こんにちは。今回のストーリーでは、地元カンパニーの組織についてご紹介したいと思います。
2022年に「待てる社会をつくる」という理念を制定したことに伴って、地元カンパニーでは3つの行動様式を定めました。
それが、こちらです。
・途中を訊く
・変化を訊く
・やめるを訊く
まずは、代表の児玉にこの行動様式を定めた背景について聞きました。
地元カンパニーが掲げる「3つの行動様式」に込めた狙い
——3つの行動様式に込めた意図について教えてください。
児玉:
順番に説明していこうか。まずは「途中を訊く」から。当たり前かもしれないけれど、完成したら報告するという仕事の進め方だと、もしも方向性がズレていたときに、かなり無駄な仕事をしていたことになる。それを避けたいという思いはあるよね。
あと、未完成な状態を相手に見せるということは、ある意味、「自分の恥部を晒す」ということ。恥ずかしいと思うけれど、自分の頭の中をあえて見せていくことで、マネジメントする側も「この人はこういう物事の捉え方をするんだ」と理解できる。そうすると的確なフィードバックもしやすくなるし、結果的に本人の仕事の精度も高まるし、スピードも上がると思うんだよね。
——なるほど。そうしたら「変化を訊く」に関してはいかがでしょう?
児玉:
「変化を訊く」に関しては、自分の変化量を正確に認識してもらいたいという思いがある。なんだか日本って往々にして謙遜しがちじゃん。でも、それって自分の能力とかできたことを正確に把握することを放棄している側面もあると思う。
ある時点と現在を比べて、何ができるようになっているのか。ちゃんとできていることを正確に把握して、自信を持ってもらえるといいなと考えている。
——では、「やめるを訊く」は?
児玉:
仕事って放っておくと、どんどん膨張していくんだよ。「あれやりたい」「これもやる」と手を出していると、だんだんやらねばならないことで圧迫されていく。もちろん気づいたらやらなくなっていることもあるんだけど、ちゃんと意識的に「やらないこと」を決めて「今何をやるべきか」を見つめて集中することが大切だと思っている。
「聞く」でも「聴く」でもなく、「訊く」
——あと、3つの行動様式で共通しているのが「訊く」という言葉ですよね。「聞く」でも「聴く」でもなく、あえて「訊く」にしている理由は何でしょう?
児玉:
「訊く」は、積極的に相手に問いかけるという意味合いがある。そもそも発信する側が起点になるコミュニケーションってなかなか難しいなと思っていて。というのも、すでに言いたいことがあって、自分から何かを言おうとする人ってそんなに世の中に多くはなくて。だとすると、受け取る側が起点になった方が、良いコミュニケーションは生まれるはず。「訊く」ことで、相手は話す機会が増えるし、いろいろなことを思い出せるし、考えを深めることができるんだよね。
社内では至るところで「訊く」シーンが。
——問いかけられた側は、恩恵を受けることになる。
児玉:
そう。めちゃくちゃラッキーだと思うよ。そもそも、人って「頭の中で整理されているから話せる」んじゃなくて「話し始めることで、頭の中に点在している情報が紐付いていって、理解できるようになる」んだと思うんだよね。社長になると創業の経緯とか事業への思いとか訊かれることが増えて、それらに答えていくうちに「あれを始めたのは、こういう理由だったんだな」と気づいていくことも多かった。だから、メンバーもどんどん訊いて、どんどん答えてほしい。
もともと「手を動かしながら考える。手を動かしはじめるから形になっていく」みたいな考え方は、地元カンパニーにはあると思うしね。そうした思想とも相性がいいと思う。
——常にアクションを起こしていく、と。
児玉:
あえて理念に紐付けて話すと、「待つ」って受動的な印象があるけれど、地元カンパニーにとっての「待つ」は何も気にしないで放っておくという意味ではないのよ。ある程度、仕掛けを用意しておいて、それが機能するのを注視しているような感覚というか。ある意味、能動的なものなんだよね。「訊く」ことで相手の反応を「待つ」、こうした行動様式や浸透施策をつくってメンバーの成長を「待つ」……そうした感覚はあるかな。
メンバーが感じている「地元カンパニー」という組織
こうした代表の考えを、メンバーのみなさんはどのように受けとめているのでしょうか。ここで、2名の社員に地元カンパニーの組織について聞いてみました。まずは、最も社歴が長いSさんのコメントです。
——まずは現在の地元カンパニーの組織について、どのように感じていますか?
Sさん:
地元カンパニーでは、みんなで輪になって思っていることや考えていることをお互い話していく朝会を続けています。私が入社した8年前は、フリートークのようなかたちで、それぞれが思い思いに話していたけれど、近年は行動様式を踏まえたテーマで会話するように。そうした取り組みもあって、だんだん地元カンパニーの哲学が社内に浸透していっていると思います。
——地元カンパニーの哲学は、以前から変わりませんか?
