学生時代は映像の世界を志していた相原さん。ところが、偶然出会った”青果の世界”に惹かれ、キャリアの道が大きく変わることに。
現在は、農産流通をより効率よく、そして高品質な青果を消費者のもとにお届けするべく、全社をあげて農産業界のデジタル化を進めています。
今回は、相原さんの経歴からはじまり、農産業界で求められるDX、現在の会社の課題と欲しい人物像をお聞きしました。
他業界とは異なるDXのあり方や、求める人材の具体的な事例まで語っていただいていますので、ぜひ最後までご覧ください!
【代表取締役社長執行役員 兼 COO・相原さんプロフィール】
大学卒業後、テレビ広告の制作会社を経て、食料品販売の農産担当で売り場づくりに携わり店長を務める。その後、青果の専門商社へ入社。サービスセンター事業部で責任者を務め、大規模センターの設立に携わる。約20年務めたのちにイーサポートリンクに入社し、2022年社長執行役員に就任。
映像の世界から農産業界へ。青果のおもしろさにハマる
本日はよろしくお願いいたします。まずは、学生時代と大学卒業後の就職先についてお聞かせください。
はい、お願いします。学生時代は兄の影響でカメラを始めて、将来は映像関係の仕事に就きたいと考え、テレビ広告の制作会社でアルバイトをしていました。
大学卒業後はそのまま契約社員として勤務。しかし、若さゆえの未熟な考えから、自分の価値観と現実にギャップを感じて退職しました。
何かあったのですか?
今となっては笑い話なのですが、ある自動車メーカーのCMの撮影でロケ地まで行くために手配した車が、他社製だったことがあったんです。
「明日の朝までに○○社の車を探してこい!」とプロデューサーからひどく怒られて、徹夜で探しました。
そのときは我慢したのですが、似たようなことがまた起こりまして。
自分のなかでは芸術的なものを真剣に創りたい気持ちがあったので、芸術とは別の部分での配慮に疲れてしまい、22歳で辞めてしまいました。
相原さんにそんな過去があったのですね…!それで、その後はどうされたのですか?
「また同業界で働きたいけど、生活できることが最優先だよな」と考えていたところ、新聞で食料品販売の求人を見つけました。
その会社に入社が決まり農産担当として売り場づくりをやってみると、青果のおもしろさに気づいたんです。
他の食材はあまり変化がないのに、青果はなぜか売り場のつくり方で売り上げが2割くらい変わる。
毎日閉店するとその日の売り上げがわかるので、自分がつくった売り場の成果がその日のうちに出る。
それがすごく楽しくて、ハマってしまったんですよね。おもしろいから店長になるまでは続けようと決め、30代半ばで店長に就任しました。
有言実行ですね!目標を達成されたわけですが、その後はどうされたのでしょうか?
店長としてしばらく勤務していたら、ある日、職場の先輩に「おもしろい会社ができるから、お前も来ないか?」と誘われたんです。
その会社が、青果の専門商社。そして私に事業の説明をしてくれたのが、創業者で後に弊社の会長となる堀内でした。
入社が決まった私は、サービスセンター事業部で大規模センターの設立に携わることになりまして。
最初は「センターを建てるってどこに依頼すればいいんだ?」「フォークリフトってどうやって買うんだ?」と、わからないことだらけでしたね。
多くの失敗しながらも一つひとつ覚えていって、最終的に10以上のセンターを立ち上げました。
その後、現在のイーサポートリンクに入社されたのですよね。
ええ。今から7年前に堀内から食事の誘いがあって、行ってみるとイーサポートリンクに来ないかという打診でした。
実は、堀内は青果の専門商社を設立した3年後に、イーサポートリンクをつくっていたんです。
私は「現職でお世話になった多くの方にご迷惑をおかけしないなら、喜んで行かせていただきます」と意向を伝えました。
すると、1週間後には堀内が話をつけておいたということで、円満にイーサポートリンクへ移ることになりました。
そして、約4年後に私が社長に就任した形です。
↑イーサポートリンク東京本社が所在するビル
土だらけの手でタブレットをさわれるか?
相原さんのご経歴では農産流通業界が長いですが、この業界のおもしろさを教えてください。
未だにファックスが飛び交っているような業界ですから、ソリューション改善を考えて新たなサービスを展開できるおもしろさがあります。
おそらく、DXに関しては、この業界は他の業界とは少し違った進化の仕方をすると考えています。
というのも、農家の方が畑にタブレットを持って行けるのか、土だらけの手でタブレットをさわれるのかを考えてみると、難しいと思いませんか?
市場なら、夜中になると1分1秒を争うような現場なので、タブレットをさわるよりもマジックで段ボールに殴り書きをしたほうが早いんです。
ですから、デジタル化するにしても「農産業界に本当に適したDXってどんなものだろう」などと考えるのが、おもしろいと思っています。
確かに、現場を想像してみると納得ですよね。では、農産業界ではどのような形でデジタル化を進めていけるのでしょうか?
例えば、話した言葉がデジタルで記録されるようなシステムなら、この業界でも上手く活用できて効率化につながると考えています。
また、まだ商用化はできていないのですが、青果の売り場を定点カメラで捉えて、商品の補充タイミングでアラートが出るようなシステムも開発中です。
時代とともに技術が進化していますから、できることが一つずつ増えてきているなと感じています。
創業時から変わった、今求める人材
農産業界のデジタル化をリードするなかで、貴社の課題は何でしょうか?
革新的な考えを持って実行できる人材が、まだまだ少ないことです。
弊社は、世界的に有名な青果を扱う食品企業が日本でバナナビジネスを展開するにあたって、サプライチェーンを円滑にしたところから始まっています。
当時は青いバナナを仲卸さんに販売して、仲卸さんがバナナを熟成させてスーパーに販売していました。
そうすると、荷主の食品企業からすればどのスーパーに何個売っているか把握できなかったんです。
この状況を打破するために、加工会社でバナナを熟成させて、スーパーへバナナを販売するのは専門商社が担う、というビジネスモデルになりました。
この新たな流通にともなう受発注や債権債務を管理したのが、弊社イーサポートリンクです。
ですので、イーサポートリンクが設立されたときにはしっかりとしたサプライチェーンがあって、顧客もついていたんですね。
この状況で社員に求められることは「決められたことをきちんとこなし、失敗をしないこと」でした。
そんな社風で続いてきましたが、時代の変化にともなって、今は新しいことを企画して営業していく、そんな人材が求められてきています。
だんだんと挑戦意欲のある人材が増えてきていますが、まだ不足しているのが今の課題ですね。
少しずつ理想の人材が増えてきているなかで、若手が行った新たな取り組みや、行動力があるなと感じられた事例はありますか?
新卒1、2年目の社員にクライアントの担当を与えたときのことです。一人で臆せず先方の役員の方に商談に行って、仕事をとってきた社員が何人かいて感心しました。
事業以外でも「社員同士のコミュニケーションを円滑にしてほしい」というざっくりとした指示をしたところ、社内で運動会を企画して実施していた若手社員がいましたね。
彼らはほかにも、定期的にラウンジで集まって他事業部の話を聞くという企画も行っています。
そんな若手社員たちが、5年後、10年後にマネジメントする立場にたって、良い相乗効果をもたらしてくれるんだろうなと期待しています。
そういう未来を担ってくれる方に来ていただけると、大変嬉しく思います。
↑管理職以外のメンバーが自主的にラウンジで集まり、会社の理解を深める「おしゃべりサミット」
社長のオフの顔
相原さんは休日どんな風に過ごされているのですか?
1日の半分は飼っている柴犬の散歩です(笑)。
もともと犬を飼いたかったのですが、妻に「どうせ面倒見ないんでしょ」と反対され、土日は絶対に自分が面倒をみる約束で飼い始めました。
実は、柴犬ってものすごい距離を歩くんですよ。うちの犬は1日9キロ歩きます。
それで1日の大半が犬との散歩になっていますね。
↑ペットの柴犬
あとは、最近キャンプにはまっています。先日のんびりソロキャンプに行こうかなと思っていたら孫たちがわらわらついてきて、にぎやかなキャンプになりました(笑)。
↑キャンプも柴犬と一緒に行かれたそうです