新規事業というと、「アイデアを生む」「プロダクトを作る」というクリエイティブな側面が注目されがちです。しかし、世の中に本当に届いて使われるためには、その先にもう一つ重要な仕事があります。広げる仕事です。
make standardsは、新規事業や営業組織の立ち上げに伴走する営業支援パートナーです。リクルート時代にAirレジの立ち上げや、ホットペッパー事業のエリア立ち上げを経験してきた代表取締役 佐藤に、「新規事業を広げる仕事の面白さ」と「この仕事に向いている人」について聞きました。
目次
新規事業が広がる瞬間の魅力
良いサービスでも、広がらないのはなぜか
make standardsは、そのギャップにどう関わっているか
新規事業に関わる仕事の面白さ
この仕事に向いている人、難しい人
世の中にもっと増えてほしいサービス
おわりに
make standards 代表:佐藤雄希
新規事業が広がる瞬間の魅力
広報: 今回は新規事業を広げる仕事の面白さというテーマで話をさせてください。新しい事業が広がっていく瞬間の魅力は、どういうものですか?
佐藤: 今までなかったサービスやプロダクトが、実際にカスタマーに使われ始めること。それまで感じていた不便さや不安、不満みたいなものがだったことが、新しいサービスによって解決されていくのを感じられる瞬間ですね。
広報: 具体的にエピソードがあれば伺いたいです。
佐藤: 会社を立ち上げる前に勤めていたリクルートで、Airレジをやっていた頃の話で言うと、それまでのレジってボタンを押すとガチャっとドロワーが開く「ガチャレジ」か東芝テックさんや富士通さんの「POSレジ」しかなかったんです。
「ガチャレジ」はデータ管理ができないから経理が大変だし、かといって高機能な「POSレジ」は単価が高くて、お店を開業するときに気軽に入れられない。
広報: 「POSレジ」って結構ハードルが高かったんですね。
佐藤: そこに、iPadかiPhoneとドロワーがあればレジが用意できるという選択肢が出てきた。ネットでも買えるし、ビックカメラのAirレジサービスカウンターに行けば実物を見てそのまま買える。手軽にお店を始められるようになったという声がすごくあって、導入後も「レジ締めに1時間かかっていたのが5分10分で終わる」と。それまでの当たり前を作り変える瞬間に立ち会えるのは、本当におもしろかったですね。
広報: BtoCで言うと、ホットペッパーの担当もされていましたよね。
佐藤: 新卒の時期に六本木・西麻布・麻布十番のエリアを担当していました。当時、飲食クーポン雑誌を見てお店を選ぶ文化って、その街にはなかったんです。高そう、怖い、入るまでわからない。どちらかというと、そういうエリアだったので。
広報: たしかに、人の紹介がないと少し入りにくい街ですよね。
佐藤: そこに、写真も価格もコースの中身も載っている雑誌が登場して、「ホットペッパーに載っていること自体が安心の約束」みたいな状態が生まれた。
お店を予約することの心理的なハードルが下がって、行ったことのない街に人が動き始める。新しい価値が街の人の動きを変えていく、その実感は強かったですね。
広報: 「人の動きが変わる」を肌で感じる経験だったんですね。
佐藤: メンバーが現場で「最初は誰も使ってくれなかったものを、いいねって言って使ってもらえるようになった」と感じている。その状況を見られるのも、僕にとっては嬉しい瞬間ですね。
良いサービスでも、広がらないのはなぜか
広報: 一方で、良いサービスなのに広がらないこともありますよね。これは何が原因だと思いますか?
