700社以上の導入実績を持つ動画配信サービス「millvi」や、7,000人以上のユーザーが利用するYouTube動画分析サービス「kamui tracker」などを運営する株式会社エビリー。millviは始まったのは2010年。10年も前から動画時代の到来を見越していました。創業者・中川恵介の先見の明はどのように培われたのでしょうか。
25歳の時、父親の会社が倒産。それでも起業への夢は消えなかった
起業しようと思ったのは、完全に父の影響ですね。経営者として楽しそうに働く父親の姿を見て、子供ながらに自分で商売することに漠然とした憧れをもっていました。
だから、学生時代も自分でビジネスを起こして、起業家みたいなこともやっていました。
英語を学ぶために留学し、卒業後は父の会社に入社しようと思っていたのですが、留学を終えたころ、僕が25歳のときに会社が倒産してしまったんです。ショックは受けたものの、倒産を目の当たりにしたことで、起業に対する想いはむしろ強くなりました。
それまで、父からは仕事に対する不満を一度も聞いたことがありませんでした。常に前向きな話しか聞いてこなかったんです。それは、倒産しても変わりませんでした。倒産した翌日、父が「また別の事業で起業する」と宣言したのは本当に印象的でした。
起業って、それだけ人に原動力をもたらすものなんだなと思いました。そのとき明確に、絶対に自分も起業するぞと決めたんです。
自分の好きなように事業をゼロから作っていくのは、起業家だからこそ味わえる醍醐味の一つです。父はそれが楽しかったんだろうし、私も絶対に同じ楽しさを経験してみたいなと思いました。
当時、33歳までには起業するという目標だけは立てたものの、それまでどうしようかは全然考えていなくて。将来起業するとしたら、自分が好きなITやインターネット領域にすると思ってたので、その領域で経験を積めそうな会社を探し、創業間もない、EC向けのレコメンドエンジンを開発・提供するシルバーエッグテクノロジー社にジョインしました。
創業期のベンチャーに飛び込んで実感した、商売の難しさ
3番目か4番目の社員としてシルバーエッグ・テクノロジーに入社して、開発以外のことはなんでもやりましたね。セールスがメインの仕事ではあったんですが、カスタマーサポートやマーケティング、会社の口座開設なんかもやりました(笑)
代表のトーマス・フォーリーはアメリカ人で日本語が話せなかったので、営業時の通訳だけでなく、事務手続きは大体私が担当しました。
自分で起業すると決めていたので、ビジネスの全体図を俯瞰できる立場にいられたのはすごくよかったですね。当時の経験は、エビリー創業後も活きています。結構今に生きていて、全体像が見えたことはすごくよかったことです。
そこで得られた一番の学びは、自社サービスが市場に受け入れられるタイミングは読めない、ということですね。シルバーエッグ・テクノロジーが創業した98年当時はITバブル真っ只中で、EC市場は確実に伸びるし、それであればレコメンドエンジンへの需要も高まるはず。
その期待を受けて、シルバーエッグ・テクノロジーは創業当初、約6億円もの資金を調達できたのですが、実際スタートするとなかなかうまくいかなくて。1年で50人ほどに増えた社員を、1年後に大半の社員をリストラしなければいけない状況にまで追い込まれました。
調達した資金で一気にプロモーションかけたんですけど、当時はほとんど市場に受け入れられなかった。実は全然売れずにうまくいかなかったんですよね。でも粘り強く事業継続した結果、国内のレコメンドエンジン市場ではトップシェアを誇るサービスに成長し、2016年には東証マザーズに上場しました。
いずれこのサービスは世の中から必要とされるのはわかっている、潜在ニーズがあるのは確信しているけど、いつそれが顕在化するのかは、どうしても読めない。
自分がいけると信じたサービスを市場にぶつけてもすぐに成功するわけではないということを体感できたのは本当によかったです。
起業するも失敗続きの日々。それでもやり続けたら光が見えた
25歳当時、「33歳までには起業する」と決めていたので、ちょうど33歳になる2006年に起業しました。ただ、当初は起業ありきで、どんな事業をやるかは決めていませんでした。でも、漠然と動画領域に進出したいとは考えていました。
最初3年間はフリーランスとしてWeb制作の受託やコンサルティングを行いながら、いくつか動画サービスを出して試行錯誤を繰り返していたんです。
