用する上での基準なので、それ以外の生成AI(NvidiaやGoogleなど)が今後シェアを広げていった場合は約に立たないのではないか?

・・・などなど

どれも現時点ではそうかもしれないし、そうでないかもしれない。どちらともいえません。

しかし、Intel,AMD,Appleの3強だったバトルリングに、第4のSoCが突如参入してきたこと、そしてMicrsoftの高い基準によって、3強が現時点では太刀打ちできない状況であるというニュースを知ってとてもワクワクしてしまったことは事実です。

しかし、3強(①②③)の各SoCだって、このままでは終わらないでしょう。近いうちに40TOPSなんて目じゃないくらいの性能を持つSoCを発表してくることでしょう。そしてそのニュースにもきっとワクワクしてしまうと思います。今年の後半を勝手に楽しみにしてます。(笑)

参考リンクとして学習の御礼も含めて紹介させていただきます。私と同じようにワクワクした方は、ぜひ以下の記事も見て頂けたらと思います!本当にありがとうございました!


以下の2記事は特におすすめです!私が今回自分なりに記事を書こうと思ったきっかけとなりました。非常に詳しくわかりやすく、そして発表の背景や思いについても書かれています。

【笠原一輝のユビキタス情報局】 40TOPS以上のNPUが必要な「Copilot+ PC」を策定したMicrosoftの真の目的
Microsoftは5月20日に、同社本社がある米国ワシントン州レッドモンドで記者会見を開催し、同社が推進しているローカルAIアプリケーションが実行できる「Copilot+ PC」を発表した。合わせて「Surface Pro/Laptop」が発表されたほか、Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、SamsungなどのPCメーカーがCopilot+ PCを発表した。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1594267.html
【笠原一輝のユビキタス情報局】 Core Ultraで2024年のPC業界のトレンドとなる「AI PC」、その現在地と未来
Intelは12月14日(米国時間)に、開発コードネームMeteor Lakeで開発してきた最新SoCを、「Core Ultra」として発表し、OEMメーカーから搭載製品が出荷開始されたことを明らかにした。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1555375.html


以下の記事はAppleのM3のNPU値について確認するときに参考にさせていただきました。

AppleのAI戦略の謎 ~ 「M3 Mac」は「iPhone 15 Pro」の半分のAI性能・Windowsとどう競争する? - Nishiki-Hub
昨年、2024年はオンデバイスAIの年になるという考察をした。今回は、各社のNPUの性能について触れていく。
https://nishikiout.net/entry/2024/01/08/191858

TOPSについてわかりやすくまとめてくださっていて、とても参考にさせていただきました。

AI PCで求められるPCの性能指標「TOPS」とは何か? | XenoSpectrum
PCを購入する際に、例えばCPUならばクロック周波数やコア数、RAMならばその容量、グラフィックボードならば搭載VRAM容量やメモリ帯域幅など、比較のための指標が数多く存在する。また、ベンチマークテストによって、CPUや ... Read more
https://xenospectrum.com/what-is-tops-the-pc-performance-index-required-for-ai-pcs/



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