Match Groupのロゴの前で 左 Ayanoさん、右Kosukeさん
株式会社エウレカ(以下: エウレカ)は、恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営する企業です。異業界から転職して活躍されているSr. Manager, Product Management のKosukeさんと、Director, Consumer ResarchのAyanoさんに、マッチングアプリ (Online Dating Service 以下 ODS)業界で働く魅力や業界の現在と未来について、ざっくばらんに語ってもらいました。
👉Ayanoさん:大手市場調査会社を経て、2020年にエウレカに入社。恋愛・結婚や人間関係・コミュニケーションにまつわるリサーチを通じ、事業戦略やUX戦略へアドバイスを行う。世界16カ国を対象に恋愛・結婚やマッチングアプリなどに関する消費者調査・市場調査を推進。(LinkedIn)
👉 Kosukeさん:ソーシャルゲームアプリの開発ディレクター、事業部長を経験し2022年にエウレカへ入社。プロダクトマネジメントチームのシニアマネージャーとして、ペアーズの新機能の開発に関する戦略設計、既存機能の改善戦略の立案から実行までをリード。(LinkedIn)
目次
マッチングアプリ (Online Dating Service 以下 ODS) 業界で働くとは
ODS業界に興味を持ったきっかけ
エウレカを選んだ理由
ODSで働く面白さ
Match Group(MG)で働いてみた感想
Match Groupとのコミュニケーションについて
ODSのトレンドと恋愛の価値観
現在のODSトレンド
ODSの今後について
世代による価値観の違いと恋愛への影響
若い世代の恋愛の価値観(日本)
若い世代の恋愛の価値観(世界)
プロダクト作りとODS業界の魅力とやりがい
ユーザーの声を反映したプロダクト作り
ODSビジネスとしての難しさと面白さ
ODSと伝統的な恋愛サービスとの違い
この記事を読んでる方に最後に一言
マッチングアプリ (Online Dating Service 以下 ODS) 業界で働くとは
ODS業界に興味を持ったきっかけ
ゲーム業界出身のKosukeさん:もともとゲーム業界にいたんですけど、中国の資本が一気に入ってきて、勝ち筋がすごく限られてきたなと感じてたんですよ。で、toCの文脈ではゲーム開発で学んだ体験設計のノウハウが活かせそうな領域の中で、似てる部分も多いODSって面白そうだなって思ったのが最初ですね。
大手調査会社出身のAyanoさん:私は調査会社で働いてた時に、消費財の「この商品を何g減らしたら消費者がどう感じるか」みたいな細かい調査ばかりを担当していた時期があって。ちょうどその時にエウレカの求人を紹介されて、「え、恋愛を調査できるの?」ってびっくりして。未開拓な領域を自分の手で探っていけるって思ったのが大きかったですね。
エウレカを選んだ理由
Kosukeさん:やっぱりMatch Group (以下MG)傘下ってところが大きかったです。同じグループ内にいろんなODSブランドがあって、知見も多いし、アジアにも展開してるっていうポートフォリオの強みも魅力でした。
Ayanoさん:私、面接でMG傘下って知ったんですよね。「Tinderと一緒なんだ!」って。恋愛って人間の欲求に直結するテーマだから、それを調査できるってすごく面白いし、世界的なブランドの中に日本発のサービスがあるっていうのもワクワクしましたね。
ODSで働く面白さ
Kosukeさん:ゲームはユーザーに対して一方通行だから、掛けた労力や資金に対して、ある程度ユーザー体験を科学できます。だけど、ODSって相手の好みや価値観が影響してくるから、体験設計として、労力に対するリターン設計の難易度が高い。でもそこが挑戦しがいがあるなって。
Ayanoさん:ODS業界の面白いところは3つあって、まず一つ目は、マッチングって相手がいて初めて成り立つから、両方に満足してもらう体験がすごく大事なんです。二つ目は、ビジネスとして続けながらも、ユーザーには早くアプリを卒業してほしいっていうちょっと矛盾した部分があるところ。三つ目は、恋愛というすごく繊細なテーマをビジネスにしているってことですね。だからこそチャレンジングで面白いんですよ。
Match Group(MG)で働いてみた感想
Kosukeさん:新機能を作るとき、MG内で既に似た取り組みがあるかは必ず確認します。成功だけじゃなく、失敗の背景まで聞けるのが本当にありがたい。これによって必要のない失敗は避けることができていますね。
Ayanoさん:私は色んな国の人と仕事してるけど、共通してるのは「相手をリスペクトする文化」が根付いてるってことですかね。恋愛って国や文化で正解が違うからこそ、色んな考えがあって当然っていう前提があるんですよね。
Match Groupとのコミュニケーションについて
Kosukeさん:英語を使った業務は、前職では経験がなかったので、今も英語は勉強中です。グループ会社のメンバーとのカジュアルな議論の中で、もう少し理解したい。もう少し正しく伝えたい。という小さな挫折体験が、毎日の学習をするモチベーションになっています。会社も英語学習を応援してくれる制度が充実しています。
Ayanoさん:もちろん英語でのやりとりは多いですけど、流暢さより「自分の考えを伝える」ってことが大事にされていると感じますね。入社してすぐに日本の“告白文化”を説明する機会があったんですけど、みんな真剣に聞いてくれて、すごく安心しましたね。
終始和やかな雰囲気で進んだ対談中の一コマ 左:Ayanoさん 右:Kosukeさん
ODSのトレンドと恋愛の価値観
現在のODSトレンド
Kosukeさん:今のODS業界はかなりレッドオーシャン。大手数社がシェアを持っていて、後発はニッチな領域を狙っている感じです。ただ、ユーザーの基本的なニーズやペインポイントは昔とそんなに変わってないなと。
Ayanoさん:確かに。でも最近は世界的な傾向として「恋愛目的では出会いたくない層」が増えてきてるのを感じますね。恋愛そのものが嫌なわけじゃないけど、“付き合うための出会い”には疲れてるというか。
ODSの今後について
Kosukeさん:恋愛のモチベーションって、人によっても時期によっても波があるんですよね。例えば、今は恋人が欲しいけど、3ヶ月後は全然欲しくないとか。だから、相手を探してる時しか使われないアプリだと厳しいです。恋愛モチベーションが低い時でも、ユーザーのホーム画面に残り続けられるアプリでありたい。
Ayanoさん:ODSを使っていない=恋人がいらないではなく、恋人を作るために無理に頑張らなくても、このままの自分で相手を探せることが大事というユーザーに対して、そこのニーズを満たすものを提供していくのが大切かなと。あと、AIの可能性は世間でも話題ですけど、ODSのAIの活用についてはどう思います?
Kosukeさん:PdMのメンバーが自動運転に例えていて、すごくしっくりきた考え方がありました。自動運転で言えばレベル1〜5まであって、レベル1が一番サポートが軽微で、レベル5は全ての運転を代行するレベル。恋愛は不合理な行動が多いから、だれに、いつ、どの"支援レベル"を提供するかの判断が必要。全部便利にすればいいってものでもないなと。
Ayanoさん:確かに。ODSが持ってるデータって、すごくユニーク。様々なニーズがあって、それがどう行動に繋がるのか、行動は相手によっても変わるとか。MG全体でのデータ蓄積もあるし、今後エウレカが新しいチャレンジをするとしても、AIの精度はあげていきやすいと確信しています。
世代による価値観の違いと恋愛への影響
Kosukeさん:世代によって変化していくことはあると思います。例えば、若い人たちが年を重ねて、より恋愛に真剣になる割合が増えるとか。ただ、変わらない部分もわりとあって、デートに誘うことは勇気がいること、大切な価値観は表現が難しいことといった恋愛における難しさはどの世代でも変わらない気がしますね。
Ayanoさん:恋愛はライフステージに紐づいてるから、20代、30代など世代ごとの生き方が大きく変わらない限り、本質はそんなに変わらないと思います。でも、恋愛の「手段」は時代によって変わってきてますね。最近だとLINEとかインスタとか。
若い世代の恋愛の価値観(日本)
Ayanoさん:恋愛はその国の文化や地域特性にすごく影響を受けるから、10代の原体験とか教育がガラッと変わると影響を受けます。日本の10代は、性教育が薄れてDIE教育が進んでいるのもあって、好きという気持ちはあってもどう表現したらいいかわからない子が増えてると感じますね。
Kosukeさん:前にAyanoさんと話してた時に、日本の10代は部活に時間取られすぎて、恋愛リテラシーが育ちにくいって話は、すごく納得しましたね。
Ayanoさん:例えば、日本と近いところだと韓国は勉強しながらも恋愛してるんですよね。韓国は、日本と比べると自分の意見をはっきり表現するという文化が根付いているのもあって、恋愛のハードルが日本より低いのかも。
若い世代の恋愛の価値観(世界)
Ayanoさん:時代が変化して、議論がいじめや暴力に発展することもあって、議論文化のアメリカですら議論がしづらくなってきます。その影響で、自分と価値観が近い人と深く関わりたいってニーズが強くなってきて、日本みたいに付き合う時に告白するという文化が少しずつ芽生えてきてますね。
プロダクト作りとODS業界の魅力とやりがい
社内での打ち合わせ風景 :左 Ayanoさん、右Kosukeさん
ユーザーの声を反映したプロダクト作り
Kosukeさん:去年(2024年)リリースした「本音マッチ」は、ユーザーの“表現しづらいけど、譲れない価値観”をベースにマッチングを実現する機能で多くの方に使ってもらってます。しっかりとユーザーに共感されるコンセプトがあるからこそ、支持されたのかなと。
Ayanoさん:ユーザーって、本当に大事な価値観は、相手からの見られ方を意識してしまって、そのまま表には出しづらいんですよね。「本音マッチ」はその課題にちゃんと向き合って、表には出さないものの大切な価値観はマッチできるという点が支持されたのかなと。
Kosukeさん:今年はいくつかのコンセプトテストを実施してみたんですけど、最終的に「ほとんどの機能はリリースしない」って、判断をしました。これは、とても大きな進歩だと感じています。
Ayanoさん:ちゃんとコンセプトを試して、ユーザーにしっかり響いたものだけにリソースをかけるって決めたのは、私もすごく良い判断だったと思います。
Kosukeさん:ビジネスの側面でメリットが大きくても、ユーザーニーズの本質を捉えられていない機能は、結局はうまくいかない。サンクコストがあっても、"勇気を持って止める"という姿勢を持てているのは良い傾向かなと思います。
Ayanoさん:今のフェーズのペアーズだと、「これ面白そう!」だけでは機能を出せないです。少人数でスピード優先だった頃みたいに、とりあえずやってみる、では通用しなくなってきました。今は、ちゃんと意味のある価値をどう届けるかが大事なフェーズになってます。
Kosukeさん:アイディアを出すこと自体はいつでも歓迎されてるカルチャーはあります。ただ実装に進めるとなると、「誰にどんな価値を届けて、どうビジネスを成長できるのか」って説明はしっかり求められます。定量的な観点と、定性面のユーザーインサイトの両面で解像度高く理解して、正確に課題解決ができているのかというロジックが、機能設計において重要ですね。
ODSビジネスとしての難しさと面白さ
Kosukeさん:ペアーズの短期的なビジネス的な側面だけを見ると、ユーザーに長く利用してもらうことに、議論が進みかける時もあります。
Ayanoさん:確かにそういう場面はたまに発生しますね。
Kosukeさん:でも僕は逆で、「いい体験をしてもらって、早く卒業してもらう」のが理想だと信じてます。結局、いい体験してないと人に勧めようとも思わないし、また機会があれば使ってみたいとも思わないじゃないですか?
Ayanoさん:ペアーズって恋活や婚活に特化しますけど、人生ってそれだけじゃないですもんね。MG全体で見ると、恋活や婚活だけじゃなくて、もっと広い意味で“意味のある関係性”をつくる方向にも可能性があって。個人的にはゆくゆくは、そういう展開もあるかもしれないなって思ってます。
ODSと伝統的な恋愛サービスとの違い
Kosukeさん:結婚相談所のような昔ながらの恋愛サービスも、テクノロジーが発展した今でも残り続けてますね。ODSだけじゃカバーしきれないニーズって、やっぱりあるんだなって感じます。
Ayanoさん:たしかに。結婚相談所って、仲人さんがいるのが大きいですよね。
Kosukeさん:そうですね。最初はみんな高望みしがちだけど、仲人さんが「それはちょっと…」って現実を教えてくれて、そこから一緒に考えてくれたりします。あの“伴走”って強みだなって。で、それをアプリでも再現できないかなってよく考えるんですよね。
Ayanoさん:私の感覚だと、結婚相談所って、友達や職場の人が「この人いいと思うよ」って紹介してくれる感覚に近い気がしてて。その“紹介してくれる人”がプロってだけで、自分の性格や価値観を見て「この人合いそう」って提案してくれるのは、やっぱり大事ですよね。
Kosukeさん:確かに、あれはODSにはない良さですよね。
Ayanoさん:でも一方で、ODSは“しがらみゼロ”で自分の意思で動けるのが魅力だと思ってて。「自分はこうありたい」って思いに正直になれるツールというか。例えば、インドだと結婚=家族の問題だから、親が子どもを相談所に登録するのが当たり前。でも最近はラブマリッジ(恋愛結婚)に憧れる若者も増えてて。ODSが、そういう文化の変化を後押ししてるのも面白いかなと感じます。
この記事を読んでる方に最後に一言
Kosukeさん:エウレカが面白いのは、ODS業界が今まさに成熟フェーズに入ってきてるってことですね。昔は勢いだけで伸びることもあったけど、今は緻密なプランニングが求められますね。
Ayanoさん:確かに、何を出すかの判断がすごくシビアになってますよね。
Kosukeさん:でもその分、PdMとしてのスキルが伸びやすい環境でもあるし、toC領域に関心が強い若手PdMが修行するには、ベストな環境だと感じます。ユーザーの反応もダイレクトに返ってくるし、ビジネス的なインパクトもわかりやすいですし。
Ayanoさん:しかもMGって外資なんだけど、日本にかなり裁量があるのも珍しいですよね。恋愛ってその国の文化に左右されるから、本社主導だけじゃうまくいかないですし。
Kosukeさん:そうですね。国産のtoCサービスで、外資の強みを活かしつつ、主導権を持って海外展開を含めてチャレンジできるという稀有な環境だなって思います。
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