「東京じゃない場所でも、先端の仕事はできる。」
創業以来、福岡を拠点に都市の可能性を信じてきたFusicが、2026年1月に東京支社を開設しました。
福岡にこだわってきた会社が、なぜいま東京へ。それは、次の成長に向けた経営の意思決定でした。マーケットも、人も、機会も集まる場所で勝負する。その挑戦に、かつて“パートナー”として隣で伴走してきた1人が、東京支社長として加わりました。
なぜ福岡の会社が、いま東京へ。そして、外から見てきた彼は、なぜその一歩をともにすることを選んだのか。代表取締役社長の納富と、東京支社長の千葉、2人にお話を聞きました。
※この記事は2026年6月2日時点のものです。
インタビュイー
■代表取締役社長 納富 貞嘉
学生時代に同級生(現・取締役副社長の浜崎)とともに、福岡でFusicを創業。「福岡に活躍の場をつくる」という想いのもと、クラウド・AI・IoTなどを掛け合わせる“技術結合力”を武器に会社を成長させ、2023年に東証グロース市場・福証Q-Boardへ上場。現在は、宇宙やM&Aなど、積極的に新しい領域へのチャレンジを続けている。
■東京支社長 千葉 将樹
大学では美術史を専攻。ITの可能性に惹かれてこの業界へ入り、営業としてキャリアをスタート。日本SGI(現 日本HPE)では主に学術機関向けにスーパーコンピュータの提案を担当。アクセンチュアでは業務システム、教育システム、ネットワークやDBなど、より幅広い領域の提案へと経験を広げた。その後「クラウドでお客さまの課題を解決したい」という思いからアマゾン ウェブ サービス ジャパン、MEGAZONEでクラウド・AI領域へと軸足を移し、2026年1月にFusic入社、東京支社長に就任。AWS在籍時にはパートナーとしてFusicとともに九州の公共・学術領域における市場開拓に取り組んだ。
「東京じゃない場所でも、先端の仕事はできる」。都市の可能性を信じる原点
──まず納富さんにお話を伺います。Fusicは創業以来「福岡に活躍の場をつくりたい」という想いを掲げています。改めて、その根っこにあるものを教えてください。
(納富) 私は「東京一極集中」にずっと違和感を抱いていました。様々なエリアに魅力的な都市があるのに、みんな判を押したように東京に寄っていく。実態としても、日本には約3,900社の上場企業がある中で、その半分以上が東京に本社を置いています。
東京は、世界でも類を見ないくらい効率的な街です。それは間違いない。でも、だからといって、「日本=東京」みたいな状況は、おかしいなと思うんですよね。
アメリカを見ても多様な企業が様々な都市を拠点に世界に発信しています。スターバックスもMicrosoftも、Amazonが生まれたのもシアトル。決して“アメリカで一番の都市”というわけではない場所から、世界的な企業が生まれている。シリコンバレーやフロリダの宇宙産業もそうですけど、都市ごとに、特色のある会社があるんですよね。
それに比べると、日本はほぼ東京に寄っている。でも、東京じゃない場所でも、しっかり先端の仕事ができる。そういう状況をつくれることは、福岡だけじゃなく、日本全体にとってもいいことだと思っています。
それでも、なぜ“いま”東京支社なのか
──その想いがある中で、あらためて東京に拠点を構える。ここはどういう意味なのでしょうか。
(納富) 東京は、日本のビジネスの中心であり、官公庁や大学・研究機関も集まっている場所です。私たちが強みを持つパブリックセクター(公共)やクラウドの領域も、その意思決定の多くが東京で動いています。お客さまとの距離を縮めて、機微な話を対面でできる拠点があることの意味は大きい。
宇宙やM&Aといった、これから本気で伸ばしていきたい新しい領域も、連携できるプレイヤーや情報が東京に集まっている。そこで、Fusicの次の成長に直結する場所として、ちゃんと意味を持たせて構えようと決めました。
ただ、だからといって本社をこの先東京へずらしていくことは考えていません。そこは芯として持っています。
──実際に東京支社を新設して、半年ほど経ちます。変わったことはありますか。
(納富) 固定した拠点があることの安心感は大きいですね。お客さまと対面で打ち合わせができるし、支社に行けば東京のメンバーがいてコミュニケーションが取れる。場所も品川の駅直結で、羽田空港からもすごく近く、とてもいい立地に構えられたなと思っています。
──いまはオンラインでどこでも打ち合わせができます。それでも対面にこだわる理由は何かありますか?
