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フラワー事業で世界の舞台へ―――「花」の装飾だから届けられるきっかけを増やしていきたい

コロナ禍を経て変化した結婚式。一貫して持つ、「お客様の想像を超える」という想い

現在ユニットマネジャーの吉野が在籍しているのは、SJF神戸店。SJFが担うフラワー事業としての仕事は大きく3つあり、その1つがウェディングだ。

吉野 「ウェディングの主な仕事内容は、結婚式に向けたフラワーデザインの打ち合わせ、制作、披露宴会場の空間装飾です。最近の傾向としてはコロナ禍前と比べると、20名ほどの少人数規模で催すことのできる家族婚が増えた印象です。一方で、アフターコロナに向けて、縮小していた70~80名規模の結婚式も徐々に増え始めていて、二次会などを企画されるお客様もいらっしゃいます」

2つめはBtoC業務。ウェディング以外で花を通して気持ちを届けたいお客様のために、想いが届くような花束を用意している。

吉野 「プロポーズ用の花束のオーダーも少なくありません。神戸店では、自社のレストランを併設しており、レストラン側のプロポーズプランナーと共に、想いを届けられるような花のプランニングもします」

そして3つめがBtoB業務。商業施設や宿泊施設の装飾、アパレルブランドの店舗装飾、祝い花などを手がけている。吉野はこれら3つの事業を見つつ、チームとしての方向性の提示や、メンバーのマネジメント、育成を担っている。

吉野 「マネジメントで意識しているのは『機会提供』。たとえば入社してすぐのメンバーでも、自分で何かを提案して装飾で表現できるような仕事を任せるようにしています。もちろん提案時のデッサンのような技術力だけでなく、接客力も欠かせませんから、接客のロープレをすることもあります」

吉野は、マネジメントのかたわらウェディングや各種会場のフラワーデコレーションも手がける、いわゆるプレイングマネージャー。お客様に対しては、「想像以上でした」と感動してもらえる仕事を心がけていると言う。

吉野 「ウェディングで言えば、テーブル上にお花を置くだけでなく天井から装飾したり、おふたりが入場する入り口や、お座りになる箇所の背景に工夫を凝らしたり。ゲストの皆さまが会場に入ったときに、おふたりの持つ世界観が一目で伝わるようなものにするのはもちろん、期待値を超える、あっと驚かれるような空間づくりをめざしています」

「担当していただけて本当に良かったです」。お客様の喜ぶ姿こそ、この仕事の誇り

2016年に中途入社した吉野。26歳まではプロのサッカー選手だったものの、ケガを機に転職を決意。SJFで働く大学時代の先輩を見て、おもしろそうな仕事だと感じたことが、入社の決め手だった。

そして入社後は、まず装飾業務からスタート。花を飾る技術をひとつずつ身につけ、数々の現場の雰囲気を体感しながら2〜3年経験を積み上げていった。

吉野 「仕事を覚えていくうちに、お花に対する興味関心がどんどん高まっていったのを覚えています。自分で練習して装飾し、それを先輩に褒めてもらって、『次はこれをつくってみよう』と試行錯誤を重ねて。お花を飾ることの楽しさ、お花という存在のすばらしさ、美しさを知るとともに、どんどん仕事に惹かれていきました」

2019年には、葉山店に異動した吉野。その半年後には神戸店に異動し、2021年からはユニットマネジャーに昇格した。この仕事の魅力は、お客様から喜びの声を聞くことだと言う。

吉野 「最近では、神戸店に異動する前に所属していた神奈川県にある葉山店時代のお客様から、結婚式のフラワーデザインを頼まれました。そのお客様はもともと2年前に挙式する予定で、私が葉山店にいたころに担当していたのですが、コロナ禍で挙式を延期されていて。このたびようやく挙式が決定したとのことで葉山店に連絡をもらいました。ところが、私は神戸に異動しています。その旨を伝えましたが、お客様が『ぜひ吉野さんに担当してもらいたい』と言ってくださって。オンラインで打ち合わせを重ねたんです」

当日の施工は葉山店のメンバーに任せたものの、吉野はボックスに入れた花とメッセージカードを用意。挙式当日の控え室に置いてもらった。

吉野 「挙式当日の朝に『担当していただけて本当に良かったです』という光栄な連絡をいただきました。こんなふうに自分の装飾でお客様が喜んでくださることが、私のやりがいです。この仕事を誇りに思うし、だからこそ今日まで続けられているんだと思います」

