ノベルティは、2024年末よりリモートワークとフレックスタイムを組み合わせた柔軟な働き方を導入しています。このストーリーでは、導入の背景から運用の中で生まれた変化と現在地を紹介します。
目次
なぜ、いま柔軟な働き方なのか
導入の背景──決断の前にあった複数の文脈
導入からガイドラインの整備へ
運用で意識していること──文化として根づかせるために
雑談を“設計”する──偶発性をつくる試み
口頭の合意はチャットに“翻訳”する──透明性と検索性の担保
議事録は“チームの記憶”──最低限の型で必ず残す
導入後の変化──“感じたこと”と“確かめられたこと”
現在の課題──“正しく緩い”を保つむずかしさ
おわりに──制度は目的ではなく、働きやすさを支える“補助線”
なぜ、いま柔軟な働き方なのか
ノベルティは、2024年末よりリモートワークとフレックスタイムを組み合わせた柔軟な働き方を導入しています。
- フレックスタイム制(フレキシブルタイム6時から22時、コアタイム 10時から17時)
- 月間の勤務日数×8hの勤務時間を満たしていれば原則フレキシブルによる勤務が可能です。
- ハイブリッドによるリモートワーク併用可。
このストーリーでは、導入の背景から運用の中で生まれた変化と現在地をまとめました。結論から言えば、制度は「用意して終わり」では機能しません。文化として定着して初めて、日常の生産性に変換されます。
導入の背景──決断の前にあった複数の文脈
最初のきっかけは、働く人の選択肢を広げることでした。通勤時間の短縮やライフイベントへの対応はもちろん、集中を要する作業とコラボレーションを要する作業を切り分け、時間の使い方を自律的に設計できる環境を整えたいという意図がありました。
もう一つの文脈は、チームの創造性です。CS・ディレクター・マーケター・デザイナー・エンジニアが在籍する当社では、非同期で深く考える時間と、同期で素早く意思決定する時間の両方が必要です。場所と時間の制約を緩めることで、職種横断のコラボレーションを滑らかにする狙いがありました。
決断にあたっては、ルールから入らないことを重視しました。まずは「目的と原則」を言語化し、実運用で起きたズレを観察してから最小限のガイドラインを足す。小さく始めて、学びながら整えていく方針です。
導入からガイドラインの整備へ
2024年12月よりテスト運用を開始。社内で希望をとり、週の中で”月曜出社+任意の1日出社”というバランスを選択しました。
数週間の運用を経て、いくつかの課題が浮かびました。たとえば「コミュニケーション不足」「出社メンバーの会話で決定したことをリモートメンバーが把握できない」といったものです。
そこで次の段階として、コミュニケーションの促進、会議設計、情報の置き場などについて、チーム共通の型を設けました。
運用で意識していること──文化として根づかせるために
雑談を“設計”する──偶発性をつくる試み
リモートワークでは、廊下や休憩スペースで生まれていた偶発的な会話が減ります。そこで私たちは、あえて雑談の時間を業務に組み込むようにしました。Slackのチャンネルに「雑談」専用のものを作ったり、ボードゲーム大会の時間をつくって一緒に笑う日もあります。
業務と関係のない交流が、心理的安全性やチームのつながりを育て、結果として相談のしやすさやアイデアの広がりに直結していきます。雑談は仕事の余白ではなく、協働の土台だと捉えています。
口頭の合意はチャットに“翻訳”する──透明性と検索性の担保
出社メンバーが対面で交わした大事な話は、その場で終わらせずテキストに置き換えます。結論と理由、担当と期限を短くまとめ、関係者がいるチャンネルに共有するのが基本です。
リモートメンバーも同じ前提に立てるようにし、チャット検索で振り返れる形を保つことが目的です。瞬間の“了解”を、組織の“合意”に変えるための一手間として、口頭からチャットへの翻訳を徹底しています。
議事録は“チームの記憶”──最低限の型で必ず残す
会議は記憶に頼りません。終了時に決定事項と次のアクションを明確にして、その場で議事録に残します。誰が何をいつまでに行うか、未決の論点は何かを簡潔に記し、関連資料やタスクへのリンクを添えておきます。
録画よりもまず文字の記録を優先し、後から読んでも意図が再現できる“読み物”にすることを大切にしています。議事録は個人のメモではなく、チームの記憶であり、次の意思決定を速くするインフラです。
導入後の変化──“感じたこと”と“確かめられたこと”
主観的な面では、集中時間の質が上がったという声、議論が短く濃くなったという声が増えました。非同期の準備が進むほど、同期の場が意思決定に集中するためです。逆に、雑談や偶発的な学びが減りがちという感触もあり、意図的に交流の機会を設計する必要を再認識しました。
また、採用・オンボーディングの面では、地理的制約の緩和によって母集団の幅が広がる一方、最初の数週間で「誰に何を聞けばよいか」を明瞭にすることの重要性が増しました。定例の1on1で補助線を敷くことで、立ち上がりの心理的負荷を下げています。
現在の課題──“正しく緩い”を保つむずかしさ
課題がない制度はありません。いま直面しているのは、「基本の型」を維持しつつ、現場の創意を阻害しないバランスの取り方です。
型が緩すぎると再現性が落ち、固すぎると創造性が痩せます。定期的なふりかえりで“効いているもの・形骸化したもの”を仕分け、削るべきものは削り、残すべきものは明文化する。
制度は生き物であり、更新し続ける意思が問われます。
おわりに──制度は目的ではなく、働きやすさを支える“補助線”
リモートワークは、目的ではなく手段です。私たちの目的は、丁寧に、楽しく、価値あるアウトプットを生み続けること。そのために、場所と時間の自由度を高めるリモートワークを導入しました。制度は“補助線”であり、働く一人ひとりの自律と信頼が主役です。
導入の背景を言語化し、社内の声を拾い、運用で学びを重ねる。この反復の質こそが、制度の善し悪しを決めます。これからも私たちは、現場の手触りを大切にしながら、ルールを更新していきます。柔軟な働き方を通じて、より良いプロダクトと体験を、より良い働き心地から生み出していくために。