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ストレスチェックの重要性組織改革における最初の一手とは

著者:クラム・ジョン

日本では、多くの従業員が会社のために献身的に働くと世界的に知られています。 それを象徴するのが、勤務時間外に関わらず拘束される長時間労働、往復3時間の長時間通勤でも他人と触れ合わなければならないストレスフルな“痛”勤事情、厳しい上下関係やパワーハラスメントが日常的に横行するような企業文化です。実際に英語でも「過労死」を意味する「karoshi」が保険上の死因として法的に認められているほど、過酷な労働は大きな問題です。

2018年の政府発表によると、労働者による有給消化率は52.4%でした。また最近の有給休暇の取得率に関る調査では、日本は19の国と地域の中で最下位でした。そして日本の労働者の47.6%が、休暇を取らなかった主な理由として「罪悪感」を挙げているのです。 このような調査結果から、日本人が「ワーカホリック」と言われる事に納得します。(出典:Japan has some of the longest working hours in the world. It’s trying to change

また、残業に関する政府の最新の調査によると、日本企業の約25%が月80時間以上の残業を“無給”で従業員に強いています。さらに休日や休暇を取ることを嫌う職場風土もあります。 旅行会社のエクスペディアが最近行った調査によると、日本の労働者の63%が、有給休暇を取ることに罪悪感を感じているため、あえて有給休暇の取得を控えているという結果が出ています。

2015年に起きた大手広告代理店の新入社員の自殺事件は記憶に新しいと思いますが、この事件をきっかけに、程度の違いこそあれど日本ではこの8年間で、数多くの職場改革が行われてきました。これらは「働き方改革」と呼ばれ、長時間労働の是正や残業代の未払い解消、国民の祝日の追加導入などが行われてきました。2016年に新たな国民の祝日として「山の日」が導入されたことで、日本の祝日は年間16日となり、G20の平均である12日を大きく上回っています。

日本における一番最初の「働き方改革」は、2015年に義務化された「ストレスチェック制度」と呼ばれる、日本の歴史上初の職場におけるメンタルヘルス対策でした。このプログラムは、2015年に労働安全衛生法が改正され、2015年12月1日に施行されました。同法では、従業員50人以上の企業は年に1回以上、ストレスチェック調査を行うことが義務付けられています。 従業員50人未満の企業は、従業員の心理的な健康状態を調査するための「合理的な努力」のみが求められます。

ストレスチェックは通常、2段階で実施されます。 まず第一段階では、全従業員に調査実施の旨を伝えた後、従業員に対してストレスチェックを行います。その結果は医師または保健師によって確認され、その後個別に結果が通知されます。この結果で「高ストレス」と判定された従業員は、医師の面談を受けることになります。

第二段階では、個人の調査結果をグループ別に分類して分析、職場環境の改善につなげていきます。 法律の定めによると、“企業は特定の懸念事項に対処するために「合理的な努力」をしなければならない”とあります。多くの企業の場合、我々カルチャリアのような第三者機関に調査を委託。委託先では調査結果より詳細な分析を行い、環境の改善を可能にするソリューションを提供しています。

では、日本におけるストレスチェックの成果はどのようなものだったのでしょうか? 労災請求や欠勤、生産性などの標準的な人事指標から見ると、一定の成果が得られているように見えますが、まだまだ課題はたくさんあります。

例えば、学術誌「Journal of Occupational Health」によると、法律が導入される前年の2014年は、業務上の精神障害を理由に提出された労災請求が合計1,456件ありました。そのうち213件が残念なことに自殺関連でした。また、精神障害の請求件数は、この7年間で着実に増加しています。(出典:International Journal of Workplace Health Management)Industrial Health社が行った調査によると、日本における欠勤コストは、2015年のストレスチェック導入以降、様々な要因はあるが、社員のストレスによる欠勤のコストは5000億円を超えており、比較的横ばいで推移しています。最後に職場の生産性については、日本はG7諸国の中で最も低い水準となっています。 (出典:OECD “Productivity Indicators”) 長時間労働や過酷なワークスタイルの文化が、必ずしも経済的利益をもたらすわけではないことは明らかです。

上記の情報から、日本の企業文化を改善するための改革が必要であることは明らかです。 2015年以降に導入された働き方改革は良いきっかけだと思います。しかし、企業は従業員の精神的、肉体的、感情的な幸福を最優先するために、より積極的な対策を講じるべきです。こうした積極的な対策の一環として、ストレスチェック終了後の従業員分析とフォローアップを行うべきです。これにより、職場の生産性や収益性が向上し、企業、従業員、顧客の三者がWin-Win-Winになることができるでしょう。

ストレスチェックの先にあるものに興味がありますか? ストレスチェックを機能させ、企業文化を向上させる5つの方法をご紹介いたします 。

1. プライバシーと守秘義務を保証する。

より的確な結果とプライバシー保護のために、社内で調査実施・分析するのではなく、第三者機関による調査の実施、検証、分析を依頼することをおすすめします。

2. 部署、役職、年齢層、性別によるグループ分析の実施。

結果を分析することで、より深い洞察やより意味のある提案を提供したり、最初に注力すべき分野の優先順位付けに役立てることができます。同時に、回答の機密性を確保することもできます。

3. 結果は必ず全社員に伝える。

結果を高、中、低と優先順位別に分けて、それぞれの進捗状況を全社員に対し明確かつ一貫して伝えるようにします。

4. すべてのグループにトレーニングを提供する。

会社が真剣に改善に取り組んでいることを示す方法として、ストレスチェックで取り上げられた分野のトレーニングを従業員に提供することをおすすめします。これには心理的安全性と幸福のためのワークショップやマネジメントの問題、コミュニケーションの問題などが含まれ、上司と管理職にも焦点を当てることができます。

5. フォローアップ調査とパルス調査の実施

従業員の多くが関心を持っていると結果が出た分野には、フォローアップ調査やパルス調査を実施します。
その中でも特に注目されているのが「心理的安全性」です。 心理的安全性の第一人者である、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンソン教授は「心理的安全性とは、職場において従業員がアイデアや質問、懸念などを発言しても、非難されたり罰せられずに恐縮することなく自分らしくいられること」と定義しています。

どのような形でフォローアップ調査やアクションを起こすかは別として、法律で義務付けられているストレスチェックは、人事部が実施する年に一度のただのイベントではないということを念頭におかなければなりません。そしてストレスチェックは、組織内の重要な問題を測定・分析し、是正措置を講じるため有効なプロセスです。 職場改革にこのようなアプローチをすることで、企業は法律を遵守するだけでなく、競合他社に先んじることができるのです。

結局のところ、従業員を単なる駒ではなく大切な“資産”として扱っている企業には、最高の人材が集まりますし、離職者も少ないでしょう。 競争の激しい今日のグローバル経済では、ストレスのない最高にしあわせな人材が集まった組織が勝つのです。

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