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顧客目線で愛される薬局を目指せ! 非薬剤師のはたらきで変わる薬局の姿

薬局・薬剤師のコミュニティ「MusuViva!」で2ヶ月に1度開催される薬剤師のオンライントークライブ「Viva! Cast 〜調剤室の小窓から」。

2023年3月に開催された第6回では、前回に引き続き、福島県会津若松市の「会喜地域薬局グループ」高橋亮太さん、そして高橋さんのオファーをうけた、三重県松阪市の「株式会社メディカルリンク」楢井慎さんをお招きしてトークライブを開催しました。

薬局経営や採用・広報活動などに取り組まれるお二人の共通点は、非薬剤師であるという点。薬剤師経験のないお二人が考える、良い薬局づくり、薬剤師との良い関係とはどういったものなのでしょうか。日頃意識している点や課題などをお話いただきながら紐解いていきます。

<スピーカー>
会喜地域薬局グループ 企画・採用担当 高橋亮太さん
株式会社メディカルリンク 代表取締役社長 楢井慎さん

<モデレーター>
株式会社メタルファーマシー 代表取締役 川野義光さん

目次

  1. 非薬剤師目線で語る、薬局経営
  2. “農業”と“医療”が抱える、生命産業ならではの課題
  3. 医療業界未経験のまま40代で薬局経営へ
  4. 「地域の薬局」として愛されるための広報活動
  5. 日本で一番“患者さんの気持ちがわかる”からこそできること
  6. 薬剤師はコミュニケーションスキルが低い……?

非薬剤師目線で語る、薬局経営

川野:みなさまこんにちは、メタルファーマシー・川野です。早いもので、今回で6回目となる「Viva! Cast」をさっそく開催していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ゲストには、前回から引き続き会喜の高橋さんをお呼びしています。

高橋:はい、会喜の高橋です。よろしくお願いいたします。今回は、僕からお声がけをして、メディカルリンクの楢井さんに来ていただきました。いろいろな方から楢井さんのお話を伺っており、この機会にゆっくりお話してみたいなと思ってお誘いさせていただきました。

楢井:はじめまして、メディカルリンクの楢井です。高橋さんにそんなふうに言っていただいてとても恐縮です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

川野:お二人ともよろしくお願いします。毎回「Viva! Cast」ではオリジナルのあだ名をプレゼントさせていただいているのですが……前回、高橋さんには”一蘭性ソーセージ”というあだ名を付けさせていただきました。

以前から高橋さんは「博多華丸・大吉」の大吉さんに似ているなあと思っていたのがまずひとつ、そして博多のラーメンなら一蘭だろうということで、それを合わせて”一蘭性ソーセージ”とさせていただきました。

それと、本日のニューカマー・楢井さんのあだ名は”脇みるお”とさせていただきました。由来は次回お伝えできたらと思いますので、楽しみにしていてくださいね。

楢井:どういう理由なんでしょうね、ものすごくモヤモヤする感覚だけが残りますね(笑)。次回教えていただけることを楽しみにしています。

川野:恒例のあだ名紹介も終えたところで、さっそくセッションに移っていきたいと思います。高橋さんと楢井さんはこうしてしっかりお話するのが初めてだと伺いました。高橋さん、楢井さんにお声がけをした背景なんかを教えていただけますか?

高橋:非薬剤師の薬局経営について、いろいろとお話してみたいなと思ったのが大きな理由です。僕は、特に採用担当として働くなかで自分自身が薬剤師ではないという点を枷に感じる瞬間がときどきあって。「どこか一歩踏み込めないな」と思ってしまうときがあるんです。

楢井さんは非薬剤師として薬局経営に携わられていると思うので、どういったスタンスで薬局経営と向き合われているのか、人材育成に携わっているのかなどを伺いたいと思っています。

“農業”と“医療”が抱える、生命産業ならではの課題

川野:今回、高橋さんと楢井さんには非薬剤師という観点でいろいろとお話を伺っていきたいと思っています。楢井さんはもともと薬局業界ではなく農業の世界にいらしたそうですが、どういった経緯でこの業界に入り、これほど大きな規模の経営に携わるようになったのでしょうか?

