医療やヘルスケア分野をデジタル技術で革新することを掲げるジェイフロンティア株式会社(以下、ジェイフロンティア)。2021年現在13期目、将来のIPO(新規株式公開)と売上高1000億円企業を目指し、社員数50名規模のベンチャーながら急成長を遂げています。
自社オリジナル商品を通販で展開するBtoC領域を主力に、クライアントである通販会社の売上拡大を支援するBtoB領域、新規事業であるオンライン診療・服薬指導の医療プラットフォーム事業と、主要3事業を展開中です。
今回紹介するのは、管理部本部長/取締役 執行役員の鈴木信二。キャリアを税理士事務所でスタートし、通販企業の管理部門を含め、管理部門ひと筋で約30年のベテランがジェイフロンティアへ入社しました。当初から管理部門の「IPO請負人」として、会計周りや組織体制づくりに奔走。ゼロの状態からIPOに耐えうる体制を整えました。
そんな彼が組織づくりや採用面で大事にしていることはいったい何でしょうか。これまでの5年間を振り返ってもらいつつ、管理部門で一緒に働きたい人物像などの話を聞きました。
プロフィール
鈴木信二(すずきしんじ)
管理部本部長/取締役 執行役員。税理士事務所での勤務など、一貫して管理部門での業務に従事。通販企業など事業会社での管理部門で人事や経理などを経験した後、2016年よりジェイフロンティア株式会社へ入社。2016年8月より、取締役管理本部長として管理部門を全体統括
<目次>
- ジェイフロンティア代表・中村の魅力に惹かれて入社
- 「月次報告」をいち早く締めることが最優先課題だった
- 仲間への思いやりを大切に
ジェイフロンティア代表・中村の魅力に惹かれて入社
――まず、鈴木さんのキャリア遍歴から教えてください。
高校生のときって将来の進路を決めますよね。手に職を持とうと探しているときにたまたま目に入ったのが簿記でした。それで大原簿記専門学校で会計・経理を勉強して、卒業後は個人経営で15名ほどの小さな会計事務所へ就職しました。
そこで財務・経理の仕事を17年間務めまして。クライアントワークも面白かったのですが、一度は事業会社で働いてみたかったため転職しました。
プラセンタなどの健康食品を販売し、ECやテレビコマースを展開している通販会社の管理部で人事や経理などを1人で回し、6年間ほど勤めました。このときの経験を買われてのちにジェイフロンティアと縁ができるわけです。
――ジェイフロンティアへ入社したきっかけは?
転職活動をして、その会社の元代表が紹介してくれた会社がジェイフロンティアでした。IPOを目指すにあたり管理部の人間が足りないからやってみないかと声をかけられて。それで代表の中村篤弘と面談することになったのです。
――中村代表の第一印象はいかがでしたか?
もう、とにかく話が面白かった。大人なんだけど、真正面から真っ直ぐに夢や理想を語れる人です。一生懸命、夢に向かって動けることは素敵だと思いました。
私は税理士事務所時代に多くの中小企業の社長と話す機会がありました。しかしみな、税金対策など「守り」の話ばかりで、中村のように夢を語る社長は皆無でした。それもあって、中村はきっと頭一つ抜きん出るに違いないと感じ、なにかお手伝いできたらいいなと。
――事業自体の魅力はいかがでしたか?
先述の通り私は通販会社に在籍していましたし、取扱い商品の品揃えなどが近かったこともあり、ある程度伸びることが予測できました。 当時まだ40歳後半でしたが、成長していく会社でまだまだ働きたかったので、貢献できたらと入社を決めました。
――これまで経験した会社とジェイフロンティアとの違いは?
動き方やスピード感が半端ないところですね。つまり、意思決定が早いということです。やるとなったらすぐに始めて、失敗したと判断した事業からはきっぱり撤退するのも、感動するくらい早い。
また、ジェイフロンティアにはいろんな事業があります。通販事業部から、BtoBの事業、医療プラットフォームサービスのSOKUYAKU事業まで、どの責任者も近くで仕事しているので、動きの速さが数字だけでなく肌で感じられていいのです。
「月次報告」をいち早く締めることが最優先課題だった
――入社後に最大のミッションがあったとか?
はい。2016年に入社したときにはIPOを目指すことが決まっていました。IPOとは新規株式公開のことですが、株式市場に上場するに当たってクリアすべき体制や条件があります。そこから逆算してやるべきことを棚卸しし、業務を見える化することから始めました。
一番最初に着手するべきだったのは、「会計処理の確立」でした。「月次報告を行える体制」を早期に築く必要があったのです。
――「月次報告」ですか?
はい。企業のお金の流れの中で、今月の売り上げがいくらだったのか、経費としていくら使われて、最終的に利益はいくらだったのか。これを月ごとに計算する必要があります。
――それをどのように変えたのでしょう?
入社時は、経理を締め終えるまで1カ月半ほどかかっていました。たとえば5月に締めたものが7月上旬にやっと結果が出てくる。結果が出るまでのスピードを早めて、5月分は6月の10日前後には出るようにしなければいけなかったんです。
スピードを早めるには、例えば請求書の回収を早めなければいけない。そのために会計処理周りのルールを決め、各役割担当を決め、決算を上げるまでのスケジュールを決めて、全部署に締め切りの前倒しをお願いしました。「経理・財務を早く締める」ーーこれがもっとも骨の折れた改革でした。
――会計処理を早めるとどんなメリットが?