(納富) オンラインがこれだけ発達したからこそ、対面で会うことの価値が上がったと思っています。
合理性の観点でリモートを選ぶべき場面は当然たくさんあります。でも、機微な情報や本当に大事な話は、対面のほうがいい。たとえるなら、結婚はリモートでできないのと同じで(笑)、一緒に何かをやっていくことには、リモートだけでは成り立たないものがある。
私たちが掲げている「OSEKKAI×TECHNOLOGY」も、お客さまに一歩踏み込んでいくスタイルです。だからこそ、会って、ちゃんとグリップする。集まれる場所があることには、やっぱり意味があると思っています。
“パートナー”だった2人が、同じ会社にいる理由
──ここからは千葉さんにも入っていただきます。千葉さんはもともと、AWS時代に取引先としてFusicと関わっていたんですよね。
(千葉) そうですね。僕はずっと外資系のIT企業で、クラウドやパブリックセクター、スタートアップの領域をやってきました。AWS在籍時にAWSのコンサルティングパートナーであるFusicと一緒に仕事をしたのが始まりです。
最初は、あるプロジェクトで「九州で頼めるパートナーを紹介してほしい」とお願いして、社内のパートナー担当から紹介してもらったのがFusicでした。当時の担当者や、浜崎さん(副社長)たちとコミュニケーションを重ねていくうちに「いい会社だな」と思うようになりましたね。当時、まだAWSもこれから日本で伸ばしていくというタイミングだったので、「みんなで頑張ろう」という熱量も、すごく伝わってきました。
パブリックセクターというと中央省庁や自治体を思い浮かべると思いますが、公共機関には調達というルールがあり、簡単にクラウドが導入できる環境ではなかった。またパートナー企業がいなければそもそも導入することが難しかったため、一緒にAWSの利活用を広げてくれるパートナー企業は本当にありがたかったです。
──数あるパートナーの中で、Fusicを深く組む相手に選んだのはなぜだったのでしょう。
(千葉) 数あるパートナーの中でも、当時のFusicは「AWSのパブリックセクターに本気で振る」という覚悟が際立っていました。「千葉さんがやらなきゃいけないミッション、まるごとうちでやらせてほしい」くらいの勢いで(笑)。その本気度には、正直驚かされました。
──ほかの会社と違う、Fusicならではだと感じた部分はありますか。
(千葉) 納富さんも浜崎さんも九州大学の出身で、アカデミアやパブリックセクターの「やり方」をちゃんと理解してくれていたのは大きかったです。提案書のつくり方ひとつとっても、「テンプレートを渡すから勝手に書いといて」ではなく、一緒に手を動かして仕上げてくれる。しかも僕が知っている内容だけじゃなく、Fusicのメンバーが「こうした方がいいんじゃないですか」と提案を返してくれましたね。
あと、僕はAWSというパートナー企業の立場でありながら、Fusicに行くと会議室どころか執務室の中にまで入れてくれたんですよ。普通はそこまでしない。でもFusicは、垣根なく「一緒にやろう」と迎えてくれた。その姿勢が、他社とは明確に違うところでしたね。
──納富さんから見て、当時の関係性はどう映っていましたか。
(納富) AWSのパブリックセクターの事業がちゃんと立ち上がり、Fusicとしてもこの領域で強みを発揮し、今のポジションを得られたのは、千葉さんと二人三脚でやれたからだと思っています。お互いに補完関係だった。だから私たちも、千葉さんに感謝しています。
写真:FusicメンバーとAWS時代の千葉さんとの懇親会(2017年頃)
立ち上げは、“誰とやるか”がすべて
──取引先だった千葉さんと、今は同じ会社で。東京支社の立ち上げは、どんなふうに動き出したんですか?
