「営業が伸びない」という相談は、多くの企業で共通する事業課題のひとつです。KPIを置き、会議で詰め、マネージャーが現場に入り、商談に同席して、それでも伸びない。本当に見直すべきは、どこなのか。
make standardsは、新規事業や営業組織の立ち上げに伴走する営業支援・営業推進の専門集団です。代表の佐藤に、「営業が伸びない会社に共通して起きていること」と「最初に整えるべきこと」を聞きました。
目次
営業が伸び悩む会社に、共通して起きていること
KPIを置いても改善しないのは、なぜか
運用設計と"型化"、属人から抜け出すために
運用設計で、意外と見落とされていること
マネージャーが抱え込むと、何が起きるか
小さい組織で、最低限整えるべきこと
支援に入るとき、最初にすること
まず一つだけ変えるなら
おわりに
make standards 代表:佐藤雄希
営業が伸び悩む会社に、共通して起きていること
広報: 営業が伸び悩む会社に共通する問題って、何だと思いますか?
佐藤: いくつかありますが、まず一つ目は、「営業が課題だと思っているけど、実はそうじゃない」ケース。プロダクトそのものや、契約期間の設計、受注の仕方が原因で積み上がらない・チャーンする、ということが、事業視点では"営業の問題"として括られがちなんです。
広報: 営業の話のはずが、プロダクトや契約設計の問題ということがあるということでしょうか。
佐藤: そうです。二つ目は、ターゲットへのアプローチについて精度をあげられていないこと。例えば物流業界向けに作ったサービスが実は医療業界で売れた、みたいな大きいズレはあまりなくて、多くはアポ取り→商談→クロージングなど各ファネルの精度の問題なんです。
「人数をかけて行動力を担保すれば営業はうまくいく」と考えがちですが、価値提供が弱ければファネルのコンバージョンは結局悪くなる。営業のリソースを増やす前にPMF(プロダクトマーケットフィット:プロダクトが顧客のニーズを満たして、正しい市場に受け入れられている状態)を取りに行く方が先です。
広報: 組織の規模によっても、課題のレイヤーは変わりそうですね。
佐藤: 5〜10人の規模だとPMF周りが大きいですが、50〜100人になると"どう生産性を上げるか"の議論がほぼすべてになります。問題特定から打ち手がクリティカルになっていない、というパターンですね。
広報: 他にも、よく見るパターンはありますか?
佐藤: 採用要件のズレは意外と多い。新規事業では特に、「このサービスは売れる」「営業経験者を採用すれば伸ばせる」という前提で採用が進んでしまうことがある。でも実際は、マネージャークラスの営業に求められるような難易度のものを、メンバークラスの人に任せている、みたいなことが起きている。
スキル要件を下げるための仕掛けを作る必要があるということです。たとえば商談まで一気に決めるのはメンバークラスの人には厳しい。でも、アポ取りまではメンバークラスの人、商談はマネージャークラスが出る、と分業すれば、できなくはない。こうした仕組み設計と役割を明確にすることでスキル要件を下げる発想が、組織を回す上でかなり重要なんです。
KPIを置いても改善しないのは、なぜか
広報: 多くの会社がKPIを置きますよね。それでも改善しないのは、なぜですか?
佐藤: 大きく二つあります。一つ目は、KPI設計にリアリティがないこと。「売上1億欲しい、単価100万だから100件商談すれば届く」と決めるんですが、現場からすると1件商談を作るのもめちゃくちゃ大変だったりする。勝ち筋が定まらないまま、絵に描いた餅で苦しんでいる状態になりやすい。
広報: 二つ目はなんでしょう?
佐藤: 未達の理由を深掘りできていないことです。KPIに届かないとき、理由は必ずある。それを掘ると、「やり方」の問題、「やりきれていない」量の問題、「スキル」の問題に分かれる。ここを分解しないでKPIだけ追っても、改善はしません。
広報: "やりきれていない"ということについて、もう少し聞きたいです。1日100件と決めたのに実行されない、みたいな話ですか?
佐藤: そうです。100件と決めたのに、なぜやりきれないのか。他の業務を抱えているのか、朝会夕会が長いのか、通話時間や接続率はどうか。Aさんが120件、Bさんが80件なら、やり方の違いなのか、何かわからないことで詰まっているのかを分解する。
そこに打ち手を入れて初めて、改善が回り始めるんです。
広報: 例えば、テレアポをやりきろうと考えた時に、やれば取れるのになんとなくやらなくなってしまっている人もいる。どう動機づけしていますか?
