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FC今治×ネットプロテクションズ対談企画「はたらくということ」第2回:生え抜き社員が果たす役割

2020年1月に「次世代育成パートナーシップ」の締結を発表した、今治.夢スポーツとネットプロテクションズ。自社の従業員だけでなく、大学生や高校生、中学生に向けても課題発見、解決型のワークショップを開催。次世代教育・育成に積極的に取り組んでいます。このパートナーシップの締結よりも先に、今治.夢スポーツとネットプロテクションズは次世代育成への取り組みを独自に進めており、そこには驚くほど通じ合う哲学があったといいます。

終身雇用からキャリア重視の働き方へと世の中がシフトするなかで、今回はあえて両社「生え抜き」の2人に登場していただきました。なぜ2人は、転職することなく長い間ひとつの会社で働くことができているのでしょうか。

今治.夢スポーツ 担当執行役員 青木誠

今治市出身。今治西高校、横浜国立大学卒業。2013年、株式会社今治デパートから出向する形でFC今治の運営に携わり、2015年からのRe:Startに従事。ホーム戦運営、グッズ、チケット販売を手掛けるマーケティンググループ長を経て、現在、経理・財務・総務・人事等を担うアドミニストレーショングループ担当執行役員。

ネットプロテクションズ 杉山崇

2007年に大学院を卒業後、ネットプロテクションズに新卒入社。セールス、マーケティングを経て、ポイントサービス立ち上げに携わり運営責任者を歴任。現在は2017年に提供開始したカードレス決済「atone」の運営責任者を担当。企画、サービス設計から運営まで、幅広く関わりながら事業づくりと組織づくりを進めている。

一人でひたすら実務をこなしていた黎明期

― 働くことを様々な側面から考えるため、今回は「生え抜き」のお二人にご登場いただきました。青木さんは現会長の岡田武史さんがFC今治を運営する「株式会社今治.夢スポーツ」のオーナーになる前から、そして杉山さんはネットプロテクションズの新卒採用第一期生として、組織の成長に貢献し、そして成長するさまを肌で感じてきました。まずは青木さんが、今治.夢スポーツで働くことになった経緯を教えて下さい。

青木:今回の企画は「長く働く」ということだそうですが、実は自分は大学を出てから最初に就職したところで、すぐに辞めてしまったという強烈な挫折の体験があります。当時は「自分の人生は終わった。」と感じていましたが、「もうあんな惨めな思いはしたくない。」という気持ちが辛い時の支えになっているので、今となってはいい経験をしたと感じています。

1年間のニートを経て(笑)、アルバイトとして入ったのが今治デパートでした。ある日、社長がふらっとやってきて「なんで君のような若い人間がアルバイトで暮らしているんだ」と話しかけてくれました。しかし当時の自分は「やりたいことがないんです」としか答えられませんでした。

すると「やりたいことがないんだったらなんでもできるだろう」と言っていただき、社員として経理、財務、広報などの仕事をさせていただきました。そして約10年後の2013年、社長がオーナーになったFC今治の運営を任されました。

杉山:まったく未経験の職種で、どんなことから手をつけられていったんですか?

青木:当時は本当にやることすべてが初めてで、最初は一人で大会の参加申請やメンバー登録、練習場の確保や遠征のためのバスの手配など、目の前にどんどん現れる必要な実務をひたすらやっていました。

ただ、一人でやるにはとてもこなしきれないくらいの膨大な仕事量でした。このままではクラブが潰れると感じ、1年で「僕にはできません。辞めます。」と社長に伝えていました。しかし、すぐには後任も見つからない。働きながらサッカーに情熱を燃やし続ける選手たちをもう少しサポートしたいという思いもあり、後任を探しながら「あと1年だけ」という約束で働き続けることにしました。