佐藤: いくつかあって、一つは時代がズレていること。少し早すぎたら流行らないし、後から振り返ると「もう少し後に出していれば」というケースもある。もう一つは潜在ニーズすぎてまだ顕在化していないこと。
広報: ニーズはあるけど、まだ自覚されていないということでしょうか。
佐藤: そうですね。そして、もう一つが、「あったら嬉しいけど、なくても困らない」というレベルから抜けられない、というケース。
広報: そういう「お金を払うまではいいかな」ってこと、たしかにありますね。
佐藤: たとえばリファレンスチェック。7、8年前はサービスとしてほぼなかったんですが、今はサービスとしてたくさんの企業に導入されています。
採用する側からすると絶対あった方がいいサービスなんですよ。ただ、「リファレンスチェックしてもズレることがあるよね」「採用ミスは起きるよね」となると、「払っても払わなくても変わらなくない?」になってしまう。
広報: リターンが明確にならないと、お金を払うところまで行かない。
佐藤: 逆に会計ソフトはそこをクリアしている。入れれば確実に人の工数が減って、コスト以上のリターンがある。「ないと困るもの」「なくては困るもの」まで価値が浄化できると、サービスは広がるんです。やっていることは同じでも、どの切り口で価値を伝え、どう営業し、どう使ってもらうか、ここで広がり方が全然変わる。
make standardsは、そのギャップにどう関わっているか
広報: make standardsは、こうしたギャップにどう関わっているんですか?
佐藤: そのプロダクトの価値は何なのかを、一緒に考えるところから関わります。価値って結局、「何がカスタマーの不で、そのサービスで何を提供できるか」で決まる。ここを言語化しないと、営業する上で必須の武器が揃わないので。
広報: 価値を整理した上で、実際の営業に入る。
佐藤: はい。そして、営業して商談を重ねていくと、広がる時もあれば、広がりにくい時もある。広がりにくい時は、営業のやり方なのか、ターゲットなのか、クロージングなのか、それともプロダクト自体をアップデートする必要があるのか、という軸でクライアントと会話する。広げる活動量を増やしながら、現場の声をフィードバックしてブラッシュアップしていく、このサイクルが僕らの仕事です。
新規事業に関わる仕事の面白さ
広報: 改めて、新規事業に関わる仕事の面白さをどう表現しますか?
佐藤: 世の中にないサービスを広げられること。そして広げ方にも正解がないから、試行錯誤しながら進められる。失敗も成功も多い分、PDCAを回すおもしろさがある。
広報: 正解がないこと自体をおもしろいと思える、ということでしょうか。
佐藤: それが新規事業に関与する価値だと思っています。既存事業でも生産性を上げる観点でPDCAは回せますが、回せる要素の大きさが違う。やりがいにつながりやすいのは、回せる幅が広い新規事業の方かなと。
広報: 既存事業の支援と、新規事業の支援で、本質的な違いはありますか?
佐藤: 本当はないと思っています。ただ違いが出るとしたら、新規事業は変更が多い。プロダクト、売り方、価格、契約期間、全部が変わる可能性がある。そうするとクライアントへの案内も増えるし、「なんでだよ」と言われることもある。新しい情報をどんどんキャッチアップしないといけない。
広報: 変化の頻度と振れ幅が違うんですね。
佐藤: とはいえ、既存事業も変化させない限り生産性は上がらないんです。ずっと同じことをやっていても、価値は維持できても上げられない。だから本質的には地続きで、強度の問題かなと思っています。
この仕事に向いている人、難しい人
広報: この仕事はどんな人に向いていますか?
佐藤: 変化を楽しめて、自分も変化できる人ですね。
広報: 変化を楽しめる、というのは具体的にどういうことでしょうか。
佐藤: 固定観念をあまり持っていない人。「こうじゃなくちゃいけない」「一度決めたらこうだ」が強い人は、変化しにくい。新しい商品やサービスは状況がどんどん変わるので、それを察知した瞬間に自分も変わろうとできるか、ここが分かれ目です。
広報: 固定観念は、なぜ生まれるんでしょう。
佐藤: 成功体験が強い場合もありますが、それ以上に「私はこういう人である」という自己定義を作ってしまっているケース。「営業はこういうものだ」「今までこうだった」に引っ張られる。みんなゼロにはできないですが、ここが強すぎると新規事業では苦しくなる。
広報: スキルや地頭の面で求められるものは?
佐藤: 怖がらないこと。「まずはやってみる」と思えるかどうかが、すべての前提です。怖がっていたらできないので。
広報: "怖がらない"の中身を、もう少し言語化するとしたらどうでしょうか?