大会で日本一になり、世界の舞台をめざすために。社内イベントで腕を磨く

今、SJFが見据えるのは、東京で開催される祭典「フラワーアートアワード」での受賞だ。

吉野 「『フラワーアートアワード』には、これまで過去にSJFとして複数回参加しています。当時の私は入社したばかりで何も知りませんでしたが、今回再び参加しようということで、熱を入れて準備を始めているところです。大会に出る目的は、SJFの技術が世間にどれほど通用するかの腕試し。日本一になるために、チーム一丸となって頑張ります」

大会に向けた準備として、2023年2月には社内でコンテストを行った。決められたテーマに沿ってフラワーアートを制作し、社内イベントの会場で展示したのだ。

会場はPDPが岐阜に新しくオープンした長良川清流ホテル。SJFとして、「岐阜」をテーマにフラワーアートを展示した。

吉野 「2つのチームに分かれて制作をし、私たちは、岐阜にゆかりの深い織田信長をベースに、その雰囲気を作品で表現すべく『戦慄』という言葉をテーマに掲げました。

完成したのは、黒い槌をまっすぐ垂直に20本立て、真っ赤に染めた葉や、赤い花が浮いているように見えるデザイン。色としては黒と赤という、なかなか見ないような装飾になりました」

SJFらしい装飾ができたと思う一方、課題も見つかった。

吉野 「会場では、鑑賞してくれた人たちにアンケートをとったのですが、その結果を見る限り、鑑賞者にテーマがしっかり伝わっていませんでした。テーマと作品がもっとリンクする作品をつくらなくてはという反省ができました。

実際、もう1つのチームでは、『使う資材ひとつにこだわれるかで、伝わり方も変わる』という振り返りをしていました。量販店で買うのではなく、木材屋さんから質の良いものをいただくことで、より伝わる装飾に変わるのではないか、と。そういう気づきが出てきた点で、貴重な体験だったと思います」

社内イベントでフラワーアートを展示したのは、腕試しの意味合いのほかに「社内にSJFを理解してもらいたい」「SJFというブランドを社内に再認識してもらいたい」という狙いもあった。社内から挙がった忌憚のない意見を糧に、技術をブラッシュアップしていくと、吉野は未来を見据える。

ただお花を飾るだけではない。見た人に「きっかけ」を与えるような空間を作りたい

SJFが目標とするコンテストでの受賞。そのためには、日々の仕事に全力を注ぐことが、そのトレーニングになると吉野は考えている。

吉野 「コンテストで求められることは、日々の業務の延長にあります。ウェディングで、新郎新婦様の決めたテーマをビジュアルで表現したり、法人からの依頼では企業様のオーダーに応えたりすることは、コンテストで必要なスキルとほとんど変わりません。だからこそ、これからも目の前の依頼一つひとつに、真摯に取り組んでいきます」

「フラワーアートアワード」の受賞の先では、さらに大きな舞台を見据えている。ニューヨークのファッションの祭典「メットガラ」への参加だ。

吉野 「世界に名だたる著名人、セレブが来るようなファッションイベントです。ここに参加するという大きな目標を掲げています。たとえばハイブランドの案件など、実績がないとできないような仕事を獲得する足がかりにできればと思っています」

露出を増やして、知名度を高め、仕事を広げていくという狙いだ。最近ではそのファーストステップとして、Instagramでの発信に力を入れ始めている。

吉野 「SJFの公式アカウントのほかに、各メンバーがそれぞれ個人のアカウントで発信していくという仕組みです。実際に短期間のテストをしたところ、さっそく手応えがありました。

ウェディングのお客様がインスタの投稿を見てくれて、打ち合わせのときに『これがいいです』と言ってくれることもありました。この調子でInstagramを続けて、ウェディングだけでなく、さまざまな新しいお客様との出会いのきっかけをつくれたらと思います」

そんな吉野は、BtoBの案件をもっと増やしたい、ひいてはBtoBにさらに特化したいというビジョンを描いている。その背景には、花に触れる機会を増やしたいという想いがある。

吉野 「BtoBで、大きな案件を手がけたいです。神戸市で行われるイベントなど、より多くの人の目に触れるような装飾をつくれたら嬉しいですね。というのも、花に触れる機会がどんどんと減っているように思うんです。私自身も、最初はバラしか知りませんでしたから。

お花というツールを使って、花業界だけでなく、世の中すべてに影響を与えたいというのが私のビジョン。そのためにも、ただ飾るだけではない、イベントと装飾をかけ合わせた、われわれにしかできない仕事を実現できたらと思っています。装飾を見た人に、何かのきっかけや影響を与えられたら嬉しいです」

SJFのユニットマネジャーとしての吉野の目は「世界」へと向いている。フラワー事業のさらなる可能性を広げながら、吉野の挑戦は続く。

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