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2019年10月16日、READYFORは進化します。ロゴ・サービス表記・UIを刷新し、新ステートメントを掲げました。
今回のコーポレイトアイデンティティ(CI)の刷新を手がけたのは、2018年10月にREADYFORのクリエーティブアドバイザーに参画した、電通の菅野薫さん率いるクリエイティブチーム。
新しいロゴとブランドステートメントはどのように生まれたのか。どのような想いと技術が込められているのか。電通のクリエイティブディレクターの菅野薫さん、アートディレクターの窪田新さん、コピーライターの渡邊千佳さんと、READYFOR CEO米良はるかがCI制作の裏側を語ります!
(左から、電通のアートディレクターの窪田新さん、コピーライターの渡邊千佳さん、クリエイティブディレクターの菅野薫さん、READYFOR CEO米良はるか)
インターネットを前提とした「有機的な想いの塊」が動くロゴ
ーー たくさんロゴを作られていますが、どういう流れで現在のロゴに決まったんですか?
窪田新さん(以下、窪田):最初は、READYFORがクラウドファンディングの会社として、やりたいことがある人たちに歩み寄って想いをかたちにしていくことを重点的に考えていたんです。河原の石のように、四角から研磨されて丸くなる想い、人と人とのつながりをイメージして「R」を表現しました。
米良さんに見せると、喜んで気に入ってくれてはいたんですよね。でも、これ自体は、READYFORの事業を言い当てているものの、会社のパーソナリティの部分で引っかかるものがあったようで。
米良:かわいいし、すっごく素敵!と思ったんだけど、何かが引っかかって……どうしよう。言語化できないまま、菅野さんに電話で長時間話を聞いてもらって。その過程で「母性」というキーワードが出てきたんですよね。
菅野:米良さんと話す中で、「女性っぽさが欲しい」という言葉が出てきて。「女性的」「男性的」という表現は、人によって捉え方が違い、意外に結実しづらいんですよ。だから、その言葉が何を表すものなのか咀嚼してみたら「母性」というキーワードが浮かびました。
窪田:人と人をつなぐ事業から、会社のアイデンティティに一歩踏み込んだ時に、「母性」というキーワードはいい!と思いました。
そこから「有機的な想いの塊」をイメージして、動くことを前提に「R」を表現したら、その中に「i」が浮かび上がってきて、人を育てて一緒に成長していく絵が見えた。そこにグラデーションで熱量を加えて、このロゴが生まれました。
米良:このロゴを見たときは、きゃー!絶対にこれがいい!って興奮して(笑)。これまで感じていた違和感は全くなく、ピタッと心が重なったんです。役員に見せたら「心臓っぽいね」と言っていて、私たちが大切にしているハート、想いも想起できて、完璧だと思いました。
窪田:このロゴは、有機的な塊が心臓のようにバクバク動くことをイメージしてつくったので、その見方は嬉しいですね。WEBサイトでもモーションを入れて、一つの生命体のように動かしています。ずっと見ていられるように、動きにもこだわりました。
米良:動きも何パターンも出してもらいましたもんね。
窪田:動きから連想することも、グラデーションを使うことも、私としてはかなり珍しいです。通常、V.I.(ビジュアル・アイデンティティ)を作る際は小さくてもわかるように最初の案のように色味やかたちをはっきりさせることが多いので。このロゴの作り方は、少なくとも、基本のデザインの教科書には載らないですね。
菅野:このロゴが、紙の上でではなく、WEBで活躍することが前提になっている時代だからこそ成り立つデザインですよね。
ステートメントは目指す世界を映し出す「インナーの北極星」
ーーステートメントはどのように決まったんですか?