佐藤: まず1日というスパンが長すぎるので、午前・午後前半・午後後半、そして1時間ごとに何件、と分解します。1日4件のアポが目標なら、午前中に3件取れると一気に楽になるじゃないですか。じゃあ午前3件、ミニマム2件と決めて、「誰が一番早く2件取れるか」みたいなゲーム性を入れたりもする。
広報: リクルート時代、”1日30件新規訪問”がノルマで、「行ってきます!」と言いつつ公園や喫茶店で休んでた、みたいな話をされたこともありましたよね(笑)。
佐藤: あった、あった(笑)。人間だから全力は続かない。でも、もう一つ大事なのは、「できるイメージが湧いていないと、仕事は捗らない」ということ。
広報: 取り掛かりが重くなりますね。
佐藤: イメージがあれば手が動く。なければ「あー嫌だな」となる。これはテレアポに限らず全職種に共通します。だから、できている人の事例を聞かせる、上振れを体験させて自信を持たせる、知識を入れる、と打ち手を入れていく。
モチベーションの問題に見えて、実は「見通しの立て方」の問題だったりするんです。
運用設計と"型化"、属人から抜け出すために
広報: 営業の"型化"とは、具体的に何を意味しますか?
佐藤: スキル要件の合う人なら、一定の成果を早く出せるようになることです。型化されていないと全員が考えながらやるので、成果まで時間がかかる。通常3ヶ月かかるオンボーディングが1ヶ月、1ヶ月が1週間になる。これが型化のゴールの1つです。
広報: 新しい案件で型を作るときは、何から行いますか?
佐藤: 今できている人を探すところからですね。僕自身が営業していれば、佐藤はなぜ売れているのか。その「売れている要素」を抽出して、メンバーでも再現できる仕組みに落とす、という順番です。
広報: 見るべき要素は決まっているものですか?
佐藤: 全部ファネルです。テレアポなら、架電数、接続数、アポ数。商談なら、アポからの商談化率、決定率。売れる人と売れない人で、どこの数字がどう違うかを見に行く。さらに、決定率も当月・翌月・翌々月で分けて見たり、時間帯ごとの架電数とアポ率を見たり。
広報: 時間帯というのは?
佐藤: わかりやすい例がホットペッパーの営業で、飲食店は昼間の仕込み時間は嫌がられるけど、16時〜18時はオーナーが店にいて話を聞いてくれやすい。こうした傾向が分かれば、「その時間帯は営業活動に集中する」「既存のミーティングは別時間に寄せる」みたいな行動設計ができる。
広報: 商談側で大事なポイントは?
佐藤: 最初のアイスブレイクで信頼が築けているか。その上で、「負の共感」と「解決の共感」が揃っているか。
広報: "負の共感と解決の共感"。
佐藤: お客様の"負(ペイン)"の認識が営業側と一致していて、その負が「この商品で本当に解決できる」と思えていて、解決された状態に嬉しいと感じられている──このどれか一つが欠けても刺さらない。負がズレたまま解決策を出しても提案は響かないんです。最近は、売れているメンバーの商談音声をAIで分析してロープレに落とす、ということもやり始めています。
運用設計で、意外と見落とされていること
広報: 運用を行う中で、見落とされがちな点はありますか?
佐藤: PC操作にかかっている時間。テレアポは電話しながらPC操作して、メモを残しますよね。一連の操作にどれくらい時間がかかり、どんな画面遷移をしているか、ちゃんと設計している会社は少ないかもしれません。タイピング速度も人によって大きく差がある。
広報: 地味だけど、積み上がる差ですね。
佐藤: だから、うちのあるプロジェクトでは「寿司打」というタイピングゲームで大会をやって、1位にはちょっとしたインセンティブ、みたいなことをやっています。ゲーム感覚でPCスキルを底上げする。
広報: なるほど、おもしろいですね。では、マネージャー層でよくある見落としはあるでしょうか?
佐藤: 「成果を上げるために商談に同席します」というやつ。もちろん大事なこともあるんですが、1時間の商談ならマネージャーの1時間が溶けているわけです。同じ1時間なら、「今のやり方のどこが間違っているか」を決める時間に使う方がいいケースも多い。ハイプレイヤーが入れば決まるけど、抜けたら再現されない。同席する時間に観察して、型化のヒントを持ち帰る、そこまでやらないと意味は半減します。
マネージャーが抱え込むと、何が起きるか
広報: マネージャーが抱え込みすぎると、何が起きますか?
佐藤: 改善が進まない、もしくは改善スピードが遅くなる。これが一番はっきり出ます。
広報: 進まない理由は?
佐藤: 「できるイメージが湧いていない」か、「湧いていても優先順位がつけられていない」、このどちらかが多い。最近思っているのは、プロジェクトマネージャーだけでは解決しきれない場合もあるので、「"営業推進の部署"を作って改善した方が早いかもしれない」ということも思い始めました。
広報: 営業部と営業推進部を分ける、と。
佐藤: リクルート時代に新規事業を見ていたときも、営業グループと営業推進グループが明確に分かれていたんです。ベンチャーは兼務が当たり前になりがちで、営業推進の部署を作っている会社は少ない。だから資料1つ取っても、1年間ずっと同じものを使い続けている、みたいなことが起きる。
広報: 営業ができる人が営業推進もできるかと言われると、別ですよね。
佐藤: 使う脳が違うんですよ。営業の達人に「営業推進もよろしく」と言っても、営業が片手間で考える推進物と、営業推進のスペシャリストが作る推進物は別物です。役割要件が違う。
小さい組織で、最低限整えるべきこと
広報: 営業推進の部署まで立てられない規模では、最低限ここだけは、というラインはありますか?