(納富) 実は、「東京に出すぞ」と決めた後に人を探したわけではないんです。先ほど触れたように、東京に拠点を持つ意味は十分にあった。そのうえで、それを本気で形にできる人がいて、初めて踏み切れたんですよね。立ち上げって、結局のところ“誰とやるか”がとても重要なので。
──その「誰と」に、求めていた基準はあったんですか。
(納富) ありました。立ち上げは、とにかく初速が重要だと思っています。だから、すぐに動けるだけのコネクションを持っていること、ビジネスマンとしてのパワーがあること。さらに、個人として数字をあげられるだけじゃなく、チームを強化できる人であること。
加えて、やっぱりFusicのカルチャーにフィットするか。その全部を満たしていたのが、千葉さんでした。昔からFusicのこともカルチャーも分かった上でコミュニケーションが取れたし、話していて合うものも多かった。だから「千葉さんが来てくれるなら、ちゃんと場所を構えよう」と動けたんです。
──もともと“取引先”だったお二人ですが、どうやってジョインの話に?
(納富) きっかけ自体は、実は些細な始まりで(笑)。私のFacebookに千葉さんがコメントをくれて、「ちなみに今どこに?」「東京です」「じゃあ明日」と、フランクな流れで飲むことになって。そこから何度も会って、話を重ねていきました。
(千葉) 振り返ると、Fusicの面々とは色々な形で縁が続いていたんですよね。数年前のラスベガスで行われたカンファレンスの時に、部屋で一緒にワールドカップのスペイン戦を観たり、競合に位置する会社の立場なのに上場記念パーティーにたまたま呼んでもらったり、東京のニッチな場所で偶然会ったり。ここまで重なるなら、何かあるよなと(笑)。
「補い合う」じゃなく、「一緒に大きくする」
──千葉さんは、外資系のキャリアから、なぜFusicへ?
(千葉) ありがたいことにさまざまな企業からお声をかけてもらっていて、「次に何をやろうかな」と考えていた時期でした。外資が長かったので、そろそろ日本の企業で挑戦したい、という気持ちもありました。
そんな中でFusicを選んだ一番の理由は、「ここでなら、より大きいことができそうだ」と思えたことです。よく納富さんとも話すんですけど、事業って、“三角形の面”みたいなものだと思っていて。Fusicが自分たちで描いてきた三角形があって、僕も僕で、寄せ集めながら描いてきた三角形がある。この2つは、ただ足し合わさるんじゃない。重ね合わさることで、1+1が2じゃなく10になるみたいに、面がぐっと大きく広がる。片方だけでは絶対に届かなかった事業を、一緒に描いていける。そう思えたんです。
正直なことを言えば、給料のような条件ももちろん大事ではあります。でも、それ以上に強かったのが、自分がこれまで培ってきた経験やノウハウ、コネクションを使って、この会社がもっと伸びていくなら、すごく面白いんじゃないか、という想いでした。年齢もキャリアもそれなりに重ねてきて、「自分が役に立てる」「貢献できる」場所で勝負したい、という気持ちが、自分の中で大きくなっていたんですよね。Fusicには、それができる余白があると感じました。
──Fusicに対しては、どんな「伸びしろ」を感じていたんですか。
(千葉) 一人ひとりの力も、チームのまとまりも、すごくある。そのうえで、ビジネスを論理立てて進める“型”の部分は、まだ伸びしろが大きいなと感じていました。
これまでいた環境が、何をやるにも「その狙いや筋道をちゃんと言葉にして説明する」ことが求められる場所でした。そのおかげで、ものごとを筋道立てて言葉にする癖はついた。その部分なら、自分の経験を持ち寄れるかなと。Fusicがもともと持っている力に、それが掛け合わさったら、もっと伸びるはずだと思ったんです。
当たり前のことを、当たり前以上に。入って実感した強さ
──実際に入ってみて、外から見ていた印象とのギャップはありましたか。
(千葉) 入社前に抱いていたイメージと、大きなギャップはありませんでした。そのうえで、想像以上だなと感じたのが、コーポレート部門の強さですね。上場を経験しているからだと思いますが、入社前後のやり取りの段階から「ちゃんとここまで考えられているのか、すごいな」と驚かされました。
当たり前のことを、当たり前以上のレベルでやり切る。これって、簡単そうに見えて、なかなかできることじゃないと思います。
──逆に、外から来たからこそ見えた課題はありますか?
