「聞く仕事」から、自ら手を動かし「つくる仕事」へ。保育業界で採用支援の営業として活躍してきた古川紗綺さんは、「お客さんの声をもとに、より良い仕組みやサービスを自分でつくりたい」という思いを抱え、2024年6月に株式会社NONAME Produce（n2p）へ転職しました。

今回は、営業経験で培ったヒアリング力を土台に、IT未経験からディレクターになるまでの道のりを聞きました。

自分でもつくりたい！営業からITディレクターへの転身

「インタビューされる側は慣れていなくて…」。そう笑いながら話し始めた古川さんは、もともと“聞き手”側のキャリアからスタートしました。前職は、保育学生向け就活雑誌の編集や営業担当。園を訪ねて、新卒1年目の保育士などにインタビューし、その言葉を記事にしたり、園の採用を支える求人サービスを売り込んだりしていました。

「大事なのは商材を売ることじゃなくて、その園の採用がうまくいくこと。その視点で、『園の理念や考え方をどう表現するか』を一緒に考えていました」

決してIT環境が整っているとは言えない、非営利の業界。

その現場で対話を重ね、「どんな人に来てほしいのか」「園の良さをどう伝えるか」を一つひとつ言語化し、採用につなげていく過程に、営業としてのやりがいを感じていたといいます。

その一方で、こんなモヤモヤも募っていきました。

「自社の採用サイト自体、もっと良くできるのにな…って。コンテンツそのものに手を入れていきたい、という気持ちがどんどん強くなっていきました」

“売る側”から“つくる側”へ。その感覚の延長線上に、現在のn2pでのディレクターという選択がありました。

IT未経験のスタートを支えた、学びの環境と仲間

入社3年目で転職活動を始めた古川さん。そのタイミングで、ITスクールに通うことも決めていました。身近な家族がエンジニアという環境で、「プログラミングに挑戦してみたい」という思いがあったからです。

「今後のキャリアを考えるにあたって、“自分が本当にやりたいこと”、“社会から求められていること”、“得意なこと”を組み合わせて考えました。そのときに、未経験でもチャレンジできるITスキルは、これからもっと必要とされる分野だなと思ったんです」

他の企業の選考も検討していたそうですが、「日中は全く別の業務」「夜間に勉強」という、線が引かれている形態には魅力を感じることができなかったといいます。

その点、n2pでは「開発チームでの採用が念頭にあったこと、フレックス制で勉強両立の融通が利くこと、周囲のチームメンバーからの応援が得られる環境などがマッチして、不安なく始められました」と振り返ります。

半年間のスクールは、平日毎日の授業に加えて、最後の3カ月は土曜もがっつり実践というハードなプログラムでした。n2pに入社して2か月後に開講し、仕事を覚えながら、毎日勉強…という日々が続きます。

それでも続けられたのは、会社側のスタンスが「応援」だったからでした。授業時間に合わせて、半年間だけ就業時間をずらしてもらう、仕事終わりにオフィスでオンライン受講できるよう環境を整えてくれるなど、「学ぶことを前向きに受け止めてくれているのは、すごく伝わってきました」と古川さんは頷きます。

それに加えて、大きな支えになったのが同僚の存在でした。

私が前職で疲れていた時期も知っている方で、『無理は絶対しない』『帰れるときはちゃんと帰る』と毎日のように声をかけてくれました。やりきりたい性格なので残りがちなんですけど（笑）、彼女の存在はすごく大きかったです」

実は、面接前にn2pのイベント「ナナシナイト」に参加していた古川さん。その時のn2pへの印象は、今でも鮮明に残っているといいます。

「クセが強め（!?）の社員がフランクに迎えてくれることや、社員だけでなく、外部パートナー・元インターン・元社員も遊びに来ている会でした」

退職後も関係が続いている雰囲気から、「ここはいい会社なんだろうな」と直感できたそう。

「辞めた人たちとも良好な関係を築いている会社って、やっぱり信頼できますよね。“全部見えるところでやろう”という風通しの良さも感じました」

営業経験 × ITスキルで挑んだ、はじめての「パッケージ開発」

入社後しばらくは、先輩ディレクターの案件に付きながら、開発チームの一員としてコードに触れる日々が続きました。「最初は宇宙語だった専門用語が、だんだん日本語に聞こえてきて、スクールや実務を通して自分の力がついてきている、と実感することができました」

その頃のターニングポイントになったのは、「レシート購買キャンペーン」のパッケージ化プロジェクトです。

「お客さんから、こういうキャンペーンサイトを作りたいという相談を受けて、毎回ゼロからつくるのではなく、パッケージ化して、低コストで何度も回せるようにしよう、と社内で話していたタイミングだったんです」

そこで古川さんが任されたのが、「レシートキャンペーン」の中の「ライトプラン」で、アンケートフォームや管理画面の設計・実装です。

具体的には、ユーザーがレシートや必要情報を入力し、応募完了メールが届く一連のフローを設計する中で、どこが共通化でき、どこが案件ごとに変わるのかを整理すること。さらに、コードを読みながら、自分の手で調整・デバッグ・テストを行いました。

「スクールで勉強していたからこそ、“どの部分を変えると、どこに影響が出るか”を理解しながら進められました。エンジニアの手を借りなくても、ディレクター側で完結できる範囲が広がったのは、自分にとっても大きい成果でした」