その頃ですね、岡田さんがオーナーになるらしいという話があったのは。それでも僕は「関係ない、辞めます」と言い張っていたんですが(笑)。

ー そして岡田さんの招きで、元ゴールドマン・サックスで現社長の矢野将文さんが参画されたと。

青木:はい。社長の矢野に1週間で業務内容を引き継ぐことになったのですが、矢野との仕事はとても刺激があり楽しかったんです。それまで自分はただタスクをこなすだけだったのですが、矢野の仕事はそれを受け取る人が仕事をしやすいよう、必ず付加価値をつけていたんです。仕事とはそうやるものなのだ、一つひとつ価値を作ることで「仕事でこんなに充実できるのだ」ということを知りました。そう感じる中で矢野から「やっぱりもう1年やってくれないか」と言われ、「この人と一緒に仕事ができるなら」とFC今治で仕事を続けることにしました。

そしてそれからは、矢野だけでなく会長の岡田と仕事をしたいというプロフェッショナルが集まってきて、クラブも少しずつ大きくなっていきました。

杉山:周囲の環境がどんどん変化して、仕事が面白くなっていったり、広がっていくことがすごくいいですね。羨ましいとも思いました。

私自身は大学卒業後、大学院で公共政策を学んでいました。そこでは政治家や国家公務員の方と接することが多く、みなさん優秀で素晴らしいビジョンを掲げて仕事をしていらっしゃるんですが、自分には「時間軸が長すぎて結果が出るまでが遠すぎる」と感じたんです。

そこで、より早く成果が見えるところで働きたいと考えて、ベンチャーを中心に就職活動をしている最中にたまたまブックオフで買い物をしたときに後払いサービスを使って、ネットプロテクションズを知りました。企業が個人の信用を肩代わりして決済をするというビジネスモデルが新鮮でしたし、新しいことをしたいと思っていた自分にはピッタリだと考えて入社を志望して、採用していただいたというのが働き始めるまでの経緯です。

青木:杉山さんに「羨ましい」とおっしゃっていただきましたが、当時の僕は変化のスピードについていくのが精一杯でした。どう変わっているのか振り返っている時間もなかったように思います。試合運営を担当していましたが、感傷に浸る暇はなく、試合中には数分後のこと、試合終了後は次の試合のことばかり考えていました。

世に出した瞬間はスタートでしかない

― ひとつの結果としては、2017年9月の「ありがとうサービス.夢スタジアム(通称:夢スタ)」のこけら落としがあるかと思います。5,000人収容のスタジアムに5,241人が詰めかけたそうですね。

青木:弊社会長の岡田もよくインタビューで話していますが、この日のことは印象深いですね。試合を終えて片付けをしていたら、高齢の女性がスタジアムに残り、泣いていたそうです。スタッフが「どうしたんですか?」と声をかけると「嬉しくて泣いている」と言うんです。その方は、2014年に岡田が今治に来たときは、1~2年で見限って離れてしまうと思っていたそうです。「でも岡田さんは今治を離れるどころか、こんなに素晴らしい景色を作ってくれた」と。

杉山:非常に印象深い、素敵なお話ですね。クラブの運営も、スタジアムの新設も、大変な努力の上で進めてこられたことと思います。私の仕事では、新規事業の構築を行い、それを運営していくということに長く関わってきました。

事業を新しく作っていくプロセスは本当に大変ですし、自分のすべてを注ぎ込む必要がありました。そしてそれを世に出せたときには非常に達成感がありました。しかし、サービスを実際に出してみてはじめて、そこは始まりでしかないんだと気づきました。そこから改善を重ね、広げていくことによってやっとユーザーからの声が聞けたりする。

青木:「出してみると始まりでしかない」という杉山さんの言葉には非常に強く共感します。夢スタでホームゲームを開催すると、素敵な声をかけていただくこともたくさんありますが、同じくらい行き届いていないこと、足りないことの指摘もいただくわけです。それをいかに減らして、いかにもっと良くしていくか。一つひとつの出来事が常に次のスタートになっているんです。

早いスピードで変化する組織における役割とは

ー 今回のテーマでもありますが、長く勤めることでそんな経験を他の社員よりもたくさんしていることは、働く上での強みになりますか?

