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少年時代カセットデッキを分解して遊ぶほど機械好きだったエッジテクノロジー株式会社 代表取締役の住本幸士。「AIは人々の生活を豊かにし、幸せにする」と信じて2014年に立ち上げたAIスタートアップは、紆余曲折を経ながらも急成長を遂げ、2022年2月にはIPOを果たしました。今後、未来にわたってAIが社会にもたらす変革とは何か。その中で、エッジテクノロジーはどんな役割を果たすのか、住本に聞きました。
「発明家になりたかった」4歳でファミコンやカセットデッキを分解していた少年時代
——住本さんがAIに興味を持ったのは幼少期の影響があると聞きました。
小さい頃、私は発明家になりたいと思っていたんです。当時、いじめられっ子で内向的な性格だった私は、次第に自分の世界を持つようになっていきました。内向きの世界の中で一番楽しかったのは、機械を分解することでした。ファミコンやカセットデッキなどいろんなものを夢中になって分解して、よく親に叱られていましたね(笑)。
機械を分解するうちに、「機械ってこんな基盤で、こんなふうに動くんだ」と、子どもなりにいろんなことがわかってきました。それが余計に楽しくて、いつか自分でこんなものを作ってみたいと思うようになったんです。
こうした経験がベースとなって、「人の役に立つものを発明して、世の中に価値を提供したい」と考えるようになりました。エンジニアとしてキャリアを積んでいく中でAIと出会い、その大きな可能性に魅了されました。人々の幸せと人類の進化に貢献するAIをベースに会社を立ち上げようと思ったのも、「発明家になりたい」と夢想した過去があってのことです。
AIは、人類にとって莫大な価値を生みだす可能性のあるテクノロジーです。多くの人々の幸せに貢献し、社会を非常に豊かにできる。そういったテクノロジーを会社のコアとすることで、社会貢献をしたいという想いがあります。AIが人類の幸せと進化に貢献する。そうした未来が必ずくると信じてこれまで事業運営をしてきました。
「自分の基準」を押しつけて組織が崩壊。失敗を糧に、強い組織への変貌を遂げる
——2022年2月にIPOを果たすなど、エッジテクノロジーは急成長を遂げてきました。これまでを振り返って、事業のターニングポイントはどこにあったと思いますか?
採用を担当してくれていた立ち上げメンバーが退職をしたときですね。
当時は成長の途上で、社員数が30名から50名ほどに増えたところでした。オフィスも、十数名しか入れなかった狭小なところから、70名ほど入れる大きなところへ移転したばかりで、これからというところでした。
ですが、入社した社員の中にはその立ち上げメンバーの人柄にひかれて入社したメンバーもいたため、そのあとを追うように次々と退職し始めたのです。また、私が持っていた仕事の基準を押し付けていたことも退職を促す一因となりました。広いオフィスには日に日に空席が増え、ガラガラになっていきました。最終的に20名ほど辞めてしまって、「このまま倒産してしまうのではないか」と、毎日ほんとうにキリキリと胃が痛みましたね。
——住本さんが持っていた基準とはどのようなものですか?
私は当初、イーロン・マスク氏らが実践しているような横並びのフラットな組織構造を作りたいと考えていました。新入社員に事業責任を持ってもらうなど、フラットな組織ならではの施策を進めようとしました。しかし、これがなぜかうまくいかない。
私は没頭すると、朝起きてから寝るまで1つのことに集中してしまう性格なんです。小学校に入学する前に中学生の数学を解いていたり、小学校のときの計算の大会でも一番だったりと、小さい頃から一心不乱に物事に没頭することで成果を上げてきたように記憶しています。仕事に対しても同じで、とにかくやる性格です。自分の中ではそれが当たり前だったので、「意思があることこそが重要で、意思があれば誰でも強く集中し没頭して、仕事も成果を上げられるだろう」と思っていました。つまり、私が考える基準を社員に押しつけていたんですね。
でも実際にはその基準は思い込みでしかありませんでした。私としては社員に任せたいと思い、積極的に権限委譲も進めましたが、うまくいきませんでした。退職者も加速していきました。まさに組織崩壊の道を歩んでいたように思います。
——そんな大変な状況からどうやって立て直しをされたんですか?
お恥ずかしい話ですが、自分の考え方の間違いに気づきました。社員にとって大切なのは仕事だけではない。意思を持ちつつも、家族や自分の時間とのワークライフバランスを取りたい社員もいる。仕事への多様な考え方を認め、一緒に歩める組織を作っていこうと考え方をあらためました。
その後は上場を見据えて内部統制がとれた組織を作るために、管理系と事業系の取締役2名の参画を経て、フラットな組織風土は残しつつ、ピラミッド型組織構造を取り入れました。責任や権限を明確にしつつ、ピラミッド型の弊害がでないよう、自由に発言しやすい風土づくりや、社員が行動しやすい風土づくり、ポジションにチャレンジしやすい環境づくりにも取り組みました。社員が定着する施策も模索し、福利厚生の施策を整えたり、組織構造を変えたりして、少しずつ退職者を減らしていくための取り組みを進めました。組織崩壊のタイミングでもがいたことで、結果的に組織が強くなりましたね。
既存事業の成長と新規事業の開拓の両輪で企業理念の実現を目指す。自身が望めばキャリア機会は拓ける
——エッジテクノロジーが掲げる「テクノロジーで、世界中の人々を幸せに」という企業理念を実現するため、今後どのような事業戦略を描いていますか?