菅野:ステートメントも同時並行で進めていて、うぅーうぅー悩んでいたよね。
渡邊千佳さん(以下、渡邊):うぅーうぅー言ってましたね(笑)。READYFORらしさ、色やテイストを言葉で掴むまでに時間がかかりました。インターネット上に存在しうる米良さんや実行者さんのインタビューを全部読んで。
米良:会うたびに「米良さんはこう言っていて」と私やREADYFORに関する情報が深まっていて、驚きました。
渡邊:私はコピーを書くとき、思想やテイストを拾い集めて、ぐぅーっと自分の中に入れて、ばあーっと外へ出すみたいなことをするんですね。ロジックではなく感覚で、READYFORらしさが掴めてきた段階で、「母性」というキーワードが出てきて、すごくしっくりきました。
READYFORはクラウドファンディングを通して、実行者さんの想いに寄り添って叶えるぞと、母性的な仕事をしている。
窪田:言葉を重ねる中で、チームの中で何をかたちにしたいか、そのイメージが見えてきましたよね。
渡邊:菅野さんがREADYFORの特徴として、相反する性質が共存するから、ステートメントも相反する言葉を組み合わせたほうがいい、と素晴らしきディレクションをしてくれて。ただエモいだけでなく、提案性がないといけないと思っていたので、プラットフォームではなく「金融機関」という言葉を使うことにこだわりました。
米良:「金融機関」という言葉は挑戦的で、向かいたいとは思っているけれど、現状そこに至ってはいないので、正直、決断するのが怖かったです。
渡邊:ステートメントは世の中に対して提案性があることと、「インナーの北極星」であることが大事だと思っているんです。READYFORで働く人にとって、お金の流れを変える「金融機関になるんだ」という言葉は、進むべき道しるべになる。
米良:「金融機関」という言葉は、今はフィット感はないけれど、私たちの北極星、羅針盤としてはすごくいいメッセージだと思います。私たちが目指す世界は、世の中の人がイメージする既存の金融機関とは違うかもしれない。でも、テクノロジーの力を使って金融の仕組みをアップデートしたいと本気で思っています。新しい概念の「金融機関」になる。現状まだ手が届いていないので、ドキドキしますが、向かっていきたい。
渡邊:ドキドキするくらいの温度感がいいんだと思います。ただきれいで正しい言葉を並べただけだと、引っかからないから。
10年先を見て、共に深く潜り込んでかたちにしたアイデンティティ
ーー今回のクリエイティブで苦労した点や特に意識したことはありますか?
菅野:通常の広告、企業の一商品のプロモーションであれば、ある程度決め打ちでこちらから提案ができるのですが、今回の場合、最初の時点では僕らの中には答えがない。ロゴとステートメントが、READYFORのみなさんが日々ビジネスと向き合っている感覚とずれていないか。その答えを内側から引き出して探っていくしかないので、時間がかかるものなんですね。しかも、その答えは感覚的なもので、言語化するのは難しい。
米良:最初の方で提案を受けたときに、それ自体は素敵なんだけど、何か引っかかる。その「何か」を言葉にはできなくて。どう伝えたらいいのかわからない。ふんわりとした抽象的なイメージがあっても、具体的な言葉には落とし込めないんですよね。
菅野:それでいいんです。たまに「もっとここを大きく」とか具体的に指示してくる人がいますが、最終的な表現はプロに任せてもらったほうがいい。具体への落とし込みは経験を重ねたプロフェッショナリティがあるので。無理に言葉にしなくても、大丈夫なんです。米良さんは、見せたときの「キャハうふ」も含めた反応でわかるんですよね。自分で気に入った服を見つけたときの顔なのか、ウィンドーショッピングに付き合わされているときの顔なのか。
窪田:わかりましたね(笑)
米良:たしかに(笑)。でも、最初は全然違う方向性の案が出ていたので、JAZZに行くならこの服で、フェスに行くならこの服だよね、って捉え方によってはどちらも選ぶことができた。
菅野:ブルーノートに行くのか、フジロックに行くのか。
米良:そう。まさに、私たちがアンビバレント、両極端の性質を内包しているからこそ、迷ったんだと思います。でも、今のロゴを見たときは、頭で考えることなく、これがいい!って思ったんですよね。
