2018年9月、日本企業として業界初、米国進出を果たした当社。日系リムジン会社「Japan Executive Limousine(以下、JEL)」を合同買収し、同時に米国でホールディングスカンパニー「JE Holdings Inc,」を設立。いよいよ本格的な海外事業に着手します。今回はJEホールディングスの代表を務める藤井さんに、海外展開の狙い・今後の展望についてインタビューします!(M&Aの詳細はこちら)
【プロフィール】藤井 正則(ふじい・まさのり) 52歳
「株式会社マネジメント・アイ」執行役員 兼 「JE Holdings Inc,」CEO。フランスで生まれ、以後20年以上に渡りフランス語圏で学ぶ。その後、欧州ケーブルネットワークCANAL Plus にて、編成・著作物管理職として社会人キャリアをスタート。映画版権や商品化許諾権利のバイイング・バイアウト関連を専門とし、各国の法的諸事情に合わせた法務・契約実務に携わる。マネジメント分野では中長期計画の策定、海外における販路開拓や提携協業先におけるM&A、アライアンス構築を得意としている。
―まず、今回のM&Aの目的から教えてください!
はい、目的は大きく3つあります。1つずつ説明しますね。
インバウンド・アウトバウンドをシームレスで実現する
国をまたいでの車移動が1つの窓口で完結できると、こんなに素晴らしいことはないと思うんです。例えば、海外旅行の時に飛行機の乗り換えは、1つの窓口で申し込めば完結しますよね。でも、車移動に関しては国内と国外それぞれで手配するのが当たり前になっている。私たちがやろうとしているのは、まさにこの常識を覆すもの。
ワンストップでサービスが提供できると、現地で移動手段を調達する必要がないですし、見知らぬ土地で信頼できる会社を探すという心理的負担もなくなります。特にビジネス出張などは、アポイントに合わせて事前に準備をする必要があるのでメリットを感じてもらいやすい瞬間ですね。
さらに、大稲自動車は国内5社と提携していますので、国内どこからでも申し込めます。米国と日本の各地を一気通貫で繋ぐサービスなのです。
米国のノウハウを日本に波及させ、国際基準にする
米国ではケリーインターナショナルという有名な大手リムジン会社を手本としています。具体的には…
[1]海外の習慣に基づいた接客
日本式のおもてなしが必ず良く受け取られるとは限りません。一例をあげると、日本ではお客さんへの配慮としてドライバーが白い手袋をしますが、海外では葬儀に参列する車という意味になってしまうこともあるんです。
[2]利便性と分かりやすさ
米国では既に、アプリで気軽にタクシーを呼ぶことが当たり前になっています。金額はタクシー会社によって変わらずほぼ一律、支払いは現金は受け付けず全てクレジット決済とシンプルさが特徴です。
[3]料金はしっかりいただく
お取引の長いお得意様でも値引きはなく、1時間最低でも65$~100$(車種によって)。キャンセル料もしっかりとるというのが一般的です。
米国で、日本人ならではの"おもてなし"を浸透させる
一方で、運転の丁寧さ、車両の清潔感は日本が誇れる点です。海外では、ドアの取っ手に指紋がある・後部座席にゴミがある・助手席にドライバーの私物があるというのは、よくある光景。日本ではこのような事象はなくお客様に気持ちよくご利用いただけるサービスを、米国市場に適応させていきたいと考えています。
※写真右:藤井
キーワードは「二極化」。なぜ、わざわざライドシェア発祥の地に進出したのか
ーM&Aには、3つの狙いがあったのですね。ただ一般的に考えれば、ライドシェアビジネスも出てきているこのタイミングで、しかも米国に進出したのはなぜか?と思うのですが…。
とてもいい質問ですね!JELがあるカルフォルニアはライドシェア発祥の地。ライドシェアが出てきたことで複数のタクシー会社が事業を整理したり、廃業せざるを得なくなったことは記憶に新しいことです。ただ、「米国のリムジン事業は形骸化するのでは?しかも、自動運転がもうすぐローンチするかもしれないのに…」というのは、極めて短略的な考えだと思います。
私たちがこのタイミングで米国進出をした理由は、「ライドシェアが黎明期を過ぎたから」。現在、利用者は目的に合わせて、リムジンとライドシェアを上手に使い分けています。米国は土地が広いので日常的に飛行機を使うのですが、そんな時、ライドシェアだと運よく乗せてくれる車が見つかるか分からず、飛行機に乗り遅れてしまうかもしれません。なので、普段はUberやLyftを活発に使って、絶対に遅れられない予定の時はリムジン会社に依頼するという感じですね。