正確な経営成績が早く分かるようになり、次の打ち手が打てるようになります。それと同時に、IPOした上場企業は、損益計算書や貸借対照表などの財務情報を一般投資家に開示する義務がありますから、早く正確に経営成績を発表しないといけない。そのための土台を作る必要もあったので、月次報告を行える体制づくりの優先度と重要度は高かったんです。
――なるほど。他にはいかがでしょうか。
さらにもう1つ大きく整える必要があったのは「規程」です。当時はまだ、取締役会や監査役会がなく、一般的な会社法に基づく組織づくりを行う必要がありました。例えば取締役が中村代表1人では上場基準を満たしませんから「取締役を数名置く必要がある」などを満たす必要があったのです。
この「月次報告」と「規程」の2つが大きなテコ入れでした。あとは「決裁ルール」です。すべての稟議を社長に上げていた仕組みを変えて、社長の上に取締役会や監査役会があるという、ガバナンスが効くような組織の枠組みを作りました。
――入社時の管理部は鈴木さん1人だったんですよね?
管理系の仕事を手伝ってくれたメンバーはいました。また、私1人が方向性を決めたわけではなく、IPOという大枠がすでにある中で、コンサルタント会社やアドバイザーにも入ってもらい、協議しながら規程などを作っていったんです。
だから、みなさんの力を借りながら進めていったのが正直なところです。私自身、IPOの経験もなければ、事業会社で勤めた経験も数年ほどしかない。開示の経験も、上場企業で働いた経験もない。だからいろんな方の力と知恵を借りながら進めました。
途中から経理で採用して入ってくれたメンバーも、一緒に考えてもらいました。比較的私は臨機応変タイプなので、会社の目指す方向性と周囲のメンバーが持っている力をどうしたら活かせるかを考えながら進めていったんです。そもそも管理部はあくまでサポート部隊なので、社長の考え方に合わせて柔軟に私たちの考え方も変えるべきだとの想いが、根底にはあります。
あまりカチッと型にハメずに、その時のベストをチョイスしたい。その上で、修正する際も早く行う。かと言って、この考えをメンバーに押し付けることもありません。柔軟性よりも、目標に向けてまっすぐに動きたいようなタイプもいるでしょうし、もし何か提案してくれたら、十分に協議の対象になります。
――IPOへ向けた体制づくりは現在、何%まで達成しましたか?
6割くらいですね。IPOとはあくまでも準備なので。まだ開示作業などを行ったことがありませんから、蓋を開けたらどうなるかまだ分かりません。ただ、一般的な上場企業と肩を並べられるところまできたかというと、まだまだですね。
仲間への思いやりを大切に
――管理部門は現在、何人体制ですか?
管理部門は9名です。これに、品質管理部と経営企画室と内部監査室を合わせると13名。財務・経理を担当しているのは、5名です。当初はほぼ1名だったところから、5名にまで増えました。
また、管理本部の中に物流セクションやITセクション、人事セクションがあり、やっと1つの部署として上手くまとまりだしたのがここ数年のことです。
――組織を作り上げる上での理想イメージはありますか?
あまり私は理想がそこまでありません。とにかく、自分1人では何もできないという認識が人一倍強いのかもしれません。だからこそ、職場の仲間一人ひとりの考え方や力量を尊重して今までやってきました。会社の方向性に則った上で、いかにみんなにがんばってもらうか。だから働くメンバーには、黙々とやるだけではなく「独りじゃないんだ」と認識してもらいたい。仲間を尊重してくれる、大切にしてくれる関係性が理想です。
入社面談の際も「本人が何をやりたいのか」「何を目指しているのか」「何を楽しいと感じるのか」を最初に聞きますし、常にそれらを引き出したいと考えています。
――一緒に働きたい人はどんなタイプですか?
経理・管理では当然ながら緻密な計算ができる人。「ジェイフロンティアに合う人」という観点でいうと、明るく前向きにものごとを考えてくれて、たとえ今の状況が苦しくても、自分の未来を明るくイメージできること。あとは、精神的に気前がいい人。気前がいいというのは、利他の心がある、相手を思いやれる、惜しげもなく自分の時間を他人のために使える。それが結局回り回って自分に返ってきますから。サポート精神は大事ですね。
1つだけ念を押しておきます。この会社の特徴は「スピード感」だと先に延べました。このスピード感も実は、常に能動的に自らアンテナを張っていないと、感じることはできないんです。つまり、いくら会社がダイナミックに動いていても、一緒に成長したいという意欲がなければ、その動きを感じ取ることはできない。
受け身でいては、ただの作業者になってしまう。作業者としてだけでは、ジェイフロンティアで働いても面白くないかもしれない。臨機応変にスピードに乗っていく、そこにやりがいを感じられるかどうかがポイントだと思います。
――今後、管理部門をどうしていきたいですか?
1つイメージしているのは、経理業務や開示業務など、誰が何をやっても結果が変わらない部分については仕事自体を仕組み化し、ルール化、マニュアル化を進めたいです。それに沿って経験を積めばエキスパートになり、メンバーの市場価値が高まるようなものが理想です。「この会社の管理部門に入るとすごく成長するらしい」と業界内で有名になったら最高ですね。
あとは、福利厚生の充実やペーパーレス化など、進めていくことはたくさんあります。何度も言いますが、もちろんこれも私1人でできることではありません。これから入ってもらうマネージャーやメンバーにも一緒に進めてもらいます。
――最後に、ジェイフロンティアで働くことの魅力やメッセージをお願いします。
ダイナミックに成長過程にある会社で一緒になって成長していけることが最大の魅力です。私が入社した頃は売上が20億円弱だったのに、5年間ほどで5倍の100億円に迫っています。このペースで増えるダイナミックさとスピード感を感じてほしい。マニュアルやルールはあるけど、それを新しく作っていく立場になってほしい。一緒に成長していきましょう。
取材・文:山岸 裕一