楢井:そうですね、改めてお話するのは少し恥ずかしいのですが……。私の父親は、とある大手医薬品卸の前身企業で役員を務めていた人物なんです。ですから、図らずとも医療の世界が身近にあって。ただ、私は長男でありながら、身近すぎたゆえ医療の道には進みたくなくて、大学でも社会学部に進学しました。

そこでは地域社会学を専攻していて、地域の活性化や農業に興味を持って学びを深めていました。日本では農村文化をもとに文化が発展してきた経緯がありますが、今の日本では農業が厳しい環境にさらされていますよね。そういう背景から、農業を元気にすることのできる会社をと探して就職活動を行いました。

そこからはその会社で16年間頑張ってきて、30歳で役員になり、会社のナンバー2として経営全般を任せていただきました。そんななか父親が、勤めていた医薬品卸の会社を退職し、調剤薬局の会社を立ち上げたんですね。

次々と店舗数を広げるなか、9〜10店舗目を開店する、いわば組織化するタイミングで会社経営の経験値のある私に声がかかりました。父も高齢になってきていたので、今後を見据えてっていう背景もあり、そこではじめて私は医療業界に携わることになりました。

高橋:僕自身、祖父母が農家なので、今のお話をすごく身近に感じました。僕は次男の息子だったので直接的に農業に関わることはありませんでしたが、農業を元気にするというお気持ち、とても共感します。

楢井:そうだったんですね。この業界にきて思ったんですけれど、農業と薬局業界ってスキームがとても似ていますよね。たとえば、農家さんの平均年収って120万円程度と言われていて、すごく儲けの少ない仕事なんです。これだけ農作物が流通しているのにと思いますが、そのこたえは中間流通の人々の存在にあります。

農家さんが作った農作物がスーパーに並ぶまでには、問屋さん、仲卸さんなどいろいろな人が媒介します。農家さんが15円で売りに出したはずのキャベツが、さまざまな仲介者を経ることで、スーパーに並ぶ頃には100円になっている世界です。それなら、農家さんが自分自身でキャベツを100円で売ることができれば、年収は6倍、7倍にもなるのにと思っていました。

そういう感覚が薬局業界にもあるのだなとこの業界に足を踏み入れてから気づいたんですよね。農産物は市場の相場が価格を決めるし、薬局は調剤報酬で価格が決まる。つまり、自分たちやお客さんによって価格を決めることができないので、お客様視点でサービスを提供して……という目線が身につきにくいですよね。

高橋:そうですよね。僕の弟も公務員として働いていて、最初に勤めたのが行政の農政課だったんです。だからよく中間マージンの話も聞いていました。農家さんのためになることをどうにかと思っても、業界の構造的にそれが難しいと話していて、医療業界と似ている部分があるのだなと感じたことを覚えています。

楢井:まさしくですね。「うちのキャベツは日本一だ!」と言っている農家さんに出会うこともありましたが、正直言ってしまうと、日本一でなくても、日本一まずくても市場には同じように流通するので……。

薬剤師さんのことを見ていても、日本で有数の知識を持っていたり、薬学的に優れた薬剤を扱えたりするけれど、薬剤師としての価値はなかなか評価されにくい。そういうモチベーション搾取が起きやすいのが課題だなと思っています。

そのうえ、農業も医療もどちらも生命産業じゃないですか。だから、解消するべき課題があったとしても、リスクをとった打ち手をとりづらい。農業に携わっていたときも、医療に携わっている今も、そういった解決すべき課題への向き合いにくさを実感することが多々あります。

川野:「MusuViva!」内にこれだけ農業に関する話題ができる人がいらっしゃるとは思いませんでした。ぜひ、そういったお話もコミュニティでお聞かせいただけたらと思います。

医療業界未経験のまま40代で薬局経営へ

川野:農業と医療との共通点がこれだけあるのは意外ですね。反対に、薬局経営に携わってみて感じたギャップっていうのはありましたか?

