2026年4月21日、LegalOn Technologiesは「Professional AI」に関する戦略発表会を開催しました。 その大きな目玉の一つが、グループ会社のOn Technologiesが提供する新規事業、営業遂行AI「DealOn(ディールオン)」です。
先月公開された、PdM 木嶋のインタビューの続編として、今回は開発責任者を務める丹野に、構想からわずか数ヶ月という圧倒的なスピードでリリースを実現した「AI駆動開発」の裏側や、AIによって変化するエンジニアの新しい役割について語ってもらいました。
丹野 貴顕(たんの・たかあき) DealOn Development 開発責任者
九州大学卒業後、SEとしてWEBシステムの開発や技術責任者を経験し、2010年より楽天に参画。新規サービス開発グループにて多数の新規事業立ち上げを経験。その後、DMM.comラボの開発副本部長として組織マネジメントや、VCでの上場支援などに従事。前職PhotosynthではVPoEとしてマザーズ上場を実現し、2022年8月にLegalOn Technologies参画。「LegalOn」開発責任者を担ったのち、2025年4月より「DealOn」開発責任者として組織をリードする。
前回のインタビュー記事はこちら
確かな勝ち筋で法務領域のプラットフォーマーを狙う 開発責任者が語る『LegalForceキャビネ』の可能性とは? | 株式会社LegalOn Technologies
当たり前になっていた、営業現場の“非効率”から始まった
─ 丹野さんはこれまで「LegalOn」の開発責任者を務めてこられましたが、今回、全く新しい領域である「DealOn」の立ち上げを任された時の心境はいかがでしたか?
「LegalForceキャビネ」では開発部長を、「LegalOn」では開発責任者を担っており、非常にやりがいもありましたが、もともとゼロから新しいサービスを立ち上げるのが好きなタイプなので、素直にわくわくした気持ちの方が大きかったですね。
楽天に務めていた時も、新サービス開発を専門とする部署に所属していて、世の中にないものをゼロから生み出す仕事を多く経験してきました。「これを作ったのは自分だ」と言えるのは、やはりゼロイチならではの面白さだと思っていますし、アイデア次第でいかようにも膨らませていける余白があるのも魅力だと感じています。
そうした背景もあって、新しいプロダクトの話をいただいたときは非常に前向きでしたし、さらにAIネイティブで開発できるという点にも大きな魅力を感じました。
─ 「DealOn」の開発は、どのようなきっかけでスタートしたのでしょうか?
代表の角田さんからの課題提起がきっかけでした。当時の営業現場では、お客様からのプロダクトの仕様などに関する問い合わせに対して、似たような内容の回答を何度もメールで営業担当者が返す必要があり、この対応に多くの時間がかかっていました。角田さんも営業の現場に深く関わっており、「この作業を何とか自動化できないか」という声から、営業遂行AIの構想が動き出しました。
最初、開発メンバーは私とCPO 谷口さんの2人だけで、まずは営業の世界について、海外と日本の市場の違いや、何が売れているのか、トレンドを調べるところから始めました。
─ 最初は「メールの自動応答」から検証を始めたと伺いました。
はい。ただ、メールの自動応答は「AIが意図しない回答をしてしまうのではないか」といった懸念もあり、慎重に検討されることが多い領域だと思います。その中で当社は、代表の角田さんが「自社で実験してでもやってみる」という強い意思を持って前に進められたことが大きかったですね。
実際にプロトタイプを作ってみると、文脈を捉えた自然な回答が生成され、想像以上に精度が高いことが分かりました。「これならいける」と判断し、2025年6月頃に社内プロトタイプとして展開。その後、本格的な開発に向けて一気にアクセルを踏むことになりました。
実際に、プロダクトの仕様に関する問い合わせに対して、正確性の高い回答を自動で対応するため、現在ではプロダクト導入後のお客様を支援するカスタマーサクセスのチームが積極的に活用を進めている状況です。

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実質開発期間はわずか4ヶ月。少数精鋭のAI駆動開発に求められるスキル
─ 構想からリリースまで非常に短期間だったと聞いています。
そうですね。プロトタイプでの検証を経て最終的な仕様が固まり、12月に本格始動したので実質的な開発期間は3〜4ヶ月ほどでした。このスピードを実現できた要因は大きく2つあると思っています。1つは「意思決定のプロセスを極限までシンプルにしたこと」、もう一つは「AI駆動開発」ですね。
従来の開発プロセスでは、PdM(プロダクトマネージャー)がPRD(プロダクト要求仕様書)を作り、それをEM(エンジニアリングマネージャー)がレビューし、さらにエンジニアが設計を行う、といった流れになります。差戻しが発生した場合は、修正して再度レビューに出す必要があり、このサイクルに時間がかかることも少なくありません。
「DealOn」の開発メンバーは、私含め6名前後の少人数でスタートしたプロジェクトで、かつ私がPdMとEMを兼務していたこともあり、引き継ぎや待ち時間がほとんど発生せず、意思決定から実行までのスピードを高めることができました。
─ そして、もう一つの要因が「AI駆動開発」ですね。
はい。「DealOn」では、実装の大部分をAIに任せる体制をとっています。
具体的には「Kiro(キロ)」をベースにした「cc-sdd」というツールを利用しました。当初はPdMが不在であったため、私が要求を整理して、やりたいことをドキュメントにまとめた後に、cc-sddにそれを渡すと、詳細な要件定義、設計書、タスク分解、さらには実際のコード生成まで一貫して遂行してくれます。
これまで人間が設計書を書き、手作業でコーディングしていた工程の多くをAIが担うようになり、エンジニアはAIが生成した成果物をレビューし、品質を担保する役割の比重が高まっています。
─ エンジニアの役割は、今後どのように変化するのでしょうか?
