公務員就職だけではない。デジタル人材が転職せずに行政のDXに挑戦できる『GovTech東京パートナーズ』を始動
GovTech(ガブテック)東京は複業可能なデジタル人材と、デジタル人材を募集している東京都内の自治体とのマッチングを実現する人材紹介サービス「GovTech東京パートナーズ」を、2024年度よりスタートしました。
今回は「GovTech東京パートナーズ」の立ち上げを主導し、事業運営を担当する小島と大竹にサービス開発の背景や登録してほしい人物像、目指す世界観について話を聞きました。
目次
- 複業可能なデジタル人材とDX推進のためにデジタル人材を必要としている区市町村をつなぐプラットフォーム
- どのようなデジタル人材が必要なのか?中長期視点で、要件定義から支援するのがGovTech東京流
- 行政・自治体の顧客は“全住民”。企業で培ったWeb、デジタル、DXの知見で社会貢献
- 傍観者ではなく、当事者となって社会を変えていく
複業可能なデジタル人材とDX推進のためにデジタル人材を必要としている区市町村をつなぐプラットフォーム
── 「GovTech東京パートナーズ」とはどのようなサービスなのか、まずはその概要について教えてください。
大竹:「GovTech東京パートナーズ」は、公共分野に興味をもつ、民間企業社員やフリーランスとして活躍するデジタル人材と、デジタル人材を必要としている都内62の区市町村等とのマッチングを実現するために、2024年度からスタートした人材紹介サービスです。
GovTech東京に寄せられる区市町村のデジタル人材ニーズやDXの相談に対して、「GovTech東京パートナーズ」の登録者の中から最適なデジタル人材をご紹介し、様々なチャレンジを続けている区市町村のDXを加速させるサポートを行なっていきます。
現在の在籍企業・団体や働き方はそのままに、まずは複業(副業)として、自治体の様々な業務や仕組みのDX・デジタル化に貢献したいとお考えの方にはぜひご登録いただきたいサービスです。
プレスリリース|自治体向けデジタル人材紹介サービス「GovTech東京パートナーズ」登録人材の募集を開始
どのようなデジタル人材が必要なのか?中長期視点で、要件定義から支援するのがGovTech東京流
── 「GovTech東京パートナーズ」を立ち上げた背景について教えてください。
小島:区市町村の多くが行政のDX推進のためにデジタル人材の力を必要としていますが、まだまだノウハウが少ないこともあり、人材確保や活用に関するご相談をいただく機会が数多くありました。そこで、GovTech東京がその支援をしようとこの新たなサービスを立ち上げました。
デジタル人材といってもプロジェクトマネージャーやエンジニア、UI/UXデザイナーなど職種の幅が広いため、区市町村の担当者は自分たちが抱えている課題を解決するために必要な人材要件を設定することすら難しいというケースもあります。公募しても要件設定がずれていると、せっかく採用した人材が活躍できず、双方にとって思わしくない結果になってしまうこともあります。現場が抱える課題をヒアリングし、どのような人材を採用すべきかを考えながら、人材戦略の上流部分からGovTech東京が支援に入っていくという点が「GovTech東京パートナーズ」のポイントです。
マンパワー不足を補うための人材紹介だけでなく、理想としては、中長期的な視点で区市町村のDXを支えていくコア人材のご紹介も実現していきたいと考えています。今後ますます生産年齢人口が減少していくなか、人材の獲得競争はより激しくなっていきます。区市町村の各現場の業務効率化や自動化、BPRを進めていくことまで見据えてデジタル人材の活用を検討していくことが必要です。
GovTech東京では、昨年から区市町村への人材ニーズのヒアリングを始めています。アンケートフォームを送付して機械的に情報収集するのではなく、区市町村の担当者一人ひとりと膝を突き合わせ、デジタル領域のプロの目線で必要な人材要件を解像度高く設定していく作業が大事だと考えています。ありがたいことに、私たちに対する区市町村の皆様からの期待が大きいので、拙速に進めるようなことはせず、一つひとつのご依頼に対して丁寧に、高精度なマッチング実績を積み上げていきたいと考えています。
行政・自治体の顧客は“全住民”。企業で培ったWeb、デジタル、DXの知見で社会貢献
── どのような方に登録してほしいですか。
大竹:「公共分野で社会貢献をしたいけれど、公務員になるのは躊躇してしまう」そんな考えをお持ちの方です。公共分野で仕事をしたいと考えた場合、まず最初に思い浮かぶのが公務員になることだと思います。しかし、民間企業から公務員に転職するのは、そもそも未知の領域であることや、労働条件の変化などからハードルが高いと感じる方が多いのではないでしょうか。「GovTech東京パートナーズ」では、公務員への転職とは異なる、複業という形で区市町村の仕事に関わることができます。まずは気軽に登録して、公共分野で働くきっかけにしていただきたいです。
「GovTech東京パートナーズ」Webサイト内の登録フォームに基本的な情報だけ入力すれば、簡単に登録できます。区市町村が実施する業務内容や人材の要件・要望と、登録いただいた方の職歴やスキル等に基づいて私たちがマッチングします。登録人材の方に個別にご連絡をしてマッチングを試みる場合と、募集中の公募をご案内する場合があり、契約するかどうかについては募集元の区市町村の担当者が判断します。
小島:培ってきた知見を少しでも社会に還元したい。そういう思いがあっても、今までなかなか機会に巡り会えなかったという方が多いと思います。地方創生や地域貢献に興味がある方は多いと思いますが、その分野に飛び込める機会はあまり多くありません。GovTech東京自体がそういった役割を目指していて、私自身もそのビジョンに共感し、民間企業からGovTech東京にジョインしました。
「公務員になりたいわけじゃない。政治家はもっと違う。今の仕事も続けたい。でも……」。GovTech東京には、私のように民間企業から転職してきたフルタイム職員が多く在籍していますが、まずは気軽に公共との関わりを持てる仕組みが「GovTech東京パートナーズ」です。民間企業で培ってきた知見を社会に還元したい、少しでも活かしたい方にぜひご登録いただきたいです。
基本的には、区市町村から募集される人材要件をベースに、その要件にフィットする人材を登録者の中から探してマッチングしていきます。一方、ご登録いただいた人材の職歴やスキルをベースに、その方だからこそ提供できる支援・業務内容を区市町村にご提案していくマッチングも行っていけたらと考えています。そうすることによって、区市町村単体ではまだ顕在化していない課題に気づくことができたり、想定よりもより効率的なDX推進が実現できることもあると考えています。
── どのようなプロジェクトに参画いただくことを想定していますか?