楢井:なにがギャップなのかわからないくらいにはわからないことだらけでしたね。医療のことも薬局のこともなにもかも知らなくて、たとえば……クリニックさんの隣にある調剤薬局はそのクリニックさんが経営していると思っていたくらいなんですよね。そのレベルでなにも知らない状態でした。

川野:たしかに、言われなければそう思ってしまうのも無理ないですよね。

楢井:今でもそんなふうに思っている患者さんはいらっしゃるでしょうしね。そういう意味では、患者さんと同じ目線で業界に入れたっていうのは良かったのかもしれません。40歳の会社役員だった当時「医薬分業」という言葉も知らなかったくらいですから、多くの人に知られていない薬局の仕事や存在意義があるのだろうなと思っています。

高橋:医療のバックグラウンドがないと本当にわからないことだらけですよね。僕も流通系の大学に進学して物流や流通史について学んでいただけなので、医療や薬局業界を取り巻く環境のことは、正直入社したばかりの頃はわかりませんでした。

楢井:そうでしたか。ちなみに、会喜にはどういう経緯で入社されたんですか?

高橋:もともと大学卒業後は大学院に進学しようと思っていたんです。ただ、家族のことや自分が長男だという背景もあって、実家に戻ってくることになりまして。その際、とある就職説明会で、僕の同級生である会喜の現社長のお父さん(創業社長/現 相談役)に久しぶりに会ったんですよね。

「ご無沙汰しています。小学生ぶりですね」なんて挨拶したら「まあちょっと座れよ」という感じで話を仕事の話を伺って……そうしたら、めちゃくちゃキラキラしていたんですよ。その様子が魅力的だったので働いてみようと思い、新卒で入社しました。

楢井:新卒入社だったんですね。随分エネルギッシュなお父様との出会いがあってこその決断だったかとは思いますが、入社するにあたって不安な点ってなかったんですか?

高橋:僕の場合は、母が歯科衛生士として働いていた経緯もあり、多少医療業界の雰囲気っていうのを聞いていたのでその点は安心していました。たまたま僕の職場の隣が母の職場だったので、どういう会社なのかもある程度知っていましたし。

ただ、非薬剤師として、どのように医療や患者さんに関わっていけるのだろうという漠然とした不安は感じていたかもしれません。

薬局は薬剤師がいてこそですし、投薬や健康相談を通して患者さんとの関係性を培うのが基本です。その点、当時の僕は会計とかOTC販売とかそういった点でしか接点がなかったので、職能をどのように活かしていけばいいのかよく考えていました。

患者さんとの信頼関係のつくり方、キャリアアップの方法なんかは未知数でしたね。

楢井:高橋さんを採用してくれた社長さんたちもずっと事務を任せるイメージはなかったでしょうし、どうキャリアをつくっていくのかは難しいところですよね。

「地域の薬局」として愛されるための広報活動

楢井:採用や広報の取り組みなんかはこれまでどこかで経験してきたものではなく、今の会社でゼロから学んだってことなんですか?

高橋:はい、もともと創業社長が大切にしていた考え方の一つに、リファラルだったり関係性づくりみたいな話があるんです。また、現社長はSNSやITについて詳しいので、それらの要素を取り入れながら関係性を紡ぐ発信に注力しています。

楢井:本当にすごいですよね。オープン社内報をはじめ、広報の取り組みに関しては薬局業界ではなかなか例を見ないと思うので、これまでそういったことを学んでいらしたのかと勝手に思っていました。

高橋:ありがとうございます。とはいえ、現社長のアイデア力があってこそのものかなとは思います。僕は0→1よりも、生まれたアイデアをどう形にするのかを考えるほうが得意なので。限られたリソースのなかで、社長が生み出したアイデアを実現するための方法や、そのための道筋を考えているようなイメージです。

川野オープン社内報の取り組みなんかは、それこそカケハシみたいなIT企業が先んじて取り組んでいた事例ですからね。それを薬局で取り組んで、しかも、note公式からも注目を集めているんですよね。

高橋:そうですね。「note pro運営がすてきと感じた法人noteまとめ」という、公式のみなさんが選定したピックアップ記事に三度選んでいただいたことがあります。

楢井:私が経営において大切にしているスタイルでもあるんですけれど、やっぱり患者さん、要するに地域の方々に選んでいただける場所になるってすごく重要なことだと思うんですよね。その延長線上に採用の話なんかもあるのではと考えていて。その際、これだけ時代がSNSを中心とした情報発信メインになってくると、企業の広報力が重要になりますよね。

最近は、小さな雑貨屋さんとかパン屋さんとか、山奥にあるようなお店だとしても、Instagramのみで集客するじゃないですか。そういう意味では、地方にある企業だとしても、広報力があって地域から愛される発信をしていれば、良い人材を採用できることにもつながるのだろうなと思います