「DealOn」の開発では、およそ9割がAIで実装しており、エンジニアがコードを書く場面は以前と比べて大きく減っています。その一方で、1人のエンジニアが複数の機能を並行して開発するスタイルに変わってきました。AIに指示を出して処理を進めている間に、別の機能の設計や指示出しを行うことで、複数の開発を同時に進めることができるようになっています。
チームとしては、「1人で3つの機能開発を並行して進める」ことを目標にしており、実際には3つ以上もの機能を開発したメンバーもいました。結果として、開発の進め方そのものが大きく変わってきていると感じています。
これからのエンジニアには、単にコードを書く力だけでなく、複数のプロジェクトを俯瞰して管理する力や、状況に応じて思考を切り替える「コンテキストスイッチ」の能力が、より重要になっていくと思います。さらにその上のマネージャーは、それだけ多くの機能開発が同時に進むわけなので、より広い管理能力が求められると思います。
─ AI駆動開発ならではの難しさや苦労はありましたか?
当然ですが、AIは私たちが前提として持っている条件やコンテキストをすべて理解しているわけではありません。実装の多くを任せられる一方で、最終的に何が最適かの判断・決定は人間が担う必要があります。
例えば、AIが意図を汲んでくれた結果、別の機能にまで影響を与えてしまうこともありましたし、指示が曖昧だったり、仕様があまりにも大きすぎたりすると、期待とは異なる実装になることもありました。
また、想定していなかったケースが発生した時にうまく対応できなかったり、機能追加した際にどこまで影響が及ぶのかといった点についても、AIだけで完全にコントロールするのは難しいです。すべての起こりうるケースを事前に網羅することは難しいため、そうした最終的な判断や調整は、やはり人間が担う必要があります。
だからこそ、AIに詳細な指示を出すための言語化能力やコミュニケーション力が非常に重要になりますし、これからの開発の精度を左右すると思います。
AIが明後日の方向に実装してしまわないよう、大きな単位で一度に依頼するのではなく、仕様を細かく分解して指示を出したり、「3日に1回は必ずデモを実施する」といった運用を取り入れることで、方向性のズレを早い段階で修正するようにしています。また、AIが生成したコードを鵜呑みにせず、必ず自分たちで動作確認とレビューを行うことで、品質を担保する体制をとっています。
汎用AIとProfessional AIの違い。営業担当者が「商談」と「人となりの勝負」に専念できる時代へ
─ 汎用AIとProfessional AIの、技術的な違いは何でしょうか?
汎用AIは私たちが「活用するもの」ですが、Professional AIは「いかに自社の専門知識を集め、システムに落とし込むか」が勝負の分かれ目になります。
実際の営業現場で求められるのは「この案件、このお客様、このタイミングで、次に何をすべきか」という、文脈を踏まえた意思決定です。
当社の強力な営業組織を支えるトップセールスたちが、普段どのようにお客様の課題をヒアリングして捉え、受注可能性が低かった案件をどう切り返して受注に導いているのか。そうした知識や判断のプロセスを「DealOn」に落とし込み、再現できるようにしています。
特に弊社は、創業プロダクトの提供開始から約6年半でARR100億円を達成し、他事業部でもプロダクトリリース前から販売を進めるなど、営業組織の実行力が非常に強いと感じています。そうしたトップセールスのメソッドをAIに組み込むことで、個人に依存しがちだった営業の知見をチーム全体で活用できるようになり、組織としての営業力をさらに高めていけると考えています。
─ 具体的には、商談の場でどのように活用されるのですか?
例えば、商談中にお客さまから「残念だけどうちにはこのサービスは合わないかな」といった反応があったとします。その場でどう切り返すかは、これまで個々の経験やスキルに依存する部分が大きい領域でした。
「DealOn」では、商談の会話やCRM情報などをもとに「こういう課題があるなら、この代替機能の提案に切り替えるべき」「こういう運用でカバーできると伝えよう」といった、アラートやアドバイスを商談の内容を分析して提供しています。これにより、異業種出身の営業担当者であっても、経験豊富なトップセールスに近い水準で提案や切り返しができるようになります。
今後はこれを、商談中にオンタイムでアドバイスを出せるように実装したいと考えています。
─ 今後、「DealOn」をどのように進化させていきたいですか?
将来的には、「営業担当者が商談により集中できる状態」を実現したいと考えています。
先に述べたように、営業担当者は企業の収益を生む重要な役割を担いながら、日々のメール対応や、CRMへの入力、見積もり作成、法務依頼、社内稟議といった多くの事務作業にも時間を割いています。こうした業務を「DealOn」で支援していくことで、営業担当者は商談に専念して意思決定に集中でき、お客様との関係構築といった「人となりの勝負」により集中できるようになると考えています。
残業せず、定時に業務を終えたあともAIがサポートしてくれるような世界が実現できれば、みんなハッピーですよね!働き方の面でも大きな変化が生まれるはずです。営業がより本質的な価値提供に向き合える世界を目指しています。

DealOn | Professional AI for Sales
─ 最後に、この記事を読んでいる候補者の方へメッセージをお願いします。
LegalOn Technologiesの開発組織は、AI駆動開発の最先端を走っています。AIをフル活用して開発スピードを飛躍的に高める基盤が整っており、AIネイティブな開発環境で新しい技術にどんどんチャレンジできます。
AIの進化によって、エンジニアもPdMも、これまでの職種の枠を超えて、自分のスキルを掛け合わせながら新しい価値を生み出せる、非常に面白いフェーズです。AIを使いこなして自分のスキルをさらに高めたい、これまでにない新しい価値をゼロから生み出したいと考えている方は、ぜひ一度お話しできれば嬉しいです。皆様のご応募をお待ちしております!