(千葉) 課題と思っているわけではないですが、僕らがこれまで当たり前にやってきた“ビジネスの型”が、Fusicにとっては新鮮に映る場面はあります。逆に、Fusicが当たり前にやっていることに、僕らが「その手があったか」と学ぶことも多い。
だから、お互いの“当たり前”を持ち寄って、「この場面ではどっちでいく?」と選べる状態にできたら強いなと思っていて。そういう話も、みんなちゃんと面白がって聞いてくれるので、すごくやりやすいです。
新しい視点がもたらす「いい意味での激震」
──異なるバックグラウンドのメンバーが加わって、会社にはどんな変化を感じていますか。
(納富) 私は学生起業で、いろいろ試行錯誤しながら、良かれと思ってやってきました。上場も経験して、たとえば予算の組み方ひとつとっても、自分なりにやってきた。そこに、まったく新しい視点が入ってくる。考え方も、ものの見方も増える。これがすごく面白いです。
特に、Amazonのような世界でも類を見ないほど成長した企業の“カルチャー”、そしてそれが組織にどう浸透していくのか——あの在り方を、私は本当にリスペクトしています。その要素をしっかり持った人たちがジョインしてくれたことは、面白いし、本当にありがたい。
会社は、変化しないといけない。凝り固まったものがあると、よくないですから。今回のことは、ある意味では「激震」かもしれないですけど、私はいいことだと捉えています。
──それに合わせて、組織体制も今回変わったんですね。
(納富) はい。セールスのチームを明確に立ち上げて千葉さんがトップに、エンジニアを中心とした体制は別に、という形できっかり分けたんです。今まで渾然一体だった部分を分けたのは、大きな意思決定でした。狙いは、Role & Responsibility(役割と責任、以下R&R)を明確にして、一人ひとりがやるべきことに集中できるようにすることです。
──これまでのFusicは、エンジニアが何でもやる、という空気もあったかと思います。
(納富) その価値自体は変わらないと思っています。むしろ営業・設計・開発の垣根は、私の中ではどんどん曖昧になってきている。ただ、一度あえてきっかり分けてみることで起こる“化学変化”を見てみたい。組織は定期的に揺らした方がいいですしね。
(千葉) 僕の感覚でも、これは東京/福岡という地理の話ではなく、R&Rの話なんです。たまたま勤務地が福岡か東京か、というだけで。セールスという枠にもこだわりたくないと思っています。「できる人がやればいい」と思っていて、今はたまたま僕らがセールスが得意なだけ。逆に僕にコーディングをやれと言われても無理ですしね(笑)。やらなくてもいいのに、やらなきゃいけないことを、減らしていきたいんです。
これからのFusicと、未来の仲間へ
──東京支社として、これからどんなことを目指していきたいですか。
(千葉) 今回、東京で「支社」を立ち上げたわけですから、やっぱりわかりやすい結果を出していきたい。上場企業ですから、成果が目に見えて分かり、事業が伸びて、それを見た人が「この会社、面白そうだ」と新しく仲間に加わってくれる。そういうサイクルを回せるといいなと思っています。「あいつら何やっているのか分からない」とは、思われたくないですからね(笑)。
具体的には、これまで僕らが公共・学術、スタートアップの領域で積み上げてきた“勝ち筋”を、東京というマーケットを起点に、もっと広い分野やお客さまにも届けていきたい。Fusicの技術力と、僕らが持っているお客さまとの接点が掛け合わされば、できることは一気に広がると思っています。東京を、その挑戦のエンジンにしたい。
そして、いつか「一緒にやったおかげで、本当に大きな三角形が描けたね」と言える日が来たらいい。その姿を見た次の世代が入ってきて、次のFusicを支えていってくれる。そこまでいけたら最高だなと思っています。
──これからの東京支社に、どんな人にジョインしてほしいですか。
(千葉) 一言で言うと「いいヤツ」ですね(笑)。僕の思う“いいヤツ”って、当たり前のことを、バカにしないで、ちゃんとやれる人です。たとえば、会社にゴミが落ちていたら拾う。当たり前のことを、当たり前以上に、しかも続けられる人。そういう人と一緒にやりたい。
それと、Fusicには「違和感がない」んですよ。「なんか嫌だ」「なんか違う」が、ない。だから多分、そういうズレた人が自然といないんでしょうね。一緒にいて違和感が少ないというのは、感覚的に合っているということだと思います。
──最後に納富さんへ。東京支社開設を経て、これからのFusicをどんな会社にしていきたいですか。
(納富) 福岡と東京と両輪で成長しながら、より多くの人を惹き付ける企業になりたいと思っています。福岡でも東京でも、これからのFusicを一緒に創り上げていくメンバーに出会えるのを楽しみにしています。