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【アイティクラウド株式会社 黒野 源太】事業の本質は同じ。立ち上げの苦労の先に誇りが生まれる

レビューサイトはデータビジネス

――御社の主軸事業である、「ITreview」について教えてください。

「ITreview」は、ビジネス向けIT製品やソフトウェアのレビュープラットフォームです。いわゆるSaaSの口コミサイトと思っていただくとわかりやすいかと思います。企業向けのSaaSの導入および検討する方をサポートするBtoBのサービスです。

――SaaSを選ぶだけでも大変ですから、需要は多そうですね。

SaaSは同じジャンルに多数の製品がありますし、使ってみないとわからないこともありますからね。私自身がそれを痛感したことから、このサービスを始めました。

現在、掲載製品が7千種類以上、レビューは11万件以上あります。絞り込みや閲覧方法に工夫を凝らしており、各製品のポジショニングマップや比較表の作成、稟議に必要な資料のダウンロードなど、製品検討者に役立つ機能も揃えています。

ユーザー側は全て無料です。またベンダーさんも掲載自体は無料です。一方、有料プランもあり、掲載する情報内容やデータの利用範囲によって何段階かのプランを用意しています。自社顧客の満足度や要望を機能改善や解約防止、ブランディングに活用したり、他社比較をマーケティングに利用したり、さまざまな目的で役立てていただいています。

――データを資源とするビジネスモデルなのですね。

はい、ここが当社の一番の特徴だと思います。レビューサイトはほかにもありますが、他社はリード獲得件数で費用をいただくビジネスモデルです。それに対して当社は、蓄積されたデータの価値を提供するデータビジネスです。一見競合に見える他社さんと一緒にイベントをやったりするのもビジネスモデルが異なるからです。

体験から掴んだ課題感を種に新規事業を提案

――ご自身の経験から必要性を感じて、このサービスを始めたとのことですが、どのようなプロセスで事業化されたのか聞かせてください。

ソフトバンクモバイルでインターネット広告事業の立ち上げに携わっていたときに、ITツールを使えないかと思って調べることがありました。そこで感じた課題感が出発点です。課題の解決策として、現在のような口コミサイトではなく、自分たちが代理店として販売するビジネスを企画し、新規事業公募制度に応募したのです。5千件ほどの応募から、7,8件しか採択されないと聞いていましたが、幸い事業化のゴーサインをもらうことができました。ソフトウェアの流通を手掛けるSB C&Sではマーケティングソリューションに関するITツールの代理店販売を始めました。

そして、より多くのITツールに関わることで見えてきたのは「ITツールの情報をどうやって消費者に正しく届けたら良いか」という課題でした。また表裏一体にあったのは購買者視点。「自分たちにあったITツールをどのように見つけたら良いのか」という課題が明確にあったのです。

ちょうどそのとき、アメリカのソフトウェアの口コミサイトを見つけました。口コミサイトであれば、マーケティングソリューションに限らず、幅広いソフトウェアの情報を届けられる。「これだ!」と思い、それをやらせてくれと社長に直談判して、事業化させてもらえることになりました。2018年4月に3人で始めたサービスは、半年後の10月をローンチしました。2019年7月に僕が社長兼CEOになり、現在は派遣・業務委託など入れると60名以上になっています。

起業経験から掴んだ事業の本質

――ソフトバンクモバイルに入る前に起業されたと伺いましたが、その会社はどうされたのでしょう?

スタートアップにありがちなことですけれど、3年目にほかのメンバーと方向性が合わなくなり、僕が抜けました。

――方向性にどのような違いが生まれてしまったのですか?

アーティストのライセンスビジネスでしたが、売れるものと売れないものがありますし、売れるものもずっと売れ続けるわけではありません。会社としての売り上げを安定させるためには、アーティストの数を増やす必要があります。創業から3年目に入っても売り上げは安定せず、僕はもっと規模を拡大するためにアーティストを増やそうとしましたが、一緒に始めたパートナーたちは、今のアーティストを丁寧に売っていこう、人数は増やさないという考えで。どうしても方向性が合いませんでした。

――この経験から学んだことを教えてください。

事業をやるからには、金儲けとかではなくて、社会に良いインパクトを与える大儀を持ち、未来を見据えて大きくしていかないといけないと思いました。アーティストのエージェントだったら、日本のアーティストを世界に売り出し、日本の良い文化を広めようといった大儀をもって、企業規模を大きくするためのビジョンを持つことが必要。価値あるものを斡旋してお金が稼げれば良いというのでは、自分にはやる意味がないと思いました。僕が抜けた数年後、その会社が閉じたと聞きました。そのときも、現状維持では事業の存続は難しいのだということをあらためて思いましたね。

もうひとつ、何の事業でも本質は一緒だと確信しました。起業前にいた静岡の会社で立ち上げた事業も、このアーティストのエージェント事業も、今やっているソフトウェアの口コミサイトも同じです。

――掴まれた「本質」とはどのようなものでしょうか?

社会課題というほど大袈裟なものではなくても、誰かが困っていることが必ずあります。それを解決するのに、どういう手段で解決するかというだけの話なんですよね。口コミサイトは、ソフトウェアがたくさんあって選ぶのが大変という課題に対して、ネット上での情報提供を解決方法としています。課題を見つけて、適切な解決方法を考え、実現する。解決手段の専門家である必要はありません。必要な専門家に手伝ってもらえば良いのですから。そういう意味で、僕はどんな事業でもできると思っています。

泥臭い苦労を乗り越え、事業に誇りを持つ

――今後の事業について聞かせてください。

日本のSaaSは1万から2万種類と言われていますが、世界では20万種類くらいあります。さらに、最近は生成AIなどの新しいジャンルも生まれています。これからも新しいものが次々に生まれてくるでしょう。ですから、SaaSを選ぶ際のユーザー体験やデータビジネスの価値をどれだけ高められるかは、これから先、5年ぐらいは突き詰めていく必要があると考えています。

その一環で、SaaSを対象とした第2の事業になる、ECサイトを始めました。第3の事業は、SaaSマネジメントシステムというジャンルのものです。これも「ITboard」というソフトウェアをリリースしました。今はまだ内容を話せませんが、第4、第5の事業も準備中です。AIによるSaaS導入のアドバイスもやります。

――最後に若者へのメッセージをお願いします。

今まで10以上の事業を立ち上げてきました。その中で、簡単に立ち上がったものはひとつもありません。「ITreview」も同様です。ローンチした1年半後にコロナ禍が来て。解約が相次ぎ、守りを強化するための舵を切り、カスタマーサクセス専門部隊を立ち上げました。

スタートアップでSaaSというとかっこ良く見えますが、実際に立ち上げたらかっこ良い側面だけではありません。泥臭くて大変で。嫌なこともやらなければならないし、大変なことばかりですけれど、ユーザーの課題を解決することで顧客が増え、それが社会に対して価値あるサービスを提供していると誇りに思えます。

そういうリアルな大変さを理解した上で、それでも一緒に頑張っていくんだという人たちと仕事をしていきたいですね。来年には従業員100名規模に増やしたいと思っていますので、チャレンジする意欲と、成功するまでやり続ける粘り強さを持った方に関心を持っていただけることを願っています。

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