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LegalTech とは「ロボット掃除機」である!

LegalTech(リーガルテック)ってなに?

2020年10月、MNTSQに入社することが決まった私は、家族にこう説明しました。

「LegalTech(リーガルテック)の会社で働くことになったよ。LegalTechっていうのは、LegalとTechnologyをかけ合わせた言葉で、法務業務において発生するさまざまな課題を、IT技術を活用することで解決していこうという取り組みで……」

そのときの家族の反応、これをそのままお伝えしましょう。

「へー、よくわからないけどなんかすごそうだね!」

……まあ、そうなりますよね。

LegalTechはいま大いに注目を浴びている領域ですが、いざ説明しようとすると、意外とうまく説明できません。

その原因の一つに、使われる言葉のとっつきにくさがあると思います。

まず「法務」。この言葉を聞くと、法務業務とかかわりのない方の多くは、「なんとなく必要なことは分かるけれど、よくわからないし、堅苦しい」というふうに感じてしまうことでしょう。つづいて「IT技術」。この言葉も、みんな知ってますし、なんかすごそう!という感想はもっているけど、「実際には正直イメージわかないんだよな」、という方が多いのではないでしょうか。(私はそうでした。)

これらの言葉を使わず、パッと誰でもイメージできるものを使って、LegalTechを説明できないか。本稿では、この難題にチャレンジしてみたいと思います。

題して、「LegalTech とは「ロボット掃除機」である!」

…なぜ急にロボット掃除機か、そう思われたことでしょう。それは私が前職で此方の製品を取り扱った経験があるからです。

これで、はたしてLegalTechがわかりやすくなるのか…筆者としても不安ではありますが、ひとつだまされたと思って、このたとえ話にお付き合いいただければ幸いです。

「契約書」=部屋、「掃除」=法務

さて。ロボット掃除機について語るなら、まずは「掃除」のお話から進めたいと思います。

この「掃除」が、LegalTechでいう「法務」の仕事です。

まず、とても大きなたくさんの部屋がある平屋をイメージしてみてください。

部屋は本当にたくさんあって、しかもどんどん新たな部屋が建て増しされていきます。大急ぎでどんどん部屋を立てていくので、そこらここらには木くずだの折れたくぎだのが散乱しており、床もドロドロ、一つそんな悲惨な感じを想像してみてください。まあ、さすがにこのままでは誰も呼べないので、掃除をする必要があります。

この新しく建てられた部屋の一つ一つが、「契約書」です。そして、この「契約書」という部屋の掃除を担当するのが法務部員の皆さんというわけです。

イメージできましたでしょうか。

次に、この平屋での掃除が、みなさんがイメージする一般的な部屋の掃除とは一味違うところをお伝えします。

  • きれいにしていないと突然部屋が発火する
  • しかもそれが「きれい」かどうか、実は誰もわからない
  • これを法務部員は、ほうきや雑巾で掃除している
  • 掃除した後、その掃除のことをほとんど誰も知らない状態になる

……なんだそりゃ、と思われたかもしれません。しかし、これが、今の「法務」という掃除の実態なのです。詳しくお話ししていきます。


デンジャラスな掃除の仕事


法務部の仕事のことがよくわからない、という人も多いと思いますが、「契約書」の締結をしたことがある人は多いでしょう。会社はビジネスを進めていくうえで、かならず「契約書」を用意する必要があります。契約書を作成し審査するするという作業は一見地味で面倒ですが、やらないわけにはいかない、そういう仕事です。

この平屋でも、生活をするためには「契約書」という部屋を用意しなくてはならず、ちゃんとその部屋が汚れていないかどうかしっかりチェックして、汚れていたならばしっかり掃除をしなければいけないわけです。

こういうと、お掃除嫌いの方などはこうおっしゃるかもしれません。「掃除をしなくたって死ぬわけじゃない」と。しかし、「法務」という名のお掃除については、恐ろしいことに、掃除をしないと、死んでしまうんです。ある日突然、たまっていた木くずから火が出て平屋が全焼したり、頼りの大黒柱が途端にぼっきり折れたりすることが、実際に起きるわけです。だから、死にたくないならば、この掃除は必ずしなければいけません。

このデンジャラスな掃除を日々されているのが法務部員の方々ですが、それでは彼らはどのような道具でこの掃除をしているのでしょうか?

