こんにちは。コピーライターの高島です。
フェンリルでは主に、自社開発と、アプリの共同開発でユーザーのハピネスを生み出していますが、今回は、これまでとは違うアプローチで携わったプロジェクトをご紹介したいと思います。
※本記事の内容は、2020年2月に取材/撮影を実施しました
人に寄りそって新しい価値を生む人工知能(AI)実証実験に参画
このたびフェンリルは、日本科学未来館が実施する『優しい人工知能"reco!(リコ)"-タッチでキヅク、キミとのキズナ-』の実証実験に参画しました。
コアとなるモジュールは国立研究開発法人 産業技術総合研究所で開発されたPLASMAを用い、株式会社クリアタクトは開発、フェンリルはユーザーインターフェース部分の企画、デザイン、開発などを担当。
メンバーが一丸となって“社会のためにできること”を第一に考え、アイディアを交わすなかで形になっていきました。
reco!はどんなことをしてくれる?
優しい人工知能“reco!”(以下、「reco!」)では、来館者のみなさまが人工知能とコミュニケーションしながら展示を楽めるものであることを大切にしています。
そのため、ユーザーインターフェース部分では人工知能から受ける難しそうな印象を柔らかなアニメーションで人懐こくし、「人工知能(AI)」という目に見えないものを、分かりやすく、親しみやすいものとして「キャラクター」という形で表現しました。
実証実験全体の流れ
日本科学未来館での実証実験の流れをご紹介します。
展示エリアの入り口で来館者が所有する交通系ICカードを登録し、簡単な質問に答えることで、その人に合ったおすすめの常設展示を紹介していきます。
各展示の前にもreco!が設置されていて、展示を見たあとにカードをタッチし、展示の感想や新しい質問に答えると次に向かう展示をおすすめするという流れです。
展示を見たあとで、展示エリア外(3階のゲート外)に設置してある端末“ゴールreco!”で、見た展示の傾向や質問の答えによって導かれた性格診断を見ることができます。表示されたQRコードを読みこむと、スマートフォンでも結果を確認でき、来館の思い出としてあとから振り返ることができるという楽しみも。
決められた順序でめぐるのではなく、コミュニケーションを通じて展示を紹介してもらいながら、ユーザーが自分で選んだ展示を体験する中で、人工知能(AI)は徐々にユーザーのことを理解し、ユーザーは体験を通じて徐々に人工知能(AI)を身近に感じることができます。
たくさんのデータを積み重ねることで、私たちを優しく見守り、新しい気づきを後押ししてくれるAIがつくられていくという実証実験になっています。
多くの人がコミュニケーションできるものに
ユーザーとのコミュニケーションを擬似的に「会話」という形式にすることで、より親近感をもって接してもらえるよう、各キャラクターに擬似的な声を作成するなどの工夫をしています。
reco!がターゲットにしている年齢層は幅広く、大人はもちろんお子さまでも楽しめるものになっています。また、背の低いお子さまでも操作がしやすいように、ボタンの位置は適切な位置に配置しています。
また、会話の最中にアニメーションを表示することで、静止画によるコミュニケーション以上の驚きを与え、キャラクターのバリエーションを複数用意することで、できるだけユーザーを飽きさせない工夫もしました。
フェンリルメンバーの声
今回フェンリルからは、主に6名のメンバーが携わりました。それぞれがどのような想いで向き合い、自身ができることに全力で取り組んだのか、社内のメンバーに話を聞いてみました!
『AIを身近なものへ』クリエイティブディレクター:廣吉
ープロジェクトでの自身の役割
企画と全体ディレクション、クライアント提案を担当しました。フェンリルはイベント系などのクリエイティブ実績が多くないため、広告業界に長く身を置いていた私がアサインされました。
私は、広告業界で培った「アイデアの生み方、育て方」「実現の仕方」しか知らないため、クリエイティブディレクターとしてはそのやり方に則って行うしかなく、もしかするとフェンリルにはあまり馴染みがないやり方だったかもしれません。ですが結果的には、広告代理店のような長い歴史のある業界の手法と、フェンリルのような勢いのある新興のクリエイティブ業界の手法をうまくマッシュアップできたのではないかと思います。
ー 目的達成のためとくに注力したこと
クライアントの目的はシンプルで「AIは身近なもの、という認知の拡大」でした。 進めるにあたり、まずAIに関するさまざまなデータ(例えばAIの認知度や利用度合いなど)を調べるなかで見えたのは「全年代の中で10代が最もAIに親しんでいる」「全体的に、AIの認知度は約85%、具体的に説明できる人は約30%」ということでした。つまり、「AIという名称は知っている」というレベルで止まっている人が大半で、それを「AIは身近なもの」というレベルまでどうやって引き上げるか、かつ、それを日本科学未来館のテーマである「体験型から経験・思考型へ」ということを具体的にどうエグゼキューションするかという点を常に考えていました。
『フェンリルとしても収穫の多かったプロジェクト』ディレクター:長谷川
ー プロジェクトでの自身の役割
今回は日本科学未来館さまでの実証実験の企画でしたが、その他の企画も含めた実証実験に関する事前調査、アイデア出しなどに参加しました。現地調査は完全に想像していたものと異なり、ターゲットとなる人の数や施設の状況、実際サービスを行うと仮定した場合の懸念点や利点など得るものが多く有意義な活動でした。実証実験は日本科学未来館で行うため、スケジュール管理や、什器設置の調整などに苦労しましたが、このようなイベントがどういう手順や施工で行われているのかを経験できた事が収穫になったと思います。