佐藤: シンプルで、「誰が何をするか」を明確に決めること。そして「何をしないか」を決めること。
広報: やることとやらないこと、両方ということですね。
佐藤: 自分への言い聞かせでもあるんですが、ここを明確にしないと、やることとやりたいことが無限に湧いてくるじゃないですか。たとえば僕は最近、Slackが来るたびに反応する、というのを意識的にやめました。クライアントからの連絡は対応しますが、社内のことは極端な話、私としては優先順位が低くて集中力が途切れる方がもったいない。本当に緊急なら電話が来るので。
広報: ただ、人はすぐ成果が出やすいことに流れがちですよね。難しい仕事からは逃げやすい。
佐藤: 本当にそうですね。僕もそう。すぐパパっと動けば解決できる目の前のタスクはすぐやれちゃう。でも難易度が高い本質的なタスクは後回しになる。後回しにすると「これ本質的じゃないな」と気づいて堂々巡り。無理やり時間をロックするしかない。小さい組織ほど、1人の時間の使い方が事業を左右します。
支援に入るとき、最初にすること
広報: make standardsが営業推進支援に入るときは、どこから着手しますか?
佐藤: 最初に聞くのは、「なぜうまくいっていないのか」と「どういう状態にしたいのか」、両方です。ただ、先方は「これをやればうまくいくはず」と思って動いているので、整った答えが返ってくるとは限らない。おぼろげに感じているけど、それがズレているかも、という前提で話を聞きます。
広報: こちらの仮説を当てに行くというより、まずズレを探すということでしょうか?
佐藤: はい。仮説に基づいてクライアントがすでに手を打っていてうまくいかないなら、そもそも仮説がズレている可能性が高い。役員レイヤーだと「もっと売れていいはずなのに伸びない」という感覚はあっても現場の細部までは把握しきれないケースもあるので、事実をはっきりさせるところから一緒にやる、という入り方も多いですね。
まず一つだけ変えるなら
広報: 営業推進でモヤっとしている会社が、まず一つだけ変えるとしたら、何を勧めますか?
佐藤: 「止まるタイミング」を意識的に作ること。何かを始めると、止まれなくなるんですよ。止まらないと、「そもそもなぜ困っているんだっけ」「なぜうまくいってないんだっけ」という問いに向き合えない。
広報: 走りながらだと、考えているようで考えられていないということでしょうか。
佐藤: 社内でよく会話するんですが、「事象・問題・課題・打ち手」というフレームがあって。事象は誰でもわかるんです。「数字が伸びていません」とか。そこから「問題は何か」の捉え方がズレた瞬間に、課題も打ち手もすべてズレる。止まる時間がないと、この最初のズレに気づけない。
広報: サイバーエージェントが新規事業で「撤退ラインを先に決める」という話、ありますよね。
佐藤: 同じ発想はあります。僕自身、営業系の打ち手は3日間やってダメならダメ、と思っています。
広報: 3日間。早いですね。
佐藤: 成果が出ない、兆しすら見えないなら、そもそも何かがズレているんです。1週間、1ヶ月引っ張っても結論は同じなので。ただ、3日で見切るには最初の3日を丁寧に見ないといけない。一番多いミスは、その最初の3日をモニタリングできていないこと。「打ち手を打った。終わり」で、PDCAの"C(チェック)"をやらないままずるずる行ってしまう。
広報: "Doで終わっているPDCA"、心当たりがあります。
佐藤: 止まって、見て、判断する。これをちゃんとできる組織は、本当に強いですね。
おわりに
本当に営業の課題なのか。
うまくいかない理由は、やり方・やりきり・スキルのどこにあるのか。
感覚ではなく、事実を見ながら改善していく。
make standardsでは、
ただ“営業をする”だけではなく、
事業全体を見ながら、
どう価値を返すかを考え続けています。
「もっと本質的に営業を考えたい」
「数字だけではなく、改善や仕組みづくりにも向き合いたい」
そんな方にとっては、
きっと面白い環境だと思います。
佐藤 雄希
◆プロフィール
1980年生まれ。同志社大学卒業。同志社大学在学中に創業期の有限会社ドリコムにて、約2年間プロジェクトマネジメント、経理・財務・労務周りを担当。新卒で株式会社リクルート(現リクルートライフスタイル)に入社し、ホットペッパーの飲食部門でリテール営業、営業リーダー、大手法人部署の立ち上げ、マネージャーを経験後、人事部に異動。
人事部では中途採用をメインに、育成・査定・中長期のチャネル検討も担当。中途採用では年間400名採用を800名採用まで拡大。
その後、新規事業の営業・営業推進部署を立ち上げ、Airレジ、Airウォレット、Airウェイト、Airリザーブ、ペットサロンボード、ショプリエ、リクルートかんたん支払い、の7つのプロダクトのセールス周りの責任者を担当。最後は、Airレジの国内セールスの責任者を経験後、2018年6月に退職。2018年10月1日に株式会社make standardsを設立。