今回は、海外からお越しのお客様をメインで担当している、コンシェルジェドライバー鬼木さんへのインタビューです。シンガポールVIPご夫婦の結婚20周年旅行について、詳しく聞いてきました!
【プロフィール】鬼木博彦(おにき・ひろひこ)
計28年、国内外の6つのリゾートホテル・シティーホテル・ビジネスホテルに勤務。専門領域は、新規ホテルの立ち上げ・外国人対応。マネージャーや支配人として、サービス開発・仕入れ・財務・従業員の福利厚生に関与していた経験もある。2015年に大稲自動車に入社し、8ヵ月後にコンシェルジュドライバーにステップアップ。以降、インバウンド対応をメインで担っている。
趣味はバイクで、休日は仲間とツーリングに出かけることも。そしてなんと、現在は750CCの大型バイクの免許取得の真っ最中!
【大稲自動車・福岡ハイヤーサービスについて】
創業1950年、歴史ある企業でありながら、タクシー業界にイノベーションを起こし続けている。10年以上前から先駆けてプレママタクシー・こどもタクシーを開始。2016年には国内外VIP向けのツアーサービス、行政・地元企業との共同プロジェクトを手掛ける福岡ハイヤーサービスを設立。2018年8月には、国内大手も未だ実現していない米国リムジン会社との資本提携を実現。大稲自動車から福岡ハイヤーサービスへのキャリアアップ以外にも、海外勤務というキャリアルートも確立中。
シンガポールからお越しのVIPご夫婦
――まず、今回担当したお客様について教えてください。
シンガポールからお越しの40代のご夫婦で、英語でコミュニケーションをとらせていただきました。
旦那さんは眼科の開業医で、奥さんは医療事務として一緒に働かれているという、とても仲良しのお2人。今回は結婚20年の記念旅行で、大好きな日本に来たと言われていましたね。旅行好きで世界中いろんなところに行かれていて、日本も何度も来られていたのですが、まだ九州には来たことがなかったとのことでした。
――VIPのご夫婦だったのですね。旅行プランは決まっていたのですか?
はい、今回は当社が提携している旅行会社経由でのご依頼で、ざっくりとしたプランは決まっていました。私は4泊5日で大分~長崎の観光を担当。お客様がお疲れにならないように移動距離などを考慮し、元々のプランを微調しながら下記のスケジュールで観光をしました。
<1日目>[大分県]唐津城・有田観光、[長崎県]平和公園
<2日目>[長崎県]原爆資料館、長崎観光、教会巡り
<3日目>[長崎県]雲仙観光
<4日目>熊本県へ移動
これは旅行中に知ったのですが、お2人は敬虔なキリスト教徒で、長崎の教会を回りたいというのが今回の旅のメイン目的とのことでした。
――次に、ツアー内容について、詳しく教えてください!
<1日目>[大分県]唐津城・有田観光、[長崎県]平和公園
元々のプランにはなかった虹ノ松原へ!?
福岡空港にお2人をお迎えにあがり、プライベートツアーがスタートしました。最初の目的地は唐津城だったのですが、大分県に向かう道中で、奥さんが「シンガポールはビルばかりで、公園くらいしか緑がないんです…」と少し悲しげに言われいて。よくお話をうかがうと、フィリピンで生け花教室に通われていたり、バンブーフォレスト(竹林)など、日本の自然が大好きとのことでした。
そのお話を聞いて私は、唐津湾沿いに約4.5キロに渡って松林が広がる、日本の三大松原「虹ノ松原」にお連れしたら喜んでいただけるのではと思ったんです。ついつい、お客さまを喜ばせたい精神がうずいてしまうんですよね(笑)。お客さまに話したところ、ぜひ行ってみたいということに。
虹ノ松原の中に通っている国道を通ると目を輝かせていらっしゃり、車を停めると松の香りを楽しみながら記念撮影をされていました。
唐津城にも、ガイドとして同行
観光先では車で待たせていただくことも多いのですが、一緒に行って欲しいと言ってくださったので、同行して歴史の話などのガイドをさせていただきました。
例えば、城の中にある展望台を不思議がっておられましたので、日本人は国の中で戦をしていたので攻められるのを知れるように高台に展望台があるとご説明差し上げたり。唐津城からは虹ノ松原も一望でき、そのような景観も含めて将軍は地域の重要人物だったとお話しました。お城の中にある、キリスト教に関する資料にも興味を持たれていましたね。
ランチでは、一言添えたことでお店から粋な計らいが
ランチの場所は決まっていないツアーでしたので、お昼時に何が食べたいかうかがうと、「和牛(佐賀牛)が食べたい!」とのことだったんですね。スマホで佐賀牛の名店を調べて予約。その際に、「シンガポールから来られたVIPのお客様です」と一言添えておきました。
お店に到着すると、シェフがコックコートで玄関までお迎えにきてくださっていたんです!これにはお客様も感動されていて。気を利かせてくださったお店の方に感謝しつつ、一言添えて良かったと思いましたね。
食事後にお迎えに行くと、「いかがでしたか?」と必ず聞くのですが、非常に喜んでいらっしゃいました。これまで神戸牛や飛騨牛も食べたことがあるけど、別格だったと言われていました。
長崎に移動し、平和公園へ
大分県から長崎県へ移動。お2人の疲れ具合や明日以降の工程も考慮して、この日は平和公園の観光で締めくくることに。
ディナー
ホテルにチェックインした後、夕食もお肉が食べたいとのことだったので、また調べてご予約しました。
普段、お食事はご一緒しないことが多く、誘っていただいたとしても別のテーブルでお食事することがほとんどなのですが、この時はご夫婦の希望で同じテーブルでお食事させていただくことに。
そのディナーの席で、今回の旅行のメイン目的が教会を回ることだと聞くことができたんです。
日本二十六聖人記念館を回りたいなどリクエストもうかがえたので、ホテルへお送りした後は明日以降の工程を夜のうちに組みました。うまくアレンジしないと、お客様がお疲れになったり、回りきらなかったりするので、そこに留意しましたね。
<2日目>[長崎県]原爆資料館、長崎観光、教会巡り
あれ?ちょっと表情が暗いかな?