ー 制作過程で得た収穫や今後の展望
実証実験の企画からの参画という事で、普段フェンリルが手がけるアプリやWeb制作とは異なり、同様の実績や事例もないため手探りでアウトラインを固めていく必要がありました。また、タイトなスケジュールで調整が進んでいたため、会場でのテストはあまり多くは出来ませんでしたが、タッチパネル型サイネージや投影型のディスプレイでのインタラクションでどういうレスポンスが必要なのかなど得られた収穫は大きかったと感じています。 体験されるみなさまに "reco!" と対話していただき、成長していく"reco!" が様々なデバイスを通じて人とコミュニケーションを重ねていく事で、人工知能という存在が人々にとって暖かく寄り添えるパートナーのような存在になっていく事を期待しています。
『前向きでクリエイティブなチーム』デザイナー:髙岡
ー プロジェクトでの自身の役割
全体のデザインと企画をメインに担当しました。「AI」という目に見えないものに対し、いかに親しみを感じて接してもらうか、そのために「AI」をどう具現化するべきなのか?ということに取り組みました。実際の体験を通じて「AI」をいかに身近に感じてもらえるかの導線設計はとくに注力しました。体験する時間や、質問する内容、興味を持続させるための施策など、スマホアプリとはちがって、体験する場所がリアルな現場だったため、余計に丁寧に考えました。
ー reco!の制作過程でのやりがいやこだわり
キャラクターデザインから企画全般まで、ほぼ0ベースで考えて制作できた部分は、本当にやりがいがありました。チーム全体がそれぞれの役割を認識し、雰囲気が前向きでクリエイティブだったのがうれしかったです。AIは人の生活を豊かに便利にするものである一方で、やはりなんとなくプログラム的な冷たい印象があるんですが、メンバーとともに目指したのは、人に寄り添う、温かみを感じる「AI」でした。イメージ的には、昔近所にいた“世話焼きのおばちゃん”的な。そういった一面もAIにはあるんだよ、という風に感じてもらえればうれしいです。
「AIが寄り添ってくれる未来への一助に」モーションデザイナー:小川
ー プロジェクトでの自身の役割
キャラクターアニメーションの作成と、アニメーション制御の実装を担当しました。また、人工知能の推論過程をビジュアライズする実装も併せて担当しました。キャラクターや表情が途切れることなく柔軟に切り替えられるようにし、世界観を崩さないようにしました。
ー 苦労した点や完成に至るまでの想い
推論過程のビジュアライズにおいて、jsonのパースや、3D空間内のノード二点の角度を求めるのに苦労しました。また、実機で動かすと想定していなかった問題が出てきたため、その解決にも苦心しました。しかし、本案件の特徴でもある自動販売機のディスプレイでアニメーションが動いているのを見ると、モニターでは感じられなかった筐体の存在感と一体化した面白さを感じました。このプロジェクトや知見が発展し、今よりももっと身近にAIが存在し、寄り添ってくれる未来への一助となればと思います。
『自身の成長にも繋がった貴重な経験』デザイナー:福原
ー プロジェクトでの自身の役割
キャラクターの提案、アニメーション作成でデザイナーとして参加させていただき、 その流れで、reco! を使用した実証実験の企画提案として未来館様向けに" AI性格診断 "のご提案をし、 今回の実証実験実施のきっかけを作ることができました。 このプロジェクトでは、自分自身の業務の幅を広げ、成長にも繋がる重要な案件として、個人的にも楽しんで取り組んでいました。
ー 制作中の楽しみや今後の目標
今回採用したXperia Touchの画面作成は初めてだったので、使用感含め照射された画面をタッチできる不思議な体験をしながら作成できたのが楽しかったです。文字が多いコンテンツになるため、音を作れる新卒スタッフに宇宙語のような音(それも各キャラクターごとに異なる声色で)を作成してもらい、現場でもそれがうまくはまっているのを体験することができてうれしかったです。サウンドも含めて世界観に合わせたデザインができるのは楽しいです。また、自分がデザインしたキャラクターが活躍しているのは純粋にうれしかったです。制作過程においては、自分以外はベテランのメンバーで構成されていたので、日々勉強になることばかりでした。
今後、reco!というキャラクター性をもった親しみやすい AI自販機が街中に設置され、社会をよくすることに繋がっていく未来を実社会の中でも実現できればうれしいし、どう活用できるか?を考えるところで今後も関わらせていただけたらと思っています。
ぜひ実際にreco!に触れてみてください
日本科学未来館は、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を受けて休館中でしたが、感染症対策を徹底したうえで、6月3日より再開館されています。
そして、reco!の実証実験についても、展示が一時中断されていましたが、7月1日(水)より展示が再開されました!
reco!の実証実験は、12月27日(日)まで実施されています。みなさんも訪れた際には、ぜひ体験していただき、楽しみながらAIの発展に貢献していただけますと幸いです。
そしてフェンリルではこれからも、自社開発やスマートフォンのアプリ開発にとどまらず、新しい分野の企画から設計、UI、ユーザーに愛されるデザインを通じて、社会に貢献していきます。
※日本科学未来館へのご来場は現在、オンラインでの事前予約制となっております。