青木:一時期は、たしかにそんな思いはありました。去っていった選手やスタッフもいるので、その人たちの思いも背負って、長くFC今治にいる自分だからできることで貢献しようと。しかし、そのこだわりを持ちすぎてもよくないのかなと今は思っています。

FC今治はすごいスピードで動いている会社でいろいろな人が入ってくる。弊社には企業理念、ミッションステートメントのほかに、社員が会社に約束するプロミスというものがあって、そのひとつには「異端を恐れない」というものがあるんです。長く勤めているとつい居心地のいい人とばかり仕事を進めるようになりがちですが、この言葉は強く意識しています。

杉山:ひとつの会社にずっといるものの、中での変化はすごく大きいと私自身は感じています。事業の成長によりフェーズもどんどん変わってきていますし、新しい刺激もあるので、外に出なくても必要な変化を得られている。

長く勤めたことでわかったことのひとつが、思っていたよりも物事のスパンは長いということです。ベンチャーを志向していたので、入社当時は2〜3年で自分でも事業を立ち上げて成功させて上場して、とか漠然と考えていましたが、実際にひとつのサービスが形になるにはすごく時間がかかる。本当の意味でコミットしようとすると、それなりに時間がかかるんですね。長く携わったことで見えたものは大きいと思います。

青木:私も、FC今治に長くいようとしていたわけではなく、結果そうなっていたということでは同じです。杉山さんは、ここまでやり切ったらひとつの区切り、次はこんなことをしてみたい、みたいなものはありますか?

杉山:田舎に住みたい、ということは仕事とは別の軸であります。でもそこで特産品を売りたいわけではないですし、スケールする物を作りたいという思いもある。それが両立できたらいいですし、今の会社でそれができたらいいなと思っています。

青木さんは過去に「辞めます」と口にしたこともあったなかから、環境がどんどん変わり企業のステージもあがっていき、このさきにもさらに変化があるでしょうし、楽しみも多いのかなと思います。いまはご自身のキャリアをどう考えていますか?

青木:基本的には、「置かれた場所で咲きなさい」みたいなイメージで、与えられた目の前の仕事にしっかりと向き合い続けることが自分のスタイルです。しかし、ものすごいスピードで変化、成長している企業の執行役員として、目の前のことだけでなく、中長期的な会社のビジョンに基づき、自分がすべきことや自分があるべき姿というものを明確にイメージしておく必要があるなと、まさに考えているところです。

双方の組織が交わることで、さらなる広がりを

― 最後に、「次世代育成パートナーシップ」として企業同士が連携することで、お二人がしてみたいと思っていることを教えて下さい。

杉山:我々は決済サービスしかしてきていなかったので、FC今治さんと協働することで何ができるかなとワクワクしているところです。単純なサッカークラブのスポンサーという関係性ではなく、FC今治という確固たる思想がある組織とご一緒できることで、教育や組織づくりなど、今後広がりをもって考えられると思いますし、いろいろなことを話しながら取り組んでいけたらいいと思っています。

青木:ネットプロテクションズさんの社内にある、手を挙げて本業務とは異なる領域のプロジェクトに参加することができるワーキンググループという考え方にとても興味をもっています。弊社は一時期、みんなで全部の仕事をするというカオスな状態から、いまだんだん組織ができてきて縦割りになりつつあるんです。人数が増えて形ができてきた過渡期という段階でもある中で、全社で横断的なワーキンググループを作り、そこに各自が関わるという形を取ることで社内のコミュニケーションがもっと深まり、縦の糸と横の糸でより強い企業になるのではないか、そうするにはどういう運用が良いのか、お伺いしながらもっと組織を良くしていきたいと思っています。


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