朝お迎えにあがると、お客様が少し浮かない顔をされていたので、「どうかされましたか?」と聞いみたんです。すると、一流ホテルだったが、朝食時に少し対応が悪く待たされたとのこと。こればかりは私にどうすることもできませんのでお話を聞くだけだったのですが、明日は朝食に行かれないかもしれないから朝食を食べるお店を探しとかないとなと思っていました。
原爆資料館で、ドキッとする問いかけが
ここでも同行させていただいたのですが、旦那さんから衝撃的な質問をもらいまして。
「私たちはキリシタンだが、原爆を落としたのもキリスタンだろう(投下したのはアメリカ人なので)。あなたはどう思いますか?」と。とてもドキッとしましたし、私は戦争体験者でもなくそんなことを考えたこともなかったので、「もう過ぎたことです」としかお返事できなかったんです。
外国の方ならではの問いかけをいただいたことは、私にとって貴重な経験だったと思っています。
いくつもの教会を巡り、信仰の美しさを知る
いよいよ楽しみにされていた、日本二十六聖人記念館へ。
狭い道を通って教会の牧師さんに会い、少し会話を交わしました。奥さんが「マリアの銅像はどこにあるんですか?」と聞かれたら、「長崎の街を一望できるように、山の中腹にあります」とのこと。傾斜がある山道だったのですがお2人ともすごい勢いで登っていかれて、私はついていくのがやっとでしたが(笑)、無事にたどり着いてとても喜んでいらっしゃいました。
大浦天主堂は、キリシタンのお2人からすると観光用だと一目で分かられたようで、「ここはミュージアムだ。私たちが祈りをささげる場所ではない」と言われていました。
お2人が教会で祈りをささげたいことを知っていましたので、反応を見た私はすかさず、近くにある小さな教会を案内しました。すると、「このようなところを探していた」と目を輝かせていらっしゃり、キリストの前に膝まづき、両手を胸で組んでお祈りをされていました。心地よい光が、カラフルなステンドグラスを通して差し込み、ご夫婦がにこやかな表情でお祈りを捧げている光景は、とても美しく感動すら覚えました。なにより、お2人の旅の目的を達成できたことが嬉しかったですね。
<3日目>[長崎県]雲仙観光
「念のため…」が役立った瞬間
昨日の朝食のこともあり、この日ホテルから出てこられたお2人は、朝食をとっていらっしゃいませんでした。そこで、念のためにと昨夜調べていたお店にご案内。とても喜ばれており、やはりここまでやってこそコンシェルジュドライバーの価値を感じていただけるなと思った場面でもありました。
+αのリクエストにもしっかり応える
これまでの2日間の中で、奥さんが「生け花教室で使う剣山を買いたい」と言われていたんです。どうやら、シンガポールでは剣山が手に入らないらしく、生け花教室の先生から借りるしかないようで。
そこで私は、剣山が買えるホームセンターを事前に調べ、雲仙観光の行きしなに立ち寄れるように工程を組んでいました。奥さんは大小8個の剣山を購入され、嬉しそうな表情をされていましたね。
その後、1日かけて長崎県の雲仙市の観光をしました。
<4日目>熊本県へ移動
南九州観光のため、島原外港から熊本港へ移動。「ぜひシンガポールにも遊びに来てね!その時の観光案内は任せて」という嬉し言葉をいただき、私が担当は終了しました。
コンシェルジェドライバーの価値とは
――今回の旅行ツアーで、特に工夫した点はありますか?
私が毎回、大切にしているのは、『お客さんの要望にとことん応える』こと。ただ人を運ぶのではなく、ここまでやってこそ、コンシェルジェドライバーだと考えています。
具体的には、「欲しいものをゲットする、おいしいものを食べる、見たいものを見る」。これを限られた時間の中で、お客様を待たせたり疲れさせずに実現することです。当たり前のようですが、何かしらイレギュラーなことは起こるものなので、難しさであり面白さでもありますね(笑)。
今回の場合は、奥さまのリクエストは特に重要でしたので、「教会を回って祈りを捧げたい」「和牛を食べたい」「剣山を買いたい」という点がマストでした。
ご要望にお応えするにはまず、お客様と関係を築き、しっかりご要望を引き出しキャッチすることが重要だと思います。
――鬼木さん、ありがとうございました!
人を喜ばせることが大好きな方が活躍できる仕事です
完全プライベートツアーで、お客様のご要望に個別にお応えしていくこの仕事。お客様である海外・国内VIPの方へのおもてなしを通して、喜ばれる仕事をしませんか?
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