現在、Diverseでは「Diverse Deck(ダイバース デッキ)(仮称)」の制作に取り組んでいます。ここでいうデッキとは、Diverseのカルチャーを明文化してまとめたもの。Diverseでは、このデッキをMission、Valueと並ぶくらい大事なひとつの指針として捉えています。
今回は、組織マネジメント領域でカルチャー浸透を担当している、池上昌樹(いけがみ・まさき)さんに、Diverseが考えるカルチャーの位置付けと、なぜ今カルチャーづくりにまい進するのかを聞きました。
そもそも「カルチャーとは一体なにか」からスタートした
――ちょっと振り返っておきたいのですが、2020年にはValue・Mission・Visionをそれぞれアップデートしましたよね。
池上:はい、正確に言うと2020年2月に行動指針であるValueをアップデート。2020年夏には、Mission・Visionをアップデートしました。そして2021年、もう少しでデッキを完成させることができそうです。
――そもそも池上さんはカルチャーをどんなふうに捉えているのですか?
池上:私が最初にしっくりきた言葉は、「カルチャーは仕事の進め方に関する戦略だ」という言葉でした。Netflixについて書かれた本の一節にある言葉なのですが、これを見て自分の中で腹落ちした感覚がありましたね。言い換えると「毎日どこに向かって、どんな風に仕事をすすめていくかを示す指針」。それがカルチャーなのだと思っています。
――なるほど。いわば仕事の進め方、ということですよね。それはValueでも示されているのだと思うのですが…?
池上:はい、確かにそうですよね。行動指針であるValue ”Be Professional” では、「スピード感を持ってアウトプットを出し続けよう」と定義されています。「完璧じゃなくても良いから、時間をかけすぎずにアウトプットしよう」、そういう風に進めていこう、というコンセンサスを取っています。そういう意味でValueは「カルチャーのひとつである」と言ってよいでしょう。
Valueは、常に思い浮かべるものであり、言葉に出して耳で聞いてもらうことが前提です。行動の指針としやすいように、カルチャーの代表的な部分を凝縮したものになっています。つまり、Valueに凝縮する前の「母体となる情報」が実はたくさんあるんですよね。
仕事にはさまざまな要素があって、人それぞれにタイプもありますよね。例えば判断の基準、考える方向、考える範囲、成果物の作り方、結果の評価の仕方、スケジュールの設計の仕方、などなど。私たちはこれらの要素について意識せずに判断をくりかえしながら日々仕事を進めています。
「カルチャー」や「文化」と聞くと何か大仰なものに感じてしまうのですが、実はすでに誰でも持っているんですよね。「自分の仕事のカルチャー」を。
――そうですよね。であれば、Valueさえ決まっていればそれぞれのカルチャーを尊重する、というやり方もあるのでは?
池上:そうですね。ただ、チームで取り組むことがほとんどですよね。1人でできることには限界があるから、というのがその理由ですが、さらに言えば「1人で作ることができる価値よりももっともっと大きな価値を届けたいから」に尽きると思います。Diverseで考えてみても同じです。1人でMissionを達成してVisionを実現することは到底できませんので、チームで仕事をすることになるわけです。
では、チームで仕事をする際、Valueで定義されている部分以外の進め方がバラバラだったらどうなるでしょう?ひと言で言ってしまえば非効率ですよね。例えば、ValueにあるMission Drivenでは「チームのMissionと目標を理解し、達成しよう」と定義していますが、この周辺で大事にしたい考え方として「チームの利益を最優先に考えたい」というものがあります。
Valueのみを意識している場合、Missionや目標に分かりやすく近い仕事をしている時は、Valueも強く意識しやすく、連動する形でチームの利益を最優先する考え方も色濃く出ることが多いと思います。一方、Missionや目標から一見遠く見える仕事をしている時はValueの意識も弱くなり、チームの利益を最優先する考え方はほぼ顔を出さないかもしれません。
それに対して、「チームの利益を最優先に考えたい」という考え方まで浸透していたら、あらゆることに対してチームメンバーが同じ意識で取り組むことができます。「何を大事にするか」の共通認識が細かいレベルでとれているチームということになります。そういうチームのほうが良いアウトプットを出せますよね。カルチャーは仕事の進め方の戦略というお話をしてきましたが、さらに端的に言うと、あらゆることを「どう判断するか」の判断軸、と言えるかもしれませんね。
――なるほど…そうすると、いわばMissionを達成するために必要な柱が「カルチャー」である、という考え方ですね。
池上:そういう捉え方をしても良いかもしれませんね。ちなみに、企業カルチャーはここ数年で重要視されてきていますが、その前までは進め方の枠組みである「手法・フレームワーク」が研究されて、いろいろな方法が出てきていました。開発の進め方を例に挙げると、ウォーターフォール、アジャイル、スクラム、OKRのようなものたちですね。
これらのフレームワークはとても有用で、枠組みで働く人達の動き方を「目に見える外側から」矯正するものだったと思います。「コントロールする対象を決め、様々な条件を決め、流れを決める」ことに効果を発揮するからです。対してカルチャーは、働く人達の「目に見えない内側」に指針を出してくれるものです。先ほども話に出た「どう判断するか」ですね。
フレームワークで仕事を進める流れは決まっていて、それに沿ってアウトプットを出す場合だと、「そのアウトプットをどう考えて、どのように作るか」ここが1つの「判断部分」です。
例えば大胆なものにするのか、ミスのないものにするのか。あるいは今回の要件のみを考慮して作るのか、チームの中期目標を見据えて作るのか。ざっと挙げただけでもこれだけ判断の仕方は違います。でもフレームワークだとこの判断にあまり手を出せないんですよね。
――判断の仕方に働きかけることがそんなに重要なんですか?
池上:はい、今後は特に重要になってくると考えています。
外側から働きかけるフレームワークはもうだいぶ整備されてきて、80点ぐらいまで仕上がってきたのではないかと感じています。その分、さらに点数を上げるには時間がかかるようにもなってきます。その一方で、プロダクトに求められる価値の難易度は上がり続けています。今や、プロダクトを作る側の勝手な考えが通用する時代は終わり、価値の合否を決めるのは完全にユーザーのみなさんの役割になりつつあります。すなわち、ユーザーサイドから合格をもらえる高いレベルの価値をつくるためには、もっとチームのアウトプットを伸ばす必要がある。そのために次は「内側に働きかける指針」が重要度が増してきている、と私は理解しています。
――なるほど、求められる価値をチームが作れるようにしていきたい…という理由があるんですね。お話を聞いていて思ったんですけど、とにかくカルチャーの明文化って汗をかく作業ですね…!
池上:そうですね… (笑) 内側に働きかけていく指針をつくる、というのは「目に見えづらいものを言語化する」ということでもあると思うんですよね。見えづらいのでなかなか大変です (笑)
それに加えて「Diverseらしさ」を生み出すものでもありますから、「産みの苦しみ」みたいなものはありますよね、やっぱり。でもこれをまとめて、ひとつのDiverse像にたどり着いたとき、新しいDIverseの魅力にも気づける、そんな予感がしています。
――池上さん、ありがとうございました!
Diverseがカルチャーに対して強い熱意を持っている様子が伝わったのではないでしょうか。後編では「Diverse Deck 」をどう作ってきたか?に焦点をあて、お伝えしていきたいと思います!