そういう意味では、逆に地域性があればあるほど、その点においての差別化もできるのかもしれませんよね。弊社には広報力と呼べる力がまだないので、すごく会喜さんがうらやましいです。社内報、面白いんですもん。ラーメンの話にせよ、トリセツ記事にせよ、こんなクリエイティブなこと、なかなかできないですよ。

トリセツ|会喜地域薬局グループ社内であまり関わり合いがない、、忙しそうでちょっと話しかけにくい、、と感じる人はいませんか? そんなことないよ!と知っていnote.aiki-ph.co.jp

高橋:うれしいです、ありがとうございます。社内のみんなが「これ取り上げようよ」みたいな感じでアイデアを出してくれるので、それを採用しつつ、僕はラーメンを食べて写真を撮って記事を書いて……っていうふうに進めています(笑)。

楢井:なるほど〜。でも、noteの文章をつくるのにも結構時間がかかりますよね?

高橋:決して簡単というわけではないですね。ただ、オープン社内報を始める前に、社内SNSでよく文章を投稿する機会があったんです。そこで言語化とか文章化の訓練を積むことができたので、苦手ながらも克服できていたのかなと思います。

また、現社長はすごく文章のうまい人ですし、noteの編集長をお願いしている外部の方もいて、僕の周囲には文章力に長けた人がいるので彼らの文章から学ぶことも多いですね。

楢井:ちなみに、noteで掲載する記事や広報戦略っていうのはどのように考えられているんですか?

高橋:そのあたりも現社長と話し合いを重ねて検討しています。やっぱり最初は知ってもらうことがスタートなので、知ってもらえるための工夫を考えていますね。そのうえで、わざわざ会喜まで来てもらうにはどうしたらいいのか、来てもらったときにどんな印象を与えられるのかなんかを考えて、会喜らしさを表現できる広報戦略を考えています。

楢井:なるほど、まずは認知度を上げること。そして、良い印象を持ってもらい採用につなげていくっていうイメージですね。

高橋:うちの地元では薬学部に進学する学生が毎年10人弱程度なんです。だからこそ、大学進学前の高校生に地域の薬局として知ってもらえたらなと思っています。

楢井:たとえば、うちだとお客様向けの広報活動としてチラシをつくって配ることがあるんですが、会喜さんでもそういった取り組みはされていますか?

高橋:店内で渡せるリーフレットや管理栄養士さんのつくったレシピを置いたりすることはありますが、そのくらいですね。

楢井:noteで掲載しているラーメンやトリセツの記事も、せっかくなら印刷してお客様に渡してみたら面白そうですね。他の薬局がやらないことをやったほうが、お客様の印象にはどんどん残っていくでしょうし。

高橋:たしかに、それ面白いですね! 社長にも相談してみます。楢井さんのところもnoteを書かれていると思うんですが、僕はすごく勉強になるので面白いなと思いながら読んでいます。経営的な視点とか人材教育とか、僕たちのnoteとはまったく異なるアプローチですよね。


楢井:うちのは完全に採用目的での発信なので、よくあるインタビュー記事みたいなものが多いですけれどね。面白いと言っていただけてうれしいです。

日本で一番“患者さんの気持ちがわかる”からこそできること

高橋:楢井さんはマネジメントや社員との関わり合いなどで意識されていることはありますか?

楢井:なんでしょうね、あんまりこれといって意識していることがないんですよね。というのも、私はすごくメンバーに恵まれているなと思っていて、非薬剤師である私をみなさんが受け入れてくれているのを感じるんです。

私のほうで大切にしていることといえば、プロフェッショナルとして敬愛する気持ちを持って一人ひとりと接すること。専門的な領域においては口を出さずにおまかせするようにしています。

前職では多少厳しいことを言ったり、経営的な面からトップダウンで社員に指示を届けることもありましたが、そういう経営スタイルは取らなくなりました。ボトムアップになるようなアプローチは心がけています。意識していることといえばそのくらいでしょうか。

私は薬局の業務においては理解も浅く、一般の人に近い感覚を持っていると思うんです。ですから、日本で一番患者さんの気持ちがわかる薬局経営者とキャッチフレーズを付けて、その立場を忘れずに発言をするようにしています。