動画に着目した理由は2つ。2005年にGoogleがYouTubeを買収したこと、ほぼ同時期にYahoo!BBがモデムを無料配布したこともあり、国内のインターネット通信が急速に普及していたという背景を受けてのことです。なにより、私自身映像コンテンツが大好きだったということもあります。
当時、一般企業でも第一次動画ブームが到来していました。自社で動画を配信するぞとなっても、回線引いて、データセンター借りて、動画専用のプレイヤーを作って……、となるとかなり費用がかさむし、設定も複雑です。
そこで、自社内で0から環境構築するオンプレミスではなく、クラウドで気軽に動画を配信できる環境を提供できればいいのではないかと考えて開発したのが「millvi」です。
millviに行き着くまでは、結構苦労しましたね。millviをリリースしたのは2010年。それまでの4年間で3つの動画サービスをリリースしたのですが、なかなか市場に受け入れられなかった。
失敗の要因は、ひとえに世の中の課題を解決するものではなかったから。
もともと、私はテクノロジーを活用して社会に貢献したいとは思っていたのですが、どうしても思考がテクノロジーに寄りすぎて、「テクノロジーありき」なサービスを作ってしまっていたんですね。そのバランスをとるのが難しかったですね。
失敗を重ねながらも、いかに課題解決にテクノロジーを活かすかという思考はどんどん深まっていきました。その結果、ようやく課題解決できるテクノロジーを搭載した「millvi」を生み出せたんです。
millviはリリースしてから順調に伸びていたのですが、2015年頃、YouTubeにリプレイスされ始めたんです。例えば、CM素材をWebで活用したいとなった場合、Youtubeで流そうというケースが増えていたんですね。「そのうちYouTubeに全部置き換えられるんじゃないか」と危機感を抱きました。
ただ、YouTubeに動画を上げたからといって、見られるかというとそうでもなかったんですよね。今後、企業はYoutubeにアップした動画のプロモーションに苦労するはずだと。そこを解決するために作ったのが、YouTube上のデータを分析するサービス「kamui tracker」です。
動画を伸ばしていくには、やはりYouTubeというプラットフォームの全体感や、競合企業の状況を把握する必要があります。kamui trackerは、それらを簡単に把握できる機能を実装しました。他サービスにはあまりない強みなので、リリースしていこう順調に成長しています。
動画時代が本格的に到来した今、業界を牽引する存在に
今後、5Gの到来やスマホカメラの進化により、動画を撮影、投稿するハードルが更に下がっていくはず。なので、動画が活用されるシーンが更に広がっていくと予想しています。
millviの場合は、最近は社内向けのマニュアル動画配信に利用されるケースが多いですね。背景には外国人労働者の割合の増加があるのかなと。日本語のマニュアルでは伝わらないので、映像で見たもらったほうが明らかにわかりやすいですよね。そもそも、マニュアルを作成するよりも実際の様子をスマホで撮影し、そのままマニュアル化できたほうがよほど楽ですしね。
人口減少時代に突入した日本では、業務効率化や外国人雇用者教育などを目的にした動画制作のニーズが高まっていくはずなので、しっかり応えていきたいです。
kamui trackerは、広告主や広告代理店、クリエイター、事務所など、YouTubeだけでなく動画SNSを活用するすべての人たちビジネスにとって、欠かせないサービスになりたいですね。これまでデータによる裏付けが少なかったインフルエンサーマーケティングを変革し、市場の更なる発展を牽引するプロダクトに成長させていきたいと考えてます。
今後、新たに挑戦していきたいのは、動画領域におけるAIの活用。既に、一部データ解析でAIを活用しはじめていますが、クリエイティブの支援などより広い範囲で役立てたいです。動画×AIはまだまだ黎明期なので、そこに先陣きって切り込んでいきたいですね。将来に向けた事業基盤の強化のために、2019年12月に資金調達を実施しました。
サービスの話ばかりしてきましたが、今構想している計画を実現するために、何よりも大事なのは、今の事業を作り上げている社員です。社員自身にも今の仕事をより面白く感じてもらいながら社員と共に成長できる、そんな会社にしていきたいと思います。
Text by PR Table