Sさん:
昔から「児玉イズム」のようなものはあったように思います。それが行動様式によって明文化されて、みんなの意識が統一されていったような感覚はありますね。
もともと地元カンパニーは、メンバー同士のコミュニケーションが活発な社風。日々のコミュニケーションに理念や行動様式のニュアンスが加わったことで、より地元カンパニーらしい思想が醸成されていっているんじゃないかなと思います。
続いて話を聞いたのは、日々児玉と密接にコミュニケーションを取っている、営業部長の山下さん。金融機関やベンチャー企業を経て、地元カンパニーに転職してきた山下さんは、どのように代表の考えを自らに落とし込んできたのでしょうか。
——転職直後、地元カンパニーという組織についてどのように感じていましたか?
山下さん:
一番印象的だったのが、当時の地元カンパニーでは営業職に数字目標が与えられていなかったこと。でも、それって自分で到達点を定めて、自分自身を律していかないといけなくて。決してラクできるわけではないんですよね。
人を数字で動かそうとするんじゃなくて、考え方に働きかけて結果的に動いている状態をつくろうとする。児玉さんはそういう人なんだと思いました。
——まるで「北風と太陽」みたいですね。
山下さん:
あと、とにかく訊かれることが多いなと思いましたね。何かを相談すると、児玉さんからは「山下くんはどう思うの?」って聞き返されるんです。当然、会社の代表である児玉さんの方が経験値もあるし、組織や事業への解像度も圧倒的に高い。それに比べると、僕の意見は未熟なところもあるけれど、思い切って伝えた意見は決してけなすことはしない。
営業活動を行っている山下さん
きっと児玉さんの中には、「完璧なものや完全なものって存在しないから、とりあえず受け入れる」という考えがあるんじゃないかなと思うんですよね。だから、「途中を訊く」といった行動様式も生まれてくる。
児玉さん自身もどんどん途中を見せてくれるから、社員も「それでいいんだ」って安心して途中を見せることができるんです。僕自身も入社当初は、どうしてもかっこ悪いところを見せたくないという思いが先行していたけれど、だんだん「恥部を晒す」ことができるようになってきました。
地元カンパニーは、まるで「小さなヨットに乗っている一団」?
最後に、地元カンパニーの人事部門をリードする取締役・渡邊さんに総括してもらうことに。地元カンパニーという組織の特徴や組織づくりの取り組みについて話してもらいました。
——渡邊さんは「地元カンパニー」ってどんな組織だと思いますか?
渡邊さん:
なんだか「小さなヨットに乗っている一団」みたいなイメージですかね。誰かが「あっちに岩があるよ」「波が来たよ」と言ったら、みんなが「OK」と応えて、一斉に体重を移動して、ハンドルを切って前に進んでいく。船長じゃなきゃハンドルを握れないわけでも、指示を出せないわけでもなく、舟に乗っているみんなが主役であり、みんながその声を聞いているような感じかな。
——なぜそのような主体性を持ったメンバー同士が有機的につながるような組織のあり方が育まれていったのでしょうか?
渡邊さん:
点在していたオフィスが統合したことや、事業が拡大して社員のリソースを結集しないといけなくなったこともあるけれど、最も大きいのは、昔から地元カンパニーには訊く文化が根づいているからなんじゃないかと思います。
——訊く文化?
渡邊さん:
はい。児玉さんは、問いを軸に自分自身で解釈することや言語化することに対して、とても貪欲。そうした影響を受けて、日々現場でメンバーに向き合っている私たち管理職も問うスタンスが養われていきました。実際、私もメンバーから相談を受けたときには、答えを提示せず、問いを投げかけて内省を促しながら待つように。どれだけ時間がかかっても、答えを誰かに与えられるのではなく、自分自身で獲得してほしいんです。その機会を奪わないようにしています。
——児玉さんだけではなく、現場に近い管理職の人が問いの文化を体現するようになったんですね。その他、地元カンパニーの理念や行動様式を浸透させるために行った取り組みはありますか?
渡邊さん:
はい。たとえば「訊く活」。2人1組で交代しながら相手にとにかく訊いていくんです。あとは「日報」ならぬ「未来報」。これは「やったこと」ではなく「これからやること」についてメンバー同士で報告し合う活動のことです。その他、評価指標に3つの行動様式に関する項目を取り入れたりもしました。そうした取り組みもあって、徐々に理念や行動様式が浸透してきたように思います。
——さまざまな取り組みをしてきたんですね。
渡邊さん:
「動きながら考える。動きはじめるから形になっていく」みたいな考えがあると思うんです。だからこそ、理念や行動様式を浸透させる仕掛けや仕組みはたくさん開発して取り入れるようにしています。もちろんやめた取り組みもあるけれど。たとえば、必然的に話すきっかけをつくろうと思って「30分PC禁止」なんて取り組みを始めたけれど、うまく機能しなくてやめたことも。これからもそうやって試行錯誤しながら、地元カンパニーの文化を醸成していけたらと思います。