大竹:例えば区市町村のWebサイトを刷新したり、住民の方々が使うアプリケーションを企画・実装したり、社会に貢献していることが実感できるプロジェクトをご紹介し、スキルのあるデジタル人材に活躍していただける体制を作っているところです。
小島:Webサイトの改修やUI/UXの改善の他に、例えば具体例を挙げると、区市町村でRPAを導入したもののうまく活用できておらず、必要な知見を持ったデジタル人材の方にRPAツールのセットアップやシナリオ作成、導入支援などを行っていただくプロジェクト等もあります。また、各区市町村からの要望を随時掘り下げていく中で、今はまだ想定していないようなものも含め、様々なプロジェクトが次々に生まれていくと思います。
デジタル人材について、区市町村側からは大きく2つのニーズがあります。1つは目の前の実務課題を解決するために手を動かせる人材。もう1つは、 CIO補佐官のようなポジションで、行政DXの中長期的な改革・推進案から具体的な実行計画策定まで担うことができるハイクラス人材です。現在、多くの区市町村では副区長や副市長といった副首長がCIOを務めていることが多く、その補佐をするCIO補佐官のニーズも複数あります。求められる素養が高く、豊富な経験値が求められる役割ですが、そもそも母集団が少なく、その中から高精度なマッチングを実現することは容易ではありません。私たちとしては、まずはマッチング難易度がそれほど高くない、実務課題を解決できる人材のマッチングを中心に取り組みながらサービスの型をつくり、徐々にCIO補佐官のような難易度が高い案件にもチャレンジして、着実にサービスを成長させていきたいと考えています。
都民の方々が行政DXの成果を実感しやすいのは、区市町村のWebサイトの改善や新しいアプリができるなど、目の前にある実務課題解決の方です。そのため、例えばデザイナー職はその成果や反響がダイレクトに実感できるため、早期にやりがいを感じられると思います。Webサイトのビフォー/アフターはわかりやすいので、区市町村の方も成果を実感しやすいでしょう。「住民-自治体-デジタル人材」の三方よしが実現できるプロジェクトを数多くつくり出せるよう、サービス運営者としての役割を果たしたいと思います。
傍観者ではなく、当事者となって社会を変えていく
── 「GovTech東京パートナーズ」で実現したい未来について教えてください。
大竹:デジタルを使ってもっと便利で過ごしやすい世の中をつくりたいです。私自身はもともと公務員で、都からの派遣職員としてGovTech東京で働いていますが、それまで公務員の経験しかなかったからこそ刺激を受けることが多いです。複業を考えている民間企業の方々には、ぜひチャレンジしてほしいです。
小島:労働力が不足する未来に備えるためには、現在の業務を見直す検討を進めると同時に、デジタルの力を使って職員の生産性を向上させ、QOS(クオリティ・オブ・サービス)を高めていくことが重要だと考えています。そのためにも、それぞれの区市町村にとって最適なデジタル人材を紹介し、本質的課題の解決に寄与したいと思っています。
また、「GovTech東京パートナーズ」を、区市町村でのデジタル人材確保に欠かせない存在にしたいと思っています。その反面、本来あるべき姿としては、私たちGovTech東京がいなくても問題なく区市町村のデジタル人材確保ができる状態が良いと思っています。理想はすべての区市町村が、自立・自走できる状態です。デジタル人材の採用要件を定義したり、人物像を具体化したりする際に、私たちとやり取りする中でどんどん知見を蓄えていただき、「もう自分たちだけでできます」という状態になってもらえればハッピーだと個人的には思っています。
── 「GovTech東京パートナーズ」への登録を検討されているデジタル人材の方へメッセージをお願いします。
小島:傍観者ではなく、当事者となって社会をより良くしていく。変えていく。私自身、民間企業からGovTech東京に転職し、社会貢献できている充実感を味わえています。官民協働は簡単ではありませんが、一緒に働いてみたことで、公務員の方々に対するイメージ(先入観)が良い意味で大きく変わりました。一言で言うと、「やりきる力」が強い方ばかりです。だからこそ、よく一般的に民間企業の強みとして挙げられる「生み出す力」を融合すると、大きなうねりを起こせる実感があります。
自治体の仕事をすることに憧れがあるという方が、実は多くいらっしゃると思います。しかし、民間企業(現職)の仕事を辞めて公務員になろうとするチャレンジャーは少ないと思います。まずは「GovTech東京パートナーズ」を使っていただき、働いてみて、おもしろいと思ったら行政や公共分野に入っていく。そんな“官民を行き来するキャリアパス”が当たり前になる世界をつくりたいです。そのためには、まず実績をひとつずつ積み重ねていく。官民の垣根をなくす人材のエコシステムをつくるためのプラットフォームとして「GovTech東京パートナーズ」を、着実に大きく成長させていきます。多くのデジタル人材の皆さまの挑戦をお待ちしています。