高橋:すごく大切な観点ですよね。僕たちの仕事は患者さんがいて初めて成り立つものなので、そこをないがしろにしてしまうと、地域に愛されなくなってしまう。地域に愛されないと悪い噂が立つので、患者さんはもちろん、採用的な面でもなかなかうまくいかなくなってしまうと思います。

楢井:患者さんに対して、自分たちの価値がしっかりと伝わっていないと、価値としては認められないと思うんですよね。そういうことをなるべく伝えていきたいなと思っていて。

ひとりの患者目線で薬局の課題を伝えることで、薬剤師一人ひとりのモチベーションが上がったり、自ら勉強をするようになったりする。私の役割はそういったことを伝えることなのかなと思っています。

高橋:なるほどなあ。お話を伺っていて、僕自身が変に非薬剤師であることを意識しすぎているのだなと実感しました。

川野:僕は薬剤師であり経営者であるという立場なんですけれど、経営者として従業員に強く言葉をかけなければならない場面ってあるんですよね。

そういうとき、僕が強く言ったことで退職してしまうかもしれないっていう怖さもあるんですけれど、一方で自分が薬剤師として現場に入ればいいやっていう拠り所みたいなものがあったりするんです。

その点、非薬剤師の経営者だと従業員への踏み込みにくさみたいなものがあるのかなと思ったんですけれどどうでしょう?

楢井:薬剤師になったことがないので、実はあまり考えたことがないのかもしれないですね。とはいえ、やっぱりそういう目線では右腕になってくれる薬剤師の存在はとても大切だと思いますね。

薬剤師さんにとってのトップは薬剤師さんであるべきと思っているので、経営目線や顧客目線を持って一緒に話ができる薬剤師さんが増えたらうれしいなと。

薬剤師として、どう言葉をかけられるとうれしいのか、響くのか。こたえを持っているのもまた薬剤師さんだと思うんです。そういう翻訳のような役割を担ってくれる薬剤師さんは、非薬剤師の自分にとって、とても大切な存在です。高橋さんはどうですか?

高橋:自分のメッセージがきちんと届いているのかなっていうのは、たしかに少し不安なときもあります。会喜には別事業として立ち上げているお弁当屋さんがあるんですが、そちらのほうだと自分でも現場を回っていたことがあるので同じプレイヤーとして言葉をかけることができるんです。頼ってもらえているなと感じますし。

ただ、薬局においては会社全体としてのメッセージを伝える役割が自分でいいのだろうかと、多少なりとも葛藤していますね。

楢井:そうですよね。私もそういう気持ちになるので、なるべく薬剤師さんに聞いちゃいますもん。「これって薬剤師さん目線だとどう思うの?」って尋ねると、みんな教えてくれるので。そこから言い回しとか表現とかをチューニングして伝えるようにしています。

高橋:さきほどボトムアップっていうお話もありましたけれど、対話とか個性とかを重要視しながらのアプローチになるんでしょうか?

楢井:おっしゃるとおりです。一人ひとり適性とか性格が異なるので、そのあたりを見極めながらコミュニケーションを取るように意識しています。たとえば「新しいことを始めるのが苦手。でも、患者さんの役に立ちたい」と思っている社員さんがうちはすごく多いんです。そのための動機づけになるコミュニケーションを取るのが私の役割なんですよね。

「大事なことだからやらなくちゃダメだよ」と言うだけだとなかなか動けないけれど、頑張ってみたいと思える言葉のかけ方もきっとあるじゃないですか。なので、顧客視点を取り入れつつ、そういった言葉の選び方を意識してコミュニケーションを取るようにしていますね。

高橋:社員さんとの会話のなかで、その人の承認欲求を満たすこと、患者さんにとっての価値になることを行っていることなんかをとても上手に伝えていらっしゃるんですね。意識づけって難しいけれどすごく重要なことですよね。

楢井:コミュニケーションにおいて、その二つはとても重要視していますね。薬剤師さんにとっても「やってよかった」と思えるほうが良いはずなので、自発的に行動したくなる声かけってなんだろうと常日頃から考えるようにしています。

高橋:さきほど、マネジメントのお話のなかで「右腕として一緒に働ける薬剤師さんの存在が大切」とおっしゃっていたと思うんですが、楢井さんにとってそれはどういうスキル、考え方を持った人材なのだと思いますか?

楢井:薬剤師として、薬剤師さんから尊敬される人ですね。結局、最後はなんだかんだいって専門職としてどれだけ尊敬できる人なのかが重要ではないかと思うんです。尊敬する薬剤師さんが言っているなら、その人の話を聞こうって思ってもらえるのかなって。

高橋:なるほど。ちなみに、非薬剤師でこれから一緒に働いていきたいのはどういう人になるのでしょう?

楢井:うちの場合は、今組織の拡大期に差し掛かっているので、組織をうまく安定させてくれる人ですかね。マネジメントができる人というよりかは、組織や文化をつくったり、社長に代わって社内に言葉を届けることができる人かなと思います。ですので高橋さん、ぜひお願いします(笑)。

川野:それはまた別途時間を取らないといけないですね(笑)。

薬剤師はコミュニケーションスキルが低い……?

川野:新しいことを始めるのが苦手っていうのは、薬局業界全体にいえることですよね。そんななかで、会喜さんもメディカルリンクさんもどんどん新しいことに挑戦されている印象を抱いています。

その取り組みの一つとして、楢井さんには「ヤクミラボ」のお話もしていただきたいなと思っているんですがお願いできますか?

楢井:もちろんです。今、私たちは「ヤクミラボ」という薬学生向けのコミュニティを運営しています。運営目的は、将来の薬剤師さんを今よりも日本の社会に価値を提供できる存在にすること。

薬学的な専門知識は薬学生として身につけることができますが、服薬指導におけるフォローアップやドクターの連携はいわばコミュニケーション力です。

YAKUMI.Lab|薬学生生活に、スパイスを。YAKUMI.Lab|薬学生生活に、スパイスを。薬学生生活に、スパイスを。 「YAKUMI.Lab」は、全国の薬学生が集うオンラインコミュニティ 「YAKUM「YAKUMyakumi.space

薬剤師として知識が必要なのは当たり前ですが、そのうえで社会人としてのスキルも高く求められる仕事ですので、そういった点をはやめに身につけることのできる機会をと思って運営しています。

学業以外のコミュニティを通して、仲間をつくったり、社会に出た際に活かせる専門知識以外の力を育んでいただければなと。

高橋:薬局に限らず企業の採用文脈においてもコミュニケーション能力の重要性はよく語られていますよね。たしかに後天的に身に着けられるスキルかもしれないけれど、なかなかトレーニングを積める環境がないまま社会に出なければならないのも事実。

学生のうちからそういった能力の必要性に気づける場があるだけでも随分違いますよね。本当に素敵な取り組みだなと感じています。

川野:お二人の目線からだと言いにくいと思いますが、薬剤師ってコミュニケーションスキルが全然ないんですよね(笑)。だからこそ、学生時代からトレーニングできる環境ってすごくありがたいなって思っています。

楢井学生のうちからプラスアルファの知識を身に着けようと思える薬学生なんて、それだけで本来は素晴らしい存在じゃないですか。そういう子たちのためになる場を用意したいっていう気持ちが強いですね。また、そうして身につけた個性があれば、薬局に就職するうえでもポジティブに働くと思いますし。

薬局はどこも新卒採用に苦しんでいるかなと思うので、前向きに頑張っている薬学生と、その意思を汲み取ってくれる薬局とのマッチングの場としてもうまく活用できたらと感じていますね。最終的には地域医療にも還元できるような取り組みにしていきたいです。

川野:ありがとうございます。さて、いろいろとお話を進めてきましたが、時間も迫ってきましたので、楢井さんに最後の質問をさせてください。楢井さんにとって「MusuViva!」ってどのような場所ですか?

楢井:そうですね、薩長同盟のような存在というところでしょうか。薬局同士が共創して、情報をシェアして学び合っている場ってすごく貴重ですし、とても有意義ですから。私もまだまだ活用しきれていないので、もっともっと能動的に参加していこうと思いました。

川野:ぜひこれからも「MusuViva!」を一緒に盛り上げていきましょう。今日は本当にありがとうございました!

高橋:すごく充実した時間になりました。お二人とも、今日はありがとうございました!

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