短期的には既存事業を伸ばし、中長期的には新しいことに取り組んでいこうと考えています。
まず、5年後のイメージとして、売上100億円を達成しようという目標があります。これを実現するためには、国内の上場企業やAIベンダーの中でも成長率を上げていく必要があるでしょう。それには、現在の組織規模では小さすぎると考えているので、採用を進めて組織を拡大していきたいですね。同時に、取引先を拡大していくことも重要です。業務提携なども活用しながら取引先を増やして、成長を加速させたいですね。
中長期的には、さまざまなプロジェクトでお客様と関わり、課題を解決する中で社内に多くの知見が溜まっていきます。この知見をもとに、AIを用いた自社プロダクトを作っていきたいと考えています。AI技術を提供する企業は以前と比較すると増えてはきておりますが、大規模企業のプロジェクト、技術的な挑戦が大きいプロジェクト、先端技術を用いたプロジェクトなど、弊社の企業規模だからこそ蓄積される知見を用いて、今後は独自性ある新しい価値を創出したいと思っています。
エッジテクノロジーは紆余曲折を経てようやく上場することができましたが、今はまだ始まりだと思っています。人にとって価値のある「AI」というテクノロジーで、人々の生活を豊かにする。人々を幸せにするために、しっかりと基盤をつくっていきたいですね。
——AIという技術と未来社会の考察から、エッジテクノロジーがどんな役割を果たしていくか、これからの展望を聞かせてください。
人は、ものごとを考えるとき、過去の経験やそれまでに身につけた知識からさまざまなパターンを予測し、一定の評価基準にもとづいて選択をします。AIも同じように、画像や数字などのデータを学習し、計算をすることで、評価基準にもとづいて選択をしようとします。
人間が猫を見たり接したりすることで「これは猫だ」と判断できるようになるのと同じで、AIも猫の画像を取り込んで学習することで「これが猫だ」と判別できるようになるのです。
そうした意味で、極端な言い方ですが、人とスーパーコンピュータは同じようなものだと思っています。今はまだ、アルゴリズムや計算速度が追いついていないために、コンピュータには人間ほど多くのことはできません。ですが、コンピューターの性能は、驚異的な速さで進化しています。
たとえば、パソコンの性能はムーアの法則では約1年半で2倍になると言われていますね。この法則にもとづくと、今の計算量が100だとすると、1年半後には200に、次の1年半後には400になります。このように、2倍、2倍……と増えていくと、15年後には約1,000倍になるんです。
飛躍的な進化を遂げるコンピューターに世界中のデータを取り込んで学習させれば、いつかは必ず人間のようなことができるようになります。
——そのような世界が来た時に人間の生活はどうなるのでしょうか?
長期的視点で考えたとき、私はいつか資本主義が終わると考えています。現在は人が働いて、労働に対する対価が支払われ、その一部を税金として国が吸い上げて再分配する仕組みになっています。しかし、今後はロボットが富を生みだし、それを国が分配することで、ベーシックインカムのような形で生活が保護されるようになるでしょう。生活のために働かなくてよくなる時代が来るということですね。
こうした時代が来ると共に、中長期的には人類の進化が加速する時代がやってくるはずです。たとえば、視力の弱い人がメガネをかければよく見えるのと同じように、AIが人の思考を助けるようになるでしょう。現在は、何か知りたい情報があればスマートフォンで検索していますが、AIの進化によって脳がインターネットにつながって、知りたい情報は瞬時に検索され結果がすぐに返ってくるようになりますし、知能が拡張されるので、ものごとを考えた瞬間あらゆるパターンの思考がされ、瞬く間に最適解が得られるでしょう。AIによって病気がなくなり、人々の健康寿命が延びる。こうした技術が登場すると確信しています。
更に、その前段階として、現在人の手で行っている給与計算や工場のラインがロボットに置き換わり、自動化していくでしょう。今、現実的にAIが社会に実装されているのはこのフェーズですが、画像解析や音声解析、センサー認識などのAIは、こうした中長期における人類の進化において欠かせない技術です。AIを事業のコアとしているエッジテクノロジーとしても、当然こうした分野に関わっていくことになると考えています。
——エッジテクノロジーがそういった役割を果たすうえで、今後入社される方にはどんなキャリア機会があるでしょうか。
これから組織が急拡大していくにあたって多くのキャリアチャンスがあると考えています。成長企業と非成長企業の差分の一つはポジションが生まれるかどうかだと思いますが、今のエッジテクノロジーでは、リーダーやマネージャー、事業責任者、また役員といったポジションまでもがチャンスとして想定されます。裁量を持って自らを成長させたいという方にとってはポジティブな環境なのではと考えています。
エッジテクノロジーの「エッジ」には、「優位性」や「進化」という意味があります。進化をし続けなければ淘汰されてしまう世の中で、常に進化し続ける。そうした覚悟を持って、社員もお客様も幸せにし、結果的に世の中を幸せにしていきたいですね。