営業時代に培った「お客さんの課題を聞き取り、言葉にする力」と、ITスクールで身につけた「自ら手を動かせる」の掛け合わせ。その両方があったからこそ、“つくるディレクター”としてパッケージ開発に関わる仕事を任されるようになっていきました。

いまのフィールドは「BirdCall for Fun」─X連動キャンペーンの裏側

現在、古川さんがメインで担当しているのが、n2pのパッケージサービスである「BirdCall for Fun」です。X（旧Twitter）上で完結するマイレージ型のキャンペーンで、ユーザーのアクションに応じてポイントが貯まり、賞品と交換できる仕組みです。

ディレクターとしての主な役割には、大きく三つあります。

1. キャンペーン設計・要件すり合わせ
   クライアントや代理店と一緒に、「どんなアクションにポイントを付与するか」を設計。期間途中での「ポイント2倍期間をつくりたい」などの要望にも応じて調整
2. UI・マイページの調整
   ユーザーがポイント残高を確認し、賞品応募を行うマイページのLP作成。テンプレートをベースにしつつ、案件ごとの見せ方をコードレベルで調整
3. 仕様変更の多いXに追いつくテスト・ドキュメント化
   Xの仕様変更などを、実際に手を動かしながら検証。見つけた落とし穴やバグの傾向を整理し、エンジニアと相談して改修。代理店やクライアントも理解しやすい形で資料・注記としてまとめる

「外から見えるUIはシンプルなんですけど、実際はXの仕様にかなり影響されるので、“できそうに見えるけど実はできないこと”も多くて。そこをちゃんと検証し、エンジニアと共有しながら、代理店の方にもわかる言葉に翻訳していくのが、今いちばん力を注いでいるところです」

案件を進行する中で見えてくる「より良いユーザー体験」や「効果的なストーリー」は柔軟に仕様へ反映し、価値を最大化していくフェーズで、運用を重ねる中で、エンジニアに頼る部分とディレクターが自走すべき部分の最適な線引きができるようになったとのこと。

マニュアルに落とし込んで、誰でも安全に運用できるようにしていく。そこが、“パッケージサービスを育てるディレクター”としての役割だと思っています」

「自分一人で完結させない」という、次のステップへ

「一人で解決できることが増えた分、つい自分で全部やっちゃうクセがついてしまっていて。ディレクターって本当は、デザイナーやエンジニアを巻き込んで、誰がどこまでやるかを整理する役割だと思うんです」

n2pには、制作ディレクションに強みを持つ先輩もいます。「先回りしてお客さんとやりとりしたり、メンバーが気持ちよく動けるように、目に見えないところを丁寧に整えている人がいて。そういうディレクション力は、これからもっと吸収したいです」

営業職のころは、「自分一人で数字をつくる」という働き方に慣れていたからこそ、チームでつくる開発・制作の現場で“巻き込むディレクション”の重要性に気づけた1年にもなったそうです。

n2pで活躍できるのは、どんな人？

採用向けのインタビューということで、「どんな人がn2pに向いていると思いますか？」と聞いたところ、古川さんは少し考え込んでからこう答えてくれました。

「何にでも興味を持てて、身の回りで起きたことを“自分事”として考えられる人、かなと思います」

n2pは少数精鋭のチーム。IT企業である以上、自分たちの手の届かないインフラ障害や仕様変更にも向き合わなければいけません。

「わからないことがたくさん出てくるので、それを『よくわからないから』で終わらせずに、ちゃんと理解しようとする気持ちがある人だと、すごくやりやすいと思います。勉強意欲は必要だけど、頑張りすぎて潰れちゃうのは違う、という感覚も大事です」

「やることはやる。嘘をつかずに、気持ちよく働く。そんなスタンスに共感してくれる人と、一緒に働けたらうれしいです」

新しいスキルを手に、これから描いていきたいキャリア

最後に、これからの展望を聞きました。

「今後は、いま以上に『自分で判断できる力』が必要になると思っています。プロジェクトマネジメントの資格（PM）取得を一つの目標にしています」。

古川さんは、n2pで積んでいる実務を、きちんと体系的な知識に昇華させていきたい、と意気込みました。そして、もう少し長い目線で語られたのは、原点でもある「教育・福祉」「社会課題」への想いでした。

「教育や支援の分野にはずっと関心があります。その領域って、どうしてもITが遅れていたり、環境が整っていなかったりすることが多い。でも本当は、一番テクノロジーが必要とされている場所でもあると思うんです」

「国内外問わず、本当に必要な人たちにとって“意味のあるIT環境”を届けられる人になりたい。今は、そのための力をn2pで磨いている途中です」

営業出身のあなたへ。「経験を活かして、つくる側に回る」という選択肢

古川さんのキャリアは、「営業・接客からキャリアチェンジしたい人」にとって、一つのリアルなロールモデルです。

・お客さんの課題を聞き取り、言葉にする力
・自社サービスを「もっと良くしたい」と思える視点
・新しい分野を学び続ける粘り強さ

n2pのディレクターという仕事は、こうした営業経験を、パッケージサービスやプロダクトの“中身”にまで接続して、自らつくっていくことのできるポジションです。

「売るだけじゃなく、つくる側に回りたい」、「お客さんとの対話の経験を、ITの現場でも活かしたい」。もし、そんな気持ちが少しでも心のどこかにあるなら。古川さんのようなキャリアチェンジが、あなたにも開かれているかもしれません。

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