GATARIのプロダクトはこの人なしには生まれていない、創業メンバーの一人である伊藤さん。GATARIが目指す世界観を実現させるため、うちに秘めた熱い思いをコードを通して表現している伊藤さんのこれまでの歩みから今後の想いを聞いてみました!
伊藤 匠さん プロフィール
1994年生まれ。東京大学工学部精密工学科在学時の2016年に代表である竹下とともにGATARIを創業し、CTOに就任。『Vismuth』『Auris』ほか、GATARIが発表した全てのプロダクトのアーキテクチャ/設計/UIデザイン/実装を手がける。エンジニアとして、世界の見え方を変えるようなXRのサービスを提供し、新しい表現を作る人とそれを届けるための場を支えている。
現在のポジション、仕事内容を教えてください
CTOとして、役員を担っています。
正社員のエンジニアは1名なので(取材当時)、主力プロダクトであるMRプラットフォーム「Auris(オーリス)」や、サイドプロジェクトとして羽田イノベーションシティで展開しているARアプリケーション「HICity AR」等のアプリケーションの制作など、開発全体を担当しています。
GATARIの創業メンバーとしてジョインしたきっかけを教えてください
大学4年生の時にCEOの竹下と共にGATARIを立ち上げて、スタートアッププログラムに参加する形でスタートしました。
竹下と出会ったきっかけは、東京大学の五月祭という学園祭でした。大学では、工学部精密工学科に入りました。毎年工学部では五月祭で出し物をしていて、学部で学んだ技術を応用した作品を作って展示しています。
当時私はVRに興味・憧れがありましたが、自分でVR機器を買うには高価だったこともあり、中々購入できませんでした。なので、いっそのことVRシステム、仕組みそのものを作ってみよう、と思い自分で作ったVRシステムを出展しました。
当時制作したシステムは、超音波を使って帽子につけたスピーカーから飛んだ音の距離を壁に取り付けたセンサーで測り、GPSのような仕組みで飛んだ距離の違いを使って頭がどこにあるのかトラッキングできるものを作りました。そして、この展示を機に竹下が声をかけてきて、創業メンバーになりました。
学祭で展示をしていなければお二人の出会いはなかったかもしれないですね!
ちなみに、起業に関しては前向きだったのですか?
もちろん不安はありました。
ただ私の性格上、歴史あるテックカンパニーに属するよりも、責任は伴いますが自分自身が裁量大きく働ける方が良いと思ったので、楽天的な部分も相まって話に乗っかってみました。
振り返ると、勢いでここまでやってきたところはありますが、充実した日々を過ごせています。
新しいものは地道な掛け算から生み出される
エンジニアとしての技術はどのように身につけたのでしょうか?
大学で専攻していた精密工学科は機械寄りなので、現在開発しているソフトウェアの領域に関しては独学で身につけてきました。
はじめは、作りたいものの目的に合わせて、大体ネット上に似たようなことをやっている事例があるので、それを真似るところから始めます。真似をした上で、必要であれば本を読んで知識を得たりしています。最近は福利厚生でもあるChatGPTもうまく活用しています。
独学で身につけた技術で「Auris」を開発されたのですね。形にするのは大変だったのではないでしょうか?
「Auris」はMicrosoft AzureのSpatial Anchorsという技術を利用しているのですが、開発当時はまだ世の中にそのツールを利用した開発実績が少なかったので知見がたまっておらず、自分で試行錯誤しながら開発したので、かなり苦労しました。
勘所を知ってる人に聞いたり、ChatGPTを活用したり、GitHubでプラグインを公開している海外の方に質問するなど、便利な機能を上手く活用しながら地道に組み立てていきました。
一方で、それが上手くいった時は優位性が生まれ、皆ができないこと、今までなかったものを生み出すことができた喜びは人一倍感じられました。
苦労して作り上げた「Auris」の特徴や強みはなんですか?
モバイル端末だけでコンテンツ制作できること、が特徴だと思っています。
一般にAR体験の編集画面は画面遷移の階層が深く、またそれぞれの画面のUI構成要素も多かったりと複雑になりがちです。しかしネイティブアプリフレームワークであるFlutterのUIシステムを活用すれば、そのようなUIを短時間で容易に実装できます。Flutterで実装されたUIをUnityとを密に連携させることで、ネイティブアプリとして得られる優れたUI・UXと、ARや立体音響といった高度な3D表現を両立できるアプリの迅速な開発が実現できました。
まさにGATARIにしかできないMRプラットフォームを開発していると自負しています。
誰もがどこでも利用できるメディアとして広げ、現実とデジタルの融合を実現する
XR界隈でも一目置かれている「Auris」。可能性や想いを聞かせてください
ARは言葉としてポケモンGOなどの影響もあり、一般的に馴染みが出てきたと思います。ただ、実際に現実味のあるものとして実感できるかというと、必ずしもそうではないと感じていて。
例えば、自分がゲームをクリアして育てたポケモンへの愛着は今までのストーリーから成せるもので、突如3Dモデルとして映像で現実世界に現れても今までの経緯には叶わない、どうしても違和感を感じてしまいますよね。
そこでGATARIとしては、より効率的に現実とデジタルの融合を実現するには、”音声”という考えに至りました。現実世界を歩き回ることで、現実空間と相互に作用して音声が聞こえることは理にかなった形だと実証し、それを広げていきたいという思いがあります。
今後は、事業としても成長させつつ、より多くの方に楽しんでもらうためにUI・UXの向上、エディター機能も一般の方でも使えるように改良して、ゆくゆくはUGCのようなことができるようになり、色んな人が色んな場所で「Auris」を使えるようになることを想像しています。そのためにはエンジニアリングの力が必要で、自分なりにできる形で手伝えたら良いと思っています。
私も日常で「Auris」を使いたいです!実現させるためには仲間も必要だと思いますが、どんな人がGATARIで活躍されると思いますか?
正解がないからこそ失敗を恐れずにとりあえずやってみる、前向きに物事に取り組める人はGATARIのエンジニアとして心強いです。あとは「こだわりがある」というのは大事ですね。仕事の丁寧さにもつながると思います。
GATARIの特徴として、イベント現場に出ることが多くお客様と接する機会もあるので、そういった現場仕事も苦でないことも大きいと思います。現場ではトラブルもありますが、お客様からお褒めの言葉を直接もらえることは励みになっています!
それでは最後に、伊藤さんが今後挑戦したいこと・意気込みを教えてください
現状、現実空間にデジタルのコンテンツを固定して、それをユーザーが使いやすい形にした体験フォーマットとして「Auris」を提供しています。現実空間を使った没入できる体験はまだ他では確立されておらず、これは動画や画像のような一つの”メディア”となり得ると思っています。
例えば「現実空間没入型コンテンツ」のようなカテゴリとして、mp3やjpgに並ぶ「.auris」のようなファイルフォーマットとして、体験メディアに位置付けられたら良いなと考えています。
そして、このプロダクトを開発するために必要な知識を提供して下さっているエンジニア達へのリスペクトを忘れずに、今後も新たな価値を提供していきたいです。