はじめに
こんにちは、ファーストループテクノロジーのCTO、彦坂です。本記事は、前回の産業用CPSエンジン「DAVIE」の紹介に続く記事になります。今回は、自社プロダクト開発に関する取り組みを紹介させていただきます。
過去の記事でも紹介していますが、私たちファーストループテクノロジーでは、自社開発の産業用CPSエンジン「DAVIE(Data Value Improvement Engine)」を軸に、IoTデータを活用したサイバーフィジカルシステム(CPS: Cyber-Physical System)の構築を進めています。
DAVIEは、センサーや映像など多様なデータソースを収集・統合し、それをリアルタイムで解析・判断・実行につなげることで、「現実世界へのフィードバック」を可能にするCPS基盤です。
本記事では、ロボットとの連携による最新の取り組みと、自社をテストベッドとした実証の様子、そして未来に向けた展望をお伝えします。
DAVIEとは──産業用CPSエンジン
DAVIE(Data Value Improvement Engine)は、工場や物流拠点、オフィス空間といった産業現場における業務の自動化・省力化・最適化を支援するために開発された、産業向けのCPS(Cyber-Physical System)エンジンです。
IoTセンサーに加え、ネットワークカメラや音声デバイス、環境制御機器といった多様なモダリティのデータをリアルタイムに収集・統合することで、現場の状態を高精度に把握。得られた情報をもとに、ロボットや設備、オフィス家電などへ即時に指示を出すことが可能となり、運用効率の向上、安全性の確保、快適な環境維持といった成果につなげます。
さらに、DAVIEは既存の業務システムや設備管理ソフトウェア(例:スケジューラ、在席管理、BMS、WMSなど)との柔軟な連携にも対応しており、レガシー資産と最新テクノロジーの橋渡し役としても機能します。これにより、新たなIoTやロボットを導入する際も、既存環境を活かしながら段階的にDXを推進することができます。
DAVIEの主な特徴:
- マルチデバイス対応:IoTセンサー、カメラ、音声入力など多様なデバイスと柔軟に連携
- MQTTベースのメッセージングインフラ:軽量かつリアルタイムな双方向通信を実現
- クラウド・エッジ両対応のアーキテクチャ:用途に応じた分散処理が可能
- リアルタイムダッシュボード:可視化と操作性を両立し、現場の状態と制御を即時把握
- AI推論との統合:収集データを元にした自律的な判断とフィードバック制御が可能
これらの機能により、DAVIEはセンサーとロボット、情報システムと物理空間、人と環境をシームレスに接続するCPSの中核基盤として、産業現場の進化を支えています。
ロボットによる「現実世界へのフィードバック」
DAVIEの活用の象徴が、「データに基づく物理的アクションの実行」です。現在私たちは以下のようなモビリティロボットとDAVIEを連携し、現実世界でのタスク遂行を可能にしています。
- 四足歩行ロボット
段差・障害物に強く、巡回や警備、監視などに適応。狭所や屋内環境にも対応可能
- UGV(Unmanned Ground Vehicle)
書類・荷物の搬送や定時ルート巡回、備品管理など、オフィス内の定常業務を自律的に代替
これらのロボットは、IoTセンサーデータと映像処理結果をリアルタイムで受け取り、DAVIEを介して柔軟に行動を決定します。
テストベッドとしての社内実証
このCPSの構想を検証するため、私たちは自社オフィスを「テストベッド」として活用しています。リアルな業務環境での運用により、実用性・安全性・効率性を高い解像度で評価しています。
現在行っている主なユースケースは以下の通りです:
- 事務作業支援
ロボットによる書類や備品の搬送で人の移動や待機時間を削減。 - 環境の最適化
温湿度・CO₂濃度・照度などをセンシングし、空調・換気・照明の制御に反映。 - 安全・セキュリティ対応
カメラ映像による転倒・滞留・侵入などの異常検知と、ロボットによる現場対応。 - 宅配便の集荷・配送
荷物の受け取りや社内搬送、出荷品の指定場所集荷などをロボットが代行。 - 資産の棚卸し
ロボットがオフィス内を巡回し、備品に貼付されたタグ(QR/NFC等)を読み取って自動棚卸し。 - 来訪者対応
顔認識・人感センサなどによる来訪者検知と、受付・案内業務の一部をロボットが対応。
これらのタスクすべてが、DAVIEを基盤としてセンサ・カメラ・業務システムと連携しながら動作しています。
今後の展望──リアル空間を群で動かす「連携するCPS」へ
私たちが目指すのは、単に「ロボットを個別に制御する」ことではありません。最終的には、以下のような構成要素すべてが連携し、群として協調的に動くシステムです:
- 複数の自律ロボット(移動・監視・搬送)
- 社内業務システム(スケジューラ、在席情報、設備管理)
- オフィス家電(照明、空調、ブラインドなど)
- 建具(自動ドア、ブラインド、エレベーター)
DAVIEは、これらの機器を統合的に管理・制御するハブとなり、群制御という分散型アーキテクチャにより、リアルタイムかつ協調的な環境制御を実現します。
群制御とは──分散×協調で動く次世代の制御アーキテクチャ
群制御(Swarm Control)とは、複数の自律エージェント(ロボット、デバイス)が個別に判断しながら、全体として協調動作を行う制御方式です。
以下のような特徴があります:
- 中央制御なし:個々がローカルなルールに基づいて動作
- リアルタイムな情報共有:相互の状態を共有しながら判断
- 障害耐性が高い:一部が不具合を起こしても全体は機能継続
- スケーラブルな設計:要素の追加・削減が柔軟
たとえば、「来訪者が現れた → 照明が点灯 → ロボットが案内 → 会議室の空調がオンになる」といった一連の流れが、誰かの操作なしで“群として自然に発生する”世界が目標です。
DAVIEは、これらを支える「知覚・判断・制御の橋渡し」として進化を続けています。
おわりに
DAVIEは、センサとロボット、設備と情報をつなぐCPSの中核として、「データを基にリアルが動く」社会を目指しています。
自社をテストベッドとする実証を通じて、技術と運用のギャップを埋めながら、将来的な社会実装につながるインフラ構築を進めています。
今後もnoteや技術ブログ(Zenn)を通じて、取り組みの進捗や技術的な知見を発信していきますので、どうぞご期待ください。
<事業内容>
顧客課題に応じた解決手法の組合最適化により、ヒト・モノ・コト・ジョウホウ・カネ及びエネルギーの移動データを用いて顧客利益の最大化に繋げるデジタルループサービスの開発・提供しています。
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