佐藤: 動けない理由って、表面的には「怖い」なんですが、言い換えると「うまくいくイメージがないから動けない」なんです。だから、うまくいくイメージを持てる人。もしくは、持とうとする人。これがすごく大事だと思っていて、最近、社外研修の事前学習動画でも改めてそう感じました。
広報: 動きながら、変わっていけることが重要なんですね。
佐藤: 動きながら変化したい人。そして疑える人。ただ、疑いすぎると動けなくなるので、疑いながらも動ける人ですね。これは絶妙なバランスで、難しいんですが。
広報: 反対に、新規事業をやっていくために難しいスタンスはどういうものでしょうか?
佐藤: 一言で言えば、決めつけが強い人。少し動いてダメだったときに「もうダメだ」と結論を出してしまう。
会社として撤退判断をしているならそれでいいんですが、そうじゃないなら、「もっとどうしたらできるか」「他にうまくいっている人はいないか」と次の問いに行ける人の方が、最終的に解にたどり着く。自分で袋小路に追い込んでしまうのが、一番もったいないパターンです。
世の中にもっと増えてほしいサービス
広報: 最後に、世の中にもっと増えてほしいサービスや変化はありますか?
佐藤: 本音で個人的にすごく欲しいのが、「考えていることを具現化してくれる人が見つかるサービス」ですね。考えるだけじゃなくて、実行までセットで請け負ってくれる。
広報: 顧問サービスとは違うニュアンスですよね。
佐藤: 顧問サービスはアドバイスや紹介が中心で、実行責任までは持たない。私としては、アドバイスをもらえても、それを実行に落とすのは結局自分か社内のメンバーなので、片手落ちな感覚があるんです。
重要度は高いけれど、緊急度が低く見えているもの。本当はこちらの方が大事なのに、緊急のタスクに追われて手がつかない。このゾーンを一緒に動いてくれる存在が欲しい。
広報: 佐藤さんの頭の中の優先順位を、外から整えてくれる存在というイメージでしょうか。
佐藤: GoogleカレンダーをAIに読ませて「あなたの1週間の動きは正しいのか」と聞けば、それに近いものは出てきそうですけど。AIではすべて解決できない領域でもあるんですよね。
広報: これって、社長の「お気持ちを察して代行」みたいなニーズですよね。たしかに人でしか解決できていない領域だなと感じます。
佐藤: 中小企業の社長向けサービスって、案外サンプルが少なくて、ニーズが見えにくい領域なのかもしれません。ベンチャー経営者のメンタル不調も最近ニュースになりますし、深掘りすれば、まだ広げる余地のある領域はたくさんあると思います。
おわりに
インタビューを通じて印象に残ったのは、代表・佐藤が一貫して「作ることだけでなく、広げることが、新規事業の重要な仕事」として語っていたことです。
良いプロダクトを作るだけでは、世の中には届かない。届けるためには、価値の言語化、ターゲットの選定、営業の試行錯誤、プロダクトへのフィードバック、など「広げる側」の地道な仕事が必要になります。
そして、その仕事を面白いと感じられるのは、変化を楽しみ、うまくいくイメージを持とうとし、疑いながらも動ける人。固定観念より、好奇心で動ける人。
make standardsは、そうした人たちが集まって、クライアントの新規事業を"つくる"の次のフェーズで伴走している会社です。
佐藤 雄希
◆プロフィール
1980年生まれ。同志社大学卒業。同志社大学在学中に創業期の有限会社ドリコムにて、約2年間プロジェクトマネジメント、経理・財務・労務周りを担当。新卒で株式会社リクルート(現リクルートライフスタイル)に入社し、ホットペッパーの飲食部門でリテール営業、営業リーダー、大手法人部署の立ち上げ、マネージャーを経験後、人事部に異動。
人事部では中途採用をメインに、育成・査定・中長期のチャネル検討も担当。中途採用では年間400名採用を800名採用まで拡大。
その後、新規事業の営業・営業推進部署を立ち上げ、Airレジ、Airウォレット、Airウェイト、Airリザーブ、ペットサロンボード、ショプリエ、リクルートかんたん支払い、の7つのプロダクトのセールス周りの責任者を担当。最後は、Airレジの国内セールスの責任者を経験後、2018年6月に退職。2018年10月1日に株式会社make standardsを設立。