菅野:最終的には、生理的な反応に従ったほうがいいんですよ。言語化できるものはほんの一部でしかなくて、言語化出来ないことの方が情報量は多いので。周りの反応とか、ロジックではなく、自分が生理的に受け入れたものを信じて、いろんな人たちと一緒に育てていくことが大事だと思います。
渡邊:一緒に育てていくという意味でも、今回は、対世の中、READYFORで働く人、実行者、支援者、と向き合うべき人が多かった。全体的な方向性が見えてきても、一つ一つの言葉のチョイスは時間をかけて丁寧にやっていきました。自分の中で一枚の絵が見えるまで、言葉の微調整を重ねて。
菅野:窪田も、渡邊も、現場で手を動かしてかたちにしていく人間は、かなりの試行錯誤を重ねていましたね。どれだけ手間と時間がかかっても、今回こうして、一緒にREADYFORのアイデンティティを探っていくことが大事だと思っていました。
米良:CIが決まった後に、クラウドファンディングサービスのコピーも考えてもらったんですが、すっっっごくよくて。深く潜り込んでCIをしっかり決めてから展開することの重要さを実感しました。これからいろんな展開をしていきたいと、ワクワクしています。
菅野:根底にあるアイデンティティが共有できているので、今後の展開はしやすいですよね。最初の仕事がこれでよかった。僕らもこれからREADYFORがどうなるか、10年先の未来に興味があります。
米良:私たちが実現したい世界を映してくれている、このロゴとステートメントを羅針盤に、追いつけるように進んでいきます!
菅野薫さん
(株)電通 CDC / Dentsu Lab Tokyoエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト2002年電通入社。テクノロジーと表現を専門に幅広い業務に従事。本田技研工業インターナビ「Sound of Honda /Ayrton Senna1989」、Apple Appstoreの2013年ベストアプリ「RoadMovies」、東京2020招致最終プレゼン「太田雄貴 Fencing Visualized」、国立競技場56年の歴史の最後の15分間企画演出、GINZA SIXのオープニングCM「メインストリート編」、BjörkやBrian EnoやPerfumeとの音楽プロジェクト等々活動は多岐に渡る。JAAA クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2014年、2016年))/カンヌライオンズ チタニウム部門 グランプリ / D&ADBlack Pencil(最高賞)/ One Show -Automobile Advertising of the Year- / London International Awardsグランプリ / Spikes Asiaグランプリ/ ADFEST グランプリ / ACCグランプリ / TIAA グランプリ / Yahoo! internet creative awardグランプリ/ 文化庁メディア芸術祭 大賞 / Prix Ars Electronica 栄誉賞 / STARTS PRIZE / グッドデザイン金賞など、国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。
窪田新さん
2006年多摩美術大学卒業 同年電通入社。最近の仕事に、キリン/ハートランドビール、本田技研工業/Honda NEWTYPE! CLARITY、大塚製薬/UL・OS、静岡新聞SBS、TCC年鑑2018、MdNデザイナーズファイル2019、釜石鵜住居復興スタジアムC.I.など。主な受賞に、ニューヨークADC / 金、銀、銅賞、D&AD / 金、銀、銅賞、カンヌライオンズ / 金、銀賞、アドフェスト / 金、銀、銅賞など。
渡邊千佳さん
2010年電通入社。コピーライター。山梨県出身。2016年度の東京コピーライターズクラブ賞では、長崎バスのシリーズCMで最高新人賞を受賞。またグラフィックでTCC賞を受賞し、史上初のダブル受賞となった。現在はキリン一番搾り、NHK、TOKYO2020招致委員会、BMW、ライオン、ソニーミュージック、Yahoo!、沖縄・北海道・島根・山梨・佐賀・長崎・宮崎等地域プロモーション等を担当。九州に出向していた経験を生かして日本の地域仕事をよくやります。主な賞歴: TCC最高新人賞、TCC賞、CCN最高賞、FCC最高賞、広告電通賞OOH部門最高賞、広告電通賞新聞広告部門最高賞、ACCゴールドなど。