出口を閉じる
最近、ある人の話を聞きました。その方は奈良で有数の美容品メーカーの副社長さんです。
その会社で10年以上を務めてこられ、直近の8年間は副社長として重役を任されていたとのこと。
その副社長と食事をしながら話していて、衝撃の一言がありました。
「私、この会社を辞めずに最後まで勤めよう決めたの、ここ3か月の話なんですよね~」
みんなびっくりしました。昔から知っている方ですが、とてもイキイキ働いておられ、いずれ卒業を考えている雰囲気には微塵も見えなかったからです。
その方いわく、その会社で最後まで勤め切るイメージが持てずに、いつかは独立や転職をしようと心の片隅に思い描いていたとのこと。
しかし、ある時にふと気づいた瞬間があったそうです。
それは仕事に対する不満や不安を抱えたときの「なんでこの会社はこんなんなのだろう・・・」とか「なぜこの仕事はこんなに嫌なところがあるのだろう・・・」とか、他責に思っている自分にです。
心のどこかでそういう気持ちがあるので、難しい問題に直面すると、まぁどうせ辞めるし、と早い段階で諦めていたり、「この問題は私ではない誰かが解決するべき問題だ。私はこんなことに時間を取られている場合じゃない」と思ってフラストレーションに感じたりしていたそうです。
そして、その日から意識を180度変えて、「絶対にこの業界、この会社ですべてやり切る」と決めて日々過ごすと決めた。決めた瞬間にとても楽になったそうです。
その後に起こる問題がすべて自分事におもえて、自分がコントロールできることに思えてきた。
だからイライラしなくなったとのことでした。
私が共感できたのはこの点です。
人はやらされ感がある仕事はどんなに小さな仕事でもストレスです。
でも、自分がやりたくてやってるんだと思えた瞬間にどれほど忙しくても苦ではなくなります(ゼロじゃないけど)
また同じ時期に、ある歌手を目指す男の子からボイストレーニングを受けていたことがあります。
その子がある日のレッスン終わりに、私に相談してきました。
「岡田さん、もう30手前にもなってしまいましたが、僕は歌手になれますかね?」と。
本気で歌手になりたい!と口では言っていますが、どれくらい歌手になるための行動をしているのかというと、日々は生活のために働き、夜は飲み歩いたりしているとのことでした。
本人は夜の社交場でのつながりで、業界の方などに知り合えるから意味がある、と本気で考えているみたいでした。
しかし、深掘りしていくと、昼間の仕事の稼働を減らしたり、変えたりしないのは歌手になれなかった時のための保険を用意しておきたいから。夜に出歩くのは友達と遊ぶことが楽しいからという本音が見えました。
ここまで見てもらってわかると思いますが、この子は歌手になれるでしょうか。
なれるかもしれませんが、相当にハードルは高そうです。
私も前職で10年間、従業員の立場で働いていた時、いつか独立しようと考えていました。
いつか独立しようと考えながら働いていたので、できるだけ効率のいい仕事を心がけたり、自分にとってメリットが無いと思えることを避けたり、面倒ごとはどうでもいいから適当に流しておけばいいというマインドでした。
仕事で成果が出ていたので一定楽しくはありましたが、同時にものすごくフラストレーションがありました。
当然ですが、周りは自分の思い通りにならないことしかないからです。
もし、出口を塞いで、マインドだけでも「最後までやり切ろう」「おれがやらないと誰がやるんだ」と思えていたら、もっと仕事を楽しめただろうし、成長できただろうなと思います。
今回のメッセージで言いたいことは、「みんな定年まで働いてね」ということではありません。
(もちろんそうなれば嬉しいです)
より当事者意識をもって、結果が出せる人間でありましょうということです。
結果を出す人間は、結果を出すための方法を自ら生み出します。
くわえて、結果が出るまで粘り強く取り組みます。諦めません。
出口を作りながら動いていると、結果を出す前に困難にぶち当たると「諦める理由」を天才的に生み出します。
それが良いことなのか悪いことなのかは状況によりますし、逃げるほうがもしかしたら正解な時もあるかもしれませんが、私が個人的に思うことは「自分でこうすると決めたこと。自分との約束を自分で破る人間であっては良くない」ということです。
もし、みなさんにも「出口を作りすぎてるな」と思う節があれば、いまの行動力や決断力を阻害している要因になっているかもしれません。ぜひ自分と向き合ってみてください。