またライドシェアは、事故対応や保証におけるリスクを自身で十分に確認・理解しなければなりません。そして自動運転技術は現在、道路の白線を追跡するのが精一杯で、突発的な事象に対しては人間の瞬間洞察力よりも遥かに劣ります。仮に完全に自動運転が確立しても、安全の担保と法整備・道路安全基準を世界統一化する必要があります。現状はメーカーが自動運転技術力を声高に提唱しているだけで、法整備を検討する実務レベルも第三者委員会でしか議論なされていません。
ライドシェアによってタクシーの需要がなくなる、自動運転でタクシーから人がいなくなるという時代は、いつか訪れると思います。ただ、リムジンには必ず人が必要です。だって、大切な人は有人の車に乗せたくないですか?JELは大切な取引先企業や国賓送迎などを担っており、VIPやニューリッチ層に向けて事業を展開しているのです。
強みも弱みも分かった上でのM&A
ーとても納得しました、ライドシェアやタクシーでは獲得できないニーズを獲得するということですね。では、JELの強みをどのような点だと評価して買収を決めたのでしょうか。
JELの強みは、下記の4つをひたすら守ってきたことです。
[1]VIP送迎に終始してきたこと
[2]価格を値引かないこと
[3]米国旅客輸送法を遵守してきたこと
[4]従業員に給与をしっかり支払ってきたこと
(収入は指名がなくても月5500$~7800$ほど。日本円で約55万円~80万円)
一見、当たり前に思えるかもしれませんが、これが数々の同業他社がライドシェアビジネスによる影響で安売りし自滅していく中、生き残ってきた理由でもあります。中には「日本客にはどうせ分からないだろう…」と高を括った商売をする会社もあり、過去に顧客を奪われたこともありましたが、今では離れた顧客のほとんどがJELに戻ってきています。JELはビジネスなどBtoBの利用がメインですが、なんとそのうち約3割がプライベートの家族旅行でも利用してくださっているほどファンが多いのです。
一方で、弱みは社員26名(パート含め)という少数精鋭で事業を営んできたため、個人商店に近い経営がされていたこと。具体的には、PRや広報、渉外営業が手薄だったことが挙げられます。ここは買収により、私たちが強固にしていくべき点ですね。
急成長も規模拡大も目指さない。80%のパワーでどこにも負けないバリエーションを
―最後に、JELとして目指すことを教えてください!
JELの目指す姿を一言で言うと、「小さくも、色んな引き出しがある会社」。会社規模を大きくしようとは全く思っておらず、あらゆる移動手段を内製化し、コンパクトに効率よく回していきます。
具体的には今回のM&Aを皮切りに、米国大手バス会社のM&AやHONDAジェットを使ったコミューターエクスプレス事業に着手する計画があります。これらが実現すると、リムジン・バス・プライベートジェットというあらゆる手段を持つことになり、さらに強力なトータルサポートできるようになります。「滞在期間が限られているので、プライベートジェットを使ってでも移動時間を短縮したい」という要望があった場合、車移動で6時間かかるところを1時間で移動できるようになるのです。
また、日本とのインバウンド・アウトバウンド受注を増やすだけでなく、ハワイを含む米国全土のアライアンス構築を急ピッチで進めていきます。結果として人的リソースの充実に繋がり、営業利益も堅調に伸びていくでしょう。
しかし、急激に利益を伸ばすことは、組織に急激な変化を与え、後にストレスとなって人間関係もギクシャクする可能性もあるため得策ではありません。我々はコツコツと四半期ごとに積み上げ、閑散期も平月と同じように均一受注ができるよう、80%のパワーで平均化して行くことを目標としています。
「人が移動する」ということは今も未来も途切れることはありません。安全と快適なサービスの追及にゴールはありませんが、だからこそ、夢のある仕事だと思うんです。
―藤井さん、ありがとうございました!
日本と海外を繋ぐ、夢のある仕事をしませんか?
海外展開の主題は、日本とのネットワークを強めていくこと。両国の間に入ってビジネスをつくる、そんな面白味のある仕事です。現時点での語学力は不問!乗務員から企画層に入ることも可能ですので、面白さを感じてくださった方、ぜひ一度お話しましょう!
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