今回はファストドクターの主要3事業のうち、各自治体の医療課題解決の支援を目的とした「自治体支援事業」を担っている地域医療推進部 部長 服部さんによる投稿です。
これまでに40以上の自治体と連携し、部署の創設までのエピソードを綴っています。
ぜひご覧ください。
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服部 直幸プロフィール
東京理科大学基礎工学部 生物工学科卒業後、製薬メーカーのノバルティスファーマに新卒入社。MR として主 に循環器系の医薬品の拡販に従事。その後インテリジェンス(現:パーソルプロセス&テクノロジー)に転職し、クライアントへのコンサル、新規事業企画〜立ち上げ、DX 戦略の立案、プロジェクトマネジメント業務などを担当。自治体案件も経験。
2021年11月ファストドクター入社。
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ファストドクターには、大きく分けて3つの事業の柱があります。
ファストドクターの事業の3本柱
①地域住民を対象とした救急往診・オンライン診療事業(toC)
②在宅医支援事業(toB)
③自治体支援事業(toG)
今回は、地域医療推進部が管理・運営を担っている「③自治体支援事業」について、ご紹介します。
コロナ禍が生んだ「自治体支援事業」とは
地域医療推進部が担当している自治体むけ支援事業(to Government)は、文字通り「自治体」の負担軽減や医療体制強化の支援を推進する部局です。
社会情勢に応じて医療体制を柔軟に再編し
・新興感染症に罹患した自宅療養者の診療委託
・移動困難者(高齢者、体の不自由な方など)を対象とするワクチンの訪問接種
・救急隊と連携した救急車の適正利用
など、地域のニーズに応じてさまざまなソリューションを提供しています。
この事業が立ち上がったきっかけは、コロナ禍にあります。
2020年にコロナ禍へ突入してから2022年の9月まで、日本では感染者の全数把握が行われており、陽性判定を受けた全ての方の情報を自治体に届け出する必要がありました。また、新興感染症であったため、陽性者の医療相談、健康観察から受診調整、入院調整までの全てを各自治体の職員が対応しなければなりませんでした。これらにより、保健所は業務がひっ迫せざるを得ない状態になり、24時間365日体制を強いられることになりました。そのようななかでも、保健所職員たちは、「市民対応を怠るわけにはいかない」という思いがあり、マンパワーで対応に当たっていました。
そんな時に、「この状況を打開したい」とファストドクターに相談してくださったのが最初の連携先である東京都板橋区でした。
この1つの事例がきっかけとなり、他の自治体との連携も急拡大。1年で自治体連携数が300%までスケールさせた取り組みとなり、こういった自治体のニーズに応えていきたいというところから地域医療推進部が創設されました。
なぜ、自治体支援事業が必要なのか?
自治体支援事業の必要性について、さらに深掘りしていきます。
各自治体では住民へ向けた医療提供体制を整備(確保)する必要があります。そのために各都道府県や各市町村の住民へ向けて安心安全な生活を送るための計画として、「医療計画」や「総合計画」を策定し、住民の健康を保持するために医療提供体制を担保しているのです。
しかしながら、今後超高齢社会に突入し生産年齢人口が急減してくることが予測されており、各都道府県や各市町村だけでは十分な医療提供体制を構築することは困難となっています。そこで地域医療推進部では、①都道府県向け、②市町村向けのそれぞれのニーズに合わせて支援を行っています。
都道府県ごとの医療の羅針盤「医療計画」への支援
医療計画とは、都道府県ごとにあるべき医療の姿を体系化したものです。救急医療・災害時における医療・へき地医療・周産期医療・⼩児医療・新興感染症対策・在宅医療といった項目に対して都道府県が様々な施策を展開しています。
医療計画に対するファストドクターの自治体支援事業としての取り組みとしては、都道府県内にある限られた医師や医療機関といったリソースに対して、官民連携して体制を整備することによって、医療計画を達成できるように支援を行っています。
例えば、高知県は北海道、広島県に次いで全国第3位の無医地区です。18市町村38地区が医師のいない無医地区となっており、近隣の医療機関まで2時間以上かかる地域や山間部のため訪問診療が難しい地域などが存在しています。そこで、ファストドクターでは、無医地区に対してオンライン診療を提供し、対面での診療が必要だと判断された患者を地域の病院へ連携しています。
市町村ごとの地域の羅針盤「総合計画」への支援
総合計画とは、市町村ごとにあるべき医療の姿を体系化したものです。地方自治体が策定する自治体のすべての計画が示されており、人口増加(そのための住民満足度向上、子育てしやすい環境作り)・地域医療体制(二次医療以降の負担軽減、医師不足の解消)・医療地域格差是正(都市部と同等の医療提供体制の整備)などの医療を含めた計画が盛り込まれています。
総合計画に対するファストドクターの自治体支援事業としての取り組みにおいても、医師や医療機関といったリソースを提供することで地域医療をより良いものにするという支援を行っています。そして、医療に関する計画をサポートすることによって、医療以外の分野においても各自治体へ寄与できることを目指しています。例えば、24時間365日の医療体制を構築することは地域の住民満足度向上に繋がり、その市町村の人口増加による活性化を期待できます。
自治体支援事業の3つのポイント
自治体支援事業の具体的な取り組みとしては、以下の3つがポイントです。
①有事対応(コロナ療養者対応など)の支援
②平時地域医療への展開促進
③国を巻き込んだ社会インフラ化
①コロナ療養者への支援
コロナ療養者への支援では、自宅療養者への対応を全般的に行っています。各地方自治体の保健所では前述でもありましたように365日24時間体制での対応が難しい状況であるという実情があります。提供している内容は各自治体のニーズによって違いがあるのですが、最も多いケースがコロナ自宅療養者から相談を受けた各保健所がファストドクターへ連絡し、オンライン診療や救急往診を行うというものです。各種検査・対症療法・酸素投与・点滴投与・薬剤院外処方・入院待機中のフォローアップまでをファストドクターが担い、地域医療とその周辺にある保健所業務を軽減しています。
②平時地域医療への展開促進
平時地域医療への展開促進では、現在のコロナ禍が収束した際の平時の地域医療にもファストドクターを活用していただけるように医療リソースの提供を行っています。具体的には、夜間・休日や郊外(へき地)などにおける初期救急医療の一部をファストドクターのオンライン診療での対応に置き換えるというものです。診察の結果、必要に応じて適切な地域医療機関へ連携、医師の判断による救急連携や二次救急などへの入院調整の実行を行っています。また、診療後の患者への処方薬配送も行っています。これによって365日24時間の医療体制を構築することができ、住みやすい地域として住民満足度向上に繋がることも魅力として感じていただいています。
③社会インフラとしての組込み
社会インフラとしての組込みでは、ファストドクターを日本社会のインフラとして位置付けるように図っています。具体的には、現在は119番や医療機関の案内を行う「救急安心センター事業#7119」や休日や夜間のこどもの症状に相談できる「こども医療でんわ相談#8000」がありますが、医師による救急往診やオンライン診療を提供できる新たな選択肢としてファストドクターを位置付けられるように取り組んでいます。
これらの取り組みは、ファストドクターと行政が契約することによって実現することができています。しかし、この行政の数というのは多くはありません。国は1つ、都道府県は47、市区町村は1747ですので、地域医療推進部としてはひとつひとつに丁寧に関わりながらそれぞれの取り組みを進めています。
※次回は服部さんにこれからの地域医療推進部について語ってもらいます。
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