誤解を恐れずにいってしまいますと、多くの企業が、ほうきとか、雑巾、はたきといった、原始的ともいえる掃除道具で行っているというのが現状です。

これらの掃除道具にたとえたのは、法務部員の方々がひたすら「手作業で」掃除をしなければならないからです。

そのためまず非常に時間がかかります。掃除の時間を劇的に短縮してくれるような便利なものは、ほとんどの法務部の皆さんにはありません。なので、どう掃除をしたら時間を短縮できるかと工夫をしながら、ひたすら自分の手で、ほうきでごみを掃いたり雑巾がけをしたりするわけです。どれだけ仕事に慣れようと、時間がどうしてもかかってしまうのです。

また、手作業での掃除ですので、その質は、完全に個人の技量によっています。たとえば掃除機のように、機械の性能いかんで、慣れない人でもそこを掃除したらある程度の結果が保証されるというたぐいのものはありません。どこまでも、その人の技量一つで結果が変わってきます。

ところで、この「法務」という掃除が、普通の掃除と違う点がもう一点あります。それは、掃除しようとする部屋が、ぱっと見で汚れているかどうか正直よくわからない、という点です。

普通の掃除ならば、そこにたくさんの木くずだの泥だのがたまっていれば誰だってそこが汚れていると、すぐにわかります。ところが、「法務」という掃除はそうはいきません。ある人は汚れているといい、ある人はこれならば問題ないという。試しにはちょっと掃除してみると、めちゃくちゃほこりはでてくる。すればするほど果てしなく出てくる。じゃあどこまで掃除したらいいか、これがよくわからないのです。なので、掃除する人が、今までの経験や知識から「これくらいなら、まあ、大丈夫じゃない?」と各自判断したり、人に聞いたりして、なんとか進めていくわけです。

ならばせめてこの掃除について、ノウハウも含めて誰かにちゃんと伝えておきたいと思うところですが、それもやっぱり難しいです。

なにせビジネスを進めるうえでは、「契約書」という名の部屋は絶対に必要なものなので、部屋はどんどん増えていき、それに合わせて日々大量の掃除が舞い込んできます。掃除しなければいけない部屋はたくさん、掃除の仕方も様々、という具合になっていきますので、とてもじゃないですがこれをもれなく誰かに伝えるというのは無理な相談です。

それでも何とか知見を承継するべく、法務部員の皆さんは各自で掃除日誌をつけたりします。しかし、これはあくまでバラバラにつけているものなので、誰がどこをどう掃除したか、パッとわかる人は誰もいません。おまけに、その掃除日誌もやはり大量に存在しますし、保管場所もばらばら。そのため、掃除日誌は読まれることはなく、その掃除のことを知っているのは自分だけ、という状況が起きてしまうのです。


ロボット掃除機の登場

ここで、颯爽と登場するのがロボット掃除機です!これにより、いままでの掃除は画期的に変わります。

まず掃除にかかる時間です。なんせロボットですから、人間がいなくても勝手に掃除をしてくれます。なので人間が1つの部屋を掃除するのに必要な時間は、圧倒的に短くなります。

もちろん、ロボットの手の届かない部分は人間が掃除をする必要がありますから、掃除の時間がゼロになることはありません。しかし、これは今まで時間の割けなかった部分をしっかり掃除ができることを意味します。だだっ広い床をひたすら雑巾がけをしていた時間を使って、ポイントポイントをしっかり掃除することができるようになるわけですから、掃除の質は上がります。

なので、ロボット掃除機を使うことによって、今までより短時間に、今までより品質の良い掃除をすることができるようになるのです。

また、ロボットは「きれいさ」の保証もしてくれます。いままでは、見えないほこりを相手に、きれいになったか不安を抱えながら、1人で戦う必要がありました。しかし、ロボット掃除機は、誰が使っても一定の性能を発揮してくれます。なので、ロボット掃除機の吸引力と稼働能力に信頼がおけるのであれば、きれいかどうかはロボットがしっかりと担保してくれるようになるのです。

さらに、最近のロボット掃除機では、いままでの掃除の結果をアプリで確認することもできるようなものも出てきています(未来ですね~)。それと同じことが「LegalTech」というロボット掃除機にも可能です。

いままで掃除をしていた人がばらばらにつけていた掃除日誌は、すべて自動的に記録され、ロボット掃除機のアプリから確認できるようになるわけです。なので、これを使えば、いつどの部屋をどのように掃除したか、どこがどう汚れていたか、パッと確認ができるようになります。そして、これを分析することで、いままで誰も感覚や経験のみでしかわからなかったような掃除の実態が正確に把握することも可能になるのです。日誌の情報がデジタル化され「きれいさ」への共通認識が見える化されることで、1人ではなくみんなでベストな掃除を考えられるようになります。

この「LegalTech」というロボット掃除機の登場により恩恵を得るのは、掃除をする人たち、すなわち法務部員にはとどまりません。

例えば、掃除を依頼する事業部の方々。

事業部の皆さんは今までいちいち法務部員に直接掃除を依頼して、掃除が終わるのがいつかやきもきして待たなければなりませんでした。しかし、最新のロボット掃除機は、アプリと連携することで、出先からポチっとスタートボタンを押すことだって可能です。それと同じように、この「LegalTech」というロボット掃除機でも、例えば、ごく簡単なものであれば、やきもきしながら見ているだけだった事業部の方が自らポチっとスタートボタンを押すこともできます。難しい案件についても、操作一つで簡単に掃除の指定ができますし、その案件がだいたいどれくらいで掃除されるか、目で見てわかる形で確認ができるようになるわけです。

また、商談の際にも、この「LegalTech」というロボット掃除機は役立ちます。

今までは、お互いにとってきれいな状態とはどういうものか、はっきりとした基準はありませんでした。だから、その部屋がきれいかどうか、お互いにあやふやな状態のまま、多大な時間をかけてすり合わせをする必要があったのです。しかし。このロボット掃除機さえあれば、一定のきれいさは保証されているので、お互いにとって必要のない交渉であればバッサリ省くこともできます。さらに、もっとよい条件を得たいという場合にも、掃除のデータという客観的根拠をもとに話すをすることで「ここの部分の掃除だけど、今までのデータによるともっと奇麗にできるはずだよね」などと、より説得的な交渉も可能になるのです。


これですべては解決?


さてさて。ここまで、「LegalTech」をロボット掃除機に例えながら、そのすごさについてお話してきましたが、じゃあ単純にみんなこのロボット掃除機を買えば掃除に関することはすぐに解決!…かというと、実はそうでもありません。せっかくロボット掃除機を買ったのに、実際あんまり使えない、みたいな例は残念ながらままあります。

ロボット掃除機を導入するにあたっては以下の2点をしっかり気を付ける必要があります。

まず、自分たちがどこを掃除させたいか、そしてその掃除がこのロボットに可能か、しっかりと見極めることです。

ロボット掃除機にはできることとできないことがはっきりしています。床掃除ロボットに窓ふきやプール掃除はできません。超えられない段差も、入れない隙間もしっかりと存在します。なので、どこの部分をロボットに代わってもらうか、そのロボットに何ができるか、吸引力や稼働能力は十分か、これらをしっかり検討をしたうえで購入することが必要です。法務部員の業務フローのうちどこの部分にLegalTech(機械学習やソフトウェア)を活用するか、世の中にあるたくさんのLegalTechサービスそれぞれ何ができるものなのか、法律的な信頼性やテクノロジーとしての信頼性は十分かをしっかりしないと、「せっかく導入したのに使えない」ことになりかねません。

次に、そのロボットがちゃんと稼働できるよう、環境作りから取り組むことも必要です。

ロボットは物をどけるということはできませんので、掃除機をかけるためにはある程度物をどかすなど準備をしておかなければいけません。そして、この状態が保てるよう、しっかり維持をしないと、結局ロボットを稼働させることは稀になってしまいます。なので、ロボット掃除機を購入する場合、すなわちLegal Techを導入する場合には、それを契機に、会社の中全体の環境についても一緒に整備を進めておくことをお勧めします。

では、導入のためにはどういう整備が必要か。これは結構難しい問題だと思います。この場合、製品の性能もLegalTech導入でのノウハウも、その製品を手がけているLegalTech企業が一番よく知っていますので、直接LegalTech企業に相談をしてしまうのが一番の早道でしょう。

例えば、私の勤務しているMNTSQでは、社内での実情をしっかりとヒアリングし、システム提案も含め、親身になって伴走しながら製品導入のサポートを行っています。

なので「LegalTech」というロボット掃除機を購入する場合には、その導入や有効な使用方法等について、一緒に考えてくれるようなメーカーの「ロボット掃除機」を購入することをお勧めします。


おわりに

ということで長々と、LegalTech(ロボット掃除機)の話を進めてまいりました。

もちろん、ここで話したお話はLegalTechという領域のほんの一例にすぎません。LegalTechで解決できることも、解決する方法も、もっと様々あります。

少しでもLegal Techに興味を持たれた方は、ぜひ「LegalTech」(長島・大野・常松法律事務所, MNTSQ株式会社 編集, 2020年)をお読みになることをお勧めします。詳しくはこちらをご覧ください。

現在の法務の現場を冷静に分析し、今できることや必要なことをしっかりと見据えた上で、将来の展望について丁寧に論を進める、地に足の着いた良書です。

本稿を通じてLegalTechという言葉に対するハードルが、少しでも和らいだなら幸いです。

今こそ会社にLegalTechを、そして家庭にロボット掃除機を!


ところで。この、法務の現場を劇的に変える、LegalTechを私たちと一緒に作ってみませんか?どのような製品が法務の現場に必要か、一緒に考え一緒に作っていくことは、ある意味これからの企業の姿を自分たちの手で形作るともいえる、とてもやりがいのある仕事です。

ちょっとでも興味をお持ちの方は、ぜひともカジュアル面談にお越しください!

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