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【CEO×CTO対談】目指すのは現場負荷を極小に抑えたシームレスなIT活用

エッセンシャルワーカーの業務負荷を軽減して、ケアに集中できる環境をつくりたい。そんな思いで、人とデジタルの共生で成り立つ次世代のサービス作りに注力している会社があります。

「ヘルステックの力で社会課題を解決する」をミッションに。そしてその解決は常に「シンプル」であることを掲げ、保育施設向け午睡見守りシステム「ベビモニ」や介護DXサービス「OwlCare」など、エッセンシャルワーカーを支えるさまざまなプロダクトを展開している、EMC Healthcare株式会社。2022年に2億円の資金調達を完了し、新たな仲間を迎えながら開発と実証実験を進めています。

本日は、これから事業成長をリードしていく代表の伊達さんと開発責任者のスティーブンさんに、EMCHにおける開発の特徴やこだわりについて聞いてみました。

ハードからソフトまで自社開発
肝は、技術に関わる意思決定のスピード感

EMCHにおける開発の特徴とは?

伊達:まず、僕たちは介護や医療、そして保育の現場を知っているということが特徴です。そのうえで、現場業務の改善を考えたハードウェア&ソフトウェアの開発から、蓄積されるデータの利活用モデルまでの社会実装を、ワンストップで実現できるところも当社ならではですね。

Steven:本来なら開発に数年かかるものを、数ヶ月で実現できるのも強みかな。

一般的にはソフトウェア会社だとハードは外注したり、すでに販売されているものを購入すると思います。逆にハードウェア会社だと、ソフトウェアを外注することもあります。

一方で僕たちの場合は作る人が全員社内にいて、少人数で密に連携しているから素早く開発できるというのが強みになっていますね。テストからリビルドまで基本的には一気通貫でやっていますので。

伊達:これからは、ソフトの開発だと生成AIを活用したほうが早いことも多くなりそうだけど、現場・ハードウェア・ソフトウェアの3点を繋いでフィードバックを素早く反映させていくスピード感の実現は、今のEMCHの体制でないとできないと思っています。

ただ「自社で担保すべき価値の部分は自社リソースで」というところはぶれないとして、より早く、より低コストを実現できるようであれば、外部と積極的に連携しています。

Steven:顧客ベースの思想が根本にあって、施設にとって導入しやすい形であることを最優先に考えているので、社内で作るか外部連携するかは都度判断してます。

自社で開発できる技術力があるからこそ「顧客ファースト」の観点で手段を選べる、というのがうちの強みかもしれません。

伊達:あとは、エンジニアリングをわかっている経営陣が責任を持って承認プロセスを運用していることですね。適切な権限移譲がされていて、専門外でも必要最低限のことは理解しているので判断スピードが速い。無駄な承認プロセスがないし、逆に何も分からないまま判を押すような危うさもなく、最適化されていると思います。

Steven:伊達さんは言っていることを理解してくれるので助かってますよ。1〜2割くらい説明すればちゃんとキャッチアップして10わかってくれます。「これができないんだよね」と話したときに「だったらこうすれば?」と、技術的なアドバイスが返ってくることもありました。

伊達さんはなぜ技術に詳しいのですか?

伊達:開発者としてのバックグラウンドがあるからですよ。

子どものころから機械を分解したり組み立てたりするのが好きで、プログラムも好きでしたね。小学2〜3年生の頃、近所のお兄ちゃんから関数電卓を借りてプログラムを書いたのが始まり。捨てられていたパソコンを修理してTVに繋いでプログラムを書いたりもしました。

最初の就職先の外資系コンサルティング会社では、大規模な基幹系システムや資産管理システムをスクラッチから作った経験があります。使い勝手が悪いデータベースを、現場の人が使いやすいDWHモドキの仕組みに作り替えたり、顧客の要望を聞きながらシステムを構築してましたね。

今はシステムの開発に色々なAPIが存在していて本当に便利だけど、昔はそのようなものがなかったので、開発担当者向けの開発用共通アーキテクチャを作ったりもしましたね。今のコンテナ的なコンセプトも工夫して作っていました。

システム開発ではこれまで一貫して、アーキテクチャの部分とデータに興味を持っています。どういう環境を用意するのか。データはどう取得・加工するのか。そして、どう使うのか。そうしたことを考え続けてきた経験が、今の事業のベースにもなっているんです。 

Steven:伊達さんは技術面の知識も豊富なので、Owlcareの現場に行ってサーバーやゲートウェイの設定、通話品質のテストも自分でもしていたりしますよね。

伊達:そうですね。施設の電波状況の調査や、IoTをどう取り付ければいいのか、建物の配線に関する調査や設計なんかもやっていますね。この間もフィールドエンジニアの川上さんと一緒に現場に行ってきました。

昔はクライアントの何億円もするサーバーを調達して、サーバールームに閉じこもり、ひたすらパラメータをいじって調整作業をしたこともあって。マニュアルもほとんど無いなかでも楽しんでやれてしまう、ギークなところがあるんですよね。

そんな感じなので、技術的な部分で僕が興味を示すと、浦上くんとかStevenに「伊達さん、そこはやらなくていいです!」って怒られることもあります(笑)。

今すぐ使えて信頼性のあるものを、手に届く価格で提供する

介護・保育業界のデジタル化は「まだこれから」というイメージがあります。技術に十分な理解のない業界に対して、どのようにアプローチしているのですか?

Steven:サービス開発の観点では、まず導入を進めてもらうために、あるべき姿への移行コストや導入障壁を極力下げるような努力をしています。

たとえば今作っているものはマニュアルを読み込まなくても使えるサービスというのを目指していて、実際にマニュアルも最低限にしています。

エッセンシャルワーカーのみなさんは非常に忙しく、新しい取り組みを学ぶリソース、余力はほとんど残されていません。つまり、新しいことをするだけで負担になってしまう。これでは「楽にするために一旦負担を増やす」必要性が出てしまうので、望ましいアプローチではないですね。

理想的な状態として目指すのは、変化したことに気づかないアップデート。「いつの間にかよくなっていた」と感じてもらえるのがベストです。「テクノロジー学習しないといけない、工事しないといけない」ではなくて、お金や時間、ストレスがかからないようにできるといいですよね。

「いつの間にかよくなっていた」というシームレスな変化を作りだせるように、ハードウェア設計で工事を最小化したり、テクノロジーが得意ではない人でも使えるマニュアルレス化を進めたり、業務フローが増えないような工夫をしているわけです。

伊達:他にも工夫はあります。午睡見守りシステムの「ベビモニ」においては、センシングしているカメラの解像度を上げようと思えば上げられるけど、施設のインフラやコストの制限を鑑みて、あえてダウングレードしています。

いつでもアップグレード可能なようにソフトウェアを作っていて、回線が強くなるなど通信環境が追いついたら解像度を上げる。荒いけどちゃんと見られる、というところから、精細に確認できるように変えるつもりです。「あれ?前からここまで見れてたっけ?」という形で、みんなが気づかないうちの改善に繋がるように準備しています。

Steven:そもそもの話として、現場が思ったIT環境じゃないこともしばしばですからね。電波が入らないこともよくあります。動画や静止画をバンバン送れる環境じゃないから、回線が耐えられないんです。

無線環境・ネットワーク設定を踏まえ、既存システムの邪魔をしないという制約の中で最大のパフォーマンスを出すにはどうしたらいいか、常に頭を悩ませています。

伊達:今の環境に合わせて最適な物をつくってしまうと、アップグレード時に別ソフトを導入してもらうコストがかかるので、あえてダウングレードで最適化している、というわけです。

そうした努力の上でエッセンシャルワーカーの現場においてもスムーズにテクノロジー活用ができたという成功事例があれば、他でもデータとテクノロジーと人や現場が融合した状態を作りやすくなるとも考えていますね。

OwlCareやベビモニで使われている技術について教えてください。

Steven:まず「他には無いすごい最先端の技術を使っている」みたいなことばかりではありません。どちらかといえば枯れた技術を使っていて、それにより安定したサービスを安く売っているといえます。

伊達:ある程度の実績がすでにある技術を組み合わせていますよね。私たちが向き合っている医療・介護・保育の領域においては、最先端の技術よりも安定性や安全性が求められていますし、高額で誰の手にも届かないものではなく、みんなの手に届くことが大事だと考えているんです。

調達コスト・開発スピードを考えた時に、無理に最先端をいく必要がない。さらには、値段が下がっている技術を使い切る能力があるからこそ、そちらを選んでいるというのもありますね。

Steven:はい。特に私たちが事業をしているフィールドでは、やっぱり信頼性が大事ですから。世の中で誰も使ったことない技術を医療現場に出すのは難しいと思うんです。

理解されるまでの時間が必要だからこそ、なるべくすでに開発されているものとか、世の中にあるものを使ってものを作っていきたい。ソフトでもライブラリを活用するとか、ハードウェアでもより多くの人が使ったことあるものやオープンソースのコミュニティに携わって頼りながらいくとか。

10年後に完成するものではなく、今すぐ使えて信頼性のあるものこそが求められていると思っています。

伊達:とはいえ、もちろん最先端の技術も持っているし、キャッチアップもしています。設計理念の中には入っていて、世の中的にこなれてきたタイミングで使えるような準備をしておきながら、採用するモジュールはポジティブな制約事項として枯れたものを選んでいます。

Steven:イノベーションというと新しいものを作ろう、世の中にないものを作りましょうというけど、既存のものの組み合わせ方を変えるのが本当のイノベーションだと思うんです。

すでにある技術を、違う使い方で、違う現場に出す。それがイノベーションだから、世の中にすでに存在しているものを「知らなかったからイチから作りました」というような無駄を生まないために、アンテナを張り続けることを大事にしたいと思います。

オーナーシップを持ち
ユーザーに喜んでもらえるプロダクトづくりを

どんな形で人材育成を進めていきたいですか?

Steven:開発としては、製品と市場と現場のことを知りたいという意欲を持って「こうしたいんだ」という意思を持つ人を仲間にして自由にやってもらいたいというか、今の会社の方向性や資産と照らし合わせてチャレンジしてもらいたいです。

こういうものを作らなきゃいけない、という細かいことは決まっていないので、機会と場を提供していければと思います。

また、オーナーシップ育成という観点では、ユーザーが使っている様子を実際に見られることが大事だと思っていて、保育や介護はそれができる領域だと思います。現場に行けば見ることができるし、保育士さんに喜んでもらえるし、親の立場、子供の立場として役に立っていることが実感しやすい。

だからこそ、入ってきた人にはそれを積極的に感じてほしいですし、そうした時間を通じてオーナーシップを自ら育んでもらえたら嬉しいです。

最後に、積極採用中のエンジニアに向けてアピールをお願いします!

伊達:まず、保育のデータ・介護のデータをセンサーや画像でこれだけ集められている会社は他にないのではないかと思います。データ分析で世の中の役に立ちたい、という人や、現場で使われているところを見たい、という解析者にとっても、いいチャンスがあります。

PdMにとっては、ニーズが高く社会の役に立っていると感じられる課題解決を、自分の製品としてプロデュースしていけるフェーズです。裁量権はお渡ししますが、全部独りでやってくれとは言いません。技術の分かる経営陣や、幅広い知識を持つCTOと一緒に創り上げていくので、安心できるのではないかと。

Steven:自分の設計・アイデアが採用されやすい環境があります。今の段階だと「その分野では他のメンバーより特化している」という人に来てもらうと思うので、自信がある方はどんどん発言してもらえればと思います。それぞれの分野においてEMCHでは第一人者になれますし、そういうチャレンジをしたい方を探しています。

伊達:軸となる技術を持ちつつ、それ以外の分野にも興味を持って真摯に取り組んでいる人が多いですよね。チャレンジする領域はこれからどんどん広がると思うので、各分野のスペシャリストとしてNo.1になれるチャンスもあるのと、自分のノウハウを広げるチャンスもあると思ってもらえたら嬉しいです。

我々は幅広くスキルを見ています。個々人として足りない部分があるとしても、スキルトランスファーを通じながらポテンシャルを高めつつ、リアルに幅を広げていくことができる組織にしていこうと思っています。チャレンジしたい方からのご応募